我を失うほど酔っても、結局足取りは我が家へ向かう。
ドアの前に立つ。他人の家の様なよそよそしさを感じる。
酒の勢いを借りて、思い切ってドアを開けた。
「…あなた…!」ビックリした顔の妻が立っている。
夫の予期せぬ帰宅にかなり驚いたようだが、
すぐにいつもの優しい表情に戻り、そして…
「お帰りなさい…」

そのセリフを聞いて、暁年の中で何かが弾けた。
力づくで唯子を抱きしめ、唇を求め、
薄手のセーターに包まれた豊満な胸を揉みしだく。
「ちょっ…やめて!」
妻は初めて見せる嫌悪感に満ちた表情で、暁年を突き放す。
「ご、ごめんなさい…酔ってる人は苦手なの…」
すぐにいつもの唯子らしく、申し訳なさそうに俯いた。
「あは…すまん、今日は送別会だったもんで、
ちょっと飲み過ぎちまったかな、ははは…」
気まずい空気を打ち消すように、引きつった笑顔を浮かべる
暁年であったが、たった今、セーター越しに乳首に触れた
指先には、肉ではない固い何かの感触が確かに残っていた。