その日、ニケルが家に帰ると母親が忙しなく夕食の準備をしていた。
「ねえ、母さん?」ニケルは早速話を切りだした。
「ん?何?」エリーナは食事の準備をしながらニケルの言葉に耳を傾ける。
「成人の義の話なんだけど・・・」そう切り出すとエリーナは作業の手を止め振り返りニケルを見た。
「成人の義?」エリーナが関心を持ってニケルに聞き返す。
習慣とは言え、エリーナにとっても成人の義は一大事である。
赤の他人だった少年と一年を過ごさなければならない。
ただ単に生活を共にするだけじゃ無い事も十分理解している。
自分や自分の息子が誰とペアリングされるのか無関心ではいられないのは当然である。
「俺、決めたよ。誰にするか。」そう言うとニケルはエリーナを見つめ返した。
「そう、決めたのね。」エリーナは恥ずかし気に自分を見つめる息子に優しく微笑み返す。
「俺、マリーさんに決めたよ。」ニケルの言葉にエリーナは驚きはしなかった。
寧ろそれが自然であるかの様にエリーナは落ち着いている。
「っそ。マリーさんに決めたのね。うん、ニケルにはお似合いだと思うわ。」エリーナは優しく笑みを浮かべた。