草刈民代主演2012年NHKドラマ『眠れる森の熟女』
SS投下だけじゃなく、萌え話沢山したい!
ドラマ専用スレやその他ドラマ感想スレじゃとてもじゃないけど浮いてしまうかな?という
溢れ出る萌え妄想を、ここで語り合いましょ〜
「相沢様はイベントに参加だそうですよ」
「そう…ですか」
何食わぬ顔で報告を聞く祐輔を冷やかすように、杉浦が肘で主をつつく。
「本当は嬉しくてらっしゃるくせに…私にメイドステーションまで様子を見に行かせたのは、坊ちゃまでしょうに」
もし千波が参加しないとなれば、主人の意思を知る杉浦なら、あれこれ理由をつけて参加に導くだろうことも
当然計算に入れていたはずだ。
「ぼっ、僕はただ、従業員の人達がイベントに参加してくれるのか、少し気になっただけで…」
「ほぉ…それにしては、相沢様のお持ちのお洋服について、随分事細かく教えてくださいましたね。
あの服ならダンスの場にも相応しいだろう、とか、パールのネックレスが良く似合ってた、とか」
「わかりました!ええ、相沢さんが参加してくれればいいなと思いましたよ…ほ、ほんの少しだけですがっ!」
杉浦はふぅ、とため息をつく。
「素直にお認めになられたらいいのに…」
祐輔は思いつめた表情になり、杉浦に背を向けた。
千波に対するいくつかの願いはある。
ただ、今この胸にある思いがどういうたぐいのものなのか、
祐輔自身もまだ、つかみかねているのだ。
「もちろん、相沢様をダンスにお誘いになるのでございましょうね?」
「まさか!」
杉浦が怪訝な目を祐輔に向ける。
「そ、そんなの明らかに公私混同じゃないですかっ。僕はただ…」
「ただ?」
祐輔は後ろめたさを隠すように、コホンと咳払いすると、
「彼女の踊る姿を見てみたかっただけです」
「なぜでございますか?」
「それは…」
先日見た夢のせいなのだが、幼い頃から自分を見守ってきてくれていた杉浦にも、そのことは伝えられなかった。
「なるほど。確かに、手を回して相沢様をダンスイベントに参加させるのは公私混同ではありませんが、
一緒に踊るとなれば、やはり私情を交えていると言えましょう」
明らかな当てこすりだが、千波の参加を杉浦に託した祐輔は、何も言い返すことが出来ない。
杉浦は祐輔に一矢報いると満足したようで、すっかり笑顔に戻ると、
「何にしても、坊っちゃまが見初められた相沢様の美しいお姿を、この杉浦も拝見することができそうで、嬉しゅうございます」
「みそっ…め…」
「では、私は他にも急ぎの様がございますので、これにて…」
発言への訂正を求められる前に、杉浦がするりと部屋から出て行く。
「……あんな姿を見て、見初める人間なんか…」
残された部屋で、祐輔は一人呟く。
あの日の千波は、とんでもない酔い方だった。
ただ、今振り返ると、あの時の千波の姿はいつもと随分違っていて、
黙っていさえすれば、近寄りがたくさえ感じたかもしれない。そうも思ったのだ。
そして、その姿は少しだけ…。
祐輔は目を閉じ、夢に現れた女性の姿をそっと思い描く。
その女性が、その外見そのままに千波の若い頃であったのか、踊る今の彼女を見ても明らかになるとは限らない。
ただ…あの時の服を着て踊る彼女の姿を無性に見てみたくなったのだ。
この思いは一体なんなのだろう…。
その疑問に囚われそうになり、祐輔はすぐに頭を振った。
こんな事に心を乱している場合ではない。自分には総支配人としての立場があるのだから。
そして祐輔は、自分を待つ膨大な書類の山に、猛然と立ち向かっていった。
「ねぇ、こんなにスカート短くて、ダンスなんか出来るかなぁ〜」
千波は一人息子に、不安げに意見を求める。
かけるは、いったんは千波にはつかみかねる理由で家を出たものの、
父親と揉めでもしたのか、『やっぱりお母さんと暮らしたい』と、つい先日千波の元に戻ってきたばかりだった。
「ダンスのことはわからないけど…似合ってると思うよ、その服お母さんに」
真顔で嬉しいことを言ってくれる息子に、
「……ありがと」
千波は照れつつも、感謝を込めて息子の肩をポンポンと叩く。
息子を塾に送り出してから、千波は豪華なホテルで誰かとダンスを踊る自分を思い描いてみる。
その人物は、背が高く、優雅に女性をエスコートし、目が合うと爽やかに自分に笑いかけ…。
理想の男性の顔をぼんやりとイメージして、
「え?」
予想しない顔が見えた千波は、思い切りその目を見開いた。
「やだ!結構人集まったわねぇ〜」
いつもの清楚な制服姿とは全く違う、派手な紫色のドレスを身にまとった三島が、興奮しながら千波の腕を引く。
会場には色とりどりの衣装を来た男女が、少し高揚したような表情でその時を待っていた。
千波は自分の服を不安そうに眺める。
やっぱり、この衣装じゃ、地味だったわよねぇ…。
「ねぇ、聞いた?最初にデモンストレーションで一組だけ踊る予定だったらしいんだけど、
連絡ミスが重なって、約束していたプロが来れなくなったらしいのよ」
「そうなんですか?」
杉浦といい、三島といい、一体どこからそんな内輪の情報を仕入れてくるのだろう?
