瓦礫の山。
 ひび割れた舗装道路。
 ひしゃげた車、歪んだ道路標識―

 「さながら終戦直下の日本、てところかしら?」
 「アンタ何歳よ?!…でも、本当にひどい有り様ね」

 普段軽口を言い合って口喧嘩の絶えない仲の私たちでも、目に入る光景が
ずっとこんな調子では、さすがに滅入って弱音が漏れる。

 「あの日」から3日が経過していた―

 「そういえば、牧村さんなんでこの島に来たんだっけ?」
 「バスで」
 「…いや、聞きたいのは交通の手段じゃなくて」
 「冗談ですよ。大学に行くため、て前に話さなかったっけ?」

 「う〜ん、聞いたかもしれないけど、出会い頭があんなんだったから忘れてたかも…」

 私、牧村里奈と本条咲(さき)さんとの出会いは最悪だった。
 「死に物狂いって状況は容易く人を狂わせるもんじゃないの?」

 3日前に車の下敷きになりかけていた咲さんを私が助けた後、森田
(名前は後から知った)と言う男に見捨てられたと憤慨していた咲さんに、
ついその時自分の苛立ちに任せて出た私の言葉にキレた咲さんと口論になり、
その日以降めでたく(?)口喧嘩仲間道中を繰り広げていた。