HELLSINGヘルシングのキャラでハァハァ Part 8
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0001名無しさん@ピンキー2007/12/28(金) 01:31:12ID:yoShz27G
YOUNG KING OURs(ヤングキングアワーズ)にて連載中の
平野耕太氏の作による漫画ヘルシングのキャラで
エロパロと萌えによる好き勝手絶頂にたぎってこさせ
またぐらがいきり立つスレです

征くぞ、諸君

†††††††
前スレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172338018/

過去スレのアドレス
Part1 http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1003117889/
Part2 http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1052817777/
Part3 http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1060434378/
Part4 http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1063290075/
Part5 http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1073482119/
Part6 http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1100354773/

「HELLSINGヘルシングのキャラでハァハァ」スレ(暫定)過去ログ倉庫
ttp://www9.atwiki.jp/eroparo/pages/498.html
上記リンクより飛んでください。
0456名無しさん@ピンキー2010/08/24(火) 10:17:47ID:NnRZShBG
信じてたのに!
絶対若くなったウォルターさんは改心して帰ってきてお嬢とイチャイチャするって信じてたのにー!!
0460名無しさん@ピンキー2010/08/26(木) 01:31:49ID:J+plAaC9
ロリカードが一匹だけ残ったネコ准尉をネチネチと永遠にいびり倒すシチュ希望
0462名無しさん@ピンキー2010/09/01(水) 12:18:22ID:H/3DT97z
ロリカードとか中身はアラブのじじいにアナル開発された髭面のオヤジだろ、ロリテグラのエロがいい
0463駄犬2010/09/01(水) 16:35:56ID:FCDwa01w

スレをくれないと おまえをとって食う
0465名無しさん@ピンキー2010/09/01(水) 22:57:38ID:n3S3WY6q
ドリフもここでok? 過疎ってるようだしokなら何か書いてくるよ
0466名無しさん@ピンキー2010/09/02(木) 02:13:44ID:vcRnei1K
OVAブルーレイBOXの譲治×若本コメンタリーが楽しみすぎる
0467名無しさん@ピンキー2010/09/03(金) 23:52:08ID:pliTanot
>465
スレ停滞してるし他に受け皿も無さそうだし、ここでいいんじゃない?
私はまだドリフ読んでないから、感想は書けないかもしれんけど
0469名無しさん@ピンキー2010/09/10(金) 00:39:17ID:gjYBtj2P
ドリフでエロパロだと
ジャンヌと後ろの大男(ジル・ド・レイ)で純愛路線か
アナスタシアとラスプーチンで母娘二代調教かな。
ラスプーチンの悪評は捏造らしいけど、巨根で皇女のアナル調教とかいいと思うよ。
0470名無しさん@ピンキー2010/09/11(土) 04:09:30ID:1G7d19Yi
>>470
ジル・ド・レイって青髭のモデルだよね?
純愛っていうより行き過ぎた盲愛ってイメージの方が強いわ
それはそれでいいけどw
あと今月のアワーズ見て思ったんだがアナスタシアって強姦されたの?
0472名無しさん@ピンキー2010/09/12(日) 02:24:40ID:N9HOre6h
諸説あるらしい。勿論やられました説、そんな時間はなかった説等々
0473名無しさん@ピンキー2010/09/12(日) 14:14:31ID:OB0VVIL8
>>472
典廐ー
ドリフだとやっぱ強姦設定かな
敵側のバックボーンもその内書いてほしい
0474名無しさん@ピンキー2010/09/12(日) 22:45:25ID:L72ZXDCg
「死後の恋」みたいに、強姦後に宝石を腹部に撃ちこまれて死んだら廃棄物になるだろうな。
夢野久作の小説の皇女様には浪漫が詰まってる。
0475名無しさん@ピンキー2010/09/12(日) 22:58:43ID:N9HOre6h
アナルスタシアは幼少期ひょうきんで活発な少女だったそうだ、親兄弟皆殺しでレイプされたのが原因であんな感じになってしまったとしたら可哀想だ。

ジル・ド・レイって魔女裁判ではめられて処刑されたって説があるんだな、これなら廃棄物側にいて納得。作家のマルキ・ド・サドは彼を敬愛していたそうなので拷問官として登場しないかな
0478名無しさん@ピンキー2010/11/17(水) 14:28:21ID:3j7RsL65
ベッドの中で、羽根枕を背に寄り掛かっているのが好きだ。ふうわりとした感触がいつまでも体を包み込んでくれる。
 絹のパジャマのやわらかな生地もいい。皮膚には先刻入った風呂の入浴剤の香りがまだ残っている。微かなばらの香りだ。
インテグラが好むのを知ってか知らずか、ウォルターは時折この香りの入浴剤を湯に入れておいてくれる。
それが彼女の疲労が蓄積している時期と一致しているところを見れば、やはり執事はその事をちゃんと知っているのだろう。
 だが、鼻歌ひとつ出ない。
 それは手にしている報告書のためだった。このたった数枚の紙切れが、彼女を苛立たせている。
 英国内で吸血鬼による被害が広がっていた。ひとつひとつは小さな被害だが、事件数は右肩上がりに増加を続けていた。
このままでは手に負えなくなるということが目に見えている。グールになってしまった者は頭部を破壊しさえすればよい。
いい訓練をされた者なら人間でも対応可能だ。だが、吸血鬼になってしまったものはそうはいかない。
なにせ、こちらの抱えるゴミ処理係はアーカードと、半人前のセラスだけだ。対応しきれる数にも限度というものがあった。
 ふう、とインテグラはため息を吐く。
 報告書をベッドサイドの小さなテーブルに放り投げて眼鏡を外すと、ぐいと目を擦る。
 今日も吸血鬼をひとり殺した。その男は教師で、全寮制のスクールの中での犯行だった。
同僚の教師や、保護者や、まだ年若い少年たちがその犠牲となっていた。
その吸血鬼や、グールとなった少年たちを殺したことに何の感慨もないが、それでも何かが気に障る。
疲れているのだ。 
明日も仕事が待っていた。もう、寝なくては身体が持たない。そう思い、彼女は大きなベッドに潜り込む。
 目を閉じる。
 眠れない。
 身体は疲れているのに、心が昂っている。
 しばらく上を向いていたが、やがてごろりと身体の向きを変えてみた。
まっすぐ下へ伸ばしていた腕を、顔の横へ持って来る。こうすると身体が安定するのだ。
 そのとき偶然、手が彼女の乳房に触れた。
あ、と小さな声が出る。
絹の繊維越しに微かに擦れただけだった。それなのに、それは彼女に性的な快感を与えた。
恐る恐る、もう一度触れてみた。今度は人差し指の爪で、軽く引っ掻くようにしてみる。
「んっ」
身体がぐいと弓なりに反った。
自分の身体に面食らう。何が起こっているのか判らないほどだ。
いつの間か、手が下腹部へ降りていた。足の間のやわらかな肉の中に指が差し込まれている。
自身の体液で、そこはすでに濡れていた。
じわりと溢れるそれは抜き差しするたびにくちゅくちゅといやらしい音を立て、
その音を聞く度に彼女はますます指の動きを速めた。
0479名無しさん@ピンキー2010/11/17(水) 14:29:45ID:3j7RsL65

 パジャマは邪魔だった。
片方の手で下腹部を弄びながら、もう片方の手でボタンを外し、袖を抜く。
片方の手で乳首を捏ねながら、もう片方の手で足からズボンを引き抜いた。
シーツをはぎ取り、片足を折って大きく足を広げてそこを弄る。
指が止まらなかった。感じるたびに声が出た。
馬鹿な事をしている。
そう思っても、ただ快感を得るために身体は指を欲しがっている。
右手でそこを左右に広げ、左手の指を体液に光らせ根元まで突っ込んで蠢かせていた。
「んあっ」
突然電流が走った。
背筋が反り返り、ひくん、と身体が揺れた。
 閉じていた目をうすく開けると、自分の乳房が目に入った。
褐色の肌に、白い手袋が重なっている。乳房を揉みしだき、指先で先端を押し潰した。
途端、きゅうと彼女の体内がきつく締めつける。
不意に我に返り、今まで火照っていた顔が蒼褪めた。焦って起き上がり、足元に丸まっていたシーツで身体を隠す。
「貴様、何をするッ」
彼女の吸血鬼が、ベッドの端に腰かけて彼女を見ていた。手は彼女の方へ長く伸ばされている。
「なに、手伝ってやろうと思ってな」
その声はひどく落ち着いていた。
慌てたところなどひとつもなく、寧ろ、部屋の主である彼女の方が慌てふためいていて滑稽なくらいだった。
「いつから見ていたのだ、アーカード」
赤く染めた頬を俯け、彼女は改めて身体を隠したシーツを引き上げる。
「初めからだ、インテグラ」
アーカードはベッドについていた手をゆっくりと上げ、主の身体を隠しているシーツへと伸ばす。
掴んで引くと、それはあっけなく剥がれて落ちた。男はベッドの上へにじり寄る。
「疲れているのだろう。眠らせてやろうというのだ、何も考えずに」
「やめろ」
ベッドの上を後ずさる。
「身体が滾って仕方がないのだろう。無理もない。グールとは言えいたいけな少年たちをたくさん殺したのだから」
「来るな」
吸血鬼との距離はもうほとんどない。
 彼女の項に腕が回される。そのまま背後へゆっくりと倒された。顔にやわらかな息がかかる。
「おいで、インテグラ」
唇が塞がれた。足掻いても仕方のないことは自分が一番理解している。自分がこの男の飼い主なのだから。
 長い舌で口腔を蹂躙される。歯列をなぞり、唇を舐め、ようやく離れたかと思えばまたきつく吸われた。
息が苦しくなって男の肩を押すと、男の唇は首筋へと移った。
背中を抱いていた手のひらは手袋のまま胸を揉み、足の間へ伸びている。
 傍観者のようにいられたのはほんの一瞬だった。
男の触れる全ての面から快感が溢れ出ている。
ひくひくと身体が揺れ、足の間からはぬめった体液が流れてシーツを汚していた。止め処なく声が出続ける。
「あああッ」
差し入れられた指が的確に動いた。親指が陰核を押し潰す。
指が増え、きつく締めつけられたそこは雌の匂いを辺りへ撒き散らして男を誘い続けている。
 自分の意志とは関係なく、腰が前後に動いていた。
その事に気付いた時、インテグラは観念した。
0480名無しさん@ピンキー2010/11/17(水) 14:32:14ID:3j7RsL65
「…アーカード」
絶え絶えの息の中で、男の名を呼んだ。
「どうした、我が主」
吸血鬼はゆっくりと彼女の顔を見る。
「私を犯せ。深く貫いてくれ」
化け物退治の機関長が、化け物にそう懇願していた。
男はにやりと笑う。
「待っていたのだろう」
男はそう言って、彼女の中から指を引き抜いた。溢れ出た蜜が長く糸を引いて光っている。
それを長い舌で舐めながら、自分の下で足を開き待ちわびている主の口元へ自らの性器を近づけた。
「舐めてみるか?うん、インテグラ?」
一瞬顔が屈辱で歪む。しかし、やがて唇を開き、それを受け入れた。
ぴちゃぴちゃという卑猥な音と、呻きに近い彼女の鼻声が長く聞こえた。
インテグラの口には大きすぎるのか、目尻に涙が溢れている。初めてのことだった。やり方など知るはずもない。
だが、吸血鬼はそれでも満足げに薄く笑って見つめている。
 ややあって、アーカードは彼女の頬に手を添えて口を開けさせる。
唾液にまみれ怒張した性器を出し、彼女の膝裏に腕を入れて持ち上げ、ずるりと身体を忍び込ませた。
「あ、あ、あ、あ、あ…」
痛みにインテグラの身体が逃げようともがいた。だが、しっかりと抱かれた腕からは逃げられない。
「長い間待っていたのだろう、お前は。こうなる時の事を」
容赦なく男は動き出す。その度に彼女の口からは苦痛の声が漏れた。
歯をしっかりと噛み締め、その痛みに耐えようと息を殺している。
まるで地獄のようだと彼女は思う。身体が熱い。
男とつながっている部分が脈を打つたびひどく痛んだ。
それなのに、彼女は違う部分でとろとろと融け出す。
ゆっくりとチーズのような香りを放ち、男の動きに合わせて腰を振り、
なりふり構わず快感を得ようと自ら乳首を指で転がしては陰核をまさぐっている。
はしたない声が寝室中に降り積もる。
時折混じる叫び声は恐らく廊下にも漏れているのだろう。それでも声を抑えることは出来なかった。
男の動きが早まった。ゴールが近いのも彼女自身が分かっている。
陰核を弄る指を舐め、唾液で濡らした。それからまた弄り回す。
「ああッ」
突然細い身体が弓なりに反り返り、ひくん、と揺れた。
二度、三度揺れたかと思うと、彼女の身体からがっくりと力が抜けた。
アーカードは小さく笑うと彼女の腰を掴んで未だ収縮と弛緩を繰り返しているその中で性器を動かす。
それから身体彼女の奥深くに体液を放った。
ゆっくりと意識のない彼女の惚けた顔を見る。
「いい子だインテグラ」
大きな手が彼女の髪を撫でると、やがて意識が戻って来たらしい。
細く開けた青い瞳で、彼女は男の顔を見た。
笑っている。
「キスをしろッ」
堪らず、彼女は男に呻く。
男は笑ったまま、唇を合わせてきた。ねっとりした闇のようなキスに、彼女は酔う。
そしてそのまま、再度彼女はすうと眠りに入って行った。
「おやすみ、我が主。いい夢を」
アーカードはそう言うとベッドを下りて窓のそばまで歩いた。
カーテンを開けると、夜空にはいい月が見えている。
待っていたのは果たして彼女であったのか、自分であったのか。
どちらでもいいと彼は思った。


