「そんな事、言える訳ないだろ。お前に変に思われるのも嫌だし友達で無くなるのも怖いし。」
「・・・」
「でもな、一生に一度の成人の義だろ。後悔はしたくないんだ。」
ニケルはアレクの真剣な眼差しをみて気持ちの強さを感じ取った。
気持ちを強固にしているのは異性を求めるオスの本能が根底にあるのは確かだった。
友情と引き換えにしてでもという強い気持ちがこもっているのはアレクの眼差しを見れば一目瞭然だ。
16歳の少年にとっては、自分の母親が宿主に選ばれる可能性がある事は頭では理解している。
アレクの告白は、母親が共にするのは赤の他人か親友かの違いだけなのではあるが。
(アレクが母親を望んでいる?そういう事か)ニケルは心の中で呟き、身近に迫った現実を思い知らされた。
暫く俯き考え込んでいたニケルだったが、やがてアレクに顔を向け話出した。
「赤の他人より、お前の方が良いかもな。」
ニケルはアレクにそう告げた。
「ホントか?許してくれるか?」
「まあ、仕方がない。どうせ誰かに決めなきゃなんだし、俺が嫌だって言ってもお前も譲らないだろうしな。」
「ホントか。やったぜ!!」アレクは周りに聞こえるくらい大声で雄叫びを上げた。
「お前、喜び過ぎだって。」ニケルが咄嗟にアレクの口に手を当て抑え込んだ。
「ああ、悪い。調子に乗っちまった。・・でもな・・・」アレクが一瞬顔をしかめ不安そうに呟く。