AV出演強要が社会問題化したのは、人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」が告発した2014年の訴訟がきっかけでした。あるプロダクションがAV出演を拒んで契約解除を申し入れた女子大生(当時20)に違約金として2460万円の損害賠償を求めた。東京地裁はプロダクション側の訴えを退けましたが、
この騒動がこのところ業界で頻発するトラブルの引き金になりました。労働者派遣法違反や売春防止法違反容疑などによるプロダクションや風俗店関係者の逮捕。アダルトサイトに無修正エロ動画を配信した疑いで映像会社の経営者らが捕まったのも、この流れを受けています。

 AV女優たちの告発も相次いでいます。
香西咲さん(30)、ほしのあすかさん(30)らが週刊誌や支援団体に「出演を強要された」と訴えた。個別事情はあるものの、おおよそ「有名になれる」「芸能人になれる」というスカウトの甘言に乗せられて
プロダクションと契約。出演を拒否したら、違約金を支払えと脅された、という内容でした。ドル箱の可能性を秘める「単体」を獲得する過程で、かなり強引なスカウト行為があったのです。

 一方で、現役女優や業界関係者から大きな反発が起きています。「スタッフに大切にされている」という女優や、「女優を大切にしている」という関係者は少なくない。業界事情を知らない外野に「人権侵害」だの「違法」だの言われ、プライドが傷ついているのです。
 そうした声は無視され、法規制を求める人権団体の訴えは永田町まで届いてしまいました。彼らが求めているのは、AVのホワイトビジネス化です。内閣府が中心となって具体的な議論が始まるのは必至で、1年後には現在のAVは姿を消しているかもしれません。

 そもそも、本番行為は違法です。当局のお目こぼしあっての演出で、AV業界はモザイクを濃くして猥褻性を薄める対策をしていますが、本番規制がかかる可能性は大。そうなれば、AVは80年代の疑似セックスまで一気に後退します。流通している本番AVも消えてしまうでしょう。
出演女優が販売停止や回収を求めた場合、メーカーは応じざるを得ません。法の網をかいくぐり、試行錯誤で良質AVを世に送り出してきた日本のAV監督の能力は非常に高い。新たなエロが生み出される期待もありますが、さらなる市場縮小は必至。AV女優の出演料ダウンは避けられず、
ハードな演出に耐えて糊口をしのいできた貧困女子は、ますます行き場を失ってしまいます。