それから2カ月が経った4月

「お兄ちゃん、朝だよ。起きてよ。」妹の甲高い耳障りな声でニケルは起こされた。
「朝ご飯できてるよ。」そう言うと妹はニケルの部屋から出てく。
いつもと違う光景。
いつもなら母親のエリーナがカーテンを静かに開き優しく耳元で囁きかける様にネケルを起こす。
だが、今日は特別な日。
「あっ、そうだった」いつもと違う雰囲気に眠気から一気に冷めたニケルはベッドから飛び起きた。
台所に行くと父親がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
ニケルの朝食はもう整えられてテーブルの上に置いてあった。
「ねえ?母さんは?」ニケルが父親に尋ねる。
「何だ?母さんの話、聞いてなかったのか?今日は早いって言ってたろ?」
そう言われてニケルは昨夜の事を思い出していた。
「あっ!」思わず声が漏れた。
「もう役場へ行ったさ。」言わずもがな、父親はそれ以上話さなかった。
「わかったらさっさと飯を食え。学校に遅れるぞ。」
父親はニケルを一瞥して再び新聞に目を落した。
冷たく感じる父親の口調だが、ニケルは大して気にはしていない。
元々口数の少ない父親だったが、かと言ってニケルに冷たく当たってる訳でも無い。
寧ろ、やるべきことはやるし、ニケルに対してもこの世界で生きて行く術を身をもって教えてくれる。
少しでもニケルが自立していける様にと。
それが例え義父であったとしても。
ニケルは全てを察して一人黙って朝食を取った。