これは世界中を巻き込んだ世界大戦後の、ある街の少年と母親達の物語。

先の大戦によって使用された化学兵器。
それは人間の生殖機能を遺伝的に破壊すると言う恐ろしい副作用を持っていた。
その影響で人類の8割が自然減少した。
しかし、その中で生き延びた人々には生殖機能を保持する者もいた。
人類存続の為に優勢遺伝をもった人間を選別すべく新たな社会システムを構築した共同体があった。
それが少年ニケルの属する街とその周辺地域だった。
その社会システムとは16歳になる少年少女を胤主宿主たりえる者であるかを振り分ける事であった。
16歳になる少年少女は、同い年の子供を持つ父親母親と1年を通じて生活を共にする。
少年は1年を通じて同級生の母親から性の手解きを受ける。
少女はその逆である。
そして少年は同級生の母親を妊娠させる事が街から課せられた使命なのである。
他の世界から見れば残酷なシステムに思えるが、ニケルのいる共同体では習慣化された当たり前のシステムなのである。
成人の義と呼ばれるこの儀式は少年が子孫を残し、晴れて大人の仲間入りをする為に避けて通れないものとなっていた。