20.
「ねえ……、和雄はどう思ってるの?」
「……どうって、なにが……?」?
「……母さんが……、男の人と子供を作るのを……」
「それは……」

突然の質問に和雄は言葉に詰まってしまう。

「やっぱり、悪い母親よね……」
「そ、そんなことないよっ!」
「でも……」
「そのおかげでうちも助かるし、それに父さんだって……」
「そう……、かしら……」
「そうだって。だから母さんも元気出しなよ」
「そうよね、母さん、頑張んなきゃね」
「そうそう、その意気その意気」

やはり母は父や家族を裏切ることを心苦しく思っていたのだろう。
たとえそれが家族の為であったとしてもだ。
和雄はそんな母を元気付けてあげたかった。
母が男の子供を産んだとしても、母は母だと。
だから母が気に病む必要はないと。
さすがに、母が乱れ、堕ちていく姿が見たいとは、口が裂けても言えなかった。