千波は本当に不思議に思う。
「手配してたのが、あの佐々木さんでさ、真っ青になって代わりの人を探してるの、見ちゃったんだよねぇ〜」
「そうなんですか…」
ネタをあかされると、案外単純なことだった。
千波は、人の良さそうな佐々木の顔を思い出し、少し不憫になった。
「で、その場に総支配人が通りかかって、普通なら怒るところなんだけど…」
総支配人という単語に反応した千波は、息を止め、耳をそばだてる。
「『僕も是非、代わりの人を探すのに協力させてください。
佐々木さんが今まで調整に努力してくださっていたことは、聞いていますよ。
いつも表に出ないところで企画を支えてくださって、本当に感謝しています』」
三島が、祐輔の甘い声色を真似て千波に語りかける。
こんなことを言われたら、あの佐々木なら泣き出してしまうのではないか、と千波は思った。
どれだけ本心なのかはわからないが、相変わらず人の心をつかむことにかけては天才的だ、総支配人は…。
「そこに、あの杉浦さんが現われて、事態は急展開するの。
『僭越ながら私にお任せいただけませんか』なんて、自分が立候補しちゃって、
あのじいやさん、かなりの実力らしいのよ!
『相手にも心当たりがありますので』とまで言うから、王子も、『それなら…』って。」
「人は見かけによらないわよねぇ〜」三島がしみじみと呟く。
千波達が他愛もない噂話をしている間に、会場の準備はすっかり整い、司会者がマイクの前に移動した。
「皆様、お待たせいたしました。
それでは、TAKAOKAホテル特別企画、ハロウィンダンスパーティーを始めさせていただきたいと思います。
まずは、一組のペアのダンスをご覧ください」
その言葉を合図に、会場の照明が落ち、中央だけにスポットライトが当てられた。
期待に満ちたざわめきが起こる。
千波の胸も少しずつ高まっていく。
その時、ふいに背後から声をかけられた。
「相沢様、実は折り入ってお願い事があるのですが…」
「?…杉浦さん、ですか?」
暗闇の中で姿は見えなかったが、
その柔らかい言葉遣いに、千波はすぐに相手が誰だか気付いた。
「はい、さようで。相沢様、突然ではございますが、これから私と踊ってはいただけませんでしょうか?」
「…は?」
しばらく言葉の意味がつかめずにいた千波だが、内容を理解して、叫び声を上げそうになる。
「むっ、無理ですよっ、社交ダンスなんて、私、今日が初めてなんですよっ!」
「心配には及びません。以前もお伝えいたしましたが、女性はただそこに居てくださるだけでいいのです。
後は、私めが…」
「む、無理っ、無理です!」
「そうでございますか…でしたら、初っ端のデモンストレーションは中止にするしかありませんなぁ。
折角の坊っちゃまの企画でしたが、参加者の方々の気持ちをまず最初に盛り上げようと言う試みは、残念ながら叶わぬこととなりました…」
真っ暗な会場にスポットライトだけが輝く中、何も物事が始まらないことに、先ほどとは違う疑問を感じさせるざわめきが広がりつつある。
早く誰かが踊りださなくては、折角集まった人々の気持ちが離れてしまう。
日々総支配人として必死に頑張っている祐輔の企画を台無しにしたくない、という強い思いが千波の心の中に広がっていく。
「…本当に、立ってるだけで大丈夫なんですか?」
「はい、私をお信じください」
千波は覚悟を決め、「わかりました」とかすれる声で答えた。
「では」と杉浦に手を引かれ、スポットライトへ向かって歩き出す。
明かりの真ん中に立つと、参加者達からどよめきが起こった。
「えっ、えっ、相沢さんっ!?」
小さく聞こえてきたのは、三島の声だろうか。
千波は緊張のあまり、とても顔を上げることができない。
「相沢様、一つだけお約束を。手だけは決して離さないように、お願い致します。
相沢様を回転させた時に、手が離れると、相沢様が怪我をなさいますから」
「あ、はい!」
会場に待機していた楽団の生演奏が聞こえ始める。
しかし、杉浦はまだ動き出さない。
何かを待っているように、かすかに周りをうかがっているような仕草を見せる。
「杉浦さん…?」
「…あ、失礼致しました。
気になる女性が他の男と踊るというのに…あの方も案外度胸がなかったようで。
