「射手は仕留めたか?」
蝋燭の揺らぐ炎の灯を写して教皇の影が石壁に大きく映る
「は、確認は出来ておりませんが、致命傷は与えたかと」
山羊は目を伏せ、静かに言葉を滑らせた
聖域の英雄たる射手の討伐を命じられた時は驚いたが教皇の命令とあらば致し方ない
女神の降臨が近いとの予言があったのをいいことに、偽りの女神を擁立して聖域の実権を握ろうとは言語道断の振る舞いだからだ
ただ、壁に映る教皇の影に血がざわめくのはなぜだろう
ありえないことと理解しているのになぜにこんなに血がざわめく

「ご苦労であった。お前に褒美をとらせる」
「有り難きしあわせ」
「…来い」
その時ひときわ蝋燭の炎が大きく揺らめいた