(俺だけオフって社長もどうかしてるわ、、何考えてんだか…)
もやもやとした気持ちを抱えながら久しぶりの我が家に着いた。
鍵を開けて家に入ると、目の前に見慣れたスーツケースがある。
(えっ!?)
急いでリビングに駆け込む。
「お、おまえ…なんで居るんだよ」
「廉さん!」
「帰ってくるのは明後日じゃなかったか?っと今日は…?何日だ?」
ずっと缶詰め状態で仕事だったため、今日が何日かもわからない。廉の頭は混乱していた。
「明日の予定だったんですけど、先に帰るはずのスタッフさんが体調崩されて…
しばらく動けないから、交代ってことであたしの方が先に帰ってきたんです。
でもまさかこんなに早く廉さんに会えるなんて。」
うふっ、と照れ笑いする美子。
その顔を見た途端、廉の体から力が抜けていく。
そしてそのまま居間のソファに腰かけると天井に向かって大きく息を吐いた。
「わっ、 廉さんどこか具合悪いんですかっ」
廉はうめき声をあげると「…水くれ」と吐き出すように言った。
美子が急いでキッチンからグラスを持ってきて渡す。
一気にグラス半分ほど飲んだとたん、
「うへっ、なんだこれ!」
みるみる渋い顔になった。
「あ、やっぱりお口に合いません?
それハス茶なんです。ベトナムなんかでよく飲まれてて、スッキリするしおいしいと思うんですけど。
独特の香りだから、やっぱり廉さんニガテですよね〜」
そう言ってグラスを取り上げると残りを飲み干して微笑んだ。
確かにちょっと気分がすっきりしたような…
「腹減ったな」思わずつぶやくと
「廉さんも夕飯まだならちょうどよかった。お弁当買ってたんです、一緒に食べましょ!」
美子が廉の手を取り立ち上がらせた。
「ベトナム風春巻きとかじゃないだろうな」
「違いますよ、○○苑の焼き肉弁当とシュウマイ弁当ですっ」
「これから力仕事でもすんのか?がっつり系ばっかだな。
全部自分ひとりで食べるつもりで買ってきたのかよ」
「えへへ、どっちか選べなかったんですもん!」
両手で背中を押されながらダイニングへと進む廉はもうすっかり美子のペースだった。
窓の向こうではすでに星が瞬いている。時計の針はもうすぐ10時を過ぎようとしていた。
美子との夕食後、シャワーを浴びながら廉は今日の出来事を思い返していた。
――今日は、というか昨晩からだ正確には。
期限が迫ってるからレコーディングスケジュールも詰め詰めで、みんな疲れてた。
俺もイライラしてて…
それが社長の鶴のひと声で急にオフになって、そしたら美子に会えた…
俺が壁にぶち当たるといつも美子が現れる。ホントまるで天使だな…――
ザーーッキュッ。
シャワーを終えて頭を拭きながらリビングに戻るとほのかに良い香りが漂ってきた。
「見てください、これおみやげ屋さんで見つけたんです、かわいいでしょ?」
テーブルの上には象や猿の形のアロマキャンドルに火が灯されいくつも並んでいた。
「…うちはいつから動物園になったんだ?」
「でも廉さんの嫌いなウサギはいないですよ?」
「当然だ!」
そういいながらも、ゆらゆらゆれる炎を眺めていると心にこびりついていた何かが
ほぐれていくのを感じる。
「これも見てもらいたくて、工芸茶っていうんですって」
美子がトレーに載せたグラスにお湯を注ぐと、菊の花のような茶葉が煌めく光の中でゆっくりと
開きだした。
「廉さんに見てもらいたくなるとつい買いたくなっちゃって…」
美子がふりむきざま、おもむろに抱き寄せる。
「廉さん、お茶が…」
(そっちかよ!)