初めてです。
笑ってやって下さい。ありがちですいません。
ブルーレイBOX買ったら久々にきちゃいました。
0483名無しさん@ピンキー2010/11/22(月) 09:21:56ID:abAeCAgI
彼女が突然倒れたのはその日の真夜中だった。
吸血鬼退治のため地方の小さな村落へ遠征し、屋敷に帰ってきた直後のことだ。
帰りの車の中でインテグラの隣に陣取ったセラスは、咳き込む彼女の横顔をちらちら覗き込みながら体調を尋ねたが、その時は何ともないという返事ばかりでにべもない。
ところが珍しく車から降りた途端ふらついたと思ったらセラスの腕の中にぐったり倒れている。
顔が紅潮し身体が熱いとその時初めて気付いたセラスが、急いで使用人に医者の手配を頼み彼女を寝室まで運んだのだった。
 医者の見立ては単なる風邪ということだったが、普段の激務から来る疲労もあり静養が必要なためしばらく安静にするようにと指示が出た。
かなりの高熱だったが、うるさい、何でもない、私は大丈夫だと言って抵抗する主をセラスは押さえつけ、どうにか医者に解熱剤の注射を打ってもらい、現在の主はようやく小さな寝息を立てている。
汗で、額に髪の毛が張り付いている。
具象化した左手で髪をすくい上げてやりながら、セラスは当主の寝顔を見ていた。
もうすぐ薬の時間だった。起こしてまで飲ませるか、それとも目が醒めてからでいいのか考えあぐねている。
前任の執事だったらどうするのかなとちょっと思った。
恐らく彼なら、自然に目が醒めるまで静かに休ませているのだろう。
なにせ彼女の主は仕事続きでまともな休日など皆無に等しい。
「鬼の撹乱ですねえ」
そう呟くと、今の今まで寝ていたはずの主の目が薄く開いた。そして静かに言う。
「誰が鬼だ」
手のひらを胸の前でぶんぶん振って慌てるがもう遅い。
だから、誤魔化す。
ベッドサイドの小さいテーブルに置いていた白い薬袋と汗をかいたガラスの水差しとグラスの載ったトレイをぶんと差し出す。
「お、起きていたんですね。お、お薬の時間ですから!」
「嫌だ」
「は?」
「目が回る。起きんぞ」
「え?」
確かにまだ顔が紅い。
熱のせいで目眩がするのだろうか。
セラスは右手を彼女の額にそっと当ててみる。
「熱が下がりませんねえ。ちゃんとお薬を飲まなくちゃだめですよ」
「お前の手は冷たくて気持ちいいな。しばらく載せていろ」
「はあ」
セラスは言われた通り額に手を当てたまま動かない。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかなかった。
「お嬢様、お薬が…」
「うるさい」
「ストローかなにかあったら持ってきますから。そしたら寝たままでもお薬飲めます」
「うるさい」
セラスはまるでいたずらを注意された犬のようにしょぼんと肩を落とす。
薄目を開けてそれを見たインテグラは小さく咳き込んだ。
0484名無しさん@ピンキー2010/11/22(月) 09:28:00ID:abAeCAgI
唇の端が歪んだ様に笑っている。
「ではお前が飲ませろ」
「え?」
「お前が口で飲ませるのだ」
「あ、あのう」
「ほら、早くしろ」
命令だと言わんばかりの主の言葉に、セラスはあたふたしながらも従うしかない。
白い袋から抗生剤のカプセルと炎症止めの錠剤を出して口に含むと、そっとインテグラに口づけた。
「水」
ぶっきらぼうに言う主の口に、今度は水を含んだ唇を近付ける。
口腔に流し込むと、インテグラの喉が大きく動いた。
「もう一度だ、セラス」
そう言われて、下僕はグラスに注いだ水をまた口に含み、主へと運ぶ。
「もう一度」
「もう一度」
繰り返すうち、セラスはなんだかおかしな気分になってくる。
薬はすでに飲み込んでいるはずだ。本当に喉が渇いているのなら、自分でグラスから飲んだ方がずっと早い。
「どうした、早くしろ」
唇の端から、溢れた水が筋を作って流れた跡がある。
唇がぬれて光っているのが見えた。
そこに、セラスは自分の唇を押し付ける。
口にはもう何も入ってはいない。
「ん…」
主の口から息が漏れる。
舌をそっと忍ばせると、主の歯列が薄く開いて迎え入れた。
そして舌が絡みついてくる。
唾液が混じり合い、ねっとりとした蛇のような自分自身と主の仕草に、セラスはひどく昂った。
一度唇を放すと、辛そうに主が大きく肩で息をしているのがわかった。
その姿に、セラスの瞳がぼんやりと鈍い赤みを帯びて光り、意識が飛び掛かる。
今度は、小鳥がついばむように軽く何度も口付ける。
もう一度、舌を絡ませて長い長いキスをした。
ちゅく、と唾液が時々音を立てる。
主の首筋に流れた唾液を追って舌を這わせ、それからまた唇を吸った。
唇が放れると、唾液が細く糸を引いて光っていた。
それがぷつんと途切れて初めて、セラスは我に返る。
0485名無しさん@ピンキー2010/11/22(月) 09:29:21ID:abAeCAgI
見ると主の着衣は乱れ、胸がはだけられている。
自分の手のひらが主の胸を揉みしだいていたことにようやく気付いたセラスは、慌ててその手を引っ込めた。
少し乱暴に主のシャツの前を閉じ、ボタンを留めると顔をぶんぶん左右に振る。
「すすすすいません、気付いたらこんなことに。あわわわわ」
「欲情したのか」
火照った顔で主が問う。
セラスはしばらく逡巡したのち、こくりと頷いた。
インテグラはふうとため息をつく。
「馬鹿か」
「そ、そんなあ。だって、飲ませろって言うからですよう」
セラスは涙目になる。
「うるさい。お前などうつされてしまえ」
「吸血鬼ですから病気になんてなりませんよう」
「うるさい馬鹿。少し休ませんか」
ごろりと寝返りをうってこちらに背を向けた主に、セラスはさらに涙目となった。
その場から離れることも出来ずただおろおろするばかりで、結局主の横臥するベッドの脇に座り込み、主の後頭部を見ているほかない。
マットレスにかかるシーツに両腕の肘から先を上げ、顔を横に曲げて頬をその上に載せると、セラスはしばらくそのままで姿勢を保った。
時折動く主の長い髪を手持無沙汰に撫でながら、主の放つ声を待つ。
「朝までそこにそうしていろ」
ぼそり、小さく聞こえたその声に、彼女は静かに髪を撫で続け、最後まで返事をしなかった。