…それでは、参りましょうか」
意味不明の言葉が呟やかれた後、杉浦の手が背中に回され、千波は体を硬くする。
顔はやはり上げられず、うつむいたままで杉浦に身を寄せる。
背をそっと引き寄せられ、一歩踏み出しかけたところで、
突然杉浦の体がぱっと離れた。手も同時に離される。
「あっ」と思うまもなく、再び温かさが戻ってきた。
ホッとし、千波はその手を二度と離さないように、しっかりと握る。
背中に回された手に力強く引き寄せられた時、千波は違和感を覚えた。
自分に触れる手も、杉浦の柔らかい手の感触とは違っている気がする。
視線を上げると、すらりと伸びた長い指が自分の手を包み込んでいた。
「え?」と、自分を抱く相手の顔を見上げると…。
「…何をしているんですか、あなたは」
呆れ顔の祐輔の顔がそこにはあった。
事態がのみ込めない千波は目をしばたかせる。
「あ、あの…」
「話は後で。今は僕のリードに身を任せてください」
「は、はい」
祐輔の一歩につられ、千波も足を踏み出す。
自分でも驚くほど軽やかに体が動いた。
会場を大きく祐輔が移動していく。
それに合わせて、スポットライトも移動する。
ふいに2人の体が離れたかと思うと、千波の体がクルリと回転した。
さらに逆回りにクルリ。
祐輔によって、千波の体が自在に操られる。
まるでずっとそうしてきたかのように、2人は優雅に踊り続ける。
その様を目の当たりにした参加者から、わっと歓声があがる。
始めは祐輔になされるままだった千波だが、踊り続ける内に少しずつ余裕が生まれ始める。
上げた手に、軽く力を込められると、もう回転の合図だと解るようになった。
祐輔の導くままに回って見せると、自分の意図が通じたことを喜ぶように、祐輔の顔に柔らかい笑顔が宿る。
嬉しそうな祐輔の顔を見ると、千波まで心がウキウキとわき立つようだった。
久しぶりに、祐輔と直に交流をしているような、千波はそんな気分になる。
その後、再び体を抱き寄せられ、祐輔の体温を感じると、今度はじわじわと胸が締め付けられていく。
間近にある祐輔の顔を直視することができず、千波はちらちらとその横顔を盗み見るしかない。
何を考えているのか、祐輔はじっと前を見据えている。
その顔に、いつか心に思い浮かんだ、理想の男性の姿が重なる。
けれど…その像はピタリと重なり合いはしなかった。
曲が止むのに合わせて、祐輔がステップを終える。
最後まで触れ合っていた2人の手と手が、静かに離れていく。
千波と祐輔は軽く息を乱しながら、ようやく我に返ったように、なかば呆然とお互いを見ていた。
2人にとって共に踊ったその一時は、まるで夢の中の出来事のようだった。
「それでは、皆様もご一緒に!」
ぱっと会場全体に明かりが点り、華やかに曲が始まる。
フロアの中央に人々が集まり、そこここで踊り始める。
「あ、あのっ、総支配人、わ、私とも…」
祐輔に擦り寄ってきた三島が、体をくねらせながら祐輔にダンスの相手をねだる。
「ええ、もちろん」
条件反射でいつもの営業スマイルになると、祐輔は三島の手をとった。
…静かに離れていく千波の気配を背中に感じながら。
体の火照りを誤魔化すように、千波はテーブルに用意されていたカクテルをぐいっとあおる。
「大変お似合いでらっしゃいました」
いつの間にか隣に来ていた杉浦が、嬉しそうに話しかけてくる。
杉浦はこれまでも時々、千波と祐輔を近づけるような企みを仕掛けることがあった。
おそらく、それまで人に心を閉ざしていた祐輔が、手紙では本当の気持ちを明かすようになったことを知り、
千波との交流についても快く思っているのだろう。
今回も、祐輔が飛び出してくることを見込んでのお誘いだったに違いない。
振り回されたことを責めたいところだが、そうは出来ない理由が千波にはあった。
手紙の交流を続ける意思表示をされてから、
どこかぎこちなかった祐輔と、久しぶりに心を通い合わせることが出来た気がしたのだ。
「…ありがとうございました」
その言葉に、杉浦は「おや?」と千波の顔をのぞき込む。
「久しぶりに、総支配人と楽しい時間を持てたので」
「これからもぜひ、そのような時間をお持ちくださいませ」