先走りそうになる自分を悟られまいと、すかさずグラスに手を伸ばす。
「さっきのハス茶みたいな味じゃないだろうな」
「どうぞ飲んでみてください。これジャスミンティーだから、廉さんでも大丈夫ですきっと」
美子に勧められて恐る恐る口に含むと、柔らかな甘味と共に甘い香りが鼻を通り抜けた。
「まあまあだな」
「よかった」
ほっとする美子にちょっとしたちょっかいをかけたくなる。
「お前も一口いくか?」といいながらぐいっとグラスをあおる。
「えっ、いや、いいです、っって、あの」
左手で美子の肩をつかむと、
―ごくっ
あわてる美子の鼻先で飲み込むとすばやく口付けた。
口移しされると思ってこわばっていた唇がゆるんで小さく息をつく。
廉にはそんなちょっとしたことがいじらしく、たまらず両腕で抱き寄せると
今度はゆっくりとでも深く口づけていった。
「ん…」
美子の方も最初は廉の胸に当てていた手を、しだいに首に回してしがみつくように
してきた。
…もうだめだ…
「美子あっち行くぞ」
「あっ」
ひょいっと美子を抱き上げると廉はベッドルームへ足を向けた。
「あの…廉、さん」
「あー、何も聞こえない、何も聞かないからな」
美子を抱えたままずんずん歩いていくと、そのままベッドに倒れ込む。
廉が起き上がって抱き直そうとした時、
「!!」
久しぶりに見るブタ鼻をする美子に面食らった。
「ったく、そんなのやらなくていいから」
鼻をおさえていた手をつかんで離すと、美子の耳元から首筋に唇を沿わせていく。
「あ…」
「いいから、力抜け」
「だって…、あの、久しぶりで、どきどきしてどうにかなっちゃいそうで」
「俺もだ…」
美子はいつもより早くスイッチが入ったのか、廉の背中をまさぐっている。
「あぁん」
大きく波打つ胸に手を沿わせると、耳元で聞こえる溜め息。
廉は思わず自分のバスローブのひもに手をかけたが、
(いや、それより先に大事なことが…)
はやる気持ちを押さえ、右腕を目一杯伸ばしてサイドテーブルの引き出しに
手を突っ込む。
(この辺に、あったはず…)
ようやくつかんだ箱を持ち上げ、引っくり返したのに何も出てこない。
(しまった、美子もしばらく留守だからってアレ買い足しとくの忘れてた!)
「ごめん美子っ」
「ど、どうしたんですか」「今日は…今日は最後までは…ダメだ…」
廉はいちど起き上がり美子に口づけてから、抱き締めたまま押し黙ってしまった。
(美子もいい感じなのにこんな時に限って、…いっそアレなしで、
…っいやいや俺はA.N.JELLの廉だ、そんなことできるか!)
「…あの…廉さん…」
「ん?」
名前を呼ばれて美子の顔を見ようとすると逆に抱き締めかえされて身動きとれない。
「ちょ、美子!?」
「わ、わたしのバッグ、中に黒い袋あるから…見てください」
「えっ…」
耳元で聞こえる声はかすかに震えている。
無理矢理美子を引きはがして顔をみようとすると、
「…はやくっっ」
とシーツを引っ被って隠れてしまった。
(なにがあるんだ…?なんで俺こんなドキドキしてるんだ…)
廉はよろめきながらもベッドを降りるとリビングに行った。
「これか」
入り口そばにあった大きなボストンバッグ、その開いた口から黒い袋が見える。
「なっ、これ…」
袋を開くとそこには英語らしき文字が印刷された薄い小さな袋が束になっていくつも入っていた。
(これってアレ…だよな…、あいつが買ってきたのか!?まさか、こんなに、、まさか?)
――…つい、買いたくなっちゃって…――
(いくらなんでも、ここまで…するか?)
