【俺の】結婚&新婚萌えスレッド第5夜【嫁!】
0001名無しさん@ピンキー2010/10/27(水) 20:39:32ID:j60ZHXJJ
「あなたの色に染めてください」という意味が秘められた
純白のドレス・・・そんな姿の花嫁さんたちにハァハァするスレです。
愛し合う2人の世界を描くもよし、
式場で花嫁を奪い去る黄金パターンを想像したり、
逆に花嫁を奪われるといった流行りの寝取られ展開を入れてもよし、
政略結婚で好きでもない男に嫁がされる薄幸の美少女に興奮するもよし、

とにかく花嫁が出ていれば何でもOKです!
もちろん2次元キャラ同士のカップリング&新婚生活なんかも大歓迎!!

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【俺の】結婚&新婚萌えスレッド第2夜【嫁!】
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【俺の】結婚&新婚萌えスレッド【嫁!】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149503791/

保管庫
2chエロパロ板SS保管庫
http://red.ribbon.to/~eroparo/
「オリジナル・シチュエーションの部屋その7」に収蔵されています。
0004名無しさん@ピンキー2010/10/29(金) 15:01:25ID:vNaINX14
>>1

大きい旦那と小さい奥さんのスピンオフ?
であったクール眼鏡な
奥さんと料理人の旦那の話がまた読みたいな
0005十年目の秘密(後) 1/122010/10/30(土) 15:07:19ID:LZMts9cS
残り投下
スレ保守ありがとうございます


