「……う、うう…………痛っ…!?」
金田一はようやく重たい意識を取り戻すと、後頭部に鋭い痛みが走った。手で押さえようとして、自分の手が後ろに縄で縛られているのに気付いた。
「な…何だよ…これ!?」
ワケが分からず、金田一は痛む頭で一体何が起こったのか、必死に記憶を辿った。
(…そうだ、いつもの帰り道、近道の路地を歩いていて)
金田一は不意に誰かに、後ろから声をかけられた。振り返ろうとした時、重い衝撃が後頭部を襲った。
そこからの記憶が無かったので、おそらく何者かに頭を殴られて気を失った後、ここに運ばれたのだろう。
(ドコだよ…ここは…?)
金田一は辺りを見回してみる。何処かの倉庫の様だが、小さな窓がはるか上にあるだけなので、周囲の景色は見えない。
電気は通っているらしい。窓がなくとも暗闇という事はない。だが天井の電球は真新しい物とは程遠く、ひどく陰気な光を放っていた。
磯の香りがする事から、どうやら埠頭の倉庫だろう。この辺一帯が使われてない一角なのか、周りから何の音も聞こえない。
『やっとお目覚めですか、名探偵くん?』
肉声だがマイクを通したキンキン声に、金田一は眉をしかめた。
「誰だよ?隠れてないで出てきたらどうなんだ!」
しかし、その要求に何のリアクションも無い事に金田一は苛立ち、相手を挑発し始める。
「はっ!そんな度胸ねえよな?後ろから襲うような卑怯者にさ!!」
そんなハジメの皮肉に、マイクの主は溜息を吐いた。