そうあればいいのだが、と千波は思う。
ただ…体が触れ合ったときに感じた、あの切ないような気持ちは…。
祐輔との関係が、少しずつ形を変えていきそうな、そんな予感を千波は感じていた。
一応これで一段落
後は伏線っぽく張った話の回収(そこまで大層なもんじゃないけど)
そこで、一つの要素を盛り込んだバージョンと盛り込んでないバージョンを書いててどちらをとるか迷ってるんだけど
この話を読みすぎたせいで今日はもう判断がつかない
明らかに実力以上のものを書こうとし過ぎた
次からは等身大で行きます
レス書こうとしたのに投下中で諦めた方、本当にスンマセン
大作キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
投下邪魔してスマソ
ああああああああああああああありがとう!
投下が始まったら終了まで大人しく待って、一気に読みたいもん〜
大作の時はスレを占領しても仕方ない
遠慮せず続きもお願いします!!
盛り込んだバージョン、盛り込まなかったバージョン、両方、違いも読みたいってのは贅沢?
これだけの作品書けるなんて尊敬〜〜〜〜〜
滾ったもんいくらでもだして〜!ダラダラだなんてとんでもない、萌えもほわほわだよ〜!
ネ申キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
面白かったです!
杉浦さんGJ過ぎるw
書き直せば書き直すほど訳がわからなくなるこの悪循環 もう諦める
えっと、感想いただけて嬉しかったんだが…なんだかハードル上がってませんか…ブルブル
広げた風呂敷を一生懸命畳んでるだけの話なので、あまり期待はされぬように
あとホテルTAKAOKAをTAKAOKAホテルと書いちゃうような間違いが散りばめられてると思う
とにかく、それなりに楽しんでもらえたら充分です
「ああん、どーして最後はこうなるのぉ〜」
飲み物が少しずつ残されたグラスを片付けながら、ドレス姿のままの三島がぼやく。
「仕方ありませんよ、後片付けも込みの募集だったからこそ、このイベント参加でお給料も出していただけるんですから」
とは言え、家族を持つ同僚達は、何かと理由を付けて早々に帰ってしまっていた。
お互い、幼い子供やうるさい亭主を持つことは把握しあっているので、
こんな事態になっても、千波達のチームワークが悪くなることは基本的にない。
「まぁねぇ〜、王子と踊れたから、参加できたこと自体は良かったんだけどさぁ〜」
三島にもそこまでの不満は溜まっていないようだったが、
“王子”という単語に、一瞬千波はヒヤリとする。
「あ、そう言えば相沢さん、王子と踊ること黙ってるなんて、水臭いじゃないのぉ」
「あ、いえ、私も全然知らなくて…」
「そうなの?」
これ以上突っ込まれたら、どうしよう…。
千波の不安など知るわけもない三島は、
「ま、アレのお陰で王子に声をかけられたから、いんだけどね!」
とカラカラと笑い、その話題はそれきりになった。
しばらく2人でテーブルを黙々と片付けていたが、
「あ、もうこんな時間。三島さん、先にあがってください」
時計が目に入った千波は、夫と暮らす三島に気を利かせて声をかける。
「え?でも…」
「今日ウチは息子が塾で遅くなるんです。残ってるグラスもあともうちょっとですし、私一人で大丈夫ですよ」
「…そぉ?悪いわね。じゃ、お先に」
一人残された会場で、千波は一人後片付けを続ける。
気を抜くと、先ほどのダンスで祐輔と触れ合った感触が甦ってきて、顔が火照ってくる。
千波は仕事に集中しようと、ぺちぺちと自分の頬を叩く。
私も早く帰って、かけるを待とう!、と片付ける手を早めたところで、急に背後の扉が開く気配がした。
「三島さん、忘れ物でも…?」
千波が何気なく振り返ると…そこには祐輔が立っていた。
「あ、お疲れ様です!」
千波は、思わず従業員としての挨拶を口にし、頭を下げる。
祐輔は千波の元に歩み寄り、黙って片づけを手伝いだした。
「あ、これは私が…」
「お陰で、盛況のうちにダンスイベントを終えることが出来ました。
感謝します」
感謝されたのは、居残って片づけを続けていることに対してだろうか?