* * *

* * *

 せっかくだから少し休もうとベッドに並んで横になる。
「病院いつにする?俺も行こうか。最近はそういうの多いんだろ」
「えー……恥ずかしいなあ。仕事大丈夫?」
「うん、まあ無理はしないから。できればって事にしとくよ」
「本当ね?ちゃんと頑張って貰わなきゃ困るんだからね、これからも」
「わかってるよ」
 苦笑いしながら、腕枕して抱き寄せた。そのままお腹に手を回して撫でてみる。これまではどちらかというと遠慮の
色が強く表れてか、いまのように発破をかけるような発言は聞いた覚えがない気がする。それを少し嬉しいと思う自分は
変だろうか?と考える。
 イチは以前香子に『男は守る者があれば強くなれるのだ』と言った事を思い出していた。これまで自分は唯一の家族で
あった彼女を育てるために頑張ってきたつもりだ。勿論自身の生き甲斐の一つでもあり、自信や信用も地道に築いてきた。
 それに守るべき者が新たに加わるのだ。こんな喜ばしいことはない。その為ならいくらだって頑張れるだろう。
 だからもっと頼って欲しいと思う。
「火曜日に病院行こうかな。月曜日は混むだろうし、バイトあるし」
「そうだ!お前」
「うん、わかってる。そろそろ話するつもりだったし……」
「そうか。ならいいけど。重い物とか絶対ダメだからな!メタボ店長に持って貰いなさい」
「ちょ、酷……ぷぷっ。でも何だか淋しいなあ。結構楽しかったんだけどな」
 バイトとはいえ初めての職場だ。越してきてすぐ主婦になった香子にとって世間との接点を持てる唯一の場所だった筈だ。
 子供が出来たことによってそれが奪われ、家庭という檻にに縛り付けてしまう事になる。そして自分にも。
「ごめんな」
「なんで?大変なのはイチ君も同じでしょ。これから我慢して貰わなきゃいけなくなること沢山出てくるだろうし」
「そうなんだけどさ……」
 ほんの少しの罪悪感を感じつつもどこか安心している自分に戸惑う。そんな気持ちに被さる新たな罪悪感。
「我慢、か……」
 ある意味お互い様だがな、と自分のズボンにこっそり目をやる。
0006十年目の秘密 2/122010/10/30(土) 15:08:49ID:LZMts9cS
 いわゆる月の予定日あたりから始まって、それが終わったであろう頃から香子に触れていなかった。
「……黙っててごめんなさい」
 遅れていたものに不安を感じ自分で調べ結果確信を得てからは、それが間違いないという報告をする前に、あれこれと
できる事を考えた。
 まず、動けなくなる前にできる事をやっておきたい。それから万が一の事を考え適当な言い訳を連ねたり、先に寝て
しまうなどしてイチとのそういう行為を避けた。
 下手に期待や心配をさせまいと頭を巡らせ過ぎて、却っていらぬ誤解を招いてしまったのは反省している。
「まあ、仕方ないよな。でも、まああの、うん、場所も場所だし……」
「ん……」
「……ちょっと勿体ないかな。はは」
「……」
 ごそごそと、そのあたりをばつが悪そうに弄る。耳まで赤くして困ったイチの横顔を眺めながら、思い切ったように
香子は自分の手をそこに伸ばした。
「私のせいだね。ごめん。なんか怖くて」
「無茶しちゃいけないから仕方ないな」
「我慢できる?」
「うーん……」
「……してあげようか?」
「えっ……じゃ、ちょっとだけ触ってくれる?」
「うん」
 横になったままジッパーを下ろす。しっかりと盛り上がった下着があからさまなのに顔を見合わせて赤くなる。
「溜まってるから」
「覚悟してます」
 腰を浮かせ下着を香子の手で下ろしてもらう。しっかり臨戦態勢にあるそれを指先で包むと、先から既に染み出て
いるものでしっとりと濡れてくる。
「動かす……よ」
「うん」
 ゆっくり撫でるように指を動かしながら上下すると、始めこそ多少の引っ掛かりがあったものの徐々に湿り気のある
音をたてはじめる。
「このまま最後までいっていい?」
「ん……いいよ。ちょっと待ってね」
 イチの脚の間に体を移動させ、俯くと髪を耳にかけ顔をそろそろとそれに近づける。
「え……それは……」
「もうすぐ頼まれても出来なくなるかもしれないし」
0007十年目の秘密 3/122010/10/30(土) 15:09:37ID:LZMts9cS
 確かにそうだが、と思い悩んでいる隙に温かい唇と柔らかな舌の感触に包まれている下半身。そこだけを露出して
“ただ気持ちいいと思う行為”に耽っていく自分の姿が映る天井をぼんやり眺める。
 上下する度にさらさらと揺れて肌に触れ被さる髪がくすぐったくて、下半身を寝ながら見下ろすように目を細めると、
そっと頭を撫でてやる。
「ん……む……」
「無理しなくていいよ」
 イチの呼びかけに口からアレを抜くとはーっと息を吐き、腕を伸ばして体を起こす。
 その頬に触れつつ傍に来るように促すと、香子が脇へ寄り添ってきたと同時に下着だけをずり上げ、またさっさと彼女を
胸の中に納めた。
「まだ途中だよ?」
「休憩休憩。ていうか酸欠は良くないぞ?血圧上がっちゃうから」
「そっか……でも少しくらい大丈夫だよ」
「本当か?」
「それだけ?遠慮しなくていいよ。辛かったら言うから」
「うん……まあ、それもあるんだけど、本音いうとちょっとだけ欲が出ちゃったってのもあるんだよね」
 ゆっくりと唇を重ねると、鎖骨を指でつっと撫でる。
 ぴくっと跳ねた肩を露わにし唇を押し当てる。
「イチ……く」
「ちょっとだけ」
 横向だった体をゆっくり仰向けに倒すと、それにまたゆっくりと体重をかけ、香子の上に被さるように体勢を変える。
「……いや?」
「ん……ううん……でも……」
「俺だけが気持ちいいのはなんかダメだわ。損した気分になる」
 すぐ届くところにある愛しさの塊は、ただ見ているだけで満足出来なくなり、触れられれば捕まえてしまいたくなり、
そして今度はそのまま自分だけのものとして閉じ込めてしまいたくなる。
 そんな気持ちを分け合いたいと思ってしまうのは、所詮は自己満足な独占欲という名の愛なのかもしれない。
 だがそれをわかった上で自分を受け入れてくれる彼女を、やはり失いたくないと思う。
「俺は欲張りだからさ。一緒に気持ち良くなりたいの。あと……そういう顔見るの好きだから」
「ばかっ」
「うん」
 こうなると何を言っても同じだ。それをわかっている香子はただ彼の欲情に身を任せる。
0008十年目の秘密 4/122010/10/30(土) 15:10:37ID:LZMts9cS
 香子は天井を見上げて寝転ぶと、同じ顔で見下ろす鏡の中の自分と目があって、慌てて顔を覆った。
「目、瞑ってていいよ」
 くすっと笑ってバスローブの紐を解いていくイチに小さく頷くと、きゅっと瞼を閉じて両手の力を抜いた。
 その様子に、初めて彼女をオンナにした日の事を思い出す。湧き上がる愛おしさに堪えきれず、少々焦って乱暴に剥いだ
着衣を放り投げ、躰の上に慎重に跨がる事は忘れず被さり口づけをする。
 唇に軽く触れると、頬、額、耳元に半開きの唇から零れる息を吹きかけつつ、また唇に戻し今度はそっと舌を差し込む。
 初めは戸惑ってただ必死についていくだけだった行為も、今はすんなりと受け入れられる。
 それを教えたのが自分であるという優越感と、そんな彼女を独占できる喜びに浸ると、思い切り抱き締めてしまいたい
気持ちに何とか歯止めをかけ、そっと触れては柔らかな温もりを大事に味わおうとする。
 大事な宝物を抱えた身体である。いわば彼にとっての宝箱そのものの彼女は、更に壊れやすいタマゴのように思えた。
「優しくするから。もしだめだったら言って」
「うん……でも、へーき?」
「仕方ないだろ?」
 自分自身は結局の所、すっきりさえすれば躰の疼きは鎮まるのだ。だが今はそれだけではなく、ただ愛し合いたいと
思う要求に素直になってしまっているだけたのだ。何が違うと言われても、多分上手くは説明がつかないのだろうが。
「まあ、とにかく方法はあるわけだからさ」
「まあね……」
 無茶はすまいと思いつつ、普段より弱い力でゆっくりと肩のラインや腕を撫で、首筋から鎖骨に唇を滑らせる。
 じれったい程の愛撫に身を捩っては声を漏らし始める彼女の肌に、ほんの少し力を加えて吸いつく。うっすら赤く残った
跡に満足げに口元を綻ばせる。
 それを咎める瞳を一瞬だけ見せたものの、胸の膨らみのはじまりの位置にある跡からすぐ上の鎖骨に指先を触れてやった
だけで、ふっと切なげな息遣いをする。
0009十年目の秘密 5/122010/10/30(土) 15:11:46ID:LZMts9cS
「や……だめっ」
「えっ?」
 ぱっと指を離すと、香子もまたはっとした様子でイチを見上げた。
「どうした?」
「ん……なんでもない……ごめん」
「ならいいけど」
 ほんの少し困惑した様子に首を傾げつつ、イチは自分だけがまだがっちり服を着込んでいたことに気付き、さっさと下着
一枚残した格好になる。
 改めて肌と肌が触れ合うかたちになると、先ほど以上に近く感じる温もりにますます愛おしさがこみ上げてくるような
気がしていた。
「なんか、安心する」
「俺も」
 何度目かのキスをして、ただぎゅっと抱き締め合う。それだけなのに、不思議な満足感が二人を満たし始めていた。
「イチ君……」
「ん?」
 腕枕して横向に抱き合った香子の背中を、首から腰にかけてそっと指の腹で撫で下ろす。
「……ひゃっ!?」
「どうした?だめだったか、これ。くすぐったい?」
「え……と、それもあるけど、そうじゃなくて……あっ」
 背中から廻した手を胸にあてて、膨らみごと手のひらで包むように揺する。
 それだけのことにまた小さな呻き声をあげ、顎を引いて背中を丸める。
「やっぱ、嫌?だめならやめよう。……無理しなくていい」
 残念さを残しつつも心配げにそう言って離したイチの手を、さっと掴んでまた押し当てる。
「ち、違うの!あの」
 困ったようにぼそぼそと言い訳する香子に
「聞こえないよ」
と促すと、耳を寄せるよう言われ要求された通りにしてやる。
「あの……なんか、ね、変なの。触られると……すごくて」
「え〜?久しぶりだから興奮してるとか?」
 ニヤリと目元を緩めるイチの頬をつまんで伸ばすと、痛がる彼にイーと歯を見せ怒った顔アピールをしてから離してやる。
「もーやだ何そのオヤジっぽいエロ顔!……ていうか、なんか前より感じやすく、ていうか感じすぎ……て」
「え……気持ち良すぎ、てこと?」
 真っ赤になって頷く香子の唇に、嬉しさを隠せない様子でさっきよりも強く唇を押し当てた。
0010十年目の秘密 6/122010/10/30(土) 15:12:41ID:LZMts9cS
「体質が変わったりしたのかな?妊娠するとあるらしいし」
「そ、そうなの?……よく知ってるね」
「ん、前に早川に聞いた」
「……そういう話するんだ」
「たまたまだよ、たまたま。いやあ、儲けた気分だわ。嫌がる嫁もいるらしいし。ま、でも安定期までは無理できないからな」
「まあ、いいけど……」
 さっさとブラのホックを外してしまうと取り去り、また覆い被さる。
「あの、だからできるだけ優しく……あっ」
「わかってるよ」
 話が終わらないうちに胸の先を指の腹で撫でる。尖った周りを丁寧に回しながら触るうちに、見た目にもつんと堅くなって
動きに合わせてふるふると揺れる。
「や……はぁ……んっ」
 吸い付き舌で包み転がすと、びくびくと小刻みに震えて跳ねながらイチの背中に腕を廻してしがみつく。
 時折、強く与えすぎた愛撫に対して訴える痛みに、想像以上に敏感になった身体をより丁寧に扱わねばと気を引き締める
彼の脳裏には、最初にそう思いながら夢中になって香子を貫いた日の自分の余裕の無さが思い出された。
「うんと大事にしなきゃな」
 この先、場合によっては暫く禁欲の日々が続くかもしれないのだ。勿論それだけではないが、これまで以上に大切に
扱おうと決意を新たにする。
「……んあっ、あっ……あ……やぁ……んぁぁっ……や、そこ、あっ」
 胸への刺激を続けながら、腰から太ももを手のひら全体で確かめるように撫でると、脚をばたつかせながら枕を掴んで
背中を浮かせながら身を反らす。
 普段より控えめな動きに、これだけ激しい反応を示すのなら、普段通りどころかもっと執拗に攻め上げればどうなるのか………
と考えつつもそうはいかない現実に、頭に血が昇りそうになるのを僅かに残る理性で堪える。
「思い切りイカせてやりたいけど……」
「ふ………ぁ、だめ、こわ……うぁぁっ」
「わかってるよ」
 そういう情報は早川から入手済みだ。彼は普段は無口だが、イチに対しては親友だからという事だけでなく、嫁バカという
点でもかなり饒舌になる。特に酒が入ると、であるが。
0011十年目の秘密 7/122010/10/30(土) 15:13:53ID:LZMts9cS
 いつもはからかい半分に撫でたりつまんだりするお腹を、今は何ともいえないむず痒い気持ちを抱えながら、むにむにと
掴むように触る。
「もう、やだっ」
「何でだ。俺これ好きなんだって」
 気にしている『幼児体型』を嬉しそうに眺めるイチを、複雑な気持ちで眺め返す。
「……そのうちそういう事言えなくなるよ。物凄い体型になるんだから」
「そんなの承知だよ」
「でも、ほんっとパンパンなんだよ。写真でしか見た事ないけど、腕とか脚とかも太くなるし、胸もおっきくなるみたいだけど……」
「得するじゃん。つうか詳しいな」
「ほ、本で見た」
「それでか」
 待ち合わせの時の光景を思い浮かべる。確かあの辺りには育児書もあったかもしれないと納得した。
「……ち、乳首とか真っ黒くなるんだよ?ていうかやっぱ巨乳好きなんじゃん……」
「いや、別に乳はおまけだから深く考えるなって!つうか仕方ないだろ?みんなそうなんだからさ」
 お腹を慈しむように撫でると、尖らせた唇を宥めるキスをする。
 母親になる身体だ。それも、自分の子を宿している最愛の女のものとあれば、愛しくないわけがない。
「言っただろ?俺はお前を裏切るような真似はしない。どんなふうになったって、俺はお前が好きだし、浮気なんかしない。
 お前だって、俺が禿げてもメタボ親父になっても変わらないって言ったろ?それと同じだよ」
 添い遂げるなら彼女しかいない。――そう思って一緒になったのだ。イチにだって、香子の母親が亡くなったあとに
それらしい話が持ち込まれなかったわけではない。だが、香子を育てようという決意と、それが新たな感情を生み始めた
ことが彼からそれらを遠ざけた。
 何もかもが、香子のためにあったのだ。
「私でいい?」
「何を今更」
「だって……ほんとならイチ君は私のパ」
「言うな」
 開きかけた香子の唇に指をあて、言葉を止めた。
「お前を愛してるんだ」
 彼女が心に住み着いていると気付いてからは、決して他の幻影を追ったことなど無い。
「お前じゃなきゃ……」
 互いにもう、別の人生を歩むことなど不可能なのだと、精一杯の想いをぶつけ合う。
 涙を啜る香子の喉の奥深く、密かにつかえていた小さな欠片が溶け落ちてゆくような気がした。
0012十年目の秘密 8/122010/10/30(土) 15:14:51ID:LZMts9cS
 ショーツ一枚身に付けただけの香子の裸を存分に眺め、唇で胸の頂を弄びながら、触れられる限りの範囲を手のひらで覆う。
 空調の効いた部屋の中で、肌を露出したまま寝転がったところで何の不快さもないが、彼の躰が一部とはいえ自分の
どこかに触れていると感じるだけで、香子の芯から熱が溢れて溶けだしていく。
 もっと、もっと、もう少し。
 焦れったいくらいの優しさをもってした彼の弱々しい指先の熱に、徐々に拓かれてきたカラダは物足りなさを感じ始めて
内なる声に支配されかかっていた。
 下着の端に掛かった指が、それを脱がそうとせず、脇から後ろにかけての尻の膨らみにそってくすぐるように動く。
 じれじれとした愛撫に、香子の方が我慢が利かなくなってきたのか、強請るように腰を浮かしてにじり寄る。
「――っ!?」
「どうした?」
 顔をしかめて自分にしがみつくと、ばつが悪そうに目を背ける香子の足下を見れば、時折小さな呻き声と共にそっと曲げ
伸ばしされる膝の動きが映る。
「ああ……大丈夫か?つい力入っちゃったんだな。そんなに気持ち良かった?」
「うっ、うるさい!」
「ゆっくり、曲げてごらん」
「え……!?あっ!ちょ……や……ぁ」
「そろそろ触って欲しいだろ?」
 ちょうどいいと思える体勢を作ろうと脚を動かすと、同時にその間をイチの手が割り込んできつつ悪戯する。
 布の上から指の腹で形を確かめるようになぞり、中心を裂くように現れた筋と窄みをつつくと、僅かに甘く息が乱れた。
「ああ、もう染みてきてるかな。脱がしちゃうよ?ちょっと我慢して」
 香子を気遣いつつショーツを脱がせる。
「もう股開いちゃえよ。その方が楽だぞ」
「えっ……えっ?きゃっ!!」
 足の付け根から割るように、内から外へと力を加えて脚を開かせる。
「丸見え」
「うわぁ!やだっ!!やだやだぁ!?こんなじゃなかったら蹴ってやるのにっ……」
「何だよ。……わかった、電気消すから」
「消しても上がっ!」
「目、瞑りなさい」
「だからって……やっ」
「いつもこんなんだけどな、お前」
 つるっと滑った感触とともに指が触れるのを感じ息を呑む。
0013十年目の秘密 9/122010/10/30(土) 15:15:59ID:LZMts9cS
 全く何の引っ掛かりもなく滑らかに動く。そしてそれが一点をつつくと全身を甘い痺れが貫いていく。
「ほら、な」
 無意識のうちにシーツに掛かるその部分の負担が軽くなっていく。仰け反って浮いた背筋から尻の膨らみまでを片方の手を
滑り込ませ撫でた。
 小さな悲鳴とともにびくんと震える躰に唇を寄せ、とろとろに溢れる蜜を掬い取るように舐める。
 か細く耳に届いてくるいやいやと言う呟きは聞こえない振りをして、充血した蕾をくりくりと舌先で転がす。
「あ……っ……ん……ぁ……やぁ……く……ぅ……いく……ぅ」
 あまり負担をかけてはまずいらしい事を思い出し、少々不完全燃焼な気持ちのまま名残惜しくイチは躰を起こした。
「……ふ……」
「ごめんな。……そっとやるから挿れてみていい?」
 半分惚けたような顔で頷く香子の頭を優しく撫で、開かれたままの脚の付け根をぐいと押し上げるようにして自身を
そこに擦り付ける。
 ぬるりと滴るほど濡れそぼった先が秘部に呑み込まれ、その久々に拓かれる圧迫感に香子の唾が鳴った。
 くぅ、と吐息に混じった声に心配げに覗き込むイチに『大丈夫』と頷いて見せると、首筋に腕を絡ませ引き寄せしがみつく。
「香……子」
「ん……ゆっくり……し……あっ……んぁぁン」
 ゆっくりと抜き差しを繰り返すと、腰を引くに合わせて呑み込んだモノを追うように香子の尻が浮き上がる。
「だめだよ……そんな誘っちゃ。俺すぐいっちゃうよ」
「そんな……つもりじゃ……あぁぁ……!!」
 ゆっくり揺さぶったイチの腰が打ちつけられる度に気が遠くなりかけ、膝の痛みも忘れて自らの脚を彼の躰に絡めようと
する。その動きを察知してか、腿を押さえていた手を離して香子の脇に置き、シーツを力一杯掴む。
 負担を抑えるために浅く細やかに描いていた腰の動きは、徐々に深く重くなっていく。
 ぐちゃぐちゃと滑りのある音はやがて時折ぺちりと肌のぶつかり擦れる音がして、二人の喘ぎとも呻きともとれる声と
共に混ざり合いながら、やがて静かに終わりを迎えた。
0014十年目の秘密 10/122010/10/30(土) 15:16:58ID:LZMts9cS
 勢い良く引き抜かれたものから、白いものが飛び散り滴り落ちる。
「間に合わなかった、すまん」
 内腿にぴしゃりと飛び散ったそれを枕元のティッシュでぬぐい取る。
「気持ち悪いだろ?風呂行って洗おうな」
「ん……っ。ちょっと疲れたから休んでからでいい?」
「いいよ。これからも毎日洗ってやるから」
「毎日!?」
「そ。これからそういうのも大変らしいぞ。第一危ないじゃないか」
「……それもコージさんからなの?」
 一体あの強面と普段どんな会話をしているのだろうか。一見すると合わなそうな2人が仲の良い理由が解るような気がした。
「大事な身体なんだから仕方ないよなぁ。明日から俺が帰るまで風呂は待ってなさい」
 堂々と香子と毎日一緒に入浴する理由が出来たのだ。その嬉しさを隠そうとせずにこにこ笑いながら腹を撫でている。
「しょうがない人……あ、こんなとこ……や、触っちゃ」
「帰りにまた本屋行こう。見てたやつ買ってやるよ」
「ん……」
 時々まだあちこちに残る肌の疼きを覚醒させるイチの指の悪戯に悶えながら、幸せな気怠い時間に身体を委ねた。


