「…なるほど、その通りです」 その声が言った。

「私の素敵なマスクが機能するのを妨げているもの、それは、たったひとつ、
その、ただ、ひとつのルールによるものです。
それが誰であっても、他人の心をコントロールする事など絶対にできません。
しかし私は、この小さな休日のおかげで、例外を発見しました。
太古の時代の黎明期以来、人間の思考を制御し、強制し続けた一つのパワーがあります。
エロス、
愛、
ロマンチックな愛。
これらをちょっと利用します。
愛の力は強力です。
あなたも、ご存知の通り、私はそれを、身を持って体験し続けてきました。
つまり、私が使うのは、悪の力ではありません。
今日はバレンタインデーと呼ぶそうですね。
どこも、かしこも交尾相手を求め、彷徨う人間の、なんと多い事か?私は気が付いたのです。
なぜ、今日だけ、発情するかのように、交尾相手を探すのかと?
つまり、それは、いつも押さえつけている欲望を解放したいという願望があるという事です。
森羅万象の理にかけても、交尾は生命の維持、継承に必要不可欠です。
従って、解放してやる手助けを私はします。感謝されてもいいくらいです。ただ、その料金は頂きます。
サービス業と同じです。さて、そうは言っても、交尾相手も、好むと好まざるがあります。
ここが重要です。つまり、理想の相手を求める、少しでも、優勢な遺伝子を子孫に残したい。
これも森羅万象の理です。しかし自分の頭の中に抱く理想は、人それぞれ、ぴったりと合った相手は、
この世にはいません。いいですか?この世には完璧に理想の相手など、居ないのです。
しかし人間は、なかなか、これに気が付かない。だってそうでしょう。
もし、一対の雄雌が隔離された一生を終えるとして、もし、その雄雌が、相手を、選り好みして
交尾しないなら子孫は残せません。これも森羅万象の理です。つまりは理想の交尾相手など
幻想なのです。この矛盾こそが、ダークゾーンの不死の方程式から私が手に入れたものです。
後は簡単です。今日はバレンタインデーだからとか、今日はプロムだからとか、今日はクリスマスだから
とか、幻想のハードルを下げるトリックを使えば良いのです。