ことの起こりは、決勝戦の前に遡る。
前回の大会で優勝した戸愚呂チームは各自ホテルのスイートを割り振られていた。
とは言え、別にホテルへの滞在義務が課せられている訳でもない。
彼がそのタイミングで自室へと足を向けたのは全くの偶然だった。
妖怪の聴力でなければ聞き逃してしまったであろう物音。
それは、隣室、チームメートの部屋からの声だった。
気に入った物を壊すことを最大の楽しみとする男は
その日、珍しくも獲物を性的にも踏みにじることにしたらしい。
叫びがくぐもった苦鳴に変わり、やがて押し殺された、
しかし、明らかに男の律動に合わせた鳴き声になるのを、
退屈を持て余していた彼は壁を隔ててじっくりと堪能した。
声の主に気づいてからは、気配を絶ち、壁に耳をあててまで、
チームメートが思いの外強情な獲物を料理していく様を楽しんだ。