* * *

 数日後、そわそわした面持ちで携帯を気にしつつ仕事をこなすイチの姿があった。
 そんな彼をこちらも観察しつつ書類を片付けているのは親友で同僚の早川浩史(こうじ)。
 マナーモードにしてあった携帯が震えるや否や、物凄い勢いでそれを掴み、こそこそと男子トイレの方へ出て行く。
 数分後、満面の笑みを浮かべて戻ってきた彼のランチの奢りの誘いにいつものポーカーフェイスで応えるも、浮き足立った
その後ろ姿を見送る顔にはうっすら笑みが浮かんでいた。


「で、どうよ?やっぱり風呂場と寝室は広い方がいいと思わない?お前んとこどうだっけ」
「うちは風呂は普通の一坪タイプってやつだし、それで充分だ。寝室は子供部屋と続きにしていずれ仕切りを……って、
 お前仮にもプロだろ?どんな家買う気だ。つうか所詮建て売りだから弄るのも限度があるぞ」
「そうなんだけどさ〜、今のマンション風呂狭いから。でっかいのぞき窓とか嫌がるだろうな……。ほら、1人で入るとか
 言い出したら心配だし」
「ラブホかよ!」
0015十年目の秘密 11/122010/10/30(土) 15:17:50ID:LZMts9cS
 あほらしいと思いつつ、突っ込んでしまう。『こんな男がどうしてエリート社員としての地位を築いていけるのか』と
長年付き合い続けた早川だが、軽く彼の頭を叩きながら、自分もそんな男だからこうして気を許せるのだと心の奥底に想う。

 ――どんな小さな物だとしても、些細な幸せだと思えるのなら、それを大事に出来ないなら何を手に入れて同じだ――

 彼のその信念の種が今こうして実を結び、新たな種を産もうとしている。
 早川も自分も守りたいと思うものを手に入れて、他人からの評価はともあれ自身は以前よりも自分自身を、そして
それ以外の自分に繋がるものを大切に想うことを覚えた。
 それを教えてくれた八神伊知郎は、良くも悪くも感情に素直で、そして一途であるが故に不器用だ。
 そんな男を親友にもつ事を誇りに思っている。

 思っている、のだが。


「な、どうよ早川。可愛いだろ?うちの子」
「お前……」
 翌日の昼休み、イチから見せられた物を手に困惑する早川。
 それもその筈、昨日香子が病院から持ち帰った超音波写真を持って来たはいいが、写っているのはまだ初期の豆粒に
手足の生えたようなものだからだ。
「どうしろっつうんだ、おい」
「何でだよ!むちゃくちゃ可愛いだろ?これがもっとでっかくなって出てくるんだぞ。男かな?でも最初は女の子がいいって
 言うしな〜。娘なら香子似だといいな〜可愛いだろなぁ……でもそしたら変な虫が……どうしよう早川」
「知るかボケ」
 昨日病院に行った香子から報告を受けてからずっとこの調子なのだ。親友の慶びごととはいえこうも花畑全開では流石の
自分も頭が痛い。仕事は仕事と割り切れる男なだけにその反動は大きい。年下妻の香子の苦悩はこんなもんでは無かろうと、
これから子を産む筈の彼女に少なからず同情する。
「そう言うけど、美月ちゃんだっていずれパパ臭いとかウザイとか言うんだぞ?でもってどっかの男に……」
「言うな」
 どこまで想像力豊かなんだと半ば呆れながらも、先の娘の成長ぶりを思い浮かべる早川の顔に生気が無くなっていく。
0016十年目の秘密 12/12(終)2010/10/30(土) 15:19:49ID:LZMts9cS
「あ、今お前想像しただろ。な、悲しいよな?どこの馬の骨とも知れない奴に大事な娘を……こんなだったら息子にしとこう
 かな、俺」
「まて。娘にしろ息子にしろそればっかりはどうにもならんだろうが。その前に馬の骨に美月はやらん。つうか俺を
 巻き込むな!」
「なんでよ、先輩じゃんか。あ、そうだ、息子だったら美月ちゃんがうちに嫁に来ればいいじゃん。解決解決♪年上でも
 気にしないから」
「誰もやるとは言ってないが……」
 この不毛な夫どもの言い合いを聞いたら、妻達はどう思うのだろうか。
「にしても早川。男親って……切ないのな」
「……」
 まだ見ぬ我が子の将来を思うがあまり妄想が暴走するイチと、彼のペースに巻き込まれ同じく娘の未来を案じる早川。
 食後のコーヒーが冷めるのも構わず共に遠い目でどこかを見つめる2人の友情の理由は、こんなところにあるのかもしれない。


* * *

※ちょっとしたおまけ?

「……でさ、色々考えたんだけど、産まれてからみんなで撮ろうと思うんだ。どうせその頃には香子の成人式のも撮って
 やりたいからさ」
「そうか。いんじゃね?」
 結婚式を挙げてないイチ達は、写真だけは残しておく事にした。早川夫妻は妊娠中に式を挙げたが、妻の愛永(まなえ)
から大事をとった方がいいと諭され、産後落ち着いてからという事に決めたのだという。
「マナがわかる事なら聞いてくれって言ってる。お前からも香子ちゃんに遠慮しなくていいからって言ってやれ」
「すまんな早川。……で、今日のなんだが」
 早川の目の前に並ぶ2つの弁当箱。1つはイチの分だが、もう1つは……。
「あ、早川さん今日も愛妻弁当?」
 背後に聞こえるくすくす笑う 島田女史の声が聞こえる。
 香子の悪阻が始まり、イチが必要に駆られたとはいえ、料理を始めた。が、腕を振るう機会がないため毎日早川が
それを受ける羽目になった。(妻のマナは喜んで=面白がっている)
「勘弁してくれ……」
 そう言いつつ、“ある意味愛妻弁当”に箸を伸ばす彼だった。


* * * 終わり

0017名無しさん@ピンキー2010/10/30(土) 19:27:47ID:vg3DF2GS
GJ! 安定期が待ち遠しいです(←偏った嗜好の持ち主)。
0018名無しさん@ピンキー2010/10/31(日) 23:44:37ID:lhzwTsW5
GJGJGJ〜
相変わらずなイチ君と香子が微笑ましかった
子供生まれたら可愛がりながらもヤキモチやきそうだ
0019名無しさん@ピンキー2010/10/31(日) 23:59:18ID:qL4SpWC8
嫁に「ハロウィーン」って叫ばれながら
カボチャで殴られた。ハロウィンってそんな日
だったっけ?
0020名無しさん@ピンキー2010/11/01(月) 00:15:05ID:7IutSmD5
投下GJ!妊娠ネタは特に幸せな気分になれるから良いね
最後の方の男二人のやりとりに笑ったw


>>19
そんな日です
0021名無しさん@ピンキー2010/11/01(月) 00:21:45ID:/U4/MWRG
ハロウィン……噂には聞いている。
愛し合う男と女が、互いの愛を確かめ合いながらカボチャで殴打しあう日だと……
0032名無しさん@ピンキー2010/11/13(土) 22:42:27ID:2oLsjEQP
おまえが和んでいる隙に俺はお家のしきたりに従い
小学生ながら夫婦の契りを交わす許嫁カップルの初夜を妄想していた
0033名無しさん@ピンキー2010/11/14(日) 23:08:46ID:SdlxXXmk
小学校の同級生が大人になって再会して急展開結婚っていいな。
男は女が初恋だったが女は男が嫌いだったとかなら、更に萌える
0034名無しさん@ピンキー2010/11/15(月) 00:49:32ID:wwqKt/lj
この香子とイチの話で、二人が初めて結ばれた時の話とかってある?
割と最近知ったんだけど、もしあるなら是非読みたい
0036名無しさん@ピンキー2010/11/15(月) 14:32:52ID:wwqKt/lj
ありがとー!
てかこの二人の話、上のと保管庫にあるのだけ?
イチ&香子好きだから全部読みたい
0037名無しさん@ピンキー2010/11/15(月) 15:06:05ID:XYWeVAv2
あー俺も彼女ほしい結婚したい
まあ俺は病気で子種ないから誰も彼女になってくれないだろうけど
0039名無しさん@ピンキー2010/11/17(水) 14:03:42ID:1oLiDJay
>>32マダー
0043名無しさん@ピンキー2010/11/22(月) 16:34:49ID:OyzA8xlA
そんな>>42に嫁の裸エプロンとお風呂御一緒権をプレゼント

つ 純情ロリっ娘幼妻
つ お色気ムンムン年上熟嫁
つ 元ヤンドS恐妻
つ 天然ドMお嬢様嫁

さあ好きにするがよい
ただし脳内でな
0051名無しさん@ピンキー2010/12/05(日) 09:43:53ID:xIrylI8W
男「何、これ?」
 女「婚姻届だ。私が君のこれからの人生と生活を統括する
    さ、まずは記入欄に名前を書きなさい」
 男「……は? 何考えてんの。ヤダよ、お断り」
  (男、婚姻届を破り捨てる)
 女「実はまだ一枚ある」

女「君、早くサインしなさい!私以上、君を幸せにできる人間はいない筈だ!」
 男「しつこいなー。もう、絶対お断りだ!」
 女「何故だ!どうしてそんなに嫌がる?」
 男「じゃあ言わせて貰いますけど! お前は本質的にエゴイストで、
   いつも上から目線で細かいことにいちいちうるさい空気の読めない朴念仁だから!わかった?」
 女「わかった!反省します!だからサインしなさい!」
   (立ち去ろうとして足がつる男)
 女「ほら見ろ、神様もサインしろと言っている。ほら男!サイン!早く!」
0054名無しさん@ピンキー2010/12/06(月) 22:37:38ID:V3zy7xA3
男女そのまんまの方がいいかもね