それとも、あのダンスに対して…?
「…どうして、私と踊ってくださったんですか?」
千波は思い切って気になっていたことを尋ねてみた。
「あなたは杉浦さんと踊りたかったんですか?」
「そ、そんなこと…」
…また以前のような本心を隠した会話に戻ってしまっている。
一緒に踊った時は、あんなにも自然に笑い合えたのに…。
千波はその事が悲しかった。
「…あなたと踊れて、私は嬉しかったですよ」
自分から素直になろう、千波はそう気持ちを切り替えた。
「実は…人と踊るってどんな感じ何だろうって、少し想像してたんです。
素敵な人と踊れたらいいなって」
祐輔は黙って、千波の口から次に何が語られるのかをじっと待っている。
千波は誤解も恐れずに、本当のことを話し始めた。
「その時浮かんだのは、あなたでした」
祐輔がはっとしたように千波の顔を見る。
「厳密には…少し歳をとった、あなたでした」
秘密にしておくつもりのことを話してしまったことに気恥ずかしさを感じながら、千波は祐輔を見た。
てっきり微妙な顔をして、困っているだろうと思っていた祐輔は、ポカンと口を開けて、千波を見ていた。
「…どうかしましたか?」
「このあいだ夢を見て…」
「はい?」
突然話題が変わり、千波は面食らう。
「綺麗な女性が、寂しそうに立っていました。
その女性に誘われて…僕達は2人で踊りました」
訳が解らないながらも、千波は祐輔の言葉に耳を傾け続ける。
「その女性は、あなたに良く似ていた。…ただ、彼女は僕より若かった」
思いもしない告白を聞いて、一瞬の間があく。
やがて、千波がくすくすと笑い出した。
「私は歳をとったあなたを。
あなたは若い私を望んだということでしょうか」
あまりに都合のいいことをお互いに望んでいることがわかって、千波はおかしかった。
祐輔を見ると、なぜか憮然とした表情をしている。
なにか気に障るようなことでも言っただろうか?と思いつつも、
「まぁ、夢見ることは自由ですし…。
でもそれなら、今日はお互い、本当の目的の相手とは踊れなくて、残念だったのかもしれませんね」
「いえ、僕はあなたと踊れて良かったと思います。
…若いあなたではなく、今のあなたと踊れて良かったと」
意外な言葉に、千波が顔を上げると、祐輔と目が合った。
「…あなたは違うのかもしれませんが」
少し怒ったような祐輔のその顔に、千波は覚えがあった。
文通相手の正体を知った後、手紙のことは忘れるつもりだと言った自分に対して、
「歳は関係ないでしょう!」と言った、あの時と同じ目を祐輔はしていた。
「もしかしたら、あなたは僕より、杉浦さんと踊る方が良かったのかもしれませんね」
拗ねたように言葉を続ける祐輔を前に、千波は本当のことを言うべきか迷う。
穏やかな眼差しをした、成長したあなたと踊るより、
硬い表情で自分を抱き、やがてとびきりの笑顔を見せてくれるようになったあなたと踊るほうが、
ずっとドキドキしたのではないかと、今は思うのだと。
「…どうして、若い私じゃなく、今の私で良かったんですか?」
自分の思いは秘めたまま、千波が恐る恐る尋ねると、
「…あなたは、僕と踊って笑ってくれたから。
それに…」
自分が抱き寄せると、緊張したように身を硬くする千波が可愛らしく思えたのだ。
さすがの祐輔も、そこまでは伝えられない。
「若い私はそんなに笑いませんでしたか?」
「ええ、ツンツンしてましたね」
……とても美しかったけど。
女優のような輝きをもつ若い千波の姿を、祐輔は思い出す。
踊る彼女の美しさをもう一度見たくて、私情を入れた企画までも立ててしまった。
ふいに、若かりし頃の千波を存分に見てきたであろう、ぼんくら亭主までもが思い浮かび、
祐輔の胸に苦いものが広がった。
この人がからむと、今まで味わったことのない感情が次々湧き起こるから困る…、と祐輔は思う。
しばらくの沈黙ののち、どちらからともなく2人は片づけを再開する。
どこか気まずいような、同時にむず痒くもあるような、不思議な空気が流れる。
洗い物を全てキャリーに乗せ、
「今日はありがとうございました」
礼をして去ろうとする千波に、祐輔はかける言葉が見つからない。
千波の後姿が、どんどん遠ざかっていく。
これからまた、あの距離のある関係に戻るのだろうか?
