「肉欲の美人オーナー 男の娘カフェの従業員である美少年をつまみ食い」(O.Mさん)

 男の娘カフェの女性経営者、担任の女教師、姉……三人の年上女性から誘惑される男の娘の少年の話。男の娘という点を除けば、王道の誘惑モノと言ってもいい。
男の娘モノは以前から、投稿原稿にぽつりぽつりと混ざり始めていたが、最終選考まで進んだ作品はなかった。
今回、本作が残ったのは、過去の男の娘モノと比して、もっとも小説としての完成度が高かったからである。
 ただ、フランス書院文庫の読者は4、50代の中高年である。はたして男の娘が受け入れてもらえるのか、という不安がどうしてもぬぐえなかった。
すでに世の中に流通している男の娘モノの官能小説に関しても、電子では悪くないのだけれど、紙の本では……という印象を抱いている。
新しいテーマの魅力とニッチさ(市場の小ささ)で悩んだ末、今回は受賞には至らなかった。

「義母への姦射」(A.Yさん)

 義理の母を三日間、調教旅行に連れ出す悪魔少年の話。
「三日間」と言っているが実質一日の話で、物語としては一応の着地を見ているようであるが、本作品は「未完成」のように思われてならなかった。
母子、真理子と健介の関係が、滞在中にどのように変化していくのか、もっと読みたかった。
 台詞が魅力にあふれていたものの、登場人物の設定が足りない印象を覚えた。
本文中、義母が自分のことを自分の名前で呼ぶところや、27歳が熟女なのか、など、疑問に思うところも散見された。
「細部に神は宿る」という言葉があるが、物語の細かな部分で粗が目立ち、魂が込められていない、という評価をくださざるを得なかった。
ただ、荒削りではあったが、才能は随所に感じ取ることができた。