街の儀式が終わった3日後に役所から連絡があった。
ニケルの出立は翌日になるから準備をしておきなさいという事だった。
翌日、ニケルは母親と一緒に待ち合わせの場所へ向かった。
既にマリーはニケルを待っていた。
息子のアレクもその場にいた。
マリーとエリーナは軽く挨拶を交わし頭を下げた。
「ニケルの事、宜しくお願いします。」エリーナが言うと
「はい。しっかりと勤めを果たさせて頂きます。それに、それはお互いさまだし。」ニコッと微笑むマリー。
「アレクはやんちゃだし、躾けもなってないから心配だわ。」反対にマリーはアレクに不安そうだ。
「アレク君は大丈夫だわ。ニケルと比べても男らしいし、結構頼りにしてるんですよ。」そう答えるエリーナ。
傍らでアレクがニケルに話しかけている。
「頑張れよ!!」拳を握って軽くニケルの胸の辺りを叩いた。
その顔は笑顔に満ち溢れていて、これからの自分の生活に思いを馳せているようだ。
「お前、俺の事より自分の事考えてんじゃねえの?」ニケルはそう言うと
「そんな事ないさ。でも、でも、エリーナさんだぜ。俺、一年後に死んでも良い。」アレクは頭を掻き毟りながら喜びを表現する。