「あっ……べとべとに……少し、綺麗に……しないと」

 ぬちゃっ……淫靡な水音を立て、愛しい肉竿から胸を離す。むわっと香り立つのは、唾でも汗でもない匂い。混合酒と言えない程に配分が一極化しつつあった。
 綺麗にすると言ったがそれはタオルやティッシュでふき取るという意味ではなく――。

 「んっ、む……ちゅ、ちゅぱっ……んぅっ……ふぅっ……!」

 八雲は口の中に感じたことのない味がした。こびりついた拳児のカウパーが舐めとられ胃の中に運ばれる。代わりに、今度は両手と胸が休憩に。
 とはいえ隠れるわけではない。今までの行為でたっぷりと濡れていた乳胸は、視界にあるだけで拳児にはいい刺激となる。

 「ん、んんっ……ぁっ……ちゅ…ぱっ……れる……んむぅっ……!」

 そして再開された八雲の――

 「妹さん……今やってること、何て言うのか知ってるのか? フェ」
 「っ……! ……く、口取り……です……///」

 フェラチオ。単語を八雲が認識しているのがはっきりする。
 彼女とてそこまで初心ではないと知っていたので、思い描いたとおりの反応に拳児は気をよくした。
 と、舌のざらついた感触が強く変わった。吸い付いてくる力も増した。……仕返し、のつもりだろうか。
 だがそろそろギアをあげたいと思っていた拳児にとってそれはむしろ望むところである。

 「はむ、んちゅ、んちゅうっ……!……ん、んむぅっ……! ちゅっ…じゅるっ……」

 性器同然に八雲の口壷が音を立てる。たらたらと間から垂れた涎は彼女の勃起した乳頭にかかりギラギラと淫らな光で彩った。
 喉奥まで飲み込むと全身がぷるぷる震え、じゅるじゅると先走りを啜る音を拳児にも聞こえるように奏でてくれる。
 高ぶった男の欲情、それを更に押し上げるように八雲は舌先に力が込めてしっかりと応えてくれていた。

 「よし。次はまた……胸で頼む」
 「はむぅ……ちゅ、ちゅるっ……んっ…こくっ……ちゅぷ……るっ……」
 「……妹さん?」
 「んんっ……! ……は、はい……ちゅぱ…………」

 八雲は数瞬だけ忘我の境に追いやられていた。むわっとした雄匂。唇とその中にとろりと垂らされて堪能させられた男の蜜味。
 今までにない新たな手段で拳児のために尽くせる幸せ。しかもそれが"女"という時には足枷にさえなっていた自らの弱み。
 数々の初めての悦びと若干の酸欠がそこに加わり脳を溶かす――ただ強いだけの酒を飲まされたように。

 「ではまた、私のおっぱいで……お慰めさせて、頂きます……」

 拒否しかけたはずの単語を躊躇せず口に出しているあたりに、抵抗の意思を蕩かされていると拳児にも想像がつく。
 いや、そうでなくても、甘みのある甘露のような八雲の唇が、精気沸き立つ男性器にむしゃぶりついている光景のいやらしさ。
 ウエストからヒップまで、女の子らしい柔らかな丸いカーブを描いた部分。そこがふりふりと誘うように揺れているのを本人は気付いているのだろうか。