よく頑張ったな、きつみは
よし、今夜はお祝いだ!色んなおにぎりをたくさん作ってお祝いだ!!

繁華街の表通りから横に少し入った場所にあるその店
中に入ると少し時代を感じさせるが落ち着いた装飾のこの店が俺のお気に入りだ
ドアを開けるとカラン、と音がしてマスターが「いらっしゃいませ」と挨拶してくれる
店内はそう広くは無いが手狭でもない、このちょうど良い感がまた俺好みなんだ
「こんばんは俺さん」
「今日は何になさいますか?」
「そうだな・・・外は寒かったからあったまるのをお任せで」
店には一応メニューはあるがマスターに頼めばメニューに無いものも注文することができる
暫くして目の前に出されたそれはチョコレート色のココアだった
「ミルク無しココアです 牛乳ではなく豆乳を使ってます」
ココアの甘い香りが鼻をくすぐり、カップを持つとゆっくりと口をつけた
熱くそして甘く濃厚だ・・・
「うん、うまい!流石マスター、いい腕をしているね」
褒めると少しだけ頬を赤くして照れるのがかわいいマスターを目当てに色んな人間が店を訪れる
「マスター、プーアル茶を濃い目で」「コーヒーのお湯抜きをください」
「ボボボーボ茶ある?あれ、飲むと鼻毛が伸びるけど味が良いからやめられないんだよね」
客の要望をマスターは次から次へと捌いていく姿はどこか優雅ささえ感じられて見ていて癒される
「あ、マスター、何か新しいの無い?メニューに乗る前に試飲したいんだ」
時には無理を言ってくる客もいるがそれでもマスターはにこやかに接客する
「そうですね・・・ブラッディマリーのトマトジュース抜きでよろしいですか?」
そして客の前に出されたのはレモンを飾り切りにしたグラスにウォッカだけが入った代物だった
「マスター・・・これじゃだたのウォッカ・・・でも美味いからいいやw」
客たちが笑い合いながら楽しむ店、喫茶アンドバー「M」
実ここには隠しメニューがあると聞く
「マスター、例のアレ、頼めるかな?」
「はい?どんなものでしょう?」
通称「みはしっこ」と呼ばれるそれは超常連にしか注文できないのだ
かなり通っている俺でもまだ出されたことの無い幻の一杯はマスターに認められないと出すことは無いという
いつの日か、その幻の「みはしっこ」を出される日を夢見て、俺はまた今日も店に通うのだ どっとはらい