義父「何、娘が気分が悪いと言うから、もしかしたら…と思って産婦人科に行ったら、実はただの食べ過ぎだった? …失態だな、男くん。
   どう責任を取るつもりだ」
男「俺は悪くない。原因は女くんにあります」
 義父「君はいつもそうだ。なぜ自分の非を認めない、なぜ自分の弱さと向き合って検査を受けようとしない!」
男「弱さと向き合う……そんなことに何の意味があるんです」
 義父「そこが君の限界だ。やはりこのままでは無理だな、結婚生活を続けるのは。…娘は返してもらう」
男「…………」
0055名無しさん@ピンキー2010/12/06(月) 23:00:01ID:GpfzX1Uh
男女のそのままのほうがしっくりくるね。

義父「どうした、泣いてるのか」
男「義父さん…検査を拒絶したのは、私の責任です。私が未熟だから、弱いから……。
   娘さんはお返しします……」
義父「いや、その必要はない。それでいいんだ。自分の弱さを自覚した今、君は本物になった。
   たとえ血の繋がらずとも、我が子を持つにふさわしい男にな」
男「……(ニヤリ)……。」

0056名無しさん@ピンキー2010/12/07(火) 20:16:56ID:otFBcTSZ
義父「やはりそうか。男くん、君は勃起する事ができないんじゃないのか?」
 男「はい……」
 女「どういうこと、男くん? ……私のせいじゃ…!」
 男「違う!単に俺が企業戦士として未熟だった……ストレスに耐えられなかった……それだけのことだ!」




男「なぜ俺のために、こんなことをしてくれるんだ?」
 女「あたしさ、あんたがこうなってから気づいたことがあるわ。
   あたし…心の中であんたを尊敬していたって」
男「俺もわかったことがある。お前、優しい女だったんだな」
0059名無しさん@ピンキー2010/12/25(土) 14:59:18ID:R6ETRuWx
うちの女房と本音でトークできて判明したのだが 
世の妻の大半が悪妻になる理由は
そのほとんどがイケメン好きで
でもイケメンと結婚できなかった
もしくは振られたなどで 他の男と結婚してそのウサを晴らしてる事が
大半だということがわかった

女房の話だと 結婚後もイケメンの旦那の妻は
それはそれは甲斐甲斐しいそうだ
どんなに浮気しても 本妻が自分ならと責めないらしい
家事万端 仕事のアドバイスも適切であげまんになる
でも逆にイケメンと結婚できずやむを得ず フツメンブサメンと結婚した男には
容赦なく 牙を振るうそうだ
女の価値観の中で
イケメン=ご主人様
ブサメン=ATM奴隷というのが構図として決まっているのだそうな

序列の価値観で動く犬タイプの女に多いらしい
それでも結婚前にブサメンにも逃げられるのは避けたいから
結婚前は猫かぶるらしいけどな

大抵 悪妻は昔振られた彼氏や イケメン男性のことをずっと思ってるらしい
そしてそんな女の大半がサゲマンになるのだそうだ
0060名無しさん@ピンキー2010/12/25(土) 23:07:04ID:5SOqjxhL
携帯から失礼します。
以前、翔とユキというのを書いた者です。
この夫婦+子供でクリスマスネタを書いたので、投下させて下さい。
エロなし、短いですが、楽しんでいただければ、幸いです。
2レスお借りします。
0061翔とユキ2010/12/25(土) 23:11:41ID:5SOqjxhL
「りょっうっごっきゅ〜ん。
 サンタさんからは何貰ったのかなあ?」
「いやいや、あげたの翔くんだし」
新幹線に顔がついたぬいぐるみを愛しの我が息子の前で左右に振っていたら、ちょっと年上の嫁にツッコミをくらった。
「ユキっ!そーゆーこと言わないっ!」
「だいじょぶだよ。わかんないって」
「最近、ちゃんと色々言葉覚え始めてるんだから、幼いうちにそういうこと吹き込まないの!
 なー。良吾ー」
良吾はオレが知ってる中じゃ世界一かわいい笑顔でぬいぐるみをぽふぽふ叩いて、
「ぱーぱ、てぃんかんてん」
とか言っちゃってる。
毎日見てるけど、かわいくてたまらん!
なんなんだ。ホントに。
このかわいい生き物はっ!
「翔くんがこんな親バカになるとは思ってなかったわ」
これまた毎日嫁のユキから聞いてる台詞だけど、そう言うユキだってなかなかの親バカだ。
「良吾は翔くんサンタがくれた新幹線も好きだけど、ママの方が好きだよねー?」
ほーら始まった。
だが負けねえ!
「ママも好きだけどパパのことだって好きだよなー?なー?良吾ー」
「パパサンタはクリスマスにしか物くれないけど……
 ママサンタは毎日良吾のの大好きなおっぱいあげられるもんねー」
ユキはそう言うと、良吾をひょいと膝に乗せ、良吾の顔を自分のおっぱいに押し付けた。
0062翔とユキ2010/12/25(土) 23:13:56ID:5SOqjxhL
「うあっ!ずっる!
 オレにはおっぱいないのにっ!」
「ふっふっふー。ママの特権です」
「ぱいぱーい」
くっ!良吾のやつ……。
それは元々オレの……。
「あれ?翔くんもおっぱい欲しい?」
ユキがにんまりと笑って、良吾が撫でてるのとは反対側のおっぱいを持ち上げて見せた。
あ、やべっ……ムラっときた……。
「翔くん、目がえっち」
「りょっ、良吾の前でそーゆーこと言うな、って」
「翔くん、意外と真面目だよね。しかも過保護で親バカ」
楽しそうに笑って良吾の頭を撫でながらのユキの台詞にちょっとムッとしたら、それが顔に出たらしい。
ユキは右手で良吾の頭を抱えると、自分の胸に押し付けてから、オレのTシャツの袖をつまんで引っ張った。
からかわれて面白くない半面、なんだかムラムラしてるという複雑な気分のまま、ユキに顔を近づけると、こそっと耳打ちされた。
「良吾には早く寝てもらお。
 ね。翔くんにプレゼントあるから」
ほっぺたにちゅぅっとキスをされて機嫌が直る。
「う、うん……」
そんな自分が相変わらずガキみたいで拗ねたくなるけど、それ以上にユキからのお誘いが嬉しくて、キスを返すと、ユキが嬉しそうに笑ってくれた。
今度こそ本気で機嫌が直る。
「オレもユキにプレゼント用意してる」
安物だけどさ。
気持ちの中でごめん、と謝ってもう一回キスをしようとしたところで、良吾にぺしりと顎を叩かれた。
0063翔とユキ2010/12/25(土) 23:16:13ID:5SOqjxhL
「いてっ!」
「まーま」
ママはボクのだ、とでも言いたげだ。
「ママは渡さん!」
「もー。翔くん、良吾相手に何言ってるのー」
ユキが笑う。
「だって、こいつが叩くから。
 そういうことすると隠しちゃうぞ!」
オレが背中にぬいぐるみを隠すと、良吾は、
「やー、パパ、やーあー」
と両手をパタパタさせた。
ぐはっ!かわええ!
その仕草に負けて、ぬいぐるみを良吾に返す前にユキにぺしりとおでこを叩かれた。
「子供みたいなことしない」
わざと口を尖らせて見せると、ユキは良吾の頭にキスをして、
「良吾もパパを叩かない。 
 私は良吾と翔くん、二人のもなんだから、取り合いっこしないの。
 ね?」
と言って、良吾の前でオレのほっぺたにキスをくれた。

(了)
0064名無しさん@ピンキー2010/12/25(土) 23:22:07ID:SMN3sq5y
>>62
おぉー 親ばかラブラブ夫婦GJ


尻にひかれてるけど愛されてて羨ましいぞw
0067名無しさん@ピンキー2011/01/06(木) 03:28:54ID:6AYg1vUl
鉄仮面と子猫投下します。

・多少ですがアナル描写があります。
苦手な方はタイトル「サファリパークにはライオンがいる」をNGにして下さい。
0068サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:30:31ID:6AYg1vUl
「……サファリパーク、ですか?」
某市市役所職員の若き出世頭にして、無表情・無愛想・無口の三拍子揃った、
通称鉄仮面・中嶋貴巳課長(36)が、
彼の20も年上の部下である富岡係長に声をかけられたのは、
そろそろ家に帰ろうかという午後7時過ぎのことであった。

「そうそう。知り合いにタダ券もらったんだけどさ、
うちの娘も奥さんも、別に行きたくないって言うんだよ。
で、無駄にするのももったいないし、中嶋君たちどうかなと思って」
「いえ、折角ですが、自分も特に興味はありませんので」
部下であり先輩であるという微妙な立場の年配者を前にしても、
貴巳の態度は常に一定しており、要するに取り付くしまもない。
「いや、中嶋君は興味無いだろうけどさ、雪子ちゃん、動物好きでしょ?
それにどうせ中嶋君のことだから、せっかくの正月休みにも、
行楽らしいこともしなかったでしょ?奥さん孝行だと思って、
今度の連休にでも行ってくればいいじゃない」
鉄仮面のつれない態度にもめげず、恰幅の良い富岡係長は、布袋様のような笑顔で言う。

痛いところを突かれて貴巳は黙った。
確かに、彼の12も年下の妻で、元同僚の雪子は動物好きである。
それに、貴巳は人込みが大嫌いなため、正月休みにもお互いの実家に顔を出したきりで、
結局ほとんどを家で過ごしたのだ。
自分はそれで何の不満も無いが、雪子には寂しい思いをさせているかもしれない。
いい機会とも思うが、雪子に対する負い目を係長に見透かされたようで、
素直にチケットを貰うのも、何となく抵抗があった。

無表情のまま逡巡する貴巳の手元に、無理やりチケットの入った封筒がねじこまれる。
「まだ頂くとは言ってませんが」
「まぁまぁ。もし雪子ちゃんが行きたくないって言ったら、
誰かにあげちゃって構わないからさ。じゃあお先に」
難しい顔で手の中の封筒を睨む貴巳を尻目に、
中年の哀愁をその一身に背負った風情の富岡係長は、
「ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンだ〜♪」
などと歌いながら、脂の乗った腰を左右に振りつつ帰途についてしまった。
0069サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:31:40ID:6AYg1vUl
その夜の中嶋宅。
全ての物事に対して迅速・正確を旨とする鉄仮面にあるまじきことに、
貴巳は、サファリパークの一件を、雪子に言い出すことができないでいた。
そもそも、貴巳が自分から雪子を外出に誘うなどということは、
結婚して2年になる今まで、一度も無かったのである。
必要にせまられない外出は、全て雪子にねだられ、貴巳が渋々承知する、という
お決まりのパターンだったのだ。
貴巳が自分から行楽に行こうと切り出すなぞ、天地がひっくり返っても無いと、
夫婦はお互いに思っていたはずだ。
こんなことで悩むのは自分でも馬鹿らしいとは解っているし、
恐らく雪子はどんな誘い方をしても喜ぶだろう。
が、どうにも言い出すタイミングが掴めずに夕食も終わってしまった。
いつもなら、夕食後にお茶で一服するとすぐに風呂に向かう夫が、
いつまでも食卓に座っているのを見た雪子が、不審げに言う。
「貴巳さん、どうしたの?お風呂入らないの?」
「……ああ、その」
「なあに?」
妻の、きょとんとした無邪気な顔を見ていると、せっかく口から出かかった言葉も
喉の奥に引っ込んでしまった。
「いや、風呂に入ってくる」
自分の思いがけない優柔不断さを呪いながら、貴巳はリビングを後にしたのだった。

