君に届けでエロパロ★6
0348ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:15:06.96ID:/MF3fXEl
(すみません、メモごと投稿しちゃいました。気にしないでください)


■■22

初めて風早の部屋でお互いの名前を呼んだ時のように。
気恥ずかしさと照れくささで、お互いに声を詰まらせてしまう。
「……ん、…じゃ、じゃあ俺、見てるから……」
その瞬間、沸騰したように驚愕の表情を見せた爽子は思い切りかぶりを振った。
「…え、で、出来ません……」
――そんな。せめて黒沼が脱ぐとこ。見たい。
そう、思ったが。
よくよく考えたら、神社から帰ってきてすぐこうなってしまったので、何も準備をしていないことに気が付いた。
――そうだ。その間にアレを…
それに、少し休憩の時間が必要だとも思った
――このままじゃ、きっともたないし。…俺が。
風早は爽子の額に軽く口づけた。
ちゅ、と音がして、爽子の瞳がくすぐったそうに一瞬だけ瞑られる。
「…じゃー、こっち向いてるから。爽子そっち向いて、…終わったら、言って」
「……はい…」
「…つけてていいのは、俺があげたネックレスだけ」
爽子に背を向けていた風早は、わざわざ自分の所有欲をにじませた言い方をしてしまったことに、しまった、と頬を染めたが。
少しの沈黙。
「あの、風早くん…」
0349ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:16:43.07ID:/MF3fXEl
■■23

「…ん?」
「…………ぱ、パンツは穿いててもいいですか…っ」
パンツ。その名前を言われて、瞬間で色々な想像が巡り、思わずベッドから転げ落ちそうになるが、…耐えた。
湧き上がる妄想を全力で押しとどめ、逡巡する。
パンツと聞いて思い浮かぶのは、…修学旅行。
――爽子自身が大事なのであって、爽子が身に着けるから重要なのであって、よくよく考えれば正直なところ下着の形状にはこだわりはない、と思う。それは絶対。
けれど、あの日から想像させられるようになってしまったから。パンツと聞けばイコール“ヒモ”という連想しかできなくなっているくらいには、意識に結ばれてしまっていたから。パンツのヒモが。…えーと、じゃなくて、その、ヒモパンが。
別に、それであろうとなかろうと特にこだわりはない。
だけど、一応…念のため…訊いてみるくらいは…。
いや、そんなことを訊くなんてどうかしてる。
それにおそらく、実際、ヒモであろうとなかろうと、きっと俺の理性の支柱という点においては何の役にも立たないんだと思うし。うん。
……と、一瞬で納得した筈だったのだが。
「…もしかして、ヒモのだったりする?」
まるで頭と口が別の生き物のように、気が付いたら口に出してしまっていた。しかも、勢いよく振り返ってしまっていた。
――俺!今、何を!!
…と焦ったが、その声に少しの期待が含まれてしまっていたことは否めない。
すると、爽子は目を丸くした。
「すごーい!なんでわかるの?!」
驚いた顔の爽子は、さりげなく腕で両胸を隠しながらも、下着の形状なんてものを尋ねた風早に対し特に違和感などないようで、風早は内心、ホッと胸を撫でおろした。
次の言葉を聞くまでは。
「あやねちゃんとちづちゃんが、たぶんこういうの風早くんすきだからって選ぶの手伝ってくれたんだけど…」
――あいつらほんとヤだ!
「…………見たい。…お願いします」
「…ハイ……」
……思うところはあるものの、誘惑には勝てないのであった。
0350ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:18:09.76ID:/MF3fXEl
■■24

― episode 3 ―

――爽子が裸になる。
身につけてるのは俺があげたネックレスと、これから俺がほどいていい…はずの、ヒモパンだけ。
俺がつけたネックレスと、俺がほどくヒモパン。
ネックレスとヒモパン。
改めて心の中で整理すると、天と地がさかさまになるようにぐるぐるまわる。
これじゃダメだと頭を振って、慌てて頭の中に、意味を為さない方程式のかけらやら五段活用やらを素通りさせながら爽子に背を向け、足元の自分の鞄から、必要なものを取り出す。
薄い、5センチ四方の、カラフルなパッケージ。
今この状況でこれを取り出すと、これから爽子とそういうことをするという実感が出てきて、風早は余計に高まりを感じてしまう。
――ダメだ、これじゃ、休憩にならない…。
そのパッケージを枕の下に忍ばせた。音を立てずに。
そしてシャツを、ジーンズを、そっと脱ぎ去った。
一方、背後からは、ファスナーを下げる音から、衣擦れの音までその一通り聞こえてくる。
爽子が衣服を脱ぎ去る音。
ためらいがちに、無音の部屋でなるべく音を立てないように、そっと支度している様子が窺える。
わかっているのだ。
いくら風早が望み、爽子自身も望んでの事とはいえ、これから起こることを理解しているとはいえ、お互いにそれを確定的なものとして振る舞うのは、少し勇気が要るということを。
――俺、ちゃんとできるかな。傷つけないように、大事だってわかってもらえるように…。
「か、風早くん」
すると、小さな声が聞こえた。
「で、できた、よ……」
0351ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:19:32.27ID:/MF3fXEl
■■25

   *   *   *

思いきり振り返りたい衝動を抑え、敢えてことさらゆっくり爽子を振り返る。
そこには。
今はもう取り去ってしまったブラジャーと揃いの、淡いピンク色のショーツ一枚となった爽子が、ネックレスのみを身に着けた上半身を抱え込むようにして、横たわっていた。
初めて見る、爽子の下着一枚の姿。
今までにもほんの一度だけ、首筋に口づけて服の上からそっと胸に触れたことがあるし、甘い口づけの間に一線を越えてしまいそうな雰囲気になったことも、一瞬だけ、ある。
正直、押し留まれたのは、状況と運でしかなかった、…と、風早は思う。
だから、こんな姿の爽子を目の前にしたら一体自分はどうなってしまうのかと、自分に自信が持てないばかりか、冷静に想像することさえできなかった。
けれど、今。
「…きれいだな…………」
きめ細やかな白い肌に、伸びやかな肢体。
自分の無骨な指で触れたら、壊れてしまいそうな華奢な身体。
薄闇の中、月の光が落とす桜の花の影を浴びるその様は、湧き上がる情欲と共に、なにか、きれいな、心が洗われるような…そんな鮮烈なイメージをもって、風早の胸を打った。
そして。
細いがちゃんと肉感のある腿の付け根には、きれいに結ばれたショーツのヒモ。
白く滑らかな肌に、きれいに結ばれた、ヒモ…もとい、繊細なレースのリボン。
風早は思わず息を飲んだ。
――悔しいけど、あいつら、グッジョブ。
向こうを向いている表情は見えない。
長い髪の隙間から少しだけ覗く、白いうなじと、ネックレスの細い鎖。
たった1年と少し前のことなのに、鎖を嵌める手が震えたことを、遠い昔のことのように懐かしく思い出す。
なんてこと言っちゃったんだ、とあの時は思ったけど。
――なんてことしちゃうんだろ、俺……。
遠い日をぼんやりと思い出しながら、誘われるように、鎖ごとうなじに唇を落とした。
0352ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:20:41.38ID:/MF3fXEl
■■26