数日後、主よりも高熱をあげて寝込んだ部下にこの半人前がと罵る主の声が屋敷中に響き渡る事となる。


らぶらぶちゅっちゅなインテグラとセレスもこのスレで可能だったでしょうか…
お目汚しすいましぇん。
0489名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:17:59ID:i20shExr
この家の当主はまだ継いで一年と経ってはいないが、吸血鬼退治を主とする機関の長でもある。
自分とは異なる普通の少女たちへの憧憬の念も未だないわけではなく、父の残した『遺産』を引き継いだ自分に後悔をすることも多かった。
だが、だからと言って彼女が今の地位を疎かにしているわけでもない。
屋敷に仕える老執事や『遺産』である吸血鬼に頼りつつどうにか務めを果たしてきた。
だからこそ、彼女は女王然としている。
一瞬の迷いが全てを破壊することも知っているからだ。
自分が常に正しいと思わなければやっていけないのである。
しかしその日のインテグラは朝から特に機嫌が悪かった。
朝食のゆでたまごがいつもよりちょっと硬めだったとか、胸のリボンによくアイロンがかかっていなかったとか、
万年筆のペン先が潰れかかっていたとか、そんな些細なことでいちいち周囲へ当たり散らしている。
コックは困惑し、数少ないメイドは泣き、執事は投げつけられた万年筆を拾いに執務室の隅まで行って腰をかがめなくてはならなかった。
「お嬢様、いくらこのヘルシング家の御当主といえども一時の感情に身を任せてはなりません」
執事がそうたしなめても、当主である少女は憮然としている。
重厚なマホガニーの机に両肘をつき、小さな顎を載せて唇を尖らせているだけだ。
「後でおいしいお菓子と紅茶をお持ちします。ですから今はこの書類の束にサインをしておしまいになることです」
執事の差し出した万年筆は、たった今ペン先が交換されたばかりだ。
執事の真っ白な手袋に黒いインクのしみが付着しているのを見て、インテグラは執事の顔を見上げる。
「ごめんなさい、ウォルター」
ややあって唇を尖らせたまま言った彼女の言葉に、執事はにっこりと笑う。
それからインテグラの耳元でそっと囁いた。
「今晩は月に一度の満月となるでしょう。ベッドでお待ち下さい」
インテグラはサインをしようとしていた手をぴたりと止め、執事の顔をちらりと覗く。
だがその顔はただ笑っているようにしか見えない。
少女は書類へサインすることを再開し、執事は紅茶を淹れるべく部屋を出て行った。
0490名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:19:36ID:i20shExr
その夜。
少女は執事を待っている。
風呂に入って身体を清めた後、長い髪を少し横で三つ編みにして、きれいにまとめていた。
薄いブルーのネグリジェの下は小さな下着を身につけているだけだ。
執事が来るのは、いつもこのくらいの時間だ。
当主の部屋がある屋敷の奥には誰も来ないよう人払いをし、それから黒い革張りの小さなスーツケースを手に持ってやって来る。
ベッドに腰掛け、その時が来るのを彼女はじっと待っている。
不意の小さなノックの音にインテグラははっとして顔を上げ、少し身を固くしながら返事をする。
ドアが開き、執事が入ってきた。いつものようにスーツケースを持っている。
「失礼いたしました。お待ちになりましたか?残った仕事に少々手惑いまして」
「いいの」
「いつも言う事ですから、もう聞き飽きたとは思いますが」
と前置きし、執事はベッドの横にある小さなテーブルにスーツケースを置くと、少女の方へ向き直る。
「これはインテグラ様が立派な女性になるために必要な事です。
 しかし、御友人にも将来御結婚なさる相手にも決して言ってはなりません。
 なに、恥ずかしい事ではないのですよ。きっと御友人も同じことをしています。
 しかし、人に話す事ではないのです。インテグラ様とこの執事めの秘密でございますよ」
こくり、と少女は頷く。そして自らベッドに横になった。
白い手袋をしたまま、執事は小さな少女の胸のボタンを丁寧にひとつずつ外していく。
一番下まで外し終えると、うすいネグリジェはさらりと少女の肌から落ちた。
白い下着で覆われている部分だけが際立つ。
執事はそれから少女の身体を左右に捻らせて肩からネグリジェを外し、腕を抜き取ってきちんとたたみ、少女の枕元へ置いた。
「少し膝を立てて足をお開き下さい」
少女は素直に言う事を聞く。執事はテーブルのスーツケースから色々な物を取り出して少女の足元へ置いた。
丸いローターや、男性器を模した形のバイブレーターや、避妊具の箱や、ゼリーのチューブである。
「もしもお辛いようでしたら、羽根枕を抱きしめていて下さい。…それでは参ります」
0491名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:20:39ID:i20shExr
少女の足の間に、それがそっと当てられた。
小刻みに震えるいやらしい色をしたローターだ。
下着の上からそっとなぞると、少女のくちから小さく息が漏れた。
もうひとつローターを出し、彼女の小さな胸に当てる。
未だ発達してはいないが、いやらしい刺激でそこはぷくんと盛り上がり、彼女の息を荒くする。
執事は少女の反応を見ながら、強く押し付けたり動かしたりを繰り返す。
そのうち、じんわりと下着の布が湿ってくるのが分かった。
「お嬢様、下着をお取りします」
インテグラは何も言わず、ただ腰を浮かす。
すると下着はあっという間に取り去られた。
そこは美しい桃色をしていて、わずかに濡れて光っている。
執事はローターにたっぷりとゼリーを塗りつけ、彼女の秘部に当てた。
強くは押し付けず、やさしく触れる程度だ。
しかし彼女のそこはひくひくと痙攣するような動きをしてとろりと蜜を垂れ流す。
「あ…」
細い指が白いシーツを握りしめていた。
「羽根枕が御所望ですか?取ってあげましょう」
執事が枕元にあった枕を彼女に手渡すと、少女はそれをきつく抱きしめる。
「あ…ウォルター…」
「何でしょう」
陰核への刺激をやめることなく執事が応える。
「みんな本当にこんな事をしているの?本当にこんな事を…」
途端、身体が弓なりに反り返る。羽根枕がいっそうきつく抱きしめられた。
「お嬢様、御友人の皆様も同じ事をしているのですよ。皆様経験なさることです。ただ、人に言わないだけ。それだけのこと」
表情一つ変えず、執事はバイブレーターに避妊具を被せてゼリーを塗りたくる。
「本当に、本当ね…?」
「もちろんですとも。…さあ、お嬢様。ここの準備は出来ているようですが、お嬢様は大丈夫でしょうか」
「ん…だいじょう…ぶ」
息を荒らげて、少女は応える。
「ここはお嬢様がいずれお子様を産む大事なところです。やさしく致しますが、少々失礼を」
そう言うなり、執事はバイブレーターを彼女に挿入していく。
ずぶり、ずぶりとそれを彼女は飲み込む。
「あっ」
彼女は足を大きく開き、それを迎えた。
0492名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:22:17ID:i20shExr
根元までずっぽりと収まったところで、執事はスイッチをゆっくりと入れる。
体内で振動し、動き回るそれを彼女は半分泣きそうな顔で耐えている。
しかし次第に小さく声が上がり始める。
歯を食いしばり、声を抑えようと必死だ
「お嬢様、人払いをしておりますから、声を上げても聞こえません。ここにはお嬢様とわたくししかおりませんよ」
耳元で囁くと、少女はただがくがくと頷くのみで目に涙をためている。
「んッ、んッ、んッ」
インテグラの足の間でバイブレーターが不規則にぐりぐりと動く。
陰核がもうすっかり肥大し、充血しているのが見えた。
執事はすかさずそこにローターを当てる。
強く押し付けるように上下に動かすと、突然少女の口から声が漏れた。
「あ、あ、あ、あッ」
ぐんと大きく身体が反り、くねらせて、腰ががくがくと前後にいやらしく動いている。
きつく締められたそこに押され、バイブレーターが卑猥な動きを続けながらシーツの上にぬるりと産まれ落ちた。
ぬめった体液とゼリーにまみれ、それはとろとろと融け出しているように見える。
力が抜け、大きく足を開いた少女のそこは未だ痙攣を繰り返し、誘うように花弁を開いたり閉じたりしている。
その度に蜜がとろりと溢れ出た。
執事は目を閉じて息を荒くしている彼女にシーツを掛ける。
「お嬢様、わたくしはお風呂の準備をして参ります。少々お待ちいただけますか?」
踵を返した執事を主が呼ぶ。
「ウォルター…」
振り向いた執事に、主が続ける。
「もういっかい…」
0493名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:23:19ID:i20shExr
そのまま立ち止った執事だったが、ふと目を閉じ、それから口元に笑みを浮かべると
すぐにスーツケースを開けて何かを取り出して少女に見せる。
「これはこれは失礼致しました。お嬢様はこれがお好きでしたな」
黒く、太いディルドだった。胴体にはたくさんの小さないぼが付き、醜悪な形をしている。
少女が自分からシーツを剥ぐと、膝で立ち上げる。それからゆっくり四つん這いになった。
ぱっくりと開いたそこに、避妊具を被せた太いディルドが当てられる。
「…んッ」
すでに蜜にまみれたそこにゼリーなど必要はない。
ゆっくりと執事が押すたびに少女のそこはそれを飲み込んでいく。
すっかりと根元まで飲み込むと、執事は主に声をかけた。
「では動かしますよ」
執事は張り型の先端まで引き抜くと、一気に奥まで突き入れる。
「んんんッ」
細い身体が大きくしなり、上半身がシーツに沈んだ。
腰だけが高く掲げられ、ディルドの動きに合わせて動いている。
細い腰に不釣り合いなほど太いそれが彼女の体内を出入りしていた。
「こ、こんな…」
深々と差し込まれた張り型に思う存分快感を得ている少女はそれでもまだ恥じらいを持って執事に問う。
「こんな犬のような姿を…本当に皆は…」
片手ではディルトを、片手では陰核でローターを操る執事は当然のように言い放つ。
「なに、嗜みですよ。時には野性味あふれる姿でまぐわうのも楽しみのひとつなのです」
0494名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:24:16ID:i20shExr
少女の顔が紅く染まる。
開きっぱなしの唇からは小さな舌が覗いている。
目を閉じて快感に酔う。
突かれるたび、大きく声が出る。
自分の指先で乳首を捏ねる。
編んだ髪が乱れ、毛先が顔にかかる。
少女はそれをかき上げ、耳に掛ける。
白い指がシーツを強く握ってしわを作る。
薄く眼を開くと、自分が性具にいたぶられているのが見える。
腰だけが別の生き物のように激しく動く。
ぼうとして何が何だか分からなくなる。
いきなり、ぐんと身体を固くしたかと思うと、少女はずるずるとシーツを滑るように裸身を横たえた。
ひくひくと身体を震わせ、肩で息をしながらしっとりと濡れた瞳で老執事を見つめている。
ずるりと、体内から張り型が引き抜かれ、それでまた少女は大きく声を上げた。
「お嬢様、今夜はいかがでございましたか」
ベッドの上のいやらしいものを片付けながら、執事が問う。
わざと主から目をそらしているようにも見える。
「ん…よかった」
「それはそれは光栄の極み」
老執事はにっこりと笑い、風呂の準備をするために隣室へ行った。
浴槽に湯を張り、新しいシーツの準備をして戻ると、少女はまだベッドの上で細い体躯をのびやかに横たえていた。
0495名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:25:13ID:i20shExr
「落ち着かれましたか」
「うん、もう大丈夫。自分で歩いて行く」
少女がゆっくりと起き上がると、すかさず執事が肩にガウンを掛ける。
ふわりとそれをなびかせて、浴槽まで行くと、するりと肩から落として湯の中へ滑り込んだ。
「お湯は熱くございませんか」
「ちょうどいい」
「それはよかった」
執事はワイシャツの袖をまくり上げ、それから手袋を取ると、湯の中に手を入れた。
少女の足の間にそっと触れる。
「ゼリーをたくさん使いました。きれいにしなくては」
さっきまで太いディルドが出入りしていたそこに、指が入り込み、撫でるように出入りさせ洗う。
それから尖って敏感になった陰核も、周囲のひだも老執事の指が全て触れてきれいにした。
小振りな胸も、その中心の膨らみも、全て撫でて洗う。
小さな主人はその度に小さい声を上げてそれを感じた。
「インテグラ様、明日あたりおそらく月のものが来るでしょう。
 女性ホルモンの関係とは聞きますが、不安や苛立ちを周囲へぶつけてはなりません。
 感情を抑制することも必要なのですから」
「わかっている」
ちゃぷん、と水音がする。
「それから、むつみごとがしたくなったらお言いつけ下さい。可能な限りお相手いたします」
「うん」
0496名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:26:09ID:i20shExr
少女は、小さく欠伸をする。
身体が温まり、眠気が急に襲って来たようだった。
「お疲れでございましょう。さあ、身体が冷えないうちにベッドへお戻りになって下さい」
少女は何も答えず、ただざばりと浴槽から出る。
バスマットの上で大きな厚いタオルに包まれて隈なく拭かれ、真新しい下着と寝巻に着替えると、ベッドへと戻る。
いつの間にか取りかえられたシーツの上で、彼女はころりと横になった。
そこに執事が羽根布団を掛け、髪を撫でる。
「ねえ、ウォルター」
インテグラがいたずらっぽく笑った。
「はい、お嬢様」
「キスして」
執事は戸惑い、しかしすぐに彼女の額に唇を軽く当てた。
「こども扱い」
「お嬢様はまだこどもですから」
頬を膨らませる少女に、執事は笑いかける。
「でもきっと素晴らしい淑女におなりになりますよ」
テーブルの上のスーツケースを持ち、執事は主に向き直る。
「おやすみなさいませ、お嬢様」
「おやすみなさい、ウォルター」
執事は静かにドアを閉め、部屋を出て行った。
0497名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:27:34ID:i20shExr
しんと静まり返った屋敷の中を静かに歩く。
廊下の大きな窓からは月明かりが漏れている。
今夜はいつもより影が濃い。きっと大きな月が昇っているのだろう。月が満ちる時期だ。
執事は一瞬、何かを見たような気がして立ち止る。
「そこで何をしているのです?人払いを命じたはずですが」
「夜は私の世界だ。お前こそ主人に何をしている」
寝静まった屋敷の廊下に佇んでいた吸血鬼が、屋敷の執事に聞いた。
「ただの性教育ですとも」
老執事は唇の端を歪め小さく笑い、スーツケースを持ち上げて吸血鬼に示した。
吸血鬼は苦笑いする。
「あの世でアーサーに叱られるぞ」
「なあに、アーサー様には会わないさ」
嗤ったその顔はまるで狂った少年のように美しい。
「どうせ私は地獄に堕ちる」
0498名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 09:38:41ID:i20shExr
うわぁ・・・すいません。こんなの書いて。
本来エロを書くのは苦手で。
あとはインテグラとセラスの百合しかないので投下はやめときます。
上の方読むと、ふたなりとか801とかはダメっぽいので…

