ヘアスタイルを売る商売なのに、なんで帽子を被るんですか。
 「格好良いと思っているけど、いけませんか」

部屋の中では昔のカウボーイだって帽子は脱ぎますし、お客さまに失礼だと思いますが、そう思いませんか。
   「別に…」

彼女たちは爪を伸ばして派手なネイルをしていますが、シャンプーやカットのすすぎを嫌がるお客さまはいませんか。
 「私のお客さまは、私にしてくれと言いますが、彼女たちにもやってもらっていますよ。確かに前に勤めていたサロンは爪を指頭で切れと言われました。彼女たちもそれが嫌でついてきました。だってオシャレでしょう」

オシャレと見るか、プロじゃないと見るかはお客さまの判断ですね。お客さまにどうして来店されなくなったったか、声を聞いたことはありますか。
 「まったくありません」

それを知りたくありませんか。自分たちはこうしたかったので、今の姿ですが、何かお気付きの点がありましたら教えて下さい。
 「不景気のせいじゃないんですか」

それはないですね。ところで、料金表が見当たりませんが、新規のお客さまは不要なのですか。
 「そんなことはありません。前のサロンでも無かったものですから。ただ、フロントのテーブルの上には置いてありますよ。必要なのでしょうかね。確かに新規の人には分からないですね」

入口のウインドーを触ったらザラザラしていましたが、いつウインドーを洗いましたか。床も1年目にしては汚れていますね。
 「月に1回大掃除をしますからその時かな。えっ! 毎日洗うんですか?それより僕と踊りませんか?」