古い白黒の映画などを見ると和服を着た古い考えの体制を洋服を着た主人公が抗いながら奮闘するといった、
反体制反日本文化といった内容の作品を見ることがあるが和風伝奇ホラーというジャンルにもその一面があると思う。
その点でいうと本作は真逆のテーマを有しており実はかなり保守的な主張がなされているのが面白い。
その主張も都会と地方の農作物の味の違いとして端的に言い表されていて見事である。
しかしそれとは裏腹に仕事を求めて外に移住した男性や男日照りで土地に縛られた女性、
祖母の不可解な死など少しずつ明らかになる村の謎が主人公に疑心を募らせて行く。
実はこの巻では事件らしい出来事が一切起こっておらずホラー「風味」で終わっており、
その代わりに描かれるのが女性達との濃密なセックスで従姉妹との孕ませセックスからそれを覗く女中少女の自慰、
男日照りで飢えた娘との濃厚なぶっかけフィニッシュなどただただ淫靡に描かれているのが逆に不穏さを感じさせる。
著者の作品の中でも主人公が男性と言う点や彼の考えの変化にともなうヒロインとの行く末や村の顛末などなど、
今巻でなにも起こらなかった分次巻の展開が大変気になる作品。