読んでいただいた方ありがとうございました。
おさらばです。
0499名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 18:08:01ID:rXU0S3cV
久々に覗いて見たら、神がいた・・・
GJでした、ありがとう
0500名無しさん@ピンキー2010/11/29(月) 23:13:30ID:HIX2eMc+
セラスが処女だと?ありえん。あんなかわいい巨乳、俺ならほっとかない。
0501名無しさん@ピンキー2010/12/08(水) 08:45:43ID:aYNg7tqb
ええと、書き手の方があんまりいないようなので、あと数点投下していってもいいでしょうか…。
基本、インテグラとセラスのらぶらぶちゅっちゅばっかりであんまりハァハァしないかも。
どぎつい百合行為のあるものは投下しません。
雰囲気だけです。

需要なさそうですが……
個人的には他の方が書いたものをいっぱい読みたいなー。
0502名無しさん@ピンキー2010/12/08(水) 08:47:59ID:aYNg7tqb
インテグラが執務室で葉巻を燻らしながら書類を見ていると、ドアがノックされた。
「誰だ」
「私です」
そう言いながら入って来たのはセラスだ。手には小さなトレイを持っている。
「起きるのが早いな」
言いつつ振り返って窓の外を見る。外はもう暗く、窓ガラスに明かりが反射して室内が映っていた。
「もう夜か?」
「4時です。暗くなるのが早くなってきましたね」
ふう、と主がぽってりした唇から煙を吐き出すのを見て、セラスが言う。
「煙草ばっかり吸ってるとまた小ジワが増えますよ」
「うるさいな、お前は」
そう言いつつも、主人は机の上の灰皿に葉巻を置いた。くすりとセラスが笑う。
そして、トレイに乗ったガラスの器を机の端にことりと置いた。
「りんごの煮たのを作ったんです。食べてみてくれませんか」
にっこり笑ったセラスの横で、インテグラが珍しそうな顔で器を持ち上げる。
小さな煮りんごが3切れ器の中にちんまりと収まっていた。
「お前が作ったのか」
「今朝、寝る前に、キッチンを借りて」
添えられた小さなフォークで、インテグラがりんごをひとくち大に切り分ける。
それは驚くほどやわらかく、するりと切る事が出来た。口に運ぶと、舌の上でとろりと溶けるように解れていく。
「素朴な味だ」
「母が作ってくれたんです。ずっと昔。もう何十年も前」
「そうか」
「いっぱいシナモンを入れて」
「うん」
「はちみつはほんのちょっとだけ」
「うん」
「おいしかった?」
「ああ」
空になったガラスの器に、主人はちりんとフォークを入れる。
セラスはふふ、と小さく笑う。それから机の上の器を手に持ったトレイに戻した。
「おっと」
器がちょっとだけ斜めになり、フォークが滑り落ちた。足元の毛足の長いカーペットの上に乗っかっている。
セラスが慌てて膝をつきフォークを摘まむと、するりと首筋に細い指が降りてきた。
0503名無しさん@ピンキー2010/12/08(水) 08:49:22ID:aYNg7tqb
ぞくりとする。
冷たい指先が耳の後ろや顎の線を撫でて、行ったり来たりする。
襟元のボタンをぱちんと外し、内側に入り込み、鎖骨をなぞってはまた首筋に戻る。
何となくセラスが動けずにそのまま床に膝をついていると、頭の上から主人の声が降って来た。
「顔を上げろ」
そう言われてセラスが上に顔を向けると、インテグラの唇がそっとセラスのそれに触れた。
主人が大きな椅子に座ったまま身体を屈めている。
あ、と思っていると主の舌がセラスの口腔内をあちこち探ってきた。
唾液が行き来する。だから、セラスも舌をそっと伸ばす。触れた主人の唇はやわらかかった。
セラスは目を閉じ、ゆっくりと顎を動かしてその感触を楽しむ。舌が絡みつき、細い吐息をすぐそばで感じた。
不意にちゅく、と音がして唇が離れる。セラスが目を開けると、そばに眼帯をしたインテグラの顔があった。
「ななななな何をいきなりそんな」
顔を真っ赤にしてうろたえるセラスに、主が意地悪く笑って言う。
「うまかったか?」
「は?」
「私のキスは煮りんごの味がしただろう」
そう言って灰皿の葉巻を再度口に咥えた。唇の端が葉巻でちょっとだけ開いている。
白い歯と紅い舌が覗いているのが見えた。
「え、あ、あの、…はい」
「どうせお前の事だ。味見などしていないのだろう。食べると吐くからな」
「……」
言われた通りである。
セラスは唇をちょっとだけ尖らせ、立ち上がると握りしめていたフォークを乱暴にガラスの器に放り込んだ。
ちりん、とそれは小さなベルのように軽やかな音を立てる。
セラスはそれからトレイを引っ掴んでどすどすとカーペットを進みドアのところまで歩いた。
机に肘を突いた主が彼女の背中に声をかける。
「夕食の時にも持って来い。また食べたい」
セラスは立ち止り、何か言いたげにふるふると背中を震わせていたが、やがて
「知りませんッ」
それだけ言って後ろ手にドアを閉めて出て行った。
インテグラは小さく笑いながらまた書類に目を通しはじめた。



夕食のデザートに煮りんごが鍋ごと出て来る事になるのを知らないのは主ばかりである。
0507名無しさん@ピンキー2010/12/21(火) 09:13:35ID:fGVLEa0r
「もうすぐクリスマスですねえ」
セラスがそう言ったのは、インテグラの部屋である。
厚いカーペットが敷かれている他は、華美な装飾とは無縁の家具が数点配置されているだけだ。
かと言って、決してそれらが安価なものではないことをセラスはよく知っている。
当主は大きなソファにゆったりと腰をおろし、何やら厚い本を読んでいる。
セラスは窓のそばに立ち、雪の降る夜の庭を眺めていた。
「ミサにでも行くか?」
開いた本のページから目を離さずに当主が言った。
「行きませんよう。神父様のありがたいお説教なんて聞いたら衰弱しちゃいます」
「ちょっとは衰弱してしまえ。特にそのうるさい口が」
セラスは笑った。
相変わらず主は本から目を離さなかったが、それでも口元がほんの少し歪んで苦笑しているのが分かる。
ふふ、とセラスは笑う。
いつも忙しいインテグラが相手をしてくれるのが嬉しいのだ。
例え口調はきつくとも、その青い瞳の奥はどこか笑っているのを知っている。
だからセラスは言葉を続けた。
「クリスマスプレゼントをあげましょうか。手編みのマフラーでも」
「いらん」
「じゃあ、ミトンがいいですか」
「もっといらん」
「セーターは今からだと間に合わないかも」
「いらんと言っているだろう。うるさいぞ、本を読ませろ」
彼女は窓辺から離れ、厚いカーペットの上をゆっくり歩いて主の足元に座った。
「もっと」
不意にセラスがインテグラの膝に置いてある開いた本の上に顔を埋めた。
声がくぐもる。
「もっとインテグラ様が私のものだったらいいのに」
ぼそりとそうつぶやいた。
0508名無しさん@ピンキー2010/12/21(火) 09:15:09ID:fGVLEa0r
インテグラは言葉が出ない。
ただ、そういう事をこの吸血鬼も言うんだなとふと思った。
下町育ちの人の良い博愛主義者とも言うべきこの吸血鬼は、普段は独占欲のかけらも見せない。
自分が食べるべきパンを野良犬にやってしまうような、そんな女だ。
インテグラが答えに窮していると、セラスの顔が上げられ、手がついと伸びてきて、主の膝の上の本をぱたんと閉じる。
「あ」
「えへへ」
セラスは本を取り上げて床に置き、それから代わりに自分の頬を主の膝に載せた。
「何をする」
「えへへ」
彼女は上目遣いにインテグラを見る。
「気もち悪いぞ、婦警」
そう言いながら、手袋をしたままの手のひらを、セラスの頭にぽんと置いた。
お転婆な少女のようにあちこち跳ねた髪の毛を撫でてやりながら、気持ち良さそうに目を細める吸血鬼を眺める。
「プレゼント、私にも下さいね。何にしようかって考えているときは、私の事だけ考えてくれるでしょう」
自分の膝の上で言ったセラスの言葉にインテグラは一瞬ぽかんとし、それから苦笑する。
「馬鹿だな」
今にもごろごろと喉を鳴らしそうな様子で、セラスが笑って唇を開くと尖った牙がちらりと覗いた。



