家に帰る気になれず、暁年は安酒場で苦手な酒をあおっていた。
いくら浴びる様に呑もうとも、さっきまでの光景は頭を離れない。
あんな子供とまで…妻は気がおかしくなったのだろうか…
自分はこれからどうすればいいのか。
卍を訴える?いや…悔しいが、どう見てもあれは和姦だろう…
それに、あんな非合法なショーに出演している事実、
それ以上にあんな未成年と性行為をしている事実は、
世間に知れたら、唯子のみならず秋月家の破滅を意味する。
親族にまで、とんでもない迷惑が及ぶだろう。
唯子と話し合う?貞淑な彼女のことだ、自分を責め苛み、
言い訳もせず、自ら家を出て行くに違いない…
そうなれば暁人はどうなる?思春期の彼には、
その理由を絶対に知られるわけにはいかない。
自分はどうだ。情けない事に、この事実を知った今でも
唯子のいない自分の人生は考えられないのだった。

暁年は思う。
いや、唯子は悪くない。悪いのは自分なのだ。
人一倍寂しがり屋の唯子を、長い間一人にした自分が悪いのだ。
いい歳して稚拙でひとりよがりなセックスしかできず
唯子を充分に満足させてやれなかった自分が悪いのだ。
卍君とは比べようもない、粗末なぺニスの自分が悪いのだ。
そして、3年前の葬儀の日、唯子を侮辱した卍君に
夫として毅然とした態度を取らなかった自分が悪いのだ。
そうだ、唯子は悪くない。すべて自分が悪いのだ。