19.
そんな母に疑問に感じている従業員もいるようだったが、
まさか五十過ぎのおばさんがその身を捧げて金策しようとしているなどとは思いもしないかったようだ。
それよりも、男に紹介された新しい取引先から舞い込む仕事をこなすのに皆精一杯だった。

「それじゃあ、行こうか」
「ええ」

和雄は美咲がシートベルトを着用するのを確認すると、ゆっくりと車を発進させた。

「こっちの病院だと、ちょっと遠くなっちゃうわね……」
「そうだね……」

美咲はぽつりと呟く。
この病院は和雄の父が入院している病院から、さらに車で三十分ほど走らせた距離になる。
もう転院の手続きは済ませており、母が男に抱かれた後に転院することになっていた。