セラスがインテグラからもらったプレゼントは小さなスノーボール。
一方、インテグラがセラスからもらったプレゼントはシワ取りクリームと美顔ローラーであった。
罵倒する主の声としきりに謝る下僕の声が屋敷中に響いたが、深夜のベッドの中できつくおしおきされたかどうかは定かではない。
0510名無しさん@ピンキー2010/12/22(水) 09:29:50ID:nW5yI5re
平野家のカール大帝がドリフ原稿の上で香箱を作っている写真を見て萌えました。
にゃんこって要らないもの持ってくるよね。
死にかけたすずめとかもぐらとかカマドウマとか。
そんなイメージで書きました。
セラスって、自分のことをいつまでも子猫って思ってるライオンみたいだね。

読んで下さっている方、どうもありがとうございます。
連続投下でごめんなさい。
0511名無しさん@ピンキー2010/12/30(木) 11:21:35ID:bz2BmhxH
「マスターはものを食べても吐いたりしないんですか?」
セラスは聞いた。
ここはヘルシング家の一室。
特に名はないが、ヘルシング家のゴミ処理係の面々がふらりと集まる場所でもある。
簡素なテーブルと椅子が数脚あるだけの部屋だ。
窓の外はもう暗い。窓ガラスに室内の明かりが反射して白く光っている。
アーカードが椅子に座ってワインらしきものを飲んでいるのを見てセラスがそう聞いたのは、自分が血液以外のものを口に出来ないからだ。
「私は何でも食う。人であろうと獣であろうと、何であろうと。だがお前にはまだ無理だ。なにせ半人前だからな」
アーカードはそう言ってグラスの赤い液体をひとくち啜る。
液体はごく濃い赤。
赤ワインよりも若干濁り、とろんとした薄い粘りがあるようだ。
「それはワインと血液をブレンドしたものなのですよ、セラスお嬢様」
窓辺に立っていた執事のウォルターがそう説明した。
「私が特別に調合するのです。アーカード様用に」
「え、そうなんですか」
セラスはテーブルに置いてあったボトルをひょいと持ち上げる。
深い緑色のボトルの中身はよく見えない。
細いボトルの口から匂いを嗅いでみる。
強いワインの香りの中に、確かに混ざった血の香りを感じ取り、セラスはふうんと首を傾げた。
「お前も飲んでみるといい。なかなか美味いものだ」
アーカードは自分のグラスをセラスに向かって差し出す。
自分に向かって伸ばされた腕を見て、セラスはちょっと躊躇する。
どうしたらいいか分からずに、ちらりとウォルターの方を見る。
執事は大きく頷き、かすかに笑って見ているだけだ。
「えーと、じゃあお言葉に甘えて」
グラスを両手でそっと受け取ると、セラスはその赤い液体をほんのちょっと口に含んでみる。
「あ、おいしいかも」
小さな舌で唇をなめ、もうひとくち飲んでみる。今度は先刻より多い。
「うーん、このふくいくたる香り。まったりとしてまろやかで、いくらでも飲めちゃう感じ」
「セラス様は案外酒豪かもしれませんねえ」
ウォルターが笑って言う。アーカードはただぼんやりと口元に笑いを浮かべて眺めている。
0512名無しさん@ピンキー2010/12/30(木) 11:23:30ID:bz2BmhxH

「ウォルターはいるか?」
当主がドアを大きく開けて入って来た。途端、立ち止る。
セラスが両手でグラスを持って液体を舐めているのをぎょっとした顔で見つめている。
「そんなものを覚えさせたのか、アーカード」
インテグラが眉を顰めて聞くが、当のアーカードは口の端を歪めただけだ。
「いやーおいしいですよ、これ。インテグラ様もどうですか、一緒に飲みましょうよう」
いつの間にか、セラスの頬が赤く染まっていた。
八分目まで入っていたはずのボトルが、半分まで無くなっている。
さらに自分でどぼどぼとグラスになみなみ注ぐと、セラスはそれをぐびぐび飲み干し、グラスをインテグラにぎゅうと無理矢理握らせる。
「ささっ、ご返盃!今注いであげますからねー」
あっけに取られて立ちすくむ当主を尻目に、セラスはまたグラスになみなみと酒を注いだ。
「グラ様のッ!ちょっといいとこ見てみたいッ!」
禍々しい液体を手に持ったまま、インテグラは固まっている。
セラスは陽気に手拍子をしながら一気コールを始めた。
手袋をしたままなので、手を叩いてもぱふんぱふんと間抜けな音がするのみだ。
「ああいうのどこで覚えて来るんでしょうねえ」
こみ上げる笑いを噛みしめながら執事がぼそりと言う。
「知らん」
アーカードはそれでも含み笑いをこらえ、助けを求めるがごとく自分たちの方を向いている主を見つめているばかりだ。
「おい、お前たちこいつをどうにかし」
「ああもう、私の酒が飲めないって言うんでしゅか!」
いつまで経っても飲もうとしないインテグラからグラスをもぎ取ると、セラスはがぶがぶとそれを空にする。
「もう、そんなんだからお婿が来ないんでしゅよ!」
セラスの目は完全に据わっている。
「やっぱたまには合コン行かなきゃーらめれしょ!婚かちゅれしゅよ!婚かちゅ!」
インテグラの背中をばんばん叩きながら、セラスはひとりでげらげら大笑いしている。
しかし突然静かになったかと思うと、インテグラに足払いを食らわせ、床に押し倒し、その上に跨って
「れも、インテグラしゃまは私がお嫁にもらってあげましゅからねー」
そう言いながらインテグラの唇を奪った。
目を大きく見開いたまま抵抗しようとするインテグラの四肢をがっちりと抑え込み、全く動けない主を蹂躙する。
婦警の本領発揮である。
0513名無しさん@ピンキー2010/12/30(木) 11:24:53ID:bz2BmhxH
んっ、という主人の声が時折漏れるばかりで、セラスは一向にその上からよけようとしない。
左手は主の両手首をまとめて強く握り、右手はインテグラの胸元に置かれ、手のひらで鷲掴みするように揉んでいる。
次第に、インテグラの抵抗が少なくなってくる。
目を閉じ、頬がほんのり紅潮していた。
セラスの唇や舌の動きに呼応して唾液の放つ水音が小さく漏れた。
セラスはインテグラの手首を開放する。
抵抗するどころか、インテグラの腕はセラスの背中に回され、ぎゅっと自分に押し付けた。
ふたりの小さなため息と、ちゅく、という唾液の音が時折こぼれおちていく。
やがてセラスの唇が離れ、インテグラの首筋をたどる。
片手で胸のボタンをひとつ外し、鎖骨に鼻先を埋める。
なめらかな皮膚に唇を当てて、強く吸った。
ほんのちょっとだけ齧る。そしてまた吸う。
インテグラは小さな痛みに軽く鼻にかかった甘い声を上げた。
セラスは顔を主の首筋に埋め、しばらくそのまま動かない。
唇をインテグラの肌に押し付けている。
「セラ…ス」
主が下僕の名を呼んだ。
返事はない。
もしやと思って身体を持ち上げると、ごろりとセラスの身体が床に転がった。
脱力した身体を大の字に投げ出し、小さな寝息を立てて眠っている。
「な…」
インテグラはまだ少し荒い息を整える間もなくセラスの下から抜け出る。
立ち上がって身体についた埃を払うようにぱんぱんと衣類を叩くと、ふたりの男たちの視線に気付いた。
非常に気まずい空気である。
執事も吸血鬼も、慌てて笑いをこらえつつ顔を下に向け主から目をそらしている。
インテグラは大きくはだけたシャツのボタンを止め、小さく咳をする。それからこう告げた。
「ウォルター!こいつを棺桶に放り込んでおけ。それから蓋に釘を打ちつけてしまえ!」
「承知いたしました」
「アーカード!金輪際こいつに酒を飲ませるな!」
「了解した、我が主」
「全く、この馬鹿者共がッ」
苦虫を噛み潰した様な顔で男ふたりを残し、つかつかとドアに歩み寄ると、後ろ手にばんと強く閉めて当主は部屋を出る。
閉めたばかりのドアに背中を預け、大きなため息を吐く。
身体の力が抜けそうになる。
自分の心臓の音が大きく聞こえる。
インテグラはそっと鎖骨に指先を当ててみた。
紅く残るその痕は湿り、まだ熱を帯びて疼いている。
0514名無しさん@ピンキー2010/12/30(木) 11:33:19ID:bz2BmhxH
年末年始なのでおめでたいお話を書いてみました。
おめでたいのはセラス嬢だけ?

みなさま良いお年をお迎えくださいませ。

0516名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 15:45:42ID:oU5CGUNW
「背中がむずむずする」
そう言ったのは当主のインテグラだった。
「どうしたんですか、お嬢様」
セラスは銃を手入れする手を止めて、インテグラを見た。
柔らかい布は手に持ったままだ。布からはオイルの匂いがする。
「背中に何かついていないか?」
インテグラが椅子から立ち上がり、セラスに背中を向けた。
ジャケットを脱ぐ。
白いシャツにも何もついてはいない。
セラスはインテグラの傍に近付き、主が自ら引っ張り出したシャツの裾から手を差し入れて背中に触れた。
手袋を取った手のひらで滑らせるようにあちこち撫でる。
なめらかな肌に、いつもと何も変わりはない。
「髪の毛でも入っていたんじゃないですか?」
セラスはシャツの中からそっと手を抜いた。
当主は下着をつけていなかった。
自分は挑発されているのではないかと勘繰ってしまう。
「おかしいな。今度は心臓が妙にどきどきしている」
「体調でも悪いんじゃないですか?お熱をはかりましょうか。体温計を持ってきますよ」
セラスは誤魔化すようにテーブルの上の、分解した銃の細々した部品や、小さなブラシや、布や、オイルスプレーなどをまとめて片付けた。
それから体温計を執事の部屋に取りに行くため部屋を出る。
「待て、セラス」
少しの間をおいて、当主が背後から追いかけてきた。セラスの肩をぐいとつかむ。
「ウォルターに見つかるとうるさいからいい。あいつはすぐにやれ寝ろだのやれ医者だの騒ぎ立てるからな」
当主の表情の中にいつもは表れない焦りが見え、意外に感じた。
執事は当主に従っているようにみえるが実はうまく操っているのかもしれない。
くすりとセラスは笑う。
怒られるのは承知で、ちょっと意地悪を言ってみたくなる。
「ウォルターさんの言う通りじゃないですか。お嬢様、怪我や病気してもちっとも休もうとしないし」
「ま、待て。せめてウォルターのいない隙にこっそり持って来い。ばれるとおおごとになる」
インテグラのげんなりした顔が何だか新鮮で、セラスは可笑しい。廊下を歩きながら
「何言ってるんですか。お熱があったらちゃんとウォルターさんに報告しますよう」
そう言ってみた。
階段の降り口まで来て、当主は従僕と向かい合う。肩を両手で抑えた。
「ウォルターには内緒にしておけ」
熱があったわけでもないのに、当主がそう言う。
セラスはわざと身体を捻って主をすり抜け、階段を降りはじめる。
「待て、セラス」
「うわ」
主が下僕の肩をつかんだ瞬間、下僕の足がもつれた。バランスを崩し、段から足が離れる。
「あぶな…」
セラスはそう叫んだ刹那、背後から倒れてきた当主の身体をぐいと抱きしめ、頭を自分に押し付けるように腕を巻き付けた。