「…ひゃっ」
びくりと反応し、長い黒髪がサラサラと背中を滑った。
――俺がさわっていい、爽子の身体。
そして指先で白い背中に触れ、指で辿った部分にそっと口づける。
「…んっ」
また、爽子の身体が脈打つ。
「…爽子……」
そしてそのショーツ一枚の華奢な身体を後ろから抱きすくめた。
細いのに、やわらかくて、…何か良い香りのする、爽子の身体。
触れた肌が気持ちよくて、身体中に吸いつきたくなる。
頼りなげに揺れるショーツのリボンに、眩暈がする。
一方、抱きしめられたことで爽子は、風早も服を脱いでいることを知った。
自身の背中に、風早の素肌が触れている。
裸の風早の腕の中に、今、裸の自分がいる。
そのくすぐったいような感触が、爽子の胸を早鐘のように打つ。
「…風早くんも、はだか、だ……」
まわされた腕に頬を寄せながら、爽子は言った。
「うん。…爽子、……爽子。…爽子……」
触れ合う素肌が心地よくて。温かくて。
めちゃくちゃに組み敷きたい気持ちと、優しく触れていたい気持ちがないまぜになって、頭の中がぐるぐるする。
求める気持ちをうまく言葉にできず、風早は何度もその名を呼ぶ。
強く抱きしめてから、まるで募る想いを届けるかのように、背筋に沿って唇を落としていった。
「あっ…、かぜはや、く……んっ」
そのたびに、爽子の身体がびくりと脈打つ。
とんでもなく滑らかで、触れた唇が気持ちいい。
――俺の。……全部。
0353ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:22:20.33ID:/MF3fXEl
■■27

前にまわした手は、殆ど無意識のうちに、爽子の両の胸を探り当てていた。
「…あっ、」
――後ろからの方が揉みやすいんだなー…。
のぼせた頭で、そんなことを考える。
先ほど正面からさわった時は手が余るくらいの大きさで、華奢な爽子らしくて可愛いと思ったのだが、後ろから掬いあげるようにして掌に収めると、吸いついてくるその質感が少し増しているように感じた。
「…んっ、……」
背中に唇を落とす一方でふくらみを掌に収め、揉みながら、その頂きをむにむにといじる。
それはだんだんと硬さを増していき、次第にころころと指先を転がるようになっていった。
――あ、すごい。硬くなってきた。
風早は、今更ながらに驚いた。
さっきは気づかなかった。さっきもさわったのに…むしろ見てもいたのに。
今だって余裕なんて全くないけれど、それでも、自分がどれだけ我を忘れていたかを思い知らされる。
――俺、どんだけ余裕ないんだよー……。
そしてふと、爽子の声が聴こえないことに気づく。
覗き見ると、爽子は、真っ赤な顔を隠すようにして、目を強く瞑り、きつく眉根を寄せ、口元を強く押さえていた。
「…爽子、声、我慢しないで」
そして頬に唇を寄せるが、爽子はふるふると首を振った。
「…や、ヘンな声、…はずかしい……」
「ヘンじゃないって。嬉しい。…わかる?」
風早が一呼吸置くと爽子は目を開けてのろのろと風早を見た。
けれどまっすぐな視線にぶつかって、うまく風早の顔を見ることができなかった。
風早の声がとても優しくて、胸をやわやわと揉むその手も、とても優しかったから。
お腹の奥の方が疼くような感覚を、交わった視線から見透かされてしまいそうだったから。
「爽子が、…感じてくれてるの、嬉しい。爽子がかわいい声出して、…ここが」
「…っあん」
風早が再び爽子の胸の頂きに触れると、爽子はびくりと震えた。
「…硬くなってくの、俺、すごく、嬉しい。…声、聴きたい。……ダメ?」
0354ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 03:23:45.31ID:/MF3fXEl
■■28

雨に濡れた子犬のような瞳でそう訴えかけられてしまったら、もう爽子には断ることなんてできなくて。
潤んだ瞳で風早を見つめ、何かを言いよどんではその言葉を飲み込み、絶え間なく与えられる甘い刺激に不規則に身体を震えさせ、あ、と吐息混じりの甘い声を上げた。
思わず風早は爽子の身体を仰向かせ、その頂きに唇を寄せた。
「…あ、んっ……か、かぜはやくん……」
せつなそうなか細い声で名前を呼ばれると、カッと全身が熱くなり、下半身に熱が集中していくのがわかる。
腕を捕まえてシーツに押し付け、唇と舌とでふくらみの頂きをなぶる。
硬くなった頂きを、舌の上でころころと音がするように転がす。
「…あっ、あん…は、はぁっんっ……」
いつもの爽子からは聴いたことのないような甘い声。
きゅっと瞑った目。寄せられた眉根。紅潮した頬。
すべてが、かわいくて。
――どうしていいかわからないのは、俺の方だ……。
爽子を閉じ込めておきたい。
その白い肌のすべてに口づけたい。
苦しそうでも、困った顔をしても、休む間なんか与えずに触れたい。
壊れてしまうかもしれないのに、いっそ壊してしまいたい。
息も絶え絶えに声を絞り出す爽子と目が合うと、風早は泣きそうな顔で微笑(わら)った。
「…ごめん、俺、思ってるよりずっと、余裕ないみたいだ」
そして、一層強く抱きしめた。
「爽子、かわいい。爽子…全部ほしい。爽子…」
風早は唇を首筋に埋めると、より密着して、右手を彼女の下腹部に伸ばしていった。
0355名無しさん@ピンキー2014/12/31(水) 12:22:23.11ID:tA+o7MG/
原作絵で、アニメの声で再生される
年末になんと素晴らしいものを…

支援
0356ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:55:16.37ID:/MF3fXEl
支援ありがとうございます。とても嬉しいです。
おかげで爽子ちゃんのお誕生日中にもう一度投稿することができます。
昨夜も日付変わってはいましたが、改めて…
爽子ちゃん、お誕生日おめでとうございます。


「桜の季節に」つづき

■■29 

「…あ、……」
風早の指先が自分の腹部を伝い、その先へと伸びてゆくのを感じると、爽子は身を硬くした。
爽子の白い肌をつつとゆっくり降りていく、風早の大きな手。
「……〜〜〜っ!!」
風早の指先が、爽子の最後の布地に隠された中心に到達した時、爽子の両脚に力が込められた。
「爽子、」
そこは、温かくて、やわらかくて。
ショーツ一枚の身体を抱いて、爽子のそこに手を触れている。布越しのその部分の感触も、自分が今そこをさわっているという事実も、何もかもが、夢みたいで、でも現実で。
うるさいくらいに脈打つ、自分の鼓動。
「…爽子」
対して爽子は、羞恥に苛まれて身体中を硬くしたまま、風早の腕に身体を預けていた。
名前を呼び、固く閉じられた両脚を割るように手を差し入れると、爽子の力が少しだけ抜けて、その手を受け入れてくれる。
そんなこともとても嬉しくて。
でも、嬉しさに浸れるほど余裕があるわけでもなくて。
雑誌やビデオで得た知識しかないし、もちろん経験があるわけでもない。
けれど、夢中で、思うがままに指先で探ると、ぷっくりとした小さな突起を感じた。
と、同時に、爽子の身体が強張るのがわかった。
儚く壊れてしまいそうなくらい、ささやかな、それ。
できるだけ力を入れないようにして、でも少しだけ押し込むようにしてそこを撫でると、ふるふると震えていた小さな身体が、大きく跳ねた。
「…んっ!」
――あ……、たぶん、これが…?
もっと。
もっと。
さわりたい。爽子に。
風早は、急き立てられるようにショーツの中に指を忍ばせた。
0357ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:56:03.74ID:/MF3fXEl
■■30

