「持ってきてくれてるよな?」
「…………まぁ…その…」
「ってことで、柔さんのカバン拝見しまーす!」
「あっ!ちょ、ちょっとぉ…」
耕作さんはあたしの旅行カバンの中をまさぐり始めた。
お目当ての“アレ”を取り出すために。
…まぁ、さっきは忘れてたけど。
正直言うと、昨日あたし…
完全に忘れていたわけじゃないのよね…
「おっ、この袋かな?」
だって、でも!
自分から言い出すのって、なんか変だし、恥ずかしいし…
「ビンゴ!」
あたしが着たい、みたいな風には思われたくないんだもん。
「じゃーん!おお、やっぱりいいなぁ…」
「…こ、耕作さんったら」
耕作さんは“アレ”を上に掲げて、まじまじ眺めている。
…なんだかすっごく、ニヤニヤした顔で。
「さぁ、柔さん、着てみようか」
「えっ?い、今からー!?」
「もちろん!今すぐ!一刻も早く!」
「だって、朝から…なんて…」
もう、なんなのそのハイテンションは。
昨日あんなに飲んで、頭痛くなったりしないのかしら。