胸のキスに包まれて、じわっとぬくもりが自らに染み込んでいく。絶妙の力加減で全角度から圧迫される。
 例え不慣れでも、そういう男を喜ばせる行為がある、というおぼろげな知識しかないのだろうが、予想できない動きは自分で処理するのと全く別物の感覚。
 彼女の両手が使用中のために自分の両膝で体重を支えなくてはいけないのだが、慣れない事でもこの愉悦を長く味わうためならばまるで苦ではない。
 未知の圧迫感に肉棒を押し潰されるも、それに逆らい亀頭を谷間から見え隠れさせる。それをまた彼女が隠すように包み込んでくれるのだ。

 「あ……あんっ……ふぁっ……」

 最中に、固く張った乳首同士が顔を突き合わせることがあれば、その度に八雲は切なそうな顔をして喘いでくれた。
 そんな稀だったはずの出来事が頻繁に起きるようになってくれば、それも彼女の意図した自慰行為のように思えてならない。
 八雲が、奉仕しながら自らの快感を弄っている……? 普段の容姿に合わぬ発情したその姿は拳児の興奮を加速させた。

 「気持ちいいぜ……妹さん。ほんと、器用なんだな」
 「……あぁ……嬉しい、です……」

 いたずらめいた発言にも気をよくしてくれたらしく、微笑を浮かべ応えてくれた。
 自分から動くのを止めて、八雲の奉仕に身を任せる。下半身の痺れを堪えるのに力を割きたいのが本音ではあるが。
 一身に男の欲の塊を愛撫してくれる彼女の姿がひどくいじらしく愛らしい。
 そっと、髪を上から撫でてやった。そろそろ……口のほうも、疲れが取れてきたのではないだろうか。そう考えながら。



 目で見て口で知り、つい昨日に自らの秘部を貫いてもらったことはずのその形が、まるで新しいもののように感じる。

 「ふぅ、ふぅっ……ん、は、はぁ……っ」

 上体を揺すって心臓の音を上下に伝える。手で胸の根元を絞れば恥ずかしいことにより乳首が前に張り出てしまうが、
 固さのあるそこで段差や先端をついてやると、居眠りしている動物のようにピクンと反応してくれるのが嬉しい。
 倒錯した悦びだと頭のどこかが警笛を鳴らそうが、官能が高まり加速するのは止められない。
 今の自分が拳児からどう見えているのか分かるから。性の奉仕にのめり込む女の姿を、その柔媚に熟れた膨らみを、好ましく思って貰えているから。

 「はぁ……はぁ……あっ」

 とろり、口から涎が垂れる。意図したものではない。行為に夢中になるあまり飲み下すのを忘れてしまっていた。
 丁度、汗のある瑞々しい肉の間に落ちて、餅つきの餅のように形を変えるそこへと飲み込まれていった。
 すると手の内に感じる滑りがよくなり、にちゃ、といやらしい音が立つ。
 「おっ……」

 ――っつ。拳児に言われるよりより先に、残った口の中身をシロップのように零していく。
 にちゃ……にちゃ……。唾液が泡立ち、汗と……そして先程から出始めた、彼の下の口での唾と混ざり合う。
 先程の口での奉仕にした時と同じく、できた混合酒を彼にくまなく塗りつけていった。
 「う…おっ」
 彼の快感を堪える声が嬉しい。支えに使っている拳がぶるぶると震えているのだ。
 背を低くし四つんばいになり、男性の脚の付け根に顔や胸を埋めるこの体勢。それが自分にはひどく合っていると八雲には思えた。
 男の人に跪くものだがそれは服従とは違う。逆に、これは自分から好きな人の踏ん張りが全て手に取るように分かってしまう体勢なのだ。
 それに――彼に奉仕しているはずなのに、自らの下着の奥に熱が溜まって、はしたないことになっている現実も、伝わってしまうことはない。