やっと一歩を踏み出しても、次には数歩下がってしまうような、そんな関係をこれからも続けていくのだろうか。
手紙でいくら本音を語っていても、直接会った時にちゃんと言葉を交わせないのでは…。
千波が扉を開け、出て行こうとしたその時、祐輔の中で何かが吹き飛んだ。
「杉浦さん!」
突然の祐輔の叫び声に、千波が思わず振り返る。
「どうせどこかで見てるんでしょう!?
なら、協力してください。
何か踊れる曲をこの会場に流してください、お願いします!」
しばらくの間をあけて、スローなナンバーが流れてきた。
祐輔はずかずかと千波の元まで歩み、手を差し出す。
そして、夢の女性が自分にかけた言葉をそのまま復唱する。
…ちょっと気障っぽかったか、と不安になったが、千波はクスリと笑うと祐輔の手をそっと握った。
祐輔に誘導され、優雅にフロアの中央まで来ると、二人は向き合った。
祐輔の手が千波の背中に回され、静かに体を引き寄せられる。
2人の体の触れ合った場所が発熱でもしているかのようにジンジンと熱い。
イベントで踊った時はテンポの良い曲に合わせて、体を触れ合わせたり、遠く離れたりを繰り返して踊ったが、
スロウな曲の流れる中踊る今回は、ダンスの種類が違うのだろう。
千波はずっと祐輔の腕に包まれたまま、フロアをゆっくりと移動していく。
こうしていると、本当に年齢のことなんて、忘れてしまいそう…。
祐輔に腕に守るように抱かれながら、
千波はぼんやりと考える。
すぐそばにある祐輔の横顔をチラリと見ると、
祐輔は、イベントの時にみたような硬い顔でも、思わず漏らした笑顔でもなく、
ひどく穏やかな、満足気な表情で微笑んでいた。
それはまるで、千波がダンスをする相手を思い描いた時の、
年齢を重ねた祐輔の表情そのものだった。
こんな表情を今の彼も持っていたのか…まだまだ知らないことが沢山あるのだと千波は強く思う。
そして、だからこそ、もっと祐輔のことを知ってみたい、とも。
溢れそうになる感情におされて、その言葉がぽろりと千波の唇から零れ落ちた。
「…きっと、私もあなたと踊りたかったんだと思います。
歳を重ねたあなたではなく、今のあなたと…」
こちらを向きはしなかったが、祐輔にその言葉が聞こえたことは、
握る手にこもる力で解った。
「…どれだけ頑張っても、あなたより年上になることはできませんよ?」
「私も今から若返ったりは出来ません。それでも、いいんでしょう?」
祐輔がふっと笑う。
「ええ」
「なら、いいじゃないですか」
祐輔が千波の顔を見ると、気品高く笑いかける千波の笑顔がすぐそばにあった。
その笑顔は、夢で見たあの若々しい千波と比べても、なんの遜色もないほどに輝いていた。
同じ服を着てはいるが、バーで泣き崩れていたあの時の面影は微塵もない。
いつまでも千波とこうして踊っていたいと祐輔は思った。
フロアを何度も2人で踊りながら回った後で、
「ずっと踊っていたいけど…」と、ふいに千波が呟く。
「杉浦さんに悪いかも」そんな千波の言葉に、祐輔はふっと我に返る。
「そ、そうですね」
思わず足が止まった。
名残惜しげに千波の体を離し、
「…杉浦さん、今日はこれで!ありがとうございました!」
祐輔が叫ぶと、ふっと曲が止み、すぐそばの扉が静かに開いた。
「思い出していただけて、よぉございました。
老体には、夜更かしはこたえますので…」
「お付き合いいただき、申し訳ありませんでした」
千波が杉浦の方へ一歩前に出ると、深々と頭を下げる。
「いいえ、相沢さまと坊っちゃまのキューピットになることが出来、うれしゅうございます」
「キュ…」
千波と祐輔は顔を見合わせる。
「あ、あの、僕達は…」