妻を誘う良い口実も見つからないまま、風呂を出てリビングに戻ると、
雪子がソファに腰掛け、何やらもぐもぐと食べている。
「何だ、それは」
「……どーなつ」
いたずらを見つかった子供のように、ばつの悪そうな表情で雪子が言う。
手には、何やら甘ったるそうなチョコレートの掛かったドーナツが、
まだ半分ほど残っていた。
「寝る前に食べると太るぞ」
これは本音ではない。ただでさえ小柄で細身な雪子は、
むしろもっと肉付きが良くなってもいいくらいだと、貴巳は常々思っている。
しかし貴巳のそんな本心には気づかず、雪子は唇を可愛く尖らせて言う。
「いいんだもん。たまにだから大丈夫だもん」
0070サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:33:06ID:6AYg1vUl
確かに、雪子が甘いものを買ってくるのは珍しい。
貴巳が、既製品の駄菓子など絶対に食べないので、1人分だけ買ってくるというのも
気が引けるらしいのだ。
甘いものが食べたい時は、雪子が自分で作ることが殆どだ。
「…確かに珍しいな」
テーブルの上に置かれた、ドーナツ屋の紙袋に目をやり、貴巳がそう言うと、
雪子はえへへ、と笑いながら、ポケットから携帯電話を出して貴巳の目の前で揺らした。
「これが欲しかったからなの」
「…どれだ?」
「ストラップ。ポ○デライオンの。可愛いでしょ」
言われてみると、何やら奇妙な形の動物のマスコットが、携帯にぶら下がっている。
ライオンと言われればそんな気もするが、どこが可愛いのか貴巳には理解できない。
おまけ目当てで、滅多に買わないドーナツなど買ってきたということか。
「……雪子は、ライオンが好きか?」
「へ?ポン○ライオン?」
「いや、ドーナツ屋のキャラクターではなく、本物のほうだ」
「な、何で急に」
「どうなんだ。好きなのか、嫌いなのか」
妙に意気込んで尋ねる夫に、たじたじとなりながら、雪子はそれでも素直に考えこむ。
「んっと……赤ちゃんライオンとかは可愛いと思うけど……大人のライオンは、
好きとか嫌いとか、考えたことないなぁ……」
「……実物を間近で見てみたいと思うか」
背広の内ポケットに入れたままのチケットを脳裏に浮かべながら、貴巳は妻に詰め寄る。
「え?檻の中にいるのなら、動物園で見たことあるけど……
街歩いてて、いきなり目の前に『がおー』って出てくるのとかは嫌かも……」
「いや、それは喜ぶ人間のほうが異常だと思うが」
「ね、ね、もし、いきなり目の前にライオンが現れたら、貴巳さんどうする?」
(……いかん、話が妙な方向に)
「そんなことは、日本に住んでいる限りあり得ないだろう」
慌てて貴巳が否定すると、雪子は何が面白いのか、目をきらきらさせて更に言い募る。
「絶対無いとは言いきれないでしょ?例えば動物園とかサーカス団から逃げ出したり、
あとサファリパークで車のドアが故障して閉じなくなったり。
そうなったら、どうやって立ち向かったらいいかなぁ?」
ようやく雪子を誘う糸口が見つかったと思ったら、
話題は思いがけず、斜め上の方向へ転がっていく。
どうやったら本筋に戻せるのか、貴巳は内心頭を抱えていた。
0071サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:34:01ID:6AYg1vUl
「ドアが故障して、開かなくなるならともかく…閉じなくなるというのは考えづらい。
そもそもサファリパークで車のドアを開けるような真似は、俺は絶対にしない」
「だから、例えばの話だってば」
「……その場合は諦めるしかないだろうな」
半ば投げやりにそう答えると、雪子は何故か、むっとした表情になる。
「……何だ」
「約束が違うっ」
「何の約束だ?」
「貴巳さんは、私より早く死んじゃダメなの!」
「……」
確かに、それは二人が結婚する時に、雪子が唯一貴巳に出した条件である。
12歳という年齢差があり、貴巳に先立たれる可能性の高い雪子の、
必死にして健気な、ただ一つの願いである。

が、しかし。
「だから、ライオンに襲われても、貴巳さんは何とか切り抜けなきゃダメなの!
お腹を空かせたライオンが目の前に迫っています!さあどうしますかっっ?!」
これはどう考えても無理難題ではないだろうか。
げんなりしつつ、それでも目の前に問題があると解かずにはいられない性分から、
貴巳は無意識のうちに答えを模索していた。
「……そうだな、まず、素手で立ち向かう場合…これは論外だ。
人間の腕力で猛獣に敵うわけがない。格闘技の達人でも恐らく不可能だろう。
次に何か武器を使う場合だが…包丁だのナイフだのでは太刀打ちできないだろうな。
リーチが短すぎる。日本刀くらいの長さがあれば少しは違うかもしれないが、
そんなものは身近にはない。拳銃……も、警察官でもない限りは現実的でない。
もし手元にあったとしても、俺はそんなものの扱い方は知らんしな」
「じゃあどうやって勝てばいいの?」
「いや、この場合、目標はあくまで『生き延びる』ことであって、
ライオンに勝つことじゃない。冷静に考えて、『逃げる』という選択肢が
一番現実的だろうな。…しかしそれも、当然、容易ではない。
近くにどんな建物があるかにもよるが、安全な場所まで走って逃げるにしても、
ライオンの最高速は時速60km。自動車と競争するようなものだから、
あっという間に追いつかれるだろう」
「な、なんか貴巳さん、ライオンに詳しいね…」
「常識だ。ちなみにトラは時速80kmだ」
先程こっそりサファリパークのホームページを見たのだ、とは貴巳は当然言わない。
「そ、そうなんだ……じゃあ、どうすればいいの?」
「よほど好条件が揃っている場合を除いて、やはり諦める以外にないだろうな」
「……」
「何だその顔は」
黙ってしまった妻のほうを見やると、雪子は頬をふくらませ、
上目づかいで貴巳のほうを睨んでいる。
「……諦めるんだ……貴巳さんは、約束破っても平気なんだ……」
「いや、もちろん、最大限の努力はするが、不可抗力というものも」
「他の人ならともかく、貴巳さんだけは絶っ対、約束破ったりしないって信じてたのに」
うつむいてしまった雪子の前で、貴巳は頭痛を感じて頭を抱えた。
どうにも理不尽な理由で責められているのだが、雪子が余りにも真剣なので、
適当にあしらうこともできない。
暫し考え込んだ後に、貴巳はおもむろに口を開いた。
「……一つだけ、生き延びる可能性が高くなる方法が、無いわけでもない」
「え?!本当に?!」
途端に雪子が目を輝かせて飛びついてくる。
貴巳の頭に浮かんだ考えは、あまりにも救いが無いのだが、
この場合他に思いつかないのだから仕方が無いだろう。
0072サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:35:30ID:6AYg1vUl
「……あまり褒められた方法ではないが……手近に他の人間がいた場合、
その人間を犠牲にして、その隙に逃げる、というのが一番現実的ではないだろうか。
腹を空かせたライオンなら、まず一人目を食べ始めるだろうから時間が稼げるしな」
最初、期待に満ちた顔で聞いていた雪子だが、
説明が進むにつれ、その表情は急速に陰り、曇り、そして今にも泣き出しそうな、
聞いたことを後悔している様がありありと浮かんだ表情になった。
「……ほかのひとを、ぎせいに」
「いや、その、生き延びるという目標をどうしても達成しなければならない場合に、
不本意ながら解決策はそのくらいしか見当たらないというか」
「……」
「そもそも日本にライオンが何頭いて、それが脱走する確率はどの程度かというと」
「……」
「更にその脱走事件が俺たちの生活圏内で起こる確率を考えると…雪子?」
「……お風呂に入ってきます」
これ以上ないほど暗い苦悩の表情で、ふらふらと立ち去った妻の後姿を眺めながら、
(……だから、どうしてこんな話になるんだ?本題はサファリパークだった筈…)
鉄仮面・中嶋貴巳氏もまた、深い苦悩の溜息をついた。


雪子の入浴は、随分長くかかっている。そろそろ1時間を過ぎようというところだ。
いい加減心配になった貴巳が、浴室まで様子を見に行こうとしていたところに、
バスローブを羽織った雪子が、亡霊のごとき陰気さでリビングに戻ってきた。
「……雪子?さっきの話なんだが…」
「貴巳さん、あのね、考えたんだけど…」
二人が同時に口を開く。僅かに躊躇し、貴巳は雪子に先を促した。
バスタオルを手にしたまま、雪子は貴巳の隣に腰を下ろす。
少しの間無言で俯いて、意を決したように息をつき、雪子は話し出した。
「あのね、他の人を犠牲にするって聞いたとき、すごく後悔したの。
なんでそんな事聞いちゃったのかなって。
でも、どうしても貴巳さんに生き延びて欲しいっていう気持ちは変わらないのね。
自分でも、すごく醜いっていうか、自己中心的だと思うんだけど、
もし本当にライオンに襲われたら、最悪の場合、他の人を犠牲にしてでも、
貴巳さんには生きてて欲しい……かもしれない。
でもそんな事思っちゃう自分が凄く嫌で……それに、もし本当に貴巳さんが、
他の人を盾にして生き延びて帰ってきたとしたら、
きっと、今までと同じ気持ちでは貴巳さんと暮らせないような気がする。
自分勝手ですごく嫌なんだけど、でもそうなの」
「……」
目の前の、少女のごとくあどけない風貌の妻が、素直で生真面目なのは知っていた。
だがしかし、仮定の話でこれだけ真剣に悩めるというのは一寸どうだろうか。
果てしなく呆れ、そしてそれを越える一種の感動すら覚えながら、
貴巳は黙って先を促した。
「それでね、どうしたらいいのか、お風呂の中でずっと考えてたの。
貴巳さんが死なずに済んで、それで私も後悔しないで済むのにはどうしたらいいか。
でね、もう、これしかないと思うんだけどっ!」
雪子は握りこぶしを固めて、真剣な面持ちで貴巳ににじり寄る。
次の瞬間、妻の可愛らしい唇から発せられた台詞に、貴巳は一瞬言葉を失った。
0073サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:37:05ID:6AYg1vUl
「貴巳さんが他の人を犠牲にする場合、盾にするのは私にして欲しいの」
「……は?」
「ね?そしたら全部解決するでしょ?私が先に死んじゃうから、
貴巳さんは約束破らなくてもいいし、関係ない他の人は犠牲にならなくていいし。
私も、貴巳さんの身代わりなら、わりと心安らかに食べられちゃえると思うし」
「……そんな事、できる訳がないだろう」
もう、色々と考えるのも馬鹿らしくなって、貴巳は何度目かの溜息をついた。
「どうして?」
心底不思議そうな顔で、雪子が聞く。
蒼ざめていた頬にはようやく血の気が戻ったが、濡れたままの長い髪が冷たそうだ。
雪子の手にしていたバスタオルを奪い、貴巳はわしわしと雪子の髪を拭く。
「わ、ちょっと、貴巳さんてば、真面目に聞いてよっ」
妻の抗議には耳を貸さず、長い黒髪からしっかりと水気を拭き取りながら、
貴巳は自分のした約束の重さについて考えていた。