しっとりと濡れそぼる狭いショーツの中で、直接触れる、爽子の、その部分。
布地をくぐって中心に到達すると、僅かに粘着質な感触があった。
「……ゃあっ」
腕の中で、ひときわ大きく跳ねる爽子の身体。
――これが、濡れてる…ってこと?
確かめたくて、もっとさわりたくて。風早は先ほど布越しに触れた突起に、今度は直接。夢中で指を滑らせる。
「…ん、ん、…あ、あっん、…か、かぜはやくんっ……」
爽子の声はいっそう艶を含んで熱が篭もる。と、同時に、白い腿が震え、時折ビクリと跳ねる。
そんな爽子の反応に魅せられる。可愛くて。…いやらしくて。甘やかな声をもっと聴きたくて。
ただただ、煽られて、何度も何度も、けれどできるだけ優しく、突起を撫で付ける。
「…あ、…ゃあ、なん、か、そこ…っやぁっ」
いやと言いながら爽子の両腕は風早の背をかき抱く。細い指先がきりりと食い込む。
止めるなんて、不可能だった。
「………っ!!」
親指をその芽に置いたまま、長い中指を辿らせ、うるみの中心と思しき部分をさぐると、華奢な身体が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい、びくりと脈打った。
「…さわこ、かわいい。さわこ…もっとさわりたい……」
「……や、もう、…あん、かぜはやく、わたし、…だめ、なんか…っ」
いやいやをするように首を振る爽子の耳に、舌を這わせる。
「んっ」
「きもちよく、」
自身もまた荒い息遣いをもてあまして、言葉がうまく続かない。
でも、伝わるように。ちゃんと届くように。
「…きもちよく、なかったら言って。さわこ、かわいくて、俺もう、止めらんない…」
0358ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:56:43.61ID:/MF3fXEl
■■31

風早の息遣いがいつもより熱くて。
自分を見つめる瞳が真剣で。
声色が甘くて。
指が、男のひとの指で。
爽子は無意識のうちに脚を畳もうとしてしまうが、それで余計に、挟んだ風早の指が密着してしまう。
戸惑うように引かれた爽子の手を、自身の肩につかまらせる。途端に、ぎゅ、と力が込められ、抱きしめられ、抱きしめる。
爽子が震えるたびに、自身の屹立したモノを彼女の脚に押し付ける形になってしまって、それで余計に煽られる。
――もーだめ…。
風早は身を起こし、爽子のショーツのリボンに指をかけた。
「…これ、ほどくよ」
最後の一枚。
みつめあって。
爽子は間断なく与えられた指の感触の余韻の中でもがくように見上げ、それで風早の“男”の視線に射抜かれ、目を瞑ることも叶わないまま、小さく頷いた。
一方風早は、素肌を晒しぼおっと上気した顔で自身を見つめる爽子に、もとより回答を待つ余裕なんてなかった。
とろんとした瞳と、薄く開かれて熱い吐息をつく紅い唇は、風早に、彼自身のタガが外れきっていることを教える。
その視線は或いは不安そうにも見えるのだが、それが却って風早の内の熱を煽った。
リボンの端をそっと摘み上げる。
視界の端で、左右が付けられた膝が少し浮いたのが、ささやかな抵抗にも思えたが。
そのまま引っ張ると、レースのリボンはするりとゆるんだ。
――プレゼントみたいだな。
…と思ったと同時にリボンが解け、パラリ、と音が聞こえそうなほど頼りなく、その布が落ちる。
その様はまるでスローモーションのようだった。
0359ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:57:13.47ID:/MF3fXEl
■■32

「…あ、あのね……」
白い肌に、淡い茂みが見える。
一気に体温が上がるが、自らを焦らすようにわざとそこには目を落とさず、そのままもう片方のリボンもほどく。そして両脚の間から今や一枚の布きれとなったショーツを引き抜き、そっとそれに口づけた。
決してわざとではなかったのだけれど。爽子が身に着けていた最後の一枚に、なぜだか、そうしたくなったのだ。
爽子はそんな風早の行動に、あ、と声を漏らす。
そんなこと…、という気持ちがあるのに、ショーツに口づける仕草が色っぽくて。自分を見つめる瞳がいつもの“優しい風早くん”とは違ってなんだかとても…“男のひと”で。身体の芯が甘く疼く。
そして風早は、ショーツを傍らにそっと置くと、今や一糸まとわぬ姿となった爽子の肢体を、じっと見つめた。
「…あ、…かぜ……」
あんまり見ないで、と言いたいのに、見てほしい、という思いもあって。
爽子は、隠すこともままならずに、風早をそろりと見上げた。
全ての衣服を取りはらわれた状態がなんとも心もとなくて、でも、ぜんぶ風早にあげたくて。
「……あ、あのね、…プレゼント、なんだって…だからリボンがいいよって……」
――やっぱり、あいつらほんとヤだ!
きっとニヤニヤしていたであろう二人の顔が連想されて悔しいが、脳裏に二人が登場したのはほんの一瞬。
なんといっても、目の前には、生まれたままの姿の爽子がいるのだ。
胸元には、自分があげた小さな星型のネックレス。ただ、それひとつ。
――なんかいいな、こういうのって。
まさかこんな姿で身に着けている爽子を見ることができるなんて、選んでいた時は想像すらできなかった。
気に入ってくれるといいな、と思って選んだけれど。
――想像以上に、可愛かったんだよな。
その時のことをぼんやりと思い出しながら、風早は、爽子の膝に手をかけた。
「…ありがと」
爽子の膝には少しの力が込められていたが、そっと手をかけると、なんなく開かれた。
――……っ…………。
0360ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:57:45.80ID:/MF3fXEl
■■33

初めて見る、爽子の身体の全て。
平らな腹部から続く、髪と同じ黒色の茂み。
そこから目を離せず、誘われるように腹部に唇を寄せた。
「……っ」
その感触に、爽子から、声にならない吐息が漏れる。
「…もらうよ。全部。」
顎に当たる茂みがくすぐったくて。
ゆっくりと唇をおろしていく。
先ほど指で触れた湿った部分に唇が到達すると、爽子の身体がびくりと震えた。
そっと内腿に手を置いて、茂みをかき分けた先には。
…興奮、しすぎているのが自分でもわかる。わかるから逆に、思いきりゆっくりと、大事にする。
同じ肌のはずなのにそこはピンク色をしていて。
ぷっくりとした芽は、ひときわ濃く色づいていた。
――ここが爽子の……。
そこに唇を寄せ、舌でそっと舐め上げた。
「…っああん……っ」
普段の爽子からは想像もできないような色めかしい声が上がる。
脚を開いて自分を受け入れてくれる爽子が、いとおしくて。何度もゆっくりと舐め上げる。
あまりに身体が跳ねるので、なるたけ負担をかけないように…ゆっくりと、そっと。でも、かえってそれは逆効果のようで。
けれど、止められなくて。
「…や、あんっ…そんな…………」
――もたない、たぶん今日は、そんなに長くは。
自身が屹立というより既に怒張していることを、痛いくらいに感じる。
――はやく。ひとつになりたい。
0361ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:58:35.06ID:/MF3fXEl
■■34

風早は長い指で、溢れる蜜の中心に触れた。
触れると、脈打つ身体。
……くちゅり。
そこは少しくぼんでいるだけのようにも見えて、でも、触れただけのはずの風早の指先が、ほんの少しだけ、きゅっと締めつけられるような感覚があって。
――ここ?
少し躊躇してからそのままそっと指を差し入れてみると、溢れる蜜が潤滑油となり、思ったよりするりと飲み込まれた。
「…んっ……あ、…かぜはや、くん……?」
戸惑うような爽子の声が降ってくるが。
風早は息を飲んだ。
初めて侵入した爽子の膣内(なか)は、溶かされそうに熱くて、とろけそうにやわかいのに、きりきりときつくて。
――爽子の中に、俺の指が入ってる…。
その感覚を現実のものと認識すると、その温度が、感触が、波のようにうねって襲い掛かる。
――こんなに熱くて、やわらかいのに…きついなんて。
少しだけ進めて、少しだけ戻して、また、少しだけ深く。
「…あんっ、かぜはやく……っん、」
きつく閉じようとする周辺に気づき、もう片方の手の指も使って、そっとその部分を揉んでみる。
力が抜けては入り、入ってはまた抜け、ひくひくと動くそこは、風早が今まで一度も目にしたことのないものだった。
――指だけでこんなにきつくて、俺のが入ったら、一体どうなっちゃうんだろ…。
風早はうっかり想像しそうになって、それで自分の屹立したモノを衝動的に突き入れたくなり、慌ててその情欲を押しとどめる。
――たしか…ほぐしてあげないと……。
感覚的にそのことに思い当たって、ゆっくりと指を出し入れする。
熱く溶かされた頭ではもう雑誌の知識を活字で思い出すことなどできない。
「…んっ、……あ、んっ」
爽子のそこからにじみ、きつく差し込まれた風早の指を伝う、溢れ出る蜜。
0362ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:59:17.81ID:/MF3fXEl
■■35