千波の気持ちが気になり、いつものように言い訳をしそうになる祐輔だったが、
「本当に感謝しています」
千波が先にさらりと答えた。
深い意味はないのだと自分に言い聞かせながらも、祐輔の顔がほころぶ。
「相沢様、次はぜひとも私めとも踊ってくださいませ」
「まぁ、光栄です。私も少し勉強しておきますね」
「相沢さん!もう遅いからお送りしますよ」
杉浦との和やかな会話を妨害するように、祐輔が声をかける。
「いや、総支配人ともあろう方に、そんな運転手のような真似をさせるわけには…。
相沢様、すぐ私がお車をお出ししますので…」
「総支配人じゃない!」
祐輔の大声に、千波と杉浦が驚いた表情になる。
「…高岡祐輔として送るんだ。なら、問題ないだろう」
さっと千波の手を取ると、とまどう千波の手を引いて、祐輔は会場を出て行った。
一人大きなフロアに残された杉浦の顔に、にじみ出るような微笑が広がる。
「…今日一日で、坊っちゃまはずいぶん度胸がついたご様子。
いや、大変結構でございますな」
杉浦は、扉の前に残されたグラスののったキャリーを見やる。
「これくらい、杉浦が喜んでいたしますとも」
そう言って、今日全く披露できなかった華麗なステップを踏みながらキャリーに近づいていくと、
取ってをつかみ、扉に手をかけた。
…が、ふと杉浦は思い出したように会場を振り返る。
そして、そのままフロアをぐるりと見渡し、
「今日は坊っちゃまが大変お世話になりました」
と、深々と一礼した。
しばらくそうしてから、杉浦はクルリと扉に向き直り、
スタンダードなダンスナンバーを上機嫌に口ずさみながら、
キャリーを押す足取りも軽やかに、その会場を後にしたのだった。
−おわり−
スタンダードなダンスナンバーってなんだろ?とか
あれ?バーで千波って泣き崩れてはなくない??とか自分で突っ込む度に書き直したくなり
しかしそんなことしてると作品は完成せず …もういいんだ
もしかして、他のSSや小ネタの投下もこっちの投下のために自粛してもらってたりした?
いや、ガンガン落としてくれ
他の人の作品が読みたくてたまらないんだ!
読めるまでこのスレを暖めておかねばと、こんな話をせっせとこさえてきたんだよぉぉ〜
あ、バージョン違いは片方がまとめきれなかったのでシンプルバージョンにしました
杉浦が流した曲に何か思いを込めようかと曲名考えたりしてたんだけど、うまくもはまらないし、かつもうお腹一杯って感じ
遅い時間の投下でヤキモキさせてたらごめんです
皆さんの萌え話・妄想話・エロ話、何でもいい、楽しみにしております
乙!昨日寝る前に感想打って寝落ちしたと思ったら寝ぼけてたのか送信出来てなかった
改めて、萌えをありがとう!
話の流れがとってもダイナミックっていうか、物語の起伏のメリハリがあって
お話に飲み込まれてったよ〜超面白かった!
投下の際に他のことは気にしないで!
もとからゆっくりなスレなんだし!
>>95
感想ありがとう!
長い話根気強く読んでもらえて本当に嬉しい
途中ぼちぼち盛り上がったのに最後がなー的な感想もらったらどうしようって実は不安だったw
色々吹っ切って投下して良かったよ〜
ココまったりスレだからこそ、貴重な投下の妨げになっちゃいかんとつい思ってしまうんだ
でも投下が重ならないほうがスレ的にも長く楽しめるかもしれんね
今日からまたのんびり待つよ >>96
待たなくていいから〜!
凄くツボにハマる文だったよ!
GJ!!!!
是非また読ませて下さい!
長文で嬉しかった
ありがとう いやほんと面白かったよ
あと勢いも大事だよね粗が気になるって気持ちも分かる(SSは全然粗なんて気にならんかったよ!)