0517名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 15:47:07ID:oU5CGUNW
途端、身体に衝撃が走る。長い階段をごろごろと転げ落ちる。
肩に埋められた主の口が時折呻く。どこか打ったのだろうか。セラスは主を抱く腕に力を込めた。
やがてようやく階段下まで落ちたのか、大きな音がして落下が止まった。
もう本当に動かなくなるまで確認し、セラスは恐る恐る目を開ける。
自分の首筋に顔を埋めている主への力をそっと抜いた。
それで初めて自分が主の下に敷かれていることに気付いた。
「お嬢様…」
セラスは動かない主に声をかける。
「大丈夫ですか、お嬢様」
インテグラの顔がゆっくりと上げられ、やがて身体がセラスから離れた。
「身体が痛いぞ、馬鹿」
そう言ったインテグラはまたセラスの上にばったり落ちる。
その時、屋敷の奥でドアが閉まる音がして、次第に規則正しい足音が近づいて来た。
「ほら、お嬢様、落ちた時に大きい音がしたから結局ウォルターさんにばれちゃいましたよ」
インテグラの耳元でそう言うと。微かにインテグラの舌打ちが聞こえたような気がした。
セラスはくすくす笑ってぎゅっと目を閉じ、ウォルターが来るのを待つ。
こつこつという足音が、セラスの頭のそばでぴたり止まった。
「ねえ、何やってんのさ?こんなところで抱き合っちゃって」
若い少年の声がした。
あれ、とセラスは思う。セラスの知っている執事の声ではない。
セラスが目を開くと、そこには黒髪の少年が目に入った。
長い前髪が目元を隠しているため顔はよく分からない。
セラスからは逆さまに見えるが、黒いベストとズボンを身に着け、白いシャツの上腕にはアームガーターをしている。
両手は腰のポケットに無造作に入っていた。
インテグラも顔を上げて見つめている。
「お前は誰だ」
インテグラが低い声で問う。
「僕?僕はこの屋敷の執事ウォルター・クム・ドルネーズ。それで、あんたらは?」
0518名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 15:47:55ID:oU5CGUNW
同じ屋敷である。
しかし、壁紙が違う。
床もぴかぴかに磨かれているのは同じだが、傷がほとんどなく、まだ新しい。
廊下や室内に敷かれたカーペットも質感が全く異なっていた。
階段の下から起き上がったインテグラとセラスに奇妙な目を向けながらも客間へ通したのは、執事本人である。
当主であるアーサーが酒場かどこかで知りあった女とでも思ったのかもしれない。
しかしアーサーにしては女の趣味が違う。
いつもならもっと胸がでかくて、髪が長くて、騒がしくきゃらきゃらと笑っているような女を選ぶだろう。
しかも着ているドレスはペラペラの薄い生地で胸や尻を強調したものばかりのはずだ。
ところが、ここにいる女たちはそうではなかった。
片方は髪が長いが、胸は大きくない。もう片方は、胸はあるが髪が短い。
騒がしくすることもなく、執事の出したお茶を前にしてしんと静まり返っている。
着ている服も、片方は男装だしもう片方は軍服に似てごわついた生地のごく短いスカートだ。
いつもアーサーが連れて来る女とはまるで異なっていた。
悪びれることなくじろじろとふたりを上から下まで眺めると、
「あいにく主人は今、ペンウッド卿のところに行ってまして」
長い沈黙に嫌気がさしたのか、若い執事はまるで何かを読んでいるような口調で言った。
主人が女のところへ行っている時はそう言えと言われているのかもしれない。
「だから、いつ戻るか分からないよ」
「ほう、ペンウッド卿の」
インテグラが不意に答えた。いたたまれない気持ちで膝の上できつく手を握り俯いていたセラスが横のインテグラを見る。
「ところで葉巻をくれないか、少年」
インテグラがそう続けると、執事はきょとんとした顔をし、それから唇の端を上げる。
さらりと前髪を掻き上げた隙間から、まだ幼さの残る端正な顔が覗いた。
「珍しいなあ。女の人が葉巻を吸うなんてさ。…葉巻ならアーサー様のとっときのがあるから一本くすねて来る」
若い執事はそう言いながら後ろ手にドアを閉めて弾むように出て行った。
その途端、セラスが大きなため息を吐いた。横の主の顔を覗き込む。
主は下僕の方を見るでもなく、ただ真っ直ぐ少年の消えたドアを見つめていた。
「インテグラ様、ここ…」
「ああ…お前が思っている通りだと思う」
インテグラはソファの上で足を組む。膝の上に肘を立てて、握った拳に顎を載せた。
「どうやら過去へ来たようだ。ここはずっと昔の我が屋敷。そしてあいつは昔のウォルター」
「…若いですねえ」
「若いな」
「ウォルターさん、どうやったらあんなに礼儀正しくなるんでしょう。その欠片も見えないですよ」
「ああ、どうにも奇妙だ」
0519名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 15:49:01ID:oU5CGUNW
ドアがノックされ、返事をする前に執事が入って来た。
「ほら、葉巻。あと、マッチ。それから、灰皿」
インテグラの前に次々と置かれる。インテグラはすでに先端が切られていたそれを口に咥えた。
「火をつけろ」
執事は目を丸くしてただその場に立っている。
「インテグラ様、私が」
慌ててマッチを取ろうとしたセラスの手を、インテグラが強く払いのけた。
「お前ではない。ウォルター、お前がつけろ」
「僕がぁ?」
執事は聞いた。
インテグラは試すように言い放つ。
「そうだ、お前がつけろ。この屋敷の執事ならば」
「アーサー様はそんなこと言ったこともない」
「私は言う。私はいずれこの屋敷の当主になる。お前はこの私に仕える執事になる。今から練習しておけ」
「あんたブァ―カ?」
変なものでも見たように、少年は嘲笑う。
「あっ、あの、本当なんですよッ。本当にインテグラ様はこの屋敷の。ちょっと階段から落ちたらずいぶん昔に来ちゃったんですけど」
口を挟んだセラスの言う事が通じたかどうかは不明だが、執事はマッチを手に取った。
ただ単に気まぐれだったのかもしれない。
マッチを擦ると、独特の香りが漂う。執事はそれをインテグラの咥えた葉巻の先端に近付ける。
「近付け過ぎるなよ。下からじっくり炙るように…そう、お前は上手だ」
インテグラの言う事を聞きながら、執事はインテグラの顔をちらりと覗く。
ちらりと見ていた瞳が、やがてじっとインテグラの顔を見つめている。
「あち」
摘んでいたマッチの燃えかすが指先を焦がし、執事は慌てて灰皿に放り込む。
ふうふうと指を吹きながら、執事が聞いた。
「ねえ、あんたインテグラって言うんだ」
「そう、私はインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング」
「ふーん」
若い執事はインテグラを跨いでソファに膝をつき、足を組んでソファの背にもたれかかるインテグラに顔を近づける。
インテグラは逃げることなくその蒼い瞳をまっすぐに見つめた。
執事もまた、目を離さない。ふざけた物言いでふざけた事を言いながら、しかし執事の目は修羅を知っている。
だが、ふっとその目が緩んだ。
0520名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 15:50:10ID:oU5CGUNW
ううん、と小さく唸る。
「どっか似てるねえ。本当にアーサー様の子どもかもしれないなあ」
「当然だ」
「あ、私はセラスと言います」
「ふーん」
執事は気のない返事をして、インテグラから目を離さなかった。
少年執事の興味は若い当主だけに向いている。
「肌が黒っぽい。アーサー様はインドの人と結婚したんだ」
「知らぬ。私に母の記憶はないし、写真も残ってはいない。父からも母の事は聞いた事がない」
「へえ」
執事は手を伸ばし、インテグラの長い髪に触れた。
ひと束持ち上げてさらさらと落としてみる。
まっすぐな髪はもつれる事なく元通りに揺れた。
そしてまた髪に触る。
「きれいな髪だ」
インテグラは執事のするがままにさせている。ふうと煙を吐き、それから気付いたように聞いた。
「アーカードはどうしている?」
「地下で寝てる。あいつはねぼすけだからいつも夜まで起きちゃあこない」
ふふ、とインテグラが小さく笑う。
「そうか、あいつはねぼすけか」
「うん」
セラスの方をくるりと向き、少年がにやりと笑いながら言った。
「そう言えばおねえちゃんは吸血鬼?アーカードと同じ匂いがする。でもあんたはねぼすけじゃあないな。ああ、火薬の臭いもする」
銃の手入れをしていたせいなのか、それとも自分に染みついたにおいなのか分からず、セラスは曖昧に頷く。
執事の手がインテグラの頬にそっと触れた。親指が撫でるように動く。
「すべすべしてる。酒場の女たちはみんなもっとがさがさだ」
「私は酒場の女ではない」
「…ねえ、キスしてもいい?」
そう言うが否や、ウォルターはそっと顔を近付ける。
インテグラは拒む事無く、眼鏡を外し、葉巻を灰皿に置いて唇を開いた。
「ん……」
声を上げたのがウォルターだったのか、インテグラだったのかセラスには分からないほどごく微かな声だった。
ゆっくりと顎を動かし、舌を絡ませている。
唇が離れても伸ばされた舌が互いに触れ合う。そしてまた唇をそっと合わせた。
「インテグラ様ッ!」
そばで黙って見ていたセラスはが居ても立ってもいられずふたりの間に割って入る。
その顔は半泣きになっていた。
「だめだめだめッ!絶対だめッ!」
インテグラの首に腕を回し、ウォルターの方を向いて目に涙をためながらふるふると首を振っている。
0521名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 15:55:51ID:oU5CGUNW

(この部分には百合行為が混ざっていますのでお嫌いな方は飛ばしてお読みください)


