燃えるような双眸で、和美をねめあげていた。
 ゆっくりと、和美の周囲を回りながら、犬は、鬼千代の前にやってきた。
 犬の表情が変わっていた。 
 尖っていたものがその眼から消え、甘い光がそこに宿っていた。
 犬が、鬼千代の差し出した手を舐めた。
 尻を向けた。
 鬼千代が、その犬の背後に膝をついた。
 ぞくりと、和美の背を魔性の手が疾り抜けた。
 鬼千代が、何をしようとしているか、理解したからであった。