雪子は高校生のとき、父親を事故で亡くしている。
貴巳は以前、彼女の母と二人きりになった機会に、その時の様子を聞いたことがある。
雪子と母が事故の知らせを聞いて病院に駆けつけた時には、
彼女の父の身体はまだ、ほのかに温かかったそうだ。
遺体に取り縋り泣き叫ぶ母の横で、雪子は、
見開いた瞳から大粒の涙をぼろぼろと零しながら、声もなく、
ただ父の、力を喪った手のひらを握り締めていたそうだ。
誰が話しかけても目を上げようともせずに、
大好きな父の体温がゆっくりと失われ、完全に冷たくなるまで。
ずっと、そうしていたという。
「だからあの子との約束は破らないで」
雪子の母、美紀子は、勝気な瞳を僅かに潤ませて、
射るように鋭く貴巳を見据え、そう言った。

「貴巳さんっ、もういいよぉ、髪の毛からんじゃう」
ふと我に返った貴巳は、バスタオルを持つ手を止めた。
目の前のタオルの塊から、雪子の白い顔が覗く。
「もう、私の話、全然聞いてないでしょ」
うらめしそうな顔で貴巳を見上げる妻の、すっかり冷えた頬を、
貴巳は手のひらで包んだ。
「……聞いている」
「ほんとに?」
雪子の潤んだ瞳の底に、普段は身を潜めている、微かな不安が揺れている。
二人がこの先どんなに仲睦まじく暮らしたとしても、
その不安を完全に葬り去ることはできないのだろうか。
(……もし、本当にそんな決断を迫られる時が来たら)
どうしたって自分には、雪子一人を犠牲にすることはできない。
かといって、何よりも大切な約束を破ることは論外である。
(……因果な約束をしてしまったものだ)
雪子は気づいているだろうか。約束が守られるということは即ち、
遺される痛みを味わうのはこの自分になるということに。
それを口に出して言うのはやめた。きっとまた、雪子が悩んで泣くから。
日ごろは思いやりのある雪子が、その点に気づいていない、というのも考えづらい。
とすると雪子は、敢えてその点について考えないようにしているのだろうか。
二人の年齢や経験の差からくる、雪子の、無意識の貴巳への甘えなのかもしれない。
だとしても貴巳は、それを責める気は無い。雪子に甘えられることが、
貴巳には喜びでもある。
(そうなったら……いっそ、二人一緒に人生を諦める、という手があるな。
雪子から一瞬遅れて俺が死ねば、まあ何とか約束も守れる)
日ごろの貴巳らしからぬ後ろ向きな結論は、しかし、貴巳自身意外なほどに、
魅惑的に心に響いた。
0074サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:37:45ID:6AYg1vUl
「貴巳さん?どうしたの?」
頬を撫でられるがままになっている雪子が、微かに震える声で言う。
「雪子には負けた。もし万が一そんな状況になったら、
雪子の言うとおりにする」
「ほんとに?!良かった……」
心底から安心した様子の雪子が、にっこりと蕩けるように微笑う。
先程の密かな決意は、貴巳の口から発せられることはない。
そんな事を言えばきっとまた、雪子が泣くから。

「……ひゃぁ、くすぐったいよ」
うなじに廻した手で雪子を自分のほうに引き寄せ、白い首筋に唇を這わせると、
雪子が身をよじって笑う。鈴を転がすような無邪気な笑い声だ。
「どうせ、真っ先にライオンに襲われるのは雪子に決まってるからな」
そう貴巳が嘯くと、雪子が拗ねる。
「どうせ、私は足も遅いし、カンも鈍いですよーだ」
「いや、それも勿論あるが、何より」
警戒する隙を与えないほどに素早く、貴巳は雪子の腰を抱え、
リビングの柔らかい絨毯の上に押し倒す。
「雪子のほうが美味そうだ」

バスローブの下の素肌は、まだほんのりと風呂上りの湿気を帯びて、
しっとりと手のひらに吸い付くような感触だ。
うなじから鎖骨へと唇を滑らせると、手を使うまでもなく、
バスローブの胸元はあっけなく開かれていく。
「たかみさんっ……ダメ、ベッドに……」
頬を染めた雪子の、小声の抗議をいつものようにあっさりと無視し、
貴巳はエアコンのリモコンに手を伸ばし、設定温度を2度上げた。
胸元をはだけ、洗い髪を乱れさせて横たわる雪子の姿は扇情的だ。
染みひとつなく真っ白な脚が、所在なさげにもじもじと擦りあわされている。
頼りなく細いふくらはぎから、やわらかな腿へと指を這わせる。
そのまま手を手を上に移動させると、身体で一番熱を帯びた場所がある。
雪子がはっと息を呑む音が聞こえるが、貴巳は敢えて其処には触れず、
腰骨をくすぐり、滑らかな下腹部の肌を手のひらで撫でさすった。
どうして雪子の肌は、何処もかしこもこんなに柔らかいのだろうか。
時折、初めて肌を合わせた時の驚きを貴巳は思い出す。
胸元をすっかり露出され、恥ずかしそうに顔を背ける雪子の耳朶を、
貴巳はそっと舌先で舐め上げた。
途端にびくり、と雪子の腹部が波打つ。桜色の唇から僅かに吐息が漏れる。
もとより感じやすいたちの雪子だが、ここのところ特に、
感覚が鋭敏になってきているような気がする。
ほんの少し触れただけで、電流でも流されたかのような妻の反応が面白く、
貴巳はつい必要以上に焦らして雪子を啼かせてしまうのだ。
耳元で、わざと湿った音を出して耳朶をねぶると、
雪子の唇から、押さえきれない声が漏れる。
「ひゃ、や、ああ」
苦しそうな喘ぎが、貴巳の嗜虐心を煽る。
0075サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:38:55ID:6AYg1vUl
細いくるぶしを掴み、雪子の脚を自分の胸のあたりにまで引き寄せた。
慌ててバスローブの裾を押さえながら、不自然な体勢に戸惑いの目を向ける
雪子の瞳を凝視し、貴巳は、見せ付けるように雪子の足指を口に含んだ。
「やっ、やだっ、、そんなのだめ、汚いよぉ」
慌てて身をよじり逃れようとする雪子だが、貴巳の力には敵うわけもない。
「だ、めぇっ……くすぐったいってばぁ」
石鹸の香りのする、可愛らしい指を舌で転がして味わう。
雪子の肌は、踵でさえまるで果物のように柔らかく、甘い。
全身くまなく味わい尽くしたい衝動にかられて、
貴巳の舌は雪子の脚をじわじわと侵略する。くるぶしからふくらはぎ、膝の裏。
相変わらず拒否の声を上げている雪子だが、抵抗する身体にはもはや力が入らない。
片足を肩に担ぎ上げ、腿の内側に軽く歯を立てた刹那、細い腰が僅かに痙攣した。
「……いったのか?脚を舐められただけで?」
耳元でそう囁くと、真っ赤になって首を振る妻。
今まで何度同じようなやりとりを繰り返したか知れないが、
飽きることなく欲情を駆り立てられる自分に半ば呆れる。
もはや隠すことも忘れられ、あらわになった下着に、うっすらと染みが滲んでいる。
わざと避けるように、足の付け根ぎりぎりを舐め上げると、
下着越しにもそこが期待にひくついているのが解った。
鼻先に、発情した雌の匂いが撒き散らされる。
「……脱ぐか?」
割れ目を軽く指でなぞりながら聞くと、妻は赤い顔を腕で隠しながら、
ようやくそれと解るほど微かに頷いた。
白いレースのついた下着に手をかけ、ゆっくりと引きおろすと、
秘所は既に透明な蜜を溢れんばかりにたたえていた。
充血した突起がぷくりと膨らんで、時折物欲しげに震える。
着ていたバスローブは、殆どどこも隠さないほどにはだけ、
僅かにベルトだけが腰に絡みついているという、しどけない姿。
乱れて胸元に張り付いた黒髪が、匂い立つような色香を漂わせている。

身に着けていたものを手早く脱ぎ捨てた貴巳は、
期待に震える雪子の身体に覆いかぶさった。
既に硬く張り詰めた棒の先端で、割れ目をくすぐると、くちゅくちゅと水音が響く。
内部へ進入しようと圧しつけると、雪子の腰が僅かに浮いて、
剛直を受け入れようと動いた。