「もうお終い?」
にやにやと笑いながらそう言った執事は、わざとふたりににじり寄った。
「もっとしようよ」
「お前、経験は?」
「ないけど」
「そうか」
インテグラは上着を脱ぎ、シャツのボタンを外した。それをセラスが慌てて止める。
「だ、だめですよッ!間違いがあってウォルターさんの子どもが出来たらどうするんですかッ!」
「いいじゃん、おねえちゃんも産んでよ僕の子ども」
「だめですッ」
「うるさい下僕。お前も脱げ」
「わ、私もですか」
「当たり前だ。私ひとりでは恥ずかしいだろう」
そう言いながら、主は全く恥ずかしそうな素振りは見せない。
セラスは下を向き、ぶつぶつ言いながらボタンをぱちんと外していく。
「うわおう!」
隙間から現れた豊満な胸に、ウォルターは思わず声を上げた。
スカートや下着も取り去り、全裸となったセラスはそれでも両腕で胸を隠してソファに座っている。
その手首をインテグラの左手がつかんでぐいと強く持ち上げた。きれいな桃色の先端があらわになる。
「あ…」
インテグラの舌が先端の突起を押し潰すように舐めた。
途端、セラスの抵抗が止む。
セラスの足の間にはインテグラの右手が伸びていた。
「だめですよう…」
「うるさいぞ。ほら、足をもっと開いてよく見せてやれ」
セラスはいやいやをするように首を振るが、インテグラの手が足を少し開いてやると素直に大きく広げた。
主の指がそこを左右に開く。少年は覗き込む。
「ふうん。こんなふうになってるんだ」
「お前は胸を舐めてやれ」
そう言われて、ウォルターはセラスの大きな胸にしゃぶりつく。
先端を吸い、長い舌で舐めまわす。
インテグラはソファに横になったセラスにキスをした。
舌を絡ませて唾液を行き来させた。
湿った音が部屋中に散る。
長い長いキスが終わると、インテグラはそっと身体を放し、若い執事の手を取ってソファの端に腰かけた。
執事はその前に立たされている。
0522名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:00:39ID:oU5CGUNW

(この部分には百合行為が混ざっていますのでお嫌いな方は飛ばしてお読みください)




「ずるい…」
セラスは呻くようにつぶやいて、身体を起こした。
まるでインテグラが何を考えているか分かっているかのように。
そっとセラスは自分の胸の先端に指を這わせる。
足の間に手を伸ばす。
指を深く差し入れ、それから濡れた指で陰核を弄った。
時折びくりと身体を震わせると、甘い声が漏れだした。
「ウォルター、お前はあれを見ていろ。私が口でしてやろう」
「え?あ?ん?うわ!」
インテグラの手によってベルトが解かれ、ズボンと下着を下ろされて性器があらわになった。
すでに屹立しているそれを、インテグラが舌で舐め上げる。
「じょーずう…」
唇で覆うように上下に動かしつつ、舌で先端や雁の部分を刺激した。
滲んできた体液を舌で先端に塗り付け、更に舌を鈴口に差し入れる。吸って、手のひらで握って、動かした。
繰り返すと、若い性器はすぐに反応した。
セラスの方を見つめながら、息を荒くし、インテグラの髪や頬に触れている。
突然セラスの喘ぎ声が聞こえた。長く、大きい声を出すときは達する寸前だとインテグラは知っている。
「お前、あれに入れてやれ。ゆっくりだ」
主は少年の性器から唇を放すとセラスに近づいた。それからセラスの手首を持って指を引き抜く。
あふれた蜜が指の先端から糸を引いた。
少年はソファに片膝を載せてセラスの足の間に体を入れ、ぬめったそこに挿入していく。
「あ…」
「うわ、きつい。けど、すごくいい」
ウォルターは本能にまかせて腰を動かし始めた。
インテグラはセラスの乳房の先端を強く吸いながら、片手を伸ばしセラスの髪を撫でてやる。
「ヤッバい。大人ってこんなこといつもしてんの?エッチだなぁ」
少年のそれがセラスの中で体積を増す。
セラスは少年の質量で満ちるのを体内の奥深くで感じる。
揺さぶられるたびにセラスの喘いだ声が部屋に零れ落ちていく。
「ほら、腰振ってよ。振るとおっぱいが揺れるからさ」
肉のぶつかり合う音と湿った体液のこすれる音とが繰り返され、深々とセラスは貫かれる。
「あ、あ、あ、あ…」
いきなり大きく背中を反らせながら、セラスはぎしぎしとソファを鳴らして腰を前後に動かし、高みに上り詰めた。
ひくん、ひくんと身体が痙攣し、それから深いため息を吐いてセラスの動きがゆっくりと止んだ。
0523名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:01:46ID:oU5CGUNW
「すごい、中がぎゅってなってる」
「キスしてやれ」
「うん」
ウォルターがセラスの中からずるりと抜け出すと、そこはセラスの体液で濡れ、卑猥に光っていた。
セラスの足の間からとろりと蜜があふれ出てソファを汚した。
インテグラは乳房から唇を放して、執事と下僕の口付けを眺める。
どこか拙いそのキスに主はひどく昂りを感じた。
ソファに座って指を足の間に這わせた。
「あ、だめ。お嬢様」
執事とのキスから放れたセラスがそう言って手を伸ばす。
「私がするから、自分でしちゃだめ」
「いい。お前はこいつを手伝え」
インテグラはソファに片方の足を載せ、大きく足を開いた。
すでにじわりと蜜が溢れ、指がぬるりと中に入り込む。
「んん…」
快感の波に身を漂わせ、思わず漏れた声にウォルターが反応した。
「いい顔するんだね、お嬢様」
ウォルターは跪いたセラスの口に性器を近付ける。
「舐めてよ」
微かに開いた唇に、ウォルターはセラス自身の密にまみれた性器をねじ込む。
ややあって、舌が強く吸い、上下に動かし始めた。
それから唇で雁を刺激して喉の深いところまで含む。
たっぷりと唾液を塗りつけると一端口から出して豊満な乳房に挟んだ。
上下に動かす。
顔を下に向けてはみ出た先端を舌で舐めると、少年の口から息とともに喘ぎ声が漏れだした。
「うわ、これ、反則」
0524名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:02:32ID:oU5CGUNW
インテグラの中に入る指が増えた。
きつく締めつける。指が自身の敏感なところを刺激し続けると、ぐいと背筋が反り返り、呻くような喘ぎ声がこぼれた。
かすれた甘い声を出しながら、身体を時折びくんと震わせてその感覚に酔う。
大きな波が体の深いところをさらい、インテグラは身をまかせて大きく漂う。
気づかないうちに体内がきつく自分の指を締めつけ、鼻にかかった声を上げていた。
しばらくして波が去ると、薄く目と唇を開いたまま、少しの間ぼんやりとする。
「あ、その顔ッ…」
執事はいきなり声を出したかと思うと、セラスの顔におびただしい量の体液を放った。
「あ、ごめん」
ウォルターは素直に謝ると、セラスの顔の体液を赤い舌で舐め取る。
「うええ、まずい」
床にぺっと唾を吐くと、そのままインテグラのそばに行き、その唇に口づけた。
「苦いねえ。飲んだ事ある?」
呆然としたままのインテグラが首を微かに横に振るが、それでも苦い味のキスを拒むことはしない。
セラスはインテグラの足元にぺたんと座り、主の足をぼんやりと撫でた。
それから主の手を取り、蜜で濡れた指を口に含む。舌でちろちろと舐め、ゆっくりときれいにしていった。
唇が放れると若い執事はインテグラの隣にだらしなく身を投げ出し、将来の主人の肩にことんと頭を預けた。
「きれいだねぇ」
誰に向かって言っているのかそうつぶやき、ふと思い出したように自分が脱ぎ捨てた衣類のポケットから紙巻き煙草の箱を出すと、テーブルの上のマッチを擦って火をつけた。
そうしてまたソファに座りインテグラの肩に頭を預ける。
「煙草を貸せ。葉巻の火が消えてしまった」
足を組んだインテグラがそう言うと、執事は咥えていた煙草を放して手渡した。
煙がゆらり、揺れる。
主はひと口吸うと何も言わずすぐに執事へ戻す。
眉間にしわを寄せているところを見るとよほど口に合わなかったのだろう。
昔の煙草などそんなものだ。
0525名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:03:57ID:oU5CGUNW
「お嬢様、ここ、痣になってます」
急に足元のセラスが言った。
セラスの手のひらが、主の背部にそっと触れた。
「ああ、階段から落ちた時に打ったのだろう。大丈夫だ」
確かに少々痛むが、騒ぎ立てるほどではない。
インテグラは気にせず床に散らばった下着を身につけ、ズボンを穿いた。
「ウォルターさん、湿布か何かないですか?お嬢様いつもこうなんです。放っておくと痕がついちゃう」
セラスがそう言うと、ウォルターは煙草を咥えたまま面倒臭そうに立ち上がり、
「湿布、あるよ。アーサー様が良く酒場で女に殴られて帰ってくるから」
そう言ってズボンを穿き部屋を出て行った。
セラスが服を着た頃、執事はようやく戻ってきた。
手には瓶と包帯と布が載ったトレイを持っている。
それをテーブルに置き、瓶からナイフで何やらどろりとした薬をすくい上げ布にべったりと塗り、インテグラの背中に貼り付けた。
「う」
かなり冷たかったのか、インテグラは身を固める。
周囲には瓶から立ち上がる薬の匂いが広がった。
強いミントの香りがする。
執事は布の上から包帯をぐるぐる巻くと、端を巻いた包帯の中に突っ込んで止め、それからぽんぽんと背中を叩いた。
「はい、お終い」
途端、インテグラの背中がぞわりと逆立つ。奇妙な感覚が走った。
「セラス」
インテグラはシャツをふわりと羽織り、ボタンを止めながら下僕の名を呼んだ。
「何ですか、お嬢様」
「背中がむずむずする。戻れるかもしれん」
「え、本当ですか?」
セラスは急いで立ち上がった。インテグラのジャケットを着せ、ボタンを止めてやる。
0526名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:05:05ID:oU5CGUNW
「ウォルター、私がこの世に産まれ出ずるその前に言葉遣いと立ち居振る舞いを直しておけ。それから葉巻の火のつけ方と、紅茶の入れ方をマスターしておくことだ」
「何だよそれ」
主は若い執事の頭に手のひらを置くと、髪の毛をくしゃくしゃとかき混ぜた。
「お前はきっと良い執事になる」
そう言われて、ウォルターはきょとんとした顔をする。
「ああ、そうでなくては困る。お前がいないと何も出来んのだ、私は」
少年は少しうつむき、照れたように小さく笑った。
インテグラは思う。
この若い執事が背中に触れた瞬間にあの違和感が始まった。
きっとこの少年が自分たちを呼んだのだと確信できた。
理由は分からないが、この少年執事にはただ何かの契機が必要だったのかもしれない。
インテグラは口角を上げて笑う。
「私に逢う日を楽しみに待っていろよ、ウォルター」
「…きっと待ってるよ、インテグラ様」
セラスはインテグラを急きたてた。
そのときが分かるのはインテグラだけなのだから。
服を着る執事をそのままに部屋を出、階段の一番上までたどり着くと、待っていたかのようにインテグラの心臓が高鳴り始めた。
予兆は顕著に進行している。
おそらくもう時間はない。
インテグラはセラスと向かい合う。
下僕は主人をそっと、しかし力強く抱きしめた。
今度こそ主に痣など作らぬよう、気を使っているようだ。
靴音がして、若い執事が服を着て追いついてきたのがわかった。
「私の名はインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング。努々忘れぬ事だ」
セラスの首筋に鼻先を埋めながら、主はそっと執事を見る。
目が合う。
黒いベストに揃いのズボンを身に着けた少年は煙草を咥えてインテグラを見つめている。
髪の毛はかき混ぜられたまま乱れていた。
「バイバイ、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング。それから女吸血鬼」
その声を聞いて目を閉じた主は自ら床を蹴る。