――こんなふうになってるなんて。
信じられないようにそこを見つめながら、風早はゆっくりと指を動かす。
第一関節が埋まる。
すると、爽子の白い腿が、小さく抵抗するように、狭められた。その内腿に手を宛てるとぴくりとふるえる。
そっと押し戻すと、抵抗なくまた脚が開かれる。
差し入れたままの指を飲み込む膣内(なか)が、いったん弛緩してから、またきゅっと締まった。
名残惜しげに、爪が半分顔を出すほどまで抜く。
周辺をやわやわと揉みながら、今度はもう少し深く。第二関節の近くまで埋めて、また少しだけ引くと、同時に透明の蜜がとろとろと流れ出る。
それを繰り返し、繰り返し。
ゆっくりと、味わうように。
何度も、何度も。
溢れた蜜が少し泡立って、少しずつではあるが、爽子の身体が慣れていくのがわかる。
「…かっ……かぜは…くん……!」
その光景に釘づけになっていた風早だが、自分の名を呼ぶ爽子の声で、ハッと意識を引き戻された。
「…黒沼」
咄嗟に口から出たのは、呼びなれた苗字の方だった。
とても、掠れてしまったけれど。
顔を上げて見遣ると、少しだけ背を起こしてこちらを見る、不安そうな顔をした爽子の顔があった。
頬は紅潮し、唇は紅く色づき、熱い吐息をついている。
「…か、かぜはやくんのゆび、が、入って…るの……?」
潤んだ瞳が痛々しくて。
「……そうだよ」
爽子の顔から目を逸らせないまま指をもう少しだけ進めると、眉根が寄せられ、同時に唇が開き、あ、と、頼りない声が漏れる。
そうして、ゆっくり、ゆっくりと、その付け根までを爽子の膣内(なか)に押し入れた。
「…んっ……」
指はそのままに、風早は、赤く充血した芽に軽く唇を落とした。
「んうっ……」
爽子の身体が跳ね、余計にきゅうきゅうと風早の指が締め付けられる。
「…爽子」
差し入れた指はそのままに、なるたけそれ以上深く突いてしまわないよう気を付けながら、風早は身体を起こして、爽子の背中に腕をまわした。
0363ピアノ ◆QvuLenpyEs 2014/12/31(水) 20:59:50.61ID:/MF3fXEl
■■36

震え、風早をじっと見つめる爽子は、腹部に手を宛てて動かさないようにしながら、その胸に身体を預けた。
そっと抱きしめた爽子の髪から、なにか甘い香りがした。
涙のにじむ目じりに唇を寄せると、肩がぴくりと震える。同時に、指がまた締め付けられる。
いとおしくて。
後ろ髪を引かれるように、膣内(なか)のやわらかさを確かめながらゆっくり指を引き抜くと、ぬちゃ…という水音がして、爽子の身体がふるりと震えた。
「…あ、は…………」
寄せられた眉根にそっと口づけて、再び横たわらせる。
不安気な瞳にも口づけ、唇にも。そっと、触れるだけのキスをしてから、瞳を見つめて、風早は言った。
「爽子、……挿れるよ」
爽子はひとつ息をついてから、言った。
「……うん。風早くん、…ぜんぶ、ほしい…………」
そして、シーツをつかんで、目を瞑った。
0365ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:31:11.79ID:XKfydoMz
明けましておめでとうございます。
ありがとうございます、続けさせて頂きます。


「桜の季節に」つづき

■■37

― episode 4 ―

逸る気持ちを抑えて下着を脱ぎ去り、枕の下から取り出した避妊具を自身に嵌める。
くるくると装着されていく様が、あっという間なのに、もどかしく感じて。
爽子に覆いかぶさると、目を瞑ったままの瞼がぴくりと震えた。
そっとキスをしてから、風早は、爽子のそこを探る。
先ほど指を差し入れたうるみの中心を探り当てると、爽子の身体が震え、睫が揺れた。
――あー…、かわいいなー……。
ぼんやりとそう思いながら、風早は、自身に手を添えて、爽子のその部分に押し当てた。

つぷり。

「……――――――ッ!!」
「…うっ…………」
思った以上に熱くて。
思った以上にきつくて。
…想像を遥かに越えて、気持ちがいい。
途端にゾワゾワと、快感が波のように這い上がってくる。足の先までが痺れる。まだほんの、先端しか挿入(はい)ってないはずなのに。
――うわー…すごい気持ちい…………。
熱くやわらかい爽子の膣内(なか)が、絡みつくように風早の先端を包み込む。
それで、全身で爽子を感じる。
は、は、と短く呼吸をして、意識を押しとどめる。うっかりすると、すぐわけがわからなくなってしまいそうだ。
朦朧としそうな意識の中で、爽子を見ると。
ぎゅっと目を瞑り、白くなるほど唇を引き結んで眉根を寄せる爽子の姿があった。
「…ご、ごめん!痛い!?…よね」
すると爽子はふるふると首を振り、それで余計に下腹部が擦れて、身体を震わせた。
「……か、かぜはやくん……」
0366ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:31:49.22ID:XKfydoMz
■■38

見上げてくる瞳が何度かまたたいて、湛えた涙が睫を彩る。
「……あ…、かぜはやくんの、…が、入ってる……?」
――マジ、かわい――…。気持ちいー……。
衝動的に突いてしまいたくなるのを全力で堪えて、それで大きく息を吸う。吐く。
「……入ってるよ。俺の。爽子の中に。…わかる?」
「…ん、なんとなく。…つながってるのかなって…」
ん、と爽子が頷くと、閉じられた瞳から溢れた涙が幾筋も零れた。
「…ごめん。痛いよね……」
「……ちがうの、うれしいの…………」
そうして、爽子は潤んだ瞳で風早を見つめた。
「……すきなの。しょーたくん、…しょーたくん、…うれしいの。すきなの――……」
言いながら、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
一体何と形容したらいいのか。
胸を突かれて、風早は言葉を失ってしまった。
少しだけ入った自身で、繋がったふたりの身体。
繋がった部分が熱くて。きつくて。
すきだと泣く顔が可愛いくて。大事で。
風早は、応えようとして、声が詰まり、喉を鳴らしてしまう。
だが、泣き顔で一心に見つめてくる爽子を、しっかりと抱きしめて、言った。
「…ん、俺も…さわこがすきで…だいすきで……うれしい――……」
そっと、唇を重ねる。
――今日で一番優しいキスかも。今日で一番、幸せなキスかも……。
ゆっくり触れて、額を撫でると、爽子の目がまたきゅっと瞑られた。
けれど、すぐ瞼が開いて。
みつめあって。
微笑んで。
もう一度唇を重ねた。
――はじめてなんだ。爽子も俺も。ゆっくり、大事にするんだ。
「もう少し、入れるよ。痛かったら…言って……」
唇を重ねたまま、自身に手を添えて、少しだけ、奥に押し進む。
すると同時に、重ねた唇からくぐもった声が漏れ、身体が強張った。
「…――ッ!!」
「……さわっ…!!」
やわらかい。熱い。きつい。
――すげー……。
――…でも……。
風早は、快感に朦朧とする頭で、必死に爽子に問いかける。
「…ゴメン、さわ、…すげー気持ちいー……。痛いよな、ごめん。…ごめんな……」
少しだけ、腰を押し進める。
0367ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:33:35.66ID:XKfydoMz
■■39