「……ん……やぁ……なんでぇ?」
期待に反し、いつまでも与えられない快楽を待ちかねて、
雪子が縋るように夫を見上げる。切なそうに息を荒げ、
既に我慢の限界に達している様子が、ありありと見て取れる。
焦れる妻の痴態を満足げに眺めて、意地悪く、貴巳は耳元で囁く。
「……脱ぐかどうかは聞いたが、入れるとは言っていない」
「……っ!い、意地悪っっ!もう、馬鹿ぁぁ!」
充分に自覚していることをどんなになじられても、痛くもかゆくもない。
亀頭でクリトリスを擦り上げながら、貴巳は再び、
雪子の全身を味わい尽くす作業に戻った。
0076サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:39:41ID:6AYg1vUl
快感に蕩ける顔を見られたくないのか、妻はいつも顔を隠そうとする。
そのたびに貴巳にあっさりと阻止されるのだから、いい加減に諦めればいいものを。
恥じらっている姿がかえって貴巳の劣情を駆り立てるのだということに、
雪子はまだ気づかないらしい。
今日もまた、雪子の腕はあっさりと捕らえられる。
そればかりではなく、貴巳は、わざと見せ付けるように細い指の一本一本をねぶり、
指と指の間を舌で擽る。
すでに全身が性感帯となっている雪子は、指先に伝わる暖かい粘膜の感触にさえ
激しく反応して声を抑えることができない。
「ひゃ、や、も、もう、やめて、おね、おねがいっっ」
泣き声のような懇願は、貴巳の舌が肘から二の腕、脇の下にまで及ぶと、
悲鳴のように変わった。
「ああああああっっ!や、だめ、いやぁぁぁ」
激しくのたうつ雪子の身体を力ずくで押さえ込み、貴巳の唇は更に激しく全身を蹂躙する。
揺れる両乳を、時折きつく吸い上げ、紅い跡を残しながら、くまなく舐め上げ、頂を甘く噛む。
雪子は既に幾度も身体を痙攣させ、珠の汗を額に浮かべているのだが、
責める手を緩めるつもりは貴巳にはない。むしろここからが本番である。
仰向けの雪子の身体を、いとも簡単にうつぶせにひっくり返すと、
膝をついて腰を浮かせる獣の体勢で、自らの肉棒を擦り付けた。
「お……ねが、しますっ……も、もぉ……おねがいっ……」
恥じらいも忘れて、身も世もなく挿入を懇願する雪子の声を快く聞きながら、
貴巳は雪子の背筋に舌を這わせた。背骨の一つひとつを確認するようにじっくりと。
一人の女性の身体を、こんなに愛しく隅々まで知りたいと思う自分が不思議だ。
瑞々しい肌に溺れて、思わず肩口を強く噛む。そんな手荒な刺激でも、
今の雪子には快感に変換されるらしい。
紅く残った歯型が、妻の身体の隅々まで自分のものだという証に思えて、
貴巳は物狂おしく、柔肉の彼方此方を噛んだ。
腰を一旦離すと、雪子が切羽詰ったせつない声を上げる。
最近より一層、女性らしい丸みをおびてきた尻を両手で撫で上げると、
尖った尾てい骨に口づけて、更にその下の窄まりにまで、貴巳は舌を伸ばした。
「きゃ、や、うそ、嘘でしょ、やめて、やめてぇええ」
雪子が、恥ずかしさの余り、パニック状態で舌から逃れようとする。
今まで、その部分に触れられたことくらいはあっても、直に口で愛撫されたことなど
一度もなかったのだ。
「や、やだ、ほんとに、き、きたないってばぁぁ」
今までになく強い力で逃れようとする雪子の腰をがっちりと押さえつけ、
貴巳は強引にそこをついばむ。
「汚くなんてない。雪子の身体は」
どこもかしこも綺麗だ、と内心で付け加える。歯が浮いたような台詞は不得手である。
暫くそこを愛撫していると、雪子の声がほとんど泣き声になっていく。
「いやあぁぁ、ほんとに、もお、ゆ、ゆるしてぇ」
しゃくりあげる妻が流石に不憫になって、再びその身体を仰向けに戻してやった。
涙でぐしゃぐしゃの表情でも、雪子はやはり美しい。
「……嫌だったか?」
言わずもがなの質問に、雪子は何度も頷く。
「……ここは嫌だと言ってないが」
先程よりも更に潤いを増し、既に滴っている秘所に、
前触れもなく、貴巳は猛る自らを根元まで突き入れた。
0077サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:40:19ID:6AYg1vUl
「……っっっっ!あ、あああああんっっっっ!!」
白い身体が仰け反り、媚肉が激しく蠢く。
限界まで反った身体がびくびくと跳ね、挿入された瞬間に達したことを示す。
「ひゃ、あぁぁぅ、や、ああああ」
壊れたように喘ぐ雪子に、貴巳は更に容赦なく腰を打ち付ける。
今まで散々雪子を焦らしていた分、貴巳もまた、我慢の限界を迎えている。
きつい締め付けを繰り返す膣内を、がむしゃらに突き上げ、奥を擦り上げた。
「や、もうだめ、だめ、いってる、のに、っっああああっっ」
無意識のうちに貴巳の胸に縋りついた雪子が、その背中に爪を立てる。
僅かな痛みに、少し冷静さを取り戻した貴巳は、
雪子の最奥を押し上げたまま、動きを止めた。
暫くはゆっくりと、痙攣する熱い肉の感触を楽しむ。
息も絶え絶えな様子の雪子の唇を割り、舌で咥内をまさぐると、
熱く潤むひだが、物欲しげに奥へ奥へと誘う動きをする。
「や……やだぁぁ、やめてよぉ」
「俺は何も動いてないぞ」
「わ……かんないっ……な、なんか……勝手に……いやぁぁぁ」
雪子の肉壁が、まるで貴巳自身を舐め上げるように蠕動している。
先端に密着した子宮の入り口が、亀頭を舐めしゃぶるように吸い付く。
「ぁああ!とまんない!とまんないよぉぉ、ああああ!!!」
貴巳も堪らずに、再び激しく内部を突き上げる。
激しい水音と、肌を打ちつけあう湿った音が部屋に響く。
貴巳のものが一層大きく膨らみ、容赦なく雪子の一番感じる部分を擦る。
「あっ、ああっ、あ、くる、すごいの、くるぅっ」
異常な興奮が一瞬にも、永遠にも感じられた次の瞬間、
貪欲に精液を飲み干そうとする子宮に吸い付かれて、貴巳は爆ぜた。

しばらくは口もきけないほど息の上がった雪子を抱きしめながら、
貴巳は妻の乱れた長い黒髪を指で梳く。
潔癖症と言えるほど神経質な自分が、何のためらいもなく、むしろ喜んで
雪子の全てに口づけることができるのが、今更ながら驚きだった。
瞼を彩る長い睫毛が震えて、雪子が目を開け、自分を見つめて、
恥ずかしそうに微笑んだ。
「……食べられちゃった、ね」
「当初の予定通りだな」
「ええ?貴巳さんに、じゃなくってライオンにって話だったじゃないっ」
ころころと笑う雪子をみて、貴巳はそれこそ当初の予定を思い出した。
(今だ……このタイミングでサファリパークに誘えば、きっと自然に違いない)
「雪子、それなんだが」
言いかけた貴巳の台詞は、次の瞬間無残にも断ち切られた。
「でもね、やっぱりこうやって、ずーっと貴巳さんとくっついてたいなぁ。
二人とも長生きするのが一番だよね。だから、なるべくライオンのいるところには
近づかないようにしよーねっ!ふふふっ」
「……」
可愛らしく笑う妻のあまりの無邪気さに、海よりも深く沈黙する鉄仮面であった。
0078サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:41:04ID:6AYg1vUl
次の日。
貴巳の勤務する某市市役所の企画課ブースには、
鉄仮面の有能なる部下、橋本あや女史の怒声が朝っぱらから鳴り響いていた。
「だから係長、この企画書、何で私の意図が全然伝わってないんですかっっ!
言いましたよね?私言いましたよね?むしろ文書にしてお渡ししましたよね?」
隣ではバーコードヘアの富岡係長が、恰幅のいい体を最小限に縮こまらせている。

「……またやってるのか」あやの、女性にしてはハスキーなよく響く怒声に
眉をしかめながら、鉄仮面が二人の間に割ってはいる。
「また、で済ませられる問題じゃありません。このミスのお陰で
何時間ロスすると思ってるんですか」
今朝の橋本女史はことさら虫の居所が悪いらしく、簡単にその怒りは収まりそうにない。
貴巳としても気分的にはあやの立場を支持したいのだが、
朝っぱらからこの怒声を聞き続けるのは耳障りであるし、
怒っていても仕事が進むわけではない。
「……まあ、そのくらいにしておいたらどうだ」
「課長までそういう事言うんですか?」
「タダとは言わん。係長からだ」
そう言うと、鉄仮面はおもむろに背広のポケットから白い封筒を取り出し、
あやの机に置いた。
「何ですかこれ……サファリパークのチケット?」
「あーそれ!中嶋君行かないの?どうして?」
怪訝な様子の二人を、凍てつくような冷たい目線で黙らせると、
鉄仮面は黙って立ち去った。
「……今、『聞いたら殺すぞ』って目でしたねぇ」
「中嶋くんもしょうがないねぇ。彼氏のいない橋本くんに、そんなもの渡しても
仕方ないのにねぇ。逆に失礼だよね相手がいないのに。
……え、橋本くん、何その目は。何で頷いてるの?」
「納得してました」「……何を?」
「係長がなんで出世できないのかを」
「いやちょっと!そこ納得しないでよ!」

背後の部下たちの大騒ぎから逃れるように外に出た鉄仮面は、
厄介な胸焼けと戦っていた。
昨夜無理をさせすぎて雪子が朝起きられず、仕方なく朝食代わりに食べたドーナツの
せいである。しかも貴巳は、朝食べたものとは別に、
30センチはある長方形の箱にドーナツがきっちりと詰まっているのを目撃してしまった。
あれを誰が食べる羽目になるのか、想像するのも恐ろしい。
ずっしりと重い箱の絵柄は、何やらとぼけた顔のライオンだった。


終わり
0079サファリパークにはライオンがいる2011/01/06(木) 03:42:38ID:6AYg1vUl
以上です。
久々の投下のため不備があるかもしれませんがご容赦下さい。
読んでくださった方ありがとうございました。
0082名無しさん@ピンキー2011/01/06(木) 10:32:18ID:S/vJfNFZ
うわー!
キタキタキタキタ――(゚∀゚)――!!

待ってたよ、今回もGj!
0085名無しさん@ピンキー2011/01/06(木) 22:33:18ID:yZ73UDwp
このシリーズもう読める日はこないと思ってたから
思わず>>67を二度見してしまった
0086名無しさん@ピンキー2011/01/07(金) 01:23:07ID:Uo8BUaTb
>>85自分は三度見したんだぜw

今日ほどこのスレに居座り続けて良かったと思う日はないくらい嬉しい

また気が向いたら投下してくれ
0087名無しさん@ピンキー2011/01/07(金) 23:04:13ID:PNTuZR7Y
お久しぶりです!なんか段々雪子がアホの子っぽくなってきてカワユス
GJ!
0089名無しさん@ピンキー2011/01/12(水) 20:28:06ID:jT6SXs1E
はぴまりっていう新婚の漫画にハマった
設定強引なところもあるけど少女漫画のツボ抑えてる感じ
4巻は裸祭りでしたw
0091名無しさん@ピンキー2011/01/24(月) 05:36:47ID:RUB+rOmw
色気全開でしかもドMな年上熟嫁が出てくる話が読みたいです……
0092名無しさん@ピンキー2011/01/25(火) 09:49:32ID:zxI7THRg
期待age
0093名無しさん@ピンキー2011/01/25(火) 23:37:57ID:YORQsruH
195 名無しさん@ピンキー sage 2009/11/09(月) 10:27:40
大学生の時父は単身赴任で、2週間に1度金曜夜から月曜朝まで在宅という生活だった。
両親のセックスは金土日と月の朝、4日連チャン。
母は激しいプレイで嬌声を上げるのではなく
子供に気を遣いつつも押さえきれない甘い声を引っきり無しに漏らす、という感じだった。
しかも1回1回の営みが、月曜朝を除き長かった。
寝室の外に聞こえてるのは気付いていなかったと思う。
自分で言うのもなんだが母は美人で中年太りもせず、とても父と同い年には見えなかった。
自分とも姉弟に良く間違えられていた。
日常両親を見ていても、父が母にベタボレで始終くっついていたから
寝室でも母の事を時間を忘れて可愛がっていたのだろう。
離れている時間を取り戻すように、帰れば毎晩毎晩母の体に精一杯愛情を注いででいたに違いない。
最初母の声聞いた時は、ショックだった。(寧ろ中年男女が毎晩できるということに)
もう大人だったから嫌悪感や恐怖は感じず、
自分も結婚したら丁寧な前戯とセックスで愛し合いたいと思った。
0095名無しさん@ピンキー2011/01/26(水) 07:07:00ID:Q8spaXfo
ある程度年食ってきたらさ、うちの親はいいセックスしてたのかな〜してたらいいな〜、って考えるようになった
もちろん、詳しく知りたいとか現場が見たいって訳じゃないけど
もしセックスレスとかだったら、なんか悲しいね
0096名無しさん@ピンキー2011/01/28(金) 00:40:58ID:lT4FO1AU
美熟女でドMな妻が欲しい
0098名無しさん@ピンキー2011/02/05(土) 12:53:36ID:vhkUx454
他スレの話するとアレだけど、結婚とか妊娠とかで無事にくっついちまって、
『もうスレ違いなので投下終わります』とか言われると、ここに引越してくんねぇかといつも思う。

