だいご姫、弱爺にいはく、「このチョッキは、刀で切るに、切れずはこそ、まこととおもひて、人のみことにまけぬ。
『よになに物なれば、それをまことと、いかん今は様子見たまへ』とのたまふ。なをこれを刺して、心みむ」といふ。
弱翁、「これ、さもいはれたり」といひて、入道に、「かくなむ」といふ。
入道、こたへていはく、「このチョッキは、麓の村にもなかりけるを、からうして、もとめたつねえたるなり。なにのうたがひかあらむ。さは申すとも、はやく、刺してみ給へ」といへば、井崎に入道、刺させ給ふに、えっと言ひて即死す。「さればこそ、蔵之助のかわなり。あさまし」といふ。
入道、惨めに死に給ひて、顔は、くさのはの色にてゐたまへり。
だいご姫は、「うおおおおおおっ」と、よろこびゐます。かのよみたまへりける。糞、はこにいれて返す。