ほどの痛みだった。それを見た悠貴は、自分の犯した罪も忘れて、腹を抱えて笑い出す。
「あはははは、今すごい音したよ、ゴンッ!って、ふひひひ」
ひとしきり笑い転げた悠貴だったが、未来がなかなか顔を上げずにいつまでも
うずくまったままなので、少し不安になって笑い声を潜めていった。しばしの間、
居間が沈黙に包まれる。やがて悠貴は恐る恐る未来に近づいていき、心配そうな顔で
声をかけた。
「お、お姉ちゃん……大丈夫?」
そのとき、未来が素早く動いた。立ち上がると同時に回り込むような鮮やかな動きで、
悠貴にヘッドロックを極める。
「つーかまえた〜」
「い、いたいいたい! ずるいよ、お姉ちゃん!」
悠貴の言うことには耳も貸さずに、ギリギリと締め上げる。
「やかましい! プリンの恨み、思い知りなさい!」
「わあああ、ごめん、お姉ちゃん、ごめんなさい!」
「あと、あたしの足の恨みも!」
「いたいいたい、お姉ちゃん、それぼくのせいじゃないじゃん!」
「はあ〜〜?」
未来はヘッドロックを解除すると、今度は悠貴の頬を両手で掴んで、口を広げるように
引っ張った。
「そんなことを言うのはこの口かー? あたしのプリンを食べちゃったこの口かー!?」
「ひたい、ひたい、おねえひゃん、ゆるひてー」
結局この日、未来がこれ以上宿題に手をつけることは、ついになかった。
おわり