ふたりの距離が縮まっていく。全部持ってかれるような快感に引きずられる。
「…………ッ、…ん、……」
「…さわ、こ……」
ゆっくり、ゆっくり。けれど少しずつ確実に腰を進める。
実際のところまだ半分も入っていないのかもしれない。けれど、熱くやわらかいものに絞られる感覚と、爽子が自分を受け入れてくれているというその事実で、繋がった部分だけでなく、下半身から、背中から、抗い難い快感がぞくぞくと這い上がってくる。
「…さわこ、…力、抜いて…………」
全身も、表情も、強張っているのがわかる。
こんなに近くにいて、繋がっているのに、もっと爽子に触れたくて。爽子の強張りをほぐしてあげたくて。
のけぞった白い首筋に唇を落とす。
「…ひゃんっ」
聴いたことがないような声。
身体全体がびくりと震え、更にぎゅっと締め付けられて、その後少しだけ緩むような感じがあった。
無意識というか、爽子への気持ちと快感だけにつき動かされるように、風早は爽子の上半身にキスの雨を降らす。
首筋に。肩口に。胸元に。頂きを掠めながら、たわやかな胸のふくらみに。
しばらくそうして、爽子の荒い息遣いが少し落ち着くのを待っていると、ふと、爽子の手が風早の頬に添えられた。
「…爽子?」
涙に濡れた瞳を細め、爽子は微笑んだ。
「…かぜはやくん」
名前を呼んで、そこでいっそう涙が溢れ、一筋が、その上気した頬を伝った。
「……風早くんとつながってるの。…しあわせなの……」
それだけ紡いで、引き結ばれる唇。けれど、こらえきれなかった涙があとからあとから頬を伝う。
風早はそんな爽子に唇を重ねて、抱きしめた。
強く。でも、優しく。
「俺、も。しあわせ……」
そして、少し態勢を立て直す。
零れ落ちた涙に口づけて。
「…もう少しだから、爽子」
爽子は頷く。
0368ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:34:23.14ID:XKfydoMz
■■40

ゆっくりと。
奥に進むほどに締め付けがきつくなり、快感で頭がぼうっとし、息をするのも困難になってくる。
感じるのは、爽子の体温と、華奢な身体と、熱くきつい快感だけ。
想うのは、爽子へのいとおしさだけ。
少し進んで、少しだけ引いて。
押し分けるようにゆっくりと埋めていく。
そうして、やっとのことで最奥と思われるところまで到達する頃には、全身に汗をかいていた。
それで、大きな息をつく。
――気持ち良くて、どうにかなりそうだ……。
「……全部、入ったよ」
搾り取られそうな強烈な快感の中でなんとかそう言うと、爽子は、きつく閉じていた目をゆっくり開け、唇を強く引き結んだまま、微笑んだ。
その瞳は潤んでいる。
大事にしたいのに、止められなかった。きっと、痛いのに。
「…ごめ、…さわ、ごめん……」
頭を、頬を撫でながら言うと、爽子はふるふると首を振った。
「…あ、謝らないで…いいの……」
やはり痛いのだろう、爽子は時折引きつる顔を隠すように手をかざす。
その手を取り、自身の背中にまわさせた。
それでまた少しつながりが深くなり、爽子の苦しそうな吐息が聴こえる。
「……大丈夫?…痛い?」
涙の宿った睫が震える。
「…………、ん。だいじょうぶ……」
大丈夫と言いながら、笑顔を作ろうと努力しているかのような眉根。少し動いただけで、まるで悲鳴を飲み込むかのように、白く引き結ばれる唇。
明らかに大丈夫そうではない。
「…ごめん…爽子…………ごめんな………………」
0369ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:35:36.30ID:XKfydoMz
■■41

はじめてが痛いらしいというのは、知識として知っていた。でもまさか、これほどとは。
我慢強い爽子の瞳から零れた涙が、頬を伝って、髪を、シーツを濡らす。
一方風早は、下半身からくる痺れるような気持ち良さに眩暈がするようだった。
ただでさえ搾り取られるようなのに、少しでも擦れると、あまりの快感に息どころか声まで漏れそうになる。苦しそうな爽子の顔を見ていてさえ、気を抜くと腰を揺らしてしまいそうで。
言葉少なな爽子の唇から漏れる熱の篭もった吐息。寄せられた眉根。
風早の視線を避けるかのように瞑られて、ぴくぴくと震える瞼。
頬を撫でると、力を抜こうと努めているのがわかる。不自然に上下する肩で、不規則な呼吸。
それでも、ふとした拍子に目が合うと、精一杯微笑んでくれる。
痛いのはわかってる。乗り越えさせてやらなきゃいけないのもわかってる。
なのに、爽子が耐えてるのが痛みで、自分が耐えてるのが快感だなんて。
――こんなのって、あるか……。
涙に濡れた爽子の頬に、懺悔するかのように唇を寄せる。
そうしていても、不規則に締め付けられ、爽子の膣内(なか)を感じる。
そのままひとしきり、お互いに大きく息をついていると、
「…わ、…たし、を」
爽子はゆっくりと言った。
「…傷つけられるのは、しょーたくんだけ、だから……だからいーの。しょーたくんが、いーの…」
そうして爽子は、風早を抱きしめる――つかまる、という方が正しいくらいだが――細い腕に力を込めた。
「……しょーたくん、まちがっててもいいって言ってくれたよね。…わたしも、正しくなくてもいいって言ったの…覚えてる…?…でもたぶんしょーたくん、全部ほんとうだよ…どれも、正しいんだよ…。思うとおりにして、大丈夫…わたし大丈夫だから…」
そして、風早の頬をそっと拭った。
「だから、泣かないで」
ハッとした。
泣いていたのだ。
0370ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:36:09.92ID:XKfydoMz
■■42

それを自覚した途端、ぽたっ、ぽたっ…と、風早の目から溢れた涙が爽子の頬に落ちた。
「…だって、さわこ」
爽子が拭っても、あとからあとから零れ落ちる涙。
「…こんなにきつくて、痛くないわけないのに。俺ばっかり、こんな……」
爽子は、ただただ風早と深く繋がれたことが嬉しくて。
顔をくしゃくしゃにして涙を零す風早がいとおしくて。
「…ね、……気持ち、いい……?」
風早が頷くと、また、ぽたっ…と滴が落ちた。
「…すごい、気持ちいい……。俺、ばっかり……」
痛みは確かに相当ひどい。爽子は思った。生きてきて今まで、こんなに、我慢できないかもしれないほどの痛みは初めてだった。
でも。それだけじゃないから。
届いてほしい気持ちが、あるから。
「…うれしい……。風早くん、わたし、うれしいんだよ」
涙の伝う風早の頬を再び拭って、そのまま、そっと撫でる。何度も、何度も。
爽子は、苦痛を表情に出さないように努めながら、ゆっくりと言った。
「…大丈夫。大丈夫、なの」
苦しい息を気づかせないように。嘘をつくわけじゃなくて、誤解をさせないために。
「…やっぱり、何しても私ばっかりいい目にあう……」
微笑んで言う爽子に、風早は、耐えきれずに、自身の口元に手の甲をぐっ…と押し付けた。
そうしないと、嗚咽を漏らしてしまいそうだったから。
「……どこがだよ…」
「だって」
爽子は微笑んだ。
「…しょーたくん、の、生まれてはじめて…見れるんだもん……。しょーたくんがわたしで気持ちよくなってくれて…わたしのはじめてを、しょーたくんがはじめて、して、くれてるんだもん…」
えへへと微笑(わら)う爽子の瞳も、再び、みるみるうちに涙でいっぱいになる。
「……爽子…」
ぽたり。
「……ね。私が今どれだけ幸せか、想像できる?私がとっても幸せなの、しょーたくんに、届く……?」
ぽたり。ぽたり。
一粒、また一粒。風早が頷くと、その瞳から爽子の頬に涙が落ちる。
「…そんなの、俺だって…爽子のはじめてが……、…俺の方…が……」
最後は言葉にならなかった。
溢れた涙をこらえるのが、込み上げる嗚咽を抑えるのが、難しくて。
0371ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:36:39.87ID:XKfydoMz
■■43

