(蔦が出した液体は、服を溶かしはしたが肌を痛め付けることはなかった)
(痛覚も敏感なシンシアにとって、それはありがたいことだったが)
(肌に塗り込めるように蔦が這い回り、それだけでくすぐったいような感触が全身を襲う)
っく、ふぅっ、この……忌々しいっ……
(逃げ出したくとも動かせるのは頭くらいで、短い髪を乱して首を振ることしかできず)
(そのうちにくすぐったさが異質のものに変わってゆく)
なん、だ、この……熱?いや、違う……っ
これ、こんな……っく、何なん……っぅあ
(たしかにそれは熱のように感じられたが、蔦そのものの熱ではなかった)
(シンシア自身の身体が熱を上げていたのだ)
(身体の内側から肌を暖める火照りは、悪寒を伴うような発熱とは違い、ただどこかむず痒い)
(そして、強制的にびくびくと身体を震わせる感覚も、彼女には未知のもの)
(それが、鎖骨を、乳房を、脇を、背中を、尻を、腹を、太股を、膝裏を――)
(全身から与えられて、蔦に固定されていなければのたうちまわるほどの刺激となる)
(自由には動かせない身体が痙攣して、鎧の接合部がカシャカシャと音を立てる)
(この奇妙で強烈な感覚が何なのか、シンシアの知識に合致するものがあった)
ふーっ、ふぅうっ、ぅううっ、っく、ちが、ちがうぅっ、こんな、ものでっ
(しかしそれを認めるわけにはいかない)
(卑しくも神に仕える身で、悪魔の名を冠する魔物に与えられてよいものではない)
(歯を食い縛り耐えようとしても、身体が跳ねるのはどうしようもない)
(静かに蔦が這う度に、身体が跳ねて鎧が音を立て、情欲の火を煽るように熱が上がり、汗が滲む)
(陽も暮れかかった森に、獣のように吐く息と鎧の音が響いた)
(そうして這い回る蔦が、熱の中心ともいうべき場所に近づく気配に、シンシアははっとして顔を上げた)
ふーっ、ふーっ、はぁ、あ……?
っ!まっ、ひぁあああっ!
(電流を浴びたような鮮烈な感覚に、あげたことのないはしたない声を上げる)
(蔦がなぞったのは、花弁の中心)
(ぱくりと割られたそこには、雌の匂いを漂わせる淫蜜が溢れていた)
(蔦の目的であるそれは、あとからあとから溢れてくる)
なっ、な、わた、私のっ……やめ、このっ……くぅうっ!
(おのが身に起きた現象に、理解が追い付かない)
(ただそれに恥辱を感じ、頬が燃えるように熱いのに、言葉がでない)
(言葉を紡ぐ余裕もなく、蔦が這い回り衝撃的な刺激が走り、呻く)
こんな、こんなっ……っあ、あぐうっ……
(呻こうがもがこうが、蔦の拘束は緩まず、己の身体は意思に反して跳ねる)
(気丈なシンシアの心に、微かに絶望の色が浮かび始めた)