「すみません」
「いや」
申し訳なさそうに言う美雪に、明智は微笑を返し、車を発進させていく。その横顔を見ながら美雪は、初めて男の車に乗ったのだと意識した。
相手が大人で、自分など小娘程度にしか思っていないだろうと想像はするが、初めての経験に美雪は緊張してしまう。
普段の美雪なら、こんな事は絶対にしないのだが、相手が警視庁の警視、明智であり、彼の紳士的な誘いを無下には断れなかったのだ。
明智は容姿端麗なだけで無く、言葉の一つ一つに知性が溢れ、女性に対する態度は極めて紳士的である。彼を嫌いだという女性は、あまり居ないのではないかと思う。
実は美雪も、少し明智に惹かれている。それ程に明智は、女性にとって魅力的なのだろう。車を運転する明智の横顔を、美雪は見つめてしまっていた。
「そういえば、こうしてプライベートで貴女と会うのは初めてでしたね」
「え?・・・あ・・・そ、そうですね」
明智から声を掛けられ、ずっと明智を盗み見ていた事にハッと気付いた美雪は、慌てて返事を返した。
(やだっ・・・私ったら・・・・//////)
自分でも分かる程、顔が熱くなってしまい、思わず顔を伏せた。何だか、すごく恥ずかしくなってしまったのである。すると、そんな美雪に気付き、明智が声を掛けてくる。
「どうしました?」
「え?・・・いえ、なんでもないですっ・・・/////」
美雪は何とか誤魔化そうとしたのだが、明智には美雪の考えなど、お見通しの様である。・・というのも、美雪の反応が、これまで相手をしてきた女性達と同じだったからだ。
明智は、その経歴や身分、そしてルックスの為か、これまで数多の女性達に言い寄られて来ている。その女性達とは、それなりに付き合いもしてきた。
しかし美雪には、まだ正式には付き合ってはいないものの、想いを寄せている幼馴染が居る筈なのだ。その美雪が、これまで付き合ってきた女性達と同じ反応をしている。
つまり、この少女も自分に惹かれているという事に、明智は内心驚かされていた。