廉は目の前の現実に混乱してきた。
しかし、今はそれどころじゃない。
「考えてる場合か!」
廉は黒い袋からいくつかひっつかむとベッドルームに飛んで行った。
「美子!」
「キャッ!れ、廉さん!ちょっと待ってっ」
シーツをはがした勢いそのままに美子のシャツも脱がしていく。
「俺は何も聞かない、聞こえない!」
「ああ〜〜ん!」
――――――
「ふふっ、くすぐったいです廉さんたら」
朝日のまぶしさを避けるように美子の方へ寄っていた廉が
うなじに鼻をこすりつけてくる。
「もう起きますね」
「もうちょっと」
後ろから美子を抱き寄せると美子の指を自分の手にからませる。
(昨夜はどうなるかと思ったが美子のおかげで…)
「…最高だ」
「なにがです?」
(この小悪魔め!)
そういえば、と例のものの事が気になってきた。
「なぁ美子、その…黒い袋の中身、あれどうしたんだ?」
思いきって聞いてみた。
「…あれ実はボランティアに行った時に無料で配布していた残りなんです。
先輩から預かったものなんですけど」
「そうだったのか」
(美子が買ったわけじゃなかったんだな…そうか、そうだよな)
理由がわかってほっとしていると美子がつぶやいた。
「先輩にはなんて言おう…」
「なに?普通に渡せばいいだろ」
「…あれ、残りの数本部に報告しないといけなくて。
先輩が全部数えてチェックされてたんですよね…」
へへっと照れ笑いする美子の肩越しで廉は顔面蒼白になった。
そっと美子の手をほどくとのけぞって後ろのサイドテーブルに視線をやる。
そこには口を切った外袋が。
(ここにひとつ、ふたつ、…ゴミ箱にも…確か、)
廉の額に汗が吹き出す。
脱ぎ捨てたバスローブを持ち上げると、
「げげっ」
破り捨てたらしい袋の破片が出てきた。
「廉さんどうかしました?」
美子の声がだんだん遠くなっていく。
「美子!なんで、そ、それをいわないんだよ!」
廉は美子を振り向かせると一気に巻くしたてた。
「言えませんそんなこと!」
「ひとつじゃないんだぞ!これ絶対数合わないぞ!」
「だって、だって廉さん、あの時あんなに、あんな、あの…」
みるみる美子の顔が真っ赤になり、うつ向いてしまった。
その様子を目の前にして廉も首まで赤くなってきた。
「……まぁ、俺も、うん、調子に乗りすぎたトコはある、か、な…」
耐えきれず美子はシーツで顔を隠している。
廉は大きく息を吸うと、
「だ・け・ど!お前渡すときはちゃんとごまかせよ!これだけでしたって言い切れ!」
「ウソつかないといけないんですね」
「ウソじゃない。むしろこっちがホントウだ!
世の平和のためになるんだ、それくらい神様も分かってくれる」
「?…そうです、か、ね?」
勢いに押され、廉のよくわからない説得に取りあえず返事をする。
「いいか、必ずいま残っている数を言え、必ずだ、わかったか!?」
「わかりました!」
「絶対だからな!」
「絶対ですっ!」
――――――
「うわっ、うま〜いっ」
「このエビサイコーだね、も一個たべちゃお」
スタジオではA.N.JELLのメンバーが朝食を取っているところだった。
「お前ら今のうちに食べとけー、廉がいないとケータリングが楽でホント助かるよ」
美男や勇気が弁当をほおばってる横で馬渕がせっせとお茶を配る。
「歌入れが思ったよりスイスイいけたね、廉が戻ってきたらびっくりするんじゃない?」
柊がお茶を受取りながら言う。
「そうそう、いい作品ができてファンのみんながハッピーになればすべてオーライってか〜〜
ダーッハッハッハッ!!」
「ハッピーになるためにもうひとふんばりしなきゃ。俺これ食ったら昨日やったとこやり直す。」
「えっ美男まだゆっくりしててもだいじょうぶだぞ。廉が帰ってくるまでおまえらもオフって事になったんだから」
「さっすがー有能マネまぶっちゃん!」
「ねぇ美男、美子はホントに今日帰ってくるんだよね?」
「ん〜そうだけど、なんで?」
「だってさぁ、廉さんずーっとイライラしてんじゃん?
