【送狼】

「もうっ・・・はじめちゃんたら、冷たいんだからっ!」
美雪はミステリー研究会の活動で、帰宅が遅れてしまった。はじめは面倒を嫌って、さっさと男友達と一緒に帰ってしまったのだ。そんなはじめの態度は、いつもの事とはいえ、美雪は少し腹を立てていた。
(ちょっとくらい、待っててくれても良いのに・・・はじめちゃんのバカっ!)
美雪が頬を膨らませながら靴を履き替えていると、不意に誰かの視線を感じた。
「やあ、七瀬さん。今、帰りかい?」
後ろに振り返ってみると、そこには美雪と同じミス研に所属している、真壁誠の姿があった。真壁はネットリした視線で、美雪の姿を舐め回す様に見ながら言った。
「金田一には女性をエスコートする資格がないねぇ・・・・どうだい、代わりに僕が送ろうか?」
そう言いながらも、真壁はジロジロと美雪(特に胸元)を眺め続けていた。もはや、その下心を丸出しにして隠そうともしない。
「い、いえ、けっこうです」
美雪は鞄を持つと、逃げる様に学校を出た。その後ろで、真壁が「チッ」と舌打ちするのが聞こえた様に感じた。