0527名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:06:35ID:oU5CGUNW
視界の端にあった若い執事が見えなくなり、身体に階段を転がる衝撃が加わった。
長い間ごろごろと転がってようやく止まった時、廊下の奥でドアの閉まる音と規則正しい足音が近づいてきた。
「インテグラ様、セラス様、何やら大きな音がしましたが大丈夫でございますか?」
セラスは強く力を込めていた腕をふっと緩める。インテグラが顔を上げた。
老執事がモノクルを光らせながら床に転がっているふたりを上から覗き込んでいる。
「階段から落ちたのですか?おふたりともお怪我などありませんでしたか?」
「大丈夫だ」
手当ては執事の手によって既に済んでいるのだから。
インテグラが身体を起こすと、ウォルターが白い手袋をした手を伸ばす。
主は当然のようにその手を握って立ち上がった。
続いてセラスも立ち上がる。
その時ふわりと辺りに強いミントの香りが漂った。
インテグラの湿布の匂いだろう。身体を動かしたため、布から薬が漏れたのかもしれない。
ウォルターの目がそっと閉じられた。
深く、深く息を吸い込む。
口元には小さな笑みが浮かんでいる。
「ああ、懐かしい匂いがいたします。よくアーサー様に塗って差し上げた湿布薬の匂いが」
それから執事は主に向かって恭しく一礼する。
「お帰りなさいませ、インテグラ様」
0528名無しさん@ピンキー2011/01/31(月) 16:13:07ID:oU5CGUNW

うっかり百合が入ってすいませんでした。投下の途中で気が付いて…
今後気を付けます。

それからタイムトリップなんて陳腐なネタで申し訳ありませんでした。
0530名無しさん@ピンキー2011/02/07(月) 22:16:54ID:Kludr8ao
>>528
いやいやGJです
若ウォルターとお嬢の掛け合い見たかった自分としてはかなり楽しめました
0531名無しさん@ピンキー2011/02/11(金) 15:02:38ID:gXtSIFXP
読んでくださってありがとうございます。
若ウォルターがインテグラに心酔していく様子が書きたくて!
こっそりいろんなサイトさん巡りをしていますが、自分の好みの所ってなかなか見つかりませんね。
自家発電で毎日凌いでます。
0532名無しさん@ピンキー2011/02/12(土) 02:08:08ID:rynKUeH/
つい先日ちゃんと最終巻まで読んで、二次探してたのでうれしいなー
良作がいっぱいあってホクホク
皆さん投下ありがとう
0533名無しさん@ピンキー2011/02/13(日) 14:28:19ID:UKdq8zT6
>>532
いいですねー。
いい作品に会うとうれしくなりますよね。漫画でも二次でも。
私はヘルシングに出会って10年。
平野作品に出会って15年。
最近二次を書き始めたばかりです。
おもしろいのが書けるようになりたいな。
0537名無しさん@ピンキー2011/02/25(金) 11:25:45ID:JCZ9x4by
インテグラの声、
作者自身の指名だしすごく上手だからいいんだけど
ちょっと老けてるかな〜…って思うときもあるんだよな
一応23だしほんのちょっとだけかわいらしさがほしかった
0538名無しさん@ピンキー2011/03/02(水) 02:40:02.55ID:G+IfPro3
>537
自分が声優に詳しくないからだけど、あのお嬢の、
品を失わないドスの効いた声が出せる声優って
そうはいないんじゃまいか?
ただ若いだけのアイドル声優には無理だべ。
0539名無しさん@ピンキー2011/03/02(水) 09:44:05.95ID:5emaF0rA
セラスは疲れていた。

吸血鬼によって襲われた村を根こそぎ消滅させてきたばかりだった。

グールとなった村人の頭をぶち抜く。

噛みついてこの両手で引き裂く。

吸血鬼となった少年や少女の首を落とす。

その心臓を抉り取る。

本来であれば自分もそうされるべき存在なのだ。

それなのに、自分は自分の同胞であるはずの吸血鬼を殲滅する事を職務としている。

吸血鬼の闘争本能と言うべきものが自分の中から目を覚まし、自分の意志とは関係なく身体が動く。

弱点を素早く察知し、不必要なほど攻め、破壊する。

そうなるともう、自分では自分を止める事が出来ない。

自分の主人に大声で制止されるまで何も聞かず、何も分からず、ただ破壊への喜びとともに血の匂いを求める暴力の虜となってしまう。

「セラス!」

「セラス・ヴィクトリア!」

「もういい、やめろ!」

「やりすぎだ!」

そう叫ぶ主人の声もどこか遠くで鳴っている汽笛のようにぼんやりと聞こえ、だからそれが制止の声だと気づくまでにまだ数人の身体を引き裂いているのだ。

そしてふと自分の周囲を見回すと、自分と主以外にその場に立つものはなく、あとは全て血みどろの死体であったことも一度や二度ではない。

警察が死人の数を数える事もままならないほど、彼女は頭を押し潰し、手足をもぎ取ってただの肉片にしてしまう。

まるでこどもの飽いた人形のように。
0540名無しさん@ピンキー2011/03/02(水) 09:46:22.28ID:5emaF0rA
「大丈夫か」

走る車の後部座席でそう聞いてきたのは主の方だ。

「だい、じょうぶ、です、よ」

ため息とともに返事をしたセラスの手には未だ乾いた血液がこびりついていて、彼女はそれをじっと見ていた。

車内は暗い。

だが彼女には乾いてひび割れた暗い色の血が見える。

吸血鬼は夜目がきくのだ。

人間とは違う生き物なのだから。

「疲れているのだろう。このところ続いたからな」

「…たぶん、そうです」

「なにも考えるな。お前は私の命により職務を遂行している。ただそれだけのことだ」

主の声がすぐ隣から聞こえる。葉巻の煙が車内に漂っている。主の温みを感じる。

「…はい」

だが、実際に手を掛けるのは自分なのだ。自分のマスターのようにはまだなれない。

理性を保ちつつ狂った戦闘をするようにはいつまでもなれないだろうと彼女は思う。

「ベルナドットは手伝ってくれないのか?」

ふう、と煙を吐き出しながら主が問う。

「最初は理性が勝っているので出てきてくれるんですけど、最後の方になると本能が勝っちゃって、どこにいるか分からなくなるんです。

相手がたくさんだと、もう駄目で」

「ふん」

主は細く窓を開けて葉巻の煙を追い出す。シートに設置された灰皿に葉巻の火を押し付けて消す。
0541名無しさん@ピンキー2011/03/02(水) 09:49:19.51ID:5emaF0rA
深いため息をひとつ吐いた。

それからこう言った。

「休暇でも取るか?」

「は?」

「バカンスだ。私と一緒に行こう」

「一緒に、ですか」

「イタリアに行ってにんにくたっぷりのペペロンチーノを食おう」

「え?」

「ゴムボートに乗って急流下りをしよう」

「え?」

「大きな日傘をさして真夏の太陽の下を歩こう」

「え?」

「どうだ、一緒に行くか?」

「それ、何の拷問ですか?」

「失礼な。きっと楽しいぞ。疲れも吹っ飛ぶだろう」

「別の意味で吹っ飛びますよう」

そう言いながら、セラスはちょっとだけ笑った。

主が身体を捻り、顔を近付けて来る。

「笑った」

そう言って主は吸血鬼にそっと唇を合わせる。

セラスは、あ、と思いながら唇を開いた。

主の手のひらが頬を包んでいる。

セラスは目を閉じる。

車が揺れるたび、唾液を含んで小さな音がする。ふたりの息がお互いの顔にかかる。主が手袋を外した手で血みどろの服の上からセラスの乳房にそっと触れる。

決して熱いキスではないが、それは長く長く続き、そしてようやく離れた。

「鉄さびの匂いがする。帰ったら風呂に入れ。そうしたら一緒に眠ってやる」

下僕の機嫌を取るなど、らしくない事をしたと思っているのだろうか。

そう言って口元を手の甲で拭い顔を背けた主の顔は少し紅く、戸惑っている様に見える。

だからセラスはまたちょっと笑った。
0543名無しさん@ピンキー2011/03/02(水) 10:03:58.62ID:6aLuMNdd
いいよいいよー
朝から良いもの読ませてもらいました
GJ!
0544名無しさん@ピンキー2011/03/02(水) 10:06:46.56ID:/S0aei7L
>>542
素敵です、ありがとう!

この二人の百合ってすごくかわいいですね。
主従なんだけど同僚というか盟友というか、いい関係だな〜
0545名無しさん@ピンキー2011/03/04(金) 09:44:01.74ID:+cgLWgLV
読んでいただいた方ありがとうございます!
このふたりの百合の良さが理解していただけてうれしいです
アーカードもウォルターも不在の中で30年一緒にいたんだよなーと思うと
ついついらぶらぶちゅっちゅさせてしまいます。

昨年11月から8本投下し、私のヘンタイっぷりを露呈させていただきましたが、
そろそろ自サイトに活動を移そうかとも思ってます。
読んで下さった方本当にありがとうございました。
0547名無しさん@ピンキー2011/03/07(月) 02:05:06.27ID:ucXgE9SC
誰か、ジョージと良子さんの声でアーグラのエロMAD作ってくれないかな。
二人ともエロアテレコやってるんだよね。(ジョージはBLで、良子さんはくりいむれもんで)
0548名無しさん@ピンキー2011/03/31(木) 03:06:46.82ID:2dCiV0f2
 
0550名無しさん@ピンキー2011/07/23(土) 11:04:49.82ID:UMxI8u9l
発売前なのでage
0553名無しさん@ピンキー2011/08/31(水) 19:30:55.28ID:LgvdYPym
ドリフターズのエルフ語は何となく読めるという事に気付いた記念age
0554名無しさん@ピンキー2011/09/02(金) 00:14:45.15ID:9f8g8pHR
今月末に2巻出るしドリフでなんかエロできんかね
ジャンヌたんの話が読みたいです
0555名無しさん@ピンキー2011/09/02(金) 18:00:58.18ID:HO7HJBwY
もっと女の子増えればいいのにな
エルフの美少女出してくれ
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