唇を引き結ぶ風早の頬に、爽子はそっと口づけた。
「…ん。…じゃあ、また一緒に、“はじめて”だね」
そういってふわりと微笑む爽子がいとおしくて。
風早は、爽子を抱きしめるようにして、爽子の肩口に頬を押しつけた。
そんな風早の頬に手を宛て、爽子は、自分の顔のあたりまで引き上げる。
同時に、深くつながった下半身も揺れて、一瞬だけ顔を歪ませてしまったが。
そうして爽子は、涙に濡れた頬同士を擦り付けた。
「…ほら、こうすれば、もうどっちが泣いてるのかわからないよ。しょーたくんの気持ち、…届いてるよ……。…だから、微笑(わら)って、…しょーたくん」
ふたりの涙が混じり合って流れ落ちていく。
爽子の笑顔が、風早の贖罪の涙をほどいていく。
「……ん」
風早は鼻をすすって、微笑んだ。
「俺も、…幸せ。爽子と、おなじ。…すっごい、幸せ……」
そうしてふたり、微笑み合って。唇を重ねた。
「…………やっと届いた」
つながったまま、触れるだけのキスを何度も重ねて。なんだか気恥ずかしくて、照れた笑みが零れてしまう。
爽子は微笑んで、風早の額に口づけた。
「…だいじょうぶ、怖がらないで、しょーたくん……。続き、して、大丈夫だよ」
つながったまま。確かに、このまま終わるのは難しいけれど。
「…………けど、」
「大丈夫」
きっぱりと、爽子は言うが。
「…でも、あのね、…お願いがあって……」
窺うようにそっと、風早の目を覗き込んだ。
「……ぎゅって、して…」
その声と同時に膣内(なか)がきゅうと狭くなり、急に、あの、眩暈のするような快感が立ち戻る。
風早は、ん、と頷くと、爽子の細い身体を強く…しかし負担をかけないように抱きしめた。
「名前も、呼んで……」
あまりにも、ささやかな願い。あまりにも、可愛らしい願い。
「…さわ……爽子…………」
そして涙のにじむ瞳で、微笑みの形を取られた唇は、小さく、ささやいた。
「…キスもして、ほしいの……」
0372ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/01(木) 16:37:11.44ID:XKfydoMz
■■44

「…うん」
風早は、は、と息をつくと、そっと唇を重ねた。二度、三度。
「…なるべく、早く、終わらせるから」
嘘ではなかった。
情けないが、初めての快感は刺激が強すぎて。挿入に時間をかけたこともあり、既にあまり余裕がなかった。
「……もったいない、よ」
爽子は微笑んだ。
「…いっぱい、風早くんの、すきに、して……」
――…〜〜〜!!
もう言葉もうまく紡げず、ん、と小さく頷くと同時に、風早は、おそるおそる腰を押し進めた。
最奥までを貫いていたそこが、逆に、押し戻される感覚がある。
「…ん……、っく……」
少しだけ腰を引き、またゆっくり、ゆっくりと、深くまで。
元より、速くなんてしなくても、爽子に強く締め付けられる感触で、果てはごく近いように思えた。
「…しょ、しょーたくん、」
いつしか風早の頭は爽子に抱きしめられていた。
苦痛に歪む顔を見られたくなかった爽子がそうしたのだが、そのことを風早に気づかれないように、爽子は言葉を紡いだ。
「…ね、……気持ち…いい……?」
「…ん、すげー気持ちい……。さわこがだいすきで、どうにかなりそー……」
そして風早がふと顔を上げると。
そこには、眉根をきつく寄せて、痛みに耐えている爽子の顔があった。
風早はその頬にそっと手を宛てた。
「…ち、ちがうの、だいじょうぶ、なの」
ハッとした爽子が首を振ると同時に、一滴、涙の跡にまた伝う。
風早の頭を抱えて、顔を見られないようにしていたから。見られると思っていなかったから。
爽子は涙に濡れた目を隠して慌てて顔を逸らそうとするが。
「……大丈夫、わかってる」
風早は微笑んだ。
「…ゆっくり、息、して。…力、抜ける…?」
風早は、自身の頭を抱いていた爽子の腕を解かせて、ぎゅ、とその華奢な手を握った。
はじめて手をつないだ、あの夏の日のように。
0374ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:37:14.75ID:Qa0yVEOF
ありがとうございます。もう少しです。


「桜の季節に」つづき

■■45

そうしてからその指先に唇を落とし、そっと、自らの背にまわさせた。
「…わかってるから、…さわこ。痛いだけじゃないの、俺と同じ、幸せなの…わかってるから」
爽子は、再び目に涙を湛えて、微笑んだ。
――……ちゃんと届いてる。
下腹部の痛みは相当だけど。でも。
はぁ―…と大きく深呼吸して、爽子は全身の力を抜くように努めた。
しかし、風早を受け入れたそこも、風早の身体を挟む形の両脚も、強張りは一向に解けない。
風早は、動きを止めて、汗の伝う爽子の額にかかった長い髪をそっとのけ、優しく唇を落とした。
「さわこ、…さわこ、大丈夫だから。俺見て」
「…ん、うんっ……」
――たぶんもう俺すぐだ。
腰から這い上がってくるぞくぞくとした感覚に、終わりが近いことを察する。
――でも、なんか、ちょっとだけでも…痛くなく、できないのかな……。
風早は、快感と熱で朦朧とする頭で思い至り、ゆっくりと腰を引いた。
ごく浅く、ほんの先端だけがかろうじて挿入(はい)っているようなくらいまで。
すると、触れる爽子の身体から少しだけ力が抜けたのがわかった。
苦しそうに荒かった息遣いが、少し深く、ゆっくりと聴こえる。
「…このへんなら、少し……ラク?」
爽子の表情が少し緩んだのを見て、そっと問いかける。
すると、爽子が小さく頷いた。
その拍子に額から流れた汗が、ひとしずく、頬に添えた風早の手に伝って、にじむ。
ゆっくり、ゆっくりと。
それ以上深くならないように気をつけながら、うるみの入り口付近で自身を擦り付けてみた。
「……ぁ、ゃぁんっ…?!」
突然降ってきた、戸惑うような嬌声。
今までと異なる声色にハッとその顔を見ると、爽子は驚いたような表情をしていた。
指で触れた時に聴いたような、苦痛ではなさそうな、甘い声。
――これなら、もしかして?
もう一度、同じように。
「…っあんっ……っ!!」
同じように、色を含んだ声。眉根は寄せられ、目はきつく閉じられたが、紅い唇から漏れる声には、明らかに甘さがにじんでいた。
0375ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:38:55.09ID:Qa0yVEOF
■■46