そろそろ美子じゃないと馬渕っちゃんだけじゃ相手できないよ」
「もう会えてるんじゃないかな、なっ美男」
「えっ柊さん知ってんの!?」
「いや。なんとなく勘だけど…でも、、きっとそうだよね?」
「さぁどうかねぇ…、まっでもひとつ言えるのは、いま俺はすこぶる気分がいい!
メシもうまいしな!」
美男は勇気達にウインクすると残りのおかずをかき込んだ。
…というわけで以上です
いまいちシメがゆるいかもですが力つきたのでこれでカンベンして下さい
おっとメリークリスマス!
神、降臨してたー!!
クリスマスに廉美子のいちゃラブ見れてバカヤローコノヤロー!
幸せ!!ありがとう!!!!
クリスマスプレゼントきてたーーーーーーー!
もうここで神には会えないのかも…と半ば諦めてたので
めっちゃ嬉しいです。ありがとう!
廉美子をはじめオールメンが元気でよかた!
久しぶりの作品投下にニマニマしてしまったw
顔面蒼白廉さん、笑える
楽しい作品ありがとう!!!
規制とけてやっと書き込める
あけおめです!
今年も新作読めるといいな
>>332
GJ!
久しぶりに新作読めて幸せ
みんなかわいくてニヤニヤしました〜 0337名無しさん@ピンキー2015/01/06(火) 07:58:11.12ID:Udl7vNI0
昨日、廉の中の人がスマスマ出てたよ&今夜から始まる草なぎ主演のドラマに出るよ
後、美子の中の人が今週のアナザースカイに・・・・こっちは毎週出てるか・・・・
久しぶりDVD見返したけど
あの世界だけじゃ物足りない保守
0340名無しさん@ピンキー2015/03/29(日) 23:03:51.23ID:4YjtCE+6
保守
0342名無しさん@ピンキー2015/05/18(月) 20:00:55.01ID:gv4iAYBq
みこぉぉぉ
0344名無しさん@ピンキー2015/06/03(水) 04:55:12.81ID:mmSXj0hd
美子の中の人が柊の中の人と交際してるって・・・・・
0346名無しさん@ピンキー2015/06/03(水) 10:06:40.48ID:mmSXj0hd
これから美子が柊と浮気する話が大量に書かれるな
0347名無しさん@ピンキー2015/06/05(金) 01:02:04.87ID:QrqNDY6n
自分は柊と美子を信じるよ?
顔を見たわけじゃないから、あのマスクの女が美子と決まったわけじゃない
二人が認めるまでは、決めつけない方が良い
0348名無しさん@ピンキー2015/06/07(日) 15:51:56.16ID:ByRXbij5
カップリングは誰でも好いけど 浮気 だけはイヤだなぁ
0349名無しさん@ピンキー2015/06/23(火) 04:14:58.99ID:4m1TaqaK
柊と美子の交際、どうやらガセみたいだよ?
あのマスクの女は、滝沢とかいう柊の本命彼女のようだし
0353名無しさん@ピンキー2015/11/22(日) 12:47:28.28ID:LEvNFxmX
留守ですか?
0355名無しさん@ピンキー2016/05/18(水) 21:48:34.93ID:r0Wia8H1
廉さ〜ん
0356名無しさん@ピンキー2016/08/05(金) 23:51:03.99ID:Ofe2NFyW
初めまして、今回初めて書き込みする者です
近い内に美男ですねの二次小説を書き込もうと思います
ド素人ですし、駄作だと思いますが、ご了承ください
最近美男ですねを見直してやっぱ良いなーと思ってここに来たけど2015年からほぼ書き込み無しかw
もう10年前だもんなあ