16歳になる息子を持つ母親は宿主候補となる。
今年はニケルの母エリーナも候補に挙がっている。
望まれれは相手は誰になるか分からないが義務は果たさなければならない。
その覚悟はこの街に生まれた以上、幼い頃からの習慣として身についている。
事実、エリーナも16歳の時に成人の義を通してニケルを妊娠した。
相手は街が選んだ男だった。
ニケルを出産した後も、この男とは交流があるが肉体関係は無い。
ニケルの父親としての交流があるだけである。
成人の義は一度きり一年限りの儀式と決められている。
もし、その後も関係を続けたければ両者の合意と街の許可が必要だった。
成人の義の相手はエリーナとの継続を望んだが彼女はそれを拒否した。
意中の男性、今の夫が居たからである。
今の夫も成人の義を通して胤主と認められエリーナと結婚した。
歪に思えるこのシステムもこの街に暮らすものにとっては、ごく普通の事だった。