頑張ったな、きつみは
おや?そんなところで何をやっているんだい?
稲荷神社にキツネは付き物だが、そこはきつみはと何か関係があるのかな?
そういやお前、神社が好きだもんな、きっと俺にはわからない何かに引かれるんだな
お賽銭をあげるから御参りしておいで 俺の分も頼むよ つ◎◎

春である
野球もいよいよシーズンをむかえ、これから本番となる季節である
そして三橋たち西浦高校の面々はある大きな大会に出場していた
「これに勝ち進んで成績を残せば来年の選抜に選ばれるかな?」
「馬鹿かよ、この大会だけじゃ無理だろ もっともっと勝って勝ちまくって成績を残せば案外・・・だぜ」
「ようし、俺、頑張るよ!」
などと西浦メンバーはやる気満々であったが、そんな彼らに不運が襲った
恐怖の病、インフルエンザである
三橋以外のメンバーはおろか、監督やマネージャーまでもがインフルにかかってしまった
「ど、どうしよう・・・試合が・・・」
ただ一人、三橋廉だけはインフルにも罹らずピンピンしていたが一人では野球は出来ない
今から人を集めても簡単には勝てそうにないし、それに連盟に登録していない人間を出場させる事はできない
もうこれまでか・・・と思い始めた三橋に救いの手が差し伸べられた
「やあ、三橋 君が大変な事になっていると聞いて急いで駆けつけたよ」
「あ、あなたは・・・実は・・・」
「ほうほう、なるほど 要は連盟に登録されている人間がメンバーで出場できればいいんだね
心配要らないよ、この私、石油王に全て任せなさい」
そして試合当日、球場にいた者たちはある光景にただ、驚くしかなかった
「西浦高校、出場選手です 一番・三橋 二番・三橋・・・三番・三橋・・・四番・三橋・・・」
出場選手は全て三橋廉な試合・・・
背番号が違えど、顔や体型など、全てまったく同じ人間がそこには九人もいた
「どうかね、これらは全て君のクローンで三橋廉そのものなのだよ 私が趣味で作らせたんものだ」
どこを見ても三橋廉だらけの試合は今、始まろうとしていた
本物の三橋は口をあんぐりと開けたまま、ただ立ち尽くすしかなったという 

という夢を見た 三橋一人くれ、できれば本物を