本来ならば、里奈は暴徒の男に見つかり捕まった時点で詰み、更に
たくさんの暴徒たちに囲まれ、暴虐の限りを尽くされて惨たらしい死を迎えて
一巻の終わり―のハズだった。
 それを。

 「んッ…あ、む…」
 「……う、…」

 里奈は一人の若い男の暴徒に、自身の身体を委ねる事で、一時的な身の安寧、安全を手に入れていた。
 (とにかく、まずは叫ばれたりしないようにしないと…ね)
 服を着たままとはいえ、カーセックスさながらな光景がそこにあり―
 そんな中で、里奈は暴徒の男の挙動や動きを冷静に見極めつつ、また自身の色気が
どこまで相手に通じてるのか、な危険な駆け引きに身を委ねていたのだった。

 (…「最後まで」されちゃったら、もうそれは仕方ない、かな…)
 里奈のその悲壮な覚悟が、どれほど暴徒の男に伝わったかはわからない。
 しかし、次第に加熱していく互いの身体のまさぐり合いに、意外にも暴徒の男の方が
徐々に、里奈の身体を弄ぶような事に消極的になり始めていた。
 (?―…え?)

 里奈は内心、焦った。
 要するにこのやりとりの意味は、自身の身体を相手に委ねて、自分は
(犯されてもいい)から、自身の命の保証と、仲間たちへの追走、干渉を諦めてほしい
とした願いの代償行為なのだから―