「…さわこ、ここなら……大丈夫?」
ゆっくり、擦り付ける。円を描くように、入り口をほんの少しだけ広げるように。
――…っていうか俺がもう大丈夫じゃないかも……。
「…ん、あ…っはん……」
のろのろと擦り付けられる感触に合わせるように、爽子の目がゆっくりと開かれる。
「……しょーた、くん…、…あ、」
とろんとした視線。
もう一度ゆっくり瞬いてから開かれた瞳は、やっぱりとろりと、まどろむように気だるげで。
一心に風早を見つめているのに、どこか、焦点の定まらないような…そんな、頼りなげな視線だった。
「…なんか、わたし……」
紅潮した頬。
薄く開かれた紅い唇からは、くぐもった吐息と、甘やかで、少し不明瞭な、戸惑いの透ける声。
「…ここなら、あんまり痛くない?…少しは、…その、ちょっとはちがう感じとかとか…する……?」
ん、と喉を鳴らして、爽子は風早を見つめ、恥ずかしそうに目を伏せた。
そして、ごく小さく頷く。
「…ん、よかった……」
――……ぎゅってしたい……。
風早が爽子を抱きしめる腕に力を篭めると、爽子の腕も同じように風早を強く求める。
ふたりはごく近くで見つめあい…爽子の頬に残った涙の跡に、目じりから零れた涙がまた一筋、伝った。
風早は、爽子の膣内(なか)のギリギリまで浅いところで、ゆっくり、ゆっくりと、入り口付近に自身を擦り付ける。
「…あっ、あんっ…………ごめんね、しょーたくん、痛かったの、ほんとはさっきずっと痛かったの―…」
零れた涙が、ぽろぽろと頬を伝う。
「ん、知ってる。…痛いの我慢してくれてたの、知ってる」
風早は頷いた。もっと優しく答えてやりたいけど、絶望的なほどの快感に抗えずに。
つながりをごく浅くしたせいで、焦らされるようなもどかしい快感が生まれ、逆に煽られて、身体が震えそうになる。
「今もまだ痛いけど、…だけどね、なんか、今、ちょっとだけ…ちょっとだけだけど、でも、ちがうの…」
「ん」
声だけでなく、繋がった部分から、そして抱きしめる腕からも、それを感じていた。
少しだけ、爽子の身体の緊張が、緩んでいることを。
そうして、それに反比例するように膣内(なか)がきゅうきゅうときつく締め付けてくることを。
「…しょーたくんの、…熱いの……わかるの……」
繋がりはさっきより浅いのに、心はより深くつながっているような、そんな不思議な感覚だった。
0376ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:41:25.25ID:Qa0yVEOF
■■47

それに、そう訴えかける爽子の、なんと色っぽいことか。
涙に濡れた瞳は伏し目がちに風早を見つめ、紅潮した頬は、寄せられた眉根は、もう引き攣ってはいない。吐息は苦しそうなものの痛ましさは影をひそめ、紅い唇は、熱く、絡まるような甘い声を紡ぎだしている。
――…かわい――……。
爽子の、戸惑いながらも風早を感じてくれているその、色がにじんだ表情を見ていたら、余計に煽られて。
――……あ、もう。
「…しょーたく、も、苦しそう……大丈夫……?」
頬に寄せられた爽子の手、絡まるような甘さを含んだその声。もう限界だった。
「…ん、おれ、もーイキそ…」
信じられないくらい幸せだった。
「…しょーたくん、すき……」
爽子は朦朧とする意識の中で一心に風早を見つめた。
「…すきなの、だいすきなの……」
――…もう。
襲いくる波のような感覚に抗えない風早と、はじめての快感のかけらに触れた爽子。
ふたりは、強く抱きしめ合って、どちらからともなく唇を求め合う。
「…ん、しょーたく…ん……っ」
「…俺も、…だいすきだよ。…さわ…爽子……」
激しく唇を重ね、華奢な身体をかき抱く。
そして爽子の浅い部分に内側から数度。
押し付けて、風早は。
「…さわ…こ……っ」
……果てた。
0377ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:43:14.51ID:Qa0yVEOF
■■48

   *   *   *

幾度か大きく脈打った後、ぶるぶる…っと身体が震え、風早は、抗いようもなく爽子の上に沈んだ。
胸を大きく上下させて肩で息をつき、ほとんど目を閉じたままでお互いの唇を探り当て、ゆっくりと重ねる。
「……ん…っ、さわこ…」
「…ん、…しょーた…くん……」
ゆっくりと顔を上げて、再び乱れたお互いを見つめ合う。
汗と涙で濡れた顔を見合わせて、ふたりは照れくさそうに微笑んで。
しっかりと、抱きしめた。

そのまましばらくの間、余韻にゆらゆらと浮かぶように抱きしめ合い、ついばむように唇を重ねていた。
――とけて、まざっちゃうみたいだ……。
風早がぼんやりとそんなことを考えているその視線の先で、やはりとろけそうな表情で視線を返す爽子。
――いいな、こういうの……。
何度したかわからない口づけを交わしながら、思い当たる。
――あ、抜かないと……。
「…抜くね」
「ん、…あんっ……」
ごく浅い位置で果てたので、繋がりはすぐに解けた。
避妊具の処理を手早く済ませていると、ちょっとせつなそうに眉根を寄せて目を伏せた爽子が、息をつきながらのろのろと目を開け、ゆっくりと風早の瞳を覗き込んだ。
その名残惜しそうにも見える表情で、果てたはずの風早の下半身が、また少し、甘く疼く。
「…反則。そーゆー顔するの」
「……え、そんな…」
「…今の顔、俺、…ひとりじめ」
そっと口づけて。唇に。頬に。瞼に。
くすぐったそうに微笑む爽子に、風早は笑みを零すが。
「大丈夫?…その、……身体。…痛む?」
額に張り付いた前髪をそっとのけて、さらさらと零れる長い髪を優しく梳いてやると、爽子は、恥ずかしそうに視線を落として、言った。
「…ん、ちょっと、だけ」
平らな下腹部にそっと手を宛てる姿が痛ましくて。
けれど、一糸まとわぬ姿のまま恥じらう表情が、いじらしくて。
「でも、だいじょうぶ…だから。…うれしい、から」
0378ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:44:56.54ID:Qa0yVEOF
■■49

語尾は殆ど消え入るように。そうささやいて、爽子は少しの間逡巡した後、風早の唇にそっと自らの唇を押しあてた。
そうして、自分のしたことなのに驚いたような顔をした爽子は、逃げるように、風早の素肌の胸に顔をうずめた。
「…………煽んないでよ――……」
そのあまりの可憐さに、たまらなくなる。
風早が爽子の紅潮した頬をそっと撫でてから、上向かせもう一度軽く唇を重ねると、爽子は恥ずかしそうに口元を覆った。
「…だって、…かっ、風早くんがっ、…すごく、男のひとだなって思って……」
言いながら、耳まで赤くなって、顔全体を手で覆ってしまう。
――…かわい――……。
風早は、その、細くやわらかい身体に腕をまわした。
「……爽子、すごいかわいかった――……」
そして髪に、耳に、額に、頬に…唇を落として、爽子を胸に収める。
爽子は、いやいやをするように首を振ると、か細く言った。
「…やぁ…は、はずかし――……」
「……や、俺も、相当、…はずかしいんですけど」
その言葉に爽子がちらりと風早の顔を見上げると、ばっちり視線がぶつかってしまい、もはや逸らすこともできずに頬を染める。
「…ん、おなじ、だもんね……」
「…うん、おなじ……」
0379ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:48:24.47ID:Qa0yVEOF
■■50

――いろんな“おなじ”があるもんなんだな――……。
ふと、学校祭の時の告白を懐かしく思い出して、その爽子と今こうして繋がれて、一糸まとわぬ姿で抱きしめ合っていることを、奇蹟のように尊く感じた。
「……おなじ、だから」
爽子は、ゆっくりと言った。
「…大丈夫だよ、しょうたくん。…わたしたち、これからも、ずっと」
そうして爽子はそっと微笑む。
風早は、爽子を抱きしめる腕に力を篭めた。
「……うん。ずっと。な。」
風早がそう言うと、爽子は、少し身じろぎをして風早の頬に自分の頬をそっと擦り付けた。
「…しょうた……くん……。すきなの……」
あたたかかった。
頬を数度擦り付けてから、風早は、その頬に手を宛て――
「ん。爽子……すきだよ……だいすきだよ……」
唇を重ねる。
優しく触れる唇に、爽子は微笑む。
そして潤む瞳で風早を見つめた。
「…ね。気持ち、届くの。すごく、しあわせ……」
おなじように、風早も微笑んで。
「おれも。しあわせ……」
そうしてふたりは、月が照らす満開の桜の影が落ちるベッドで、互いの肌のぬくもりに包まれながら、まどろんだ。
出会った時の、あの満開の桜を夢に見ながら。


   いつか 君に 届くだろうか――
   あの時感じた あの気持ちが
   大きくなった この気持ちが


   誰よりも すきだよ
 
 
 
 
 
0380ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:51:22.88ID:Qa0yVEOF
■■51