妄想でぐわーっと滾った後のこの粗っぽさといったら…なんて思っちゃ萌えは具現化できんw
初キス=ママレードキスだよな!とかわけわかんないこと妄想してったら意味不明なことになったw
ママレードキスってなんぞな?w
でもまだ妄想出てくるのって羨ましい
録画観ないとドラマのこと完全に忘れちゃってる日々だ…
>>60の続きが読みたいよー なんか目立ってるかもと、お礼も控えて次の投下クレクレしてしまったが
かえって雰囲気悪くしたかもごめん
このペースに落ち着くならちゃんと言ってれば良かったよ
感想ホントありがとでした涙出た
本スレも楽しいがこっち系も賑わうといいな
違うよう〜気にしないでよう〜どんどん書いてて〜どっちも私だから、なんとか書き進めてんだけど
どうにも遅筆なんだぜーw
そうなのか、落とす気なくさせたかと思って、
自分の投下をもっと待つべきだったと激しく後悔してた 小心なものでw
まったり待ってるよ〜
初デートは何処がいいかな
全く考えてなかったけど、初デートするならどこがいいだろう?
チャーターしたヘリに2人で乗って、夜景を巡る飛行とか
>>105
ヨメを落とした決死のデートと同じw あのゴージャス感は感動ものだと私的に思う ここの所多忙とその他色々で公式の掲示板見てなかったんだけど(1週間〜10日ほど)
今日見たら目からウロコの書き込みを見た。
とても納得というか腑に落ちたし希望も萌えも戴いた。ありがたい解釈だった。
それをもとに妄想。
「総支配人…!」
「なんですか?」
「あの…婚約を解消されたっていうのは、ほんとうですか?」
「その話ですか…。本当です。隠していたわけでは無いのですが、いうことでも無いと思って…あの…」
「あの…もしかして…その…私のせいでしょうか」
「え?」
「あの、いえ、そういった意味じゃなくて、えっとその、あの、手紙のこと!
そう、手紙のことで、彼女が私のところに来たこともありましたし、
それでその、誤解をさせてしまったり、それとか、私にあって何か不愉快な思いをさせてしまったのかしらとか」
「いえ、違います。あなたのせいじゃありません」
「そうですか。あの、でも」
「あなたのことは関係ありません」
「…!あ、そ、そうですよね…あの……」
「・・・。あ、いえ、そういうことじゃなく」
「変なことをお尋ねしてしまい、申し訳ありません。失礼しますっ!」
「あ、ま、まって下さい」
祐輔の弱々しい呼び止めも虚しく、千波は駆け足で去って言ってしまった。
公式の掲示板初めて見にいってしまった
なのに107さんの目からウロコ書き込みがどれか解らんかった…麻美さんとのやり取りに言及したヤツかなぁ?
ssもありがとう!
2人のムズムズする会話を思わず思い出したよ
この後2人は本当の気持ちをどうやって確認し合うんだろう?
萌えは続きますなぁ〜
婚約者の件からの…もどかしいけどキュンとなるわ。
初デートは千波さんチョイスの庶民派居酒屋さんとか。くだけた感じの王子に萌えたり。
初デート居酒屋かー
王子お酒弱いけど、まぁいっかw
上着脱いでネクタイ緩めてる王子に萌え
お互い変に緊張して酒あおってなんかやらかしそうな危険な二人w
王子の食生活を心配した千波さんが王子を食事に招待
杉浦さんに初デートですねとか、避妊具を持参するのは男の嗜み云々と茶化される
王子がドキドキしながら杉浦さんに持たされた手土産片手に
チャイムを鳴らしたら、かける君がお出迎え→3人で食事
王子(…あれ?)
こんな展開しか思い付かないw
かける君と王子、あっさり仲良くなりそうな気もするw
ただ、しばらく千波さんと王子2人きりでラブラブさせてあげたいような。
クリスマスだなぁ、ホテルのツリー綺麗だろうなぁと妄想は捗るわw
久々にこのスレに来てしまった…
前にss書いた者ですが、王子が「杉浦」呼びしてたり、杉浦さんが「相沢様」呼びしてたり大嘘書いてる
気付いてから恥ずかしくてあまりここに来れなくなってた
今回の再放送見て初めて来られた方がおられたら、どっちも「さん」付けに脳内変換をお願いします
>>115
ドンマイ。全然気にならなかったよー
次回作待ってます! レスもらえてるとは!ありがとう〜
でも新しい話はなかなか湧いてきてくれない
再放送見てご新規の職人さん現れないかと期待してるんだけど…
0118名無しさん@ピンキー2013/06/07(金) 04:04:47.72ID:Qq6ZArpj
ほしゅ
オーロラ姫ってブス設定なの?
フィリップ王子のすごい嫌そうな顔が印象的だったんだけど?
整形魔法で綺麗になったの?
おジャ魔女3人は16年間ローズをどう育てたの?
裁縫も料理もできない。 挙句に魔法で喧嘩してマレフィセントに見つかる馬鹿3人ww