「でね。母さん?」ニケルが話を続ける。
「言いにくいんだけど、母さんはアレクとペアリングするのはいや?」
「えっ?」急な話の展開にエリーナは言葉がでない。
「アレクが母さんを指名するって言ってるんだ。」
「アレク君が?うそっ?」想像もつかなかった事でエリーナは絶句した。
成人の義を迎える少年の母親は息子と同い年の少年と共に暮らす。
アレクがその対象になる可能性は十分理解していた。
しかし、幼い頃から知っている息子の友人。
息子のマリーに対する視線には気付いていても、アレクの自分に対する視線に関しては全く感づいていなかった。
だから、息子の話は想像もしない話だった。
息子のニケルでさえ、アレクの本心を知らなかったのだから無理もない話である。
「アレクじゃダメなのかな?」その問いかけに頭が混乱しているエリーナは即答できないでいた。
「ダメって訳じゃ無いけど・・・」そう答えるのが精一杯だった。
「兎に角、俺はマリーさんを指名するから。母さんもアレクの事を真剣に考えてあげてよ。」
ニケルはそう言って布石を打ったのだった。