― episode 5 ―

「…うん、そうなの。まだ少し時間あるから、空港の中お散歩しよっかなって。…ん、なんで?大丈夫だよ?…えっ?……。……い、言わないよ、なんにも……。………………いや、言わないんで…。あ、うん、ちょっと待ってね!」
ハイ、と手渡される爽子の携帯。
下がっているのは2つのストラップ。以前風早がプレゼントしたものに加え、昨夜神社で引いたおみくじに入っていた、ピンク色の、桜の花をかたどったお守り。
『あ、風早―?いろいろありがとね、助かったわ。結構時間使っちゃって悪かったね』
あやねだった。
「や、いーよ、元々そのために来たんだし。…まあ、あの、色々と大変だとは思うけど…」
『大丈夫。がんばるわ、…あたしだって。…………ところでさ、』
その声色、その口調。
イヤな予感がすると同時に、ささやくような声色で次の言葉が続けられた。
『…ほどいた?』
途端に携帯を取り落としそうになる風早に、隣の爽子が慌てる。
「しょ、しょうたくん大丈夫?!」
驚く爽子にジェスチャーで大丈夫と伝えて、咳払いをひとつ。
「あのな、おまえ…おまえらさ、」
『ふ〜ん、“しょうたくん“ねえ……』
慌てた爽子の声が大きかったため、しっかり携帯の向こうにも届いてしまったようだ。
「…くそ……」
頬を染めて額に手を宛てる風早を、爽子が心配そうに覗き込む。
それで、胸元のネックレスがキラリと揺れるのが見えて。
…思い出すのは、昨夜のこと。
『言っとくけど、私たちからのプレゼントってことじゃないからね!決めたのは爽子だから。爽子からのプレゼントなんだからね!』
「…わかってるよ!!」
少しの間。



『……つまり。ほどいた、のね』
 
 
0381ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:52:26.29ID:Qa0yVEOF
■■52

――…しまった。
撃沈。
オウンゴールに気づき、もはやしゃがみこんでしまった風早の隣で、爽子がオロオロとしている。
『やだあもう…“次”のタイミングってのがまた難しいわよねえ…。ま、がんばって、“ジェン・トル・メン“』
まさに語尾にハートマークか音符マークでもついているような口調で、あやねからの電話は切れた。
――…ほんとやのやだ。
携帯越しでもわかる、ニヤニヤしているであろうあやねの顔が容易に想像できて。
「〜〜〜あ――……」
風早は頭を抱える。
「…しょうたくん、どうしたの?顔、真っ赤だよ?」
心配そうな顔で覗き込む爽子。
「……うーん、やっぱだめかも」
「えっ!!」
どうしようどこか休めるところ、熱かな、お薬買ってくる?それともまずお水かな、とオロオロする爽子の手を引っ張って。引き寄せて。その頬に。
キス。
不意打ちは今までもお互いあったけれど。
でも、柱の陰とはいえ、こんな、人通りの多い往来でなんて。
爽子は思わず、熱くなった頬に手を宛てた。
昨夜から、はじめてのことばかり。
「治った」
「え?え?」
意味がわからず頬を染めて困惑する爽子の手をぎゅっと握って、立ち上がる。
「いや、まあ…細かいことはいーや」
爽子の胸元でキラキラと輝くネックレス。昨夜はあのネックレスだけを身に着けた姿で…………。無意識のうちにごくりと喉を鳴らしてしまいながら、ちらりと爽子に目を遣った。
0382ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:54:55.15ID:Qa0yVEOF
■■53

一方爽子は、どこか悪いんだろうか、もしかして昨夜無理させてしまったんじゃないだろうか…などと考え、……“昨夜“。爽子もまた「昨夜」の色々なことがぐるぐると頭の中に蘇り、それを風早に気づかれやしないかと、真っ赤になりながらちらりと見上げる。
ばちっ。
お互いにちらりと盗み見たつもりが、ダブルで意識してしまって、お互い、頭の内にある事が事だけに余計に気恥ずかしくなってしまう。
だが。
風早の一言で、それは笑顔に変わる。
「…俺、爽子のこと、ずっと!大事にするから!」
ずっと。
ずっとのその先は、きっと。
爽子の胸元で、きらきら星がうれしそうに瞬く。
「……うん。わたしも!」
そして、にっこりと微笑む爽子の手を取って、歩き出した。
あの、クリスマスの夜のように。

爽子の首筋には、長い黒髪に隠れて、桜の花びらみたいな、キス・マーク。
時間が経ってもそれが消えないことに気づいて、爽子が困って電話し、風早が謝罪ながらに慌てるのは、その夜、それぞれが自宅に戻ってからのことだった――。


<「桜の季節に」END and To Be Continued…>
 
 
 
0383ピアノ ◆QvuLenpyEs 2015/01/02(金) 21:58:33.48ID:Qa0yVEOF
以上です。
長くなってしまってすみません。
お付き合いありがとうございました!
作品が好きな一心で書いてしまいましたので、
君届が、風爽が好きな方に少しでもお気に召して頂けたらいいなと思っております。
支援くださった方もありがとうございます。
励みになりましたし、おかげさまで最後まで投稿することができました。

なお、スマホを使われている方もいるでしょうから、文章間の中での改行はしないように努めました。
PCの方で読みづらい場合はウインドウサイズを調整して頂ければと思います。

また、過去ログもたくさん読ませて頂いております。
雨宿りのラブホでのはじめてのお話とか、卒業後のくるみちゃんのお話とか、
おねだりとか、直前で投稿されていた下心の夢のお話とか…
挙げきれませんが、どれもこれも好きな作品ばかりで、楽しませて頂いております。
まとめサイトの管理をされている方もありがとうございます。

それでは失礼いたします。
因みに5章立てにしたのは、長くなったせいもありますが、
あのクリスマスの夜のキスの回数(5回めは爽子からのほっぺちゅーということで)を
意識してみました。なんて。
0384名無しさん@ピンキー2015/01/03(土) 00:54:08.80ID:FeRu+eyN
素晴らしいの一言です
お正月からありがとうございます

確かに風早ははじめての時はものすごく丁寧にしてくれそう
0386名無しさん@ピンキー2015/01/03(土) 23:53:19.21ID:AR3WyZmA
乙でした
新年早々素晴らしい作品をありがとうございました
このスレチェックしてて良かったー
0387名無しさん@ピンキー2015/01/13(火) 16:43:04.59ID:RdqYqBUt
あああー
乙です!
世界観がそのままでとてもドキドキしたよ
長編にもかかわらず、ポイントポイントでハッとするような表現や台詞がちりばめられていて
読み終えた今、あたたかい気持ちになりました
是非、爽早の2回目も書いて欲しい!
あやねの「ほどいた?」にニヤリとしたわ
0388名無しさん@ピンキー2015/01/16(金) 14:37:10.29ID:b6Lmmp6i
ちょっと見てない隙にすんげープレゼントきてた!
わーーーありがとうございます!!
二人のハジメテおいしすぎるうううう!
そして、タイミング難しい2回目、マジ期待しちゃっても???w
読みたいですよみたーい!じたばた!
0393名無しさん@ピンキー2015/07/21(火) 19:56:36.36ID:pMjKgV40
                                     -‐‐- _
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                             i: : :.{. r  `Τ´    !  l: : : :l: :ゝ、: : :ヽ i.
                          i: : : i  i   /j     .!_∧: : :∨ 、 : : : : :
                             i: : : :i /    i    .//. ∨: :∧ ヽ
0395名無しさん@ピンキー2015/09/09(水) 12:21:53.65ID:cy8s/vBz
遅くなりましたがピアノさんGJ
風早が泣いた理由、風らしくてもらい泣き

本編の龍ちづの朝チュン、どなたか書いてくれないかなー
0397名無しさん@ピンキー2016/09/17(土) 14:10:41.44ID:aak93J8u
問題は続かないことかと
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