良い話はいつまでも読みたいと言う我が侭なんだが。
0100名無しさん@ピンキー2011/02/11(金) 19:20:10ID:cXkIc7JM
0101名無しさん@ピンキー2011/02/12(土) 22:28:08ID:ccIFbvt/
>>99
なんで例えがソレなんだw
いやオレもアレは好きだけど。


でもココに来て欲しい作品は確かに多いな…。
0102名無しさん@ピンキー2011/02/14(月) 09:00:47ID:2KB0380m
だしょー!今日はバレンタインだからなにかミラクルが起こるはずだ
01061042011/02/28(月) 01:47:25.27ID:6E36e74x
わかりました。それでは、2〜3レスほど。タイトルは「cure kiss」です。
NG登録される際はこれでお願いします。
0107Cure kiss2011/02/28(月) 01:54:27.15ID:6E36e74x
「いてっ!」

2月。あと一月半もすれば桜が開花しようという、暦の上では春になる直前という時期である。しかしながら、気温を天気予報で見る限りではまだまだ春は遠いようだ。
したがって、ここ吉川恭介・亜衣夫妻の家においても炬燵というものがまだ活躍していた。
先ほどの「いてっ!」はその恩恵を受けていた恭介の口から洩れたものである。同じくその恩恵を受けながらみかんをほおばっていた亜衣がふと顔を上げると、恭介がみかんを片手に顔をゆがませていた。

「どうしたの?」
「口内炎にしみた…」

口内炎なんてできてたんだ。そういえば最近恭介、疲れてるみたいだったしな…。
一般に口内炎などの症状は疲れている、あるいは免疫力が低下していると治りにくい。この間テレビで見た内容が亜衣の脳内をよぎる。
休日の昼下がり。昼食後の洗い物をすませて一息つこうと炬燵にもぐりこんでみかんをほおばっていた亜衣の目の前には、痛みに顔をしかめながらもみかんをがんばってほおばる恭介の唇。…そうだ。

「口内炎によく効くおまじないがあるんだけど、試してみる?」

結婚しておよそ1年。新婚生活を精いっぱい楽しむ2人にはまだ子供はおらず、当然家には恭介と亜衣の2人しかいない。
訝しげな表情の恭介に眼を閉じるように言い、亜衣は炬燵から一度出て、向かい側、すなわち恭介の隣に音もなく忍び寄る。

「いたいのいたいのとんでけー…」

チュッ。

「んんっ!?」

恭介の唇を突然あたたかくて柔らかいものが覆ったかと思えば、すぐに上下の唇をこじ開けてもっと温かなものが侵入してくる。
驚いて目を開けた恭介の目の前には、さっきまでテーブルの向こうにいたはずの、最愛の妻のどアップ。…キスしたいならそう言えばいいじゃないか。とは思うものの、最愛の人から直接伝わってくる熱さに恭介はすぐに考えるのをやめて、再び目を閉じた。
0108Cure kiss 2/22011/02/28(月) 02:16:50.12ID:6E36e74x
 亜衣の舌が恭介の口内を這う。

「ん…」

触れ合った唇からはあたたかい吐息が漏れる。やがて亜衣の舌が恭介の口内炎に触れ、恭介が顔をしかめる。
亜衣は納得したように舌をその部分へと向かわせる。
(何するんだよ、痛いじゃないか…)
抗議しようと口を離そうとするが、亜衣はそれを許すことなく、同じ個所を何度も何度もなめ続ける。
徐々に大きくなる水音と、亜衣からほのかに香る香水、そして口内をひたすらはいずりまわる舌の感触に、恭介の感覚がだんだん麻痺していく。
 

 しばらくたって亜衣の唇が離れていく。離れると同時に眼を開けた2人は、互いの唇を伝う銀色の糸に、つい恥ずかしくなって顔を赤らめてしまう。

「これで痛くなくなったでしょ?」

亜衣はいたずらが成功した子供のような表情を浮かべる。…初めからこれがねらいだったのか。
恭介よりも1つ年上の妻は、時折こうしたかわいらしい側面を見せてくる。そんな亜衣が愛おしくて、恭介はつい、その「いたずら」を許してしまう。
(ああ、この人にはかなわないな…)
そんなことを思う恭介の表情はとても柔らかなものだった。結婚生活は順調である。
01091042011/02/28(月) 02:24:34.40ID:6E36e74x
以上です。読んでくださった方、どうもありがとうございました。
0112名無しさん@ピンキー2011/03/07(月) 19:10:17.68ID:ThgBBtaX
投下期待
0113ガリさん2011/03/08(火) 04:22:16.06ID:ehtd805u
実に面白い
01141042011/03/08(火) 21:28:43.35ID:j6tDBCYK
なんかコメントついてる! ありがとうございます! 
よかったのかホイホイコメントしちまって。俺は「GJ」だけのレスにだって、狂喜乱舞しちまう男なんだぜ?///


…キスで感覚がマヒするなんてあるわけないだろwww
 ↑と、キスすらしたことのない真正DTが申しております。
0118名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:24:32.20ID:kZDl+i2a
もしかしたらスレチかもだけど供養がてら投稿します。
保管庫には載せないで下さい。
情事は表現出来なかったのでだれかお願いします。
むしろ自分が見たくて途中まで書いた
0119名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:26:26.22ID:kZDl+i2a
家に帰ると妻が
玄関に
裸エプロンで座って
鞭と紐と大人のおもちゃを用意してました。


「シン君お帰りなさい」
「あ、あぁ…ただいま…」

頬を染めて上目遣いで言う彼女はとても可愛い。
そりゃそうだ、自分が長年惚れ込んでやっと結婚出来た相手だ。
しかしこの状態は結婚したからといって受け入れられるものではない。
彼女が求めてるのは被虐精神を満たす行為、言わばSMだ。
0120名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:27:25.47ID:kZDl+i2a
結婚当初はこんなことしなかった。することさえ考えてはなかっただろう。
こうなった原因は一部自分にあると自覚している。
仕事の上司からの無茶振りに残業が増え夜の関係が長いことご無沙汰になって、更にはトラブル発生と、とにかくストレスが溜まっていた時彼女に強姦紛いのことをした。
四肢拘束目隠し口にガムテ放置したあとバック…そんな感じだ。
普段はそんなことはしない。そもそも痛みで泣く彼女を見るのは趣味じゃない。むしろ嫌だ。
翌日、彼女に酷いことしたと土下座で必死に謝った。
それ以後は絶対に八つ当たり強姦紛いのことはしないと心に誓い、実際自らやってはない。

それがなんだ。
今度は彼女が被虐精神に目覚めてしまった。
友人に「無理矢理されたら凄く感じた」と言ったらSMサイトを紹介されたらしい。

そしてこのザマである。

当然ではあるが、毎日がこうではない。
発情期というかなんというか、とにかく月に何日かあるだけだ。
その何日かがキツイのだけど。
0121名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:28:43.21ID:kZDl+i2a
「ご飯にします?お風呂にします?それとも…私にします?」

ご飯→媚薬入り
風呂→一緒に入って襲えと脅される
私→言わずもがな

「えっと、まずは服を来て頂きたい」
「シン君…私の体、魅力ない?」
「そうじゃなくて…目に毒というか…」

下半身がヤバいから止めて欲しい。
このまま流されたら彼女の思う壷だ、明日も仕事あるのだから申し訳ないけど控えてくれ。
いや裸エプロンが嫌いなわけじゃない、男の浪漫だ。
今日が水曜でなかったらがっついてもおかしくは無い。はず。

「ねぇシン君、私、シン君の奥さんだよね?」
「そうだけど?」
「だから私の体はシン君のものなんだよ、自由に使っていいんだよ?誰も邪魔しない関係なんだから」

ウルウル目でそういわれては理性も持たない。あぁ可愛い。
思わず顔を逸らした。

「何度も言うけど、人を痛みつける趣味は無いって」
「でも抱いてくれる時はいつも意地悪じゃない、それが実物に変わるだけだってば」
「いやいやいや、そんなんじゃなく…」
「私、シン君に意地悪されたいの。シン君だから言うんだよ?この体にシン君の証を、所有印を刻み込んで欲しいの。私をシン君に染めて、グチャグチャにして?お願い…」

座ったままギュッと足に抱き着いてきた。
あぁもうストレート過ぎるんだよ!
しゃがんで彼女に無理矢理口づけする。
深く長く、ねちっこいディープキス。
彼女が耐え切れず逃げようとするのを頭を抱えて固定する。
彼女の力が抜けるまで、掻き乱していた。
こてん、と僕の胸に寄り掛かった時。

「……なら、そのおもちゃをあそこに入れて。そのまま食事を取ろう」

良心により踏み止まっていた理性は崩壊した。
実にあっさりなのは惚れた弱みだと主張しておく。
0122名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:29:13.18ID:kZDl+i2a
ヽ(゜∀。)メ(゜∀。)メ(゜∀。)メ(゜∀。)ノ


溜息。
腕の中では全裸の彼女がぐっすり、というかぐったり眠っている。
体のあちこちには縄と鞭の後が赤く残っていた。
それを見るといたたまれない、本当はこんな傷付けるつもりなんてなかった。
出血しなかったのが救いだ。
抱きしめると「んぅ…」と声を上げる。それでも起きる様子はない。
溜息。
最初は何度も「やめないで」と言うから戸惑った。
結局は自分も媚薬入りの食事を美味しく頂いた故にスイッチが入ってヒートアップし無理矢理やってしまったのだけど。
あくまで薬のせいだ。そういうことにしておきたい。
本当は泣き喘ぐ姿なんて好きなんじゃないのに。
もっと大切にしたいのに。

三度目の溜息の前に彼女が目を覚ました。

「シン君…」
「大丈夫?」
「うん、へーき」

えへへ、と幸せそうに笑う彼女に僕は内心複雑だ。
0123名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:29:53.87ID:kZDl+i2a
「その…ゴメン」
「え?」
「いつも思うけど、辛くないか?」

キョトンとしたあと、またニコニコしはじめた。
そして抱きしめ返してきた。
ギュウッと胸が密着してくる。

「痛くされた後のシン君優しいからねー。それだけでもう満たされちゃう」

……ん?

「もぅ、アメとムチの使い方が上手いんだから病み付きになるんだよー?」
「……どゆことですか?」
「シン君はねー、酷くしたあと謝るようにスッゴく大切に抱いてくれるから好きー」

なんと、無意識にアメとムチやってたということか!
結局三度目の溜息を吐き出した。
グリグリ頭を撫で回す。
とろとろ甘える彼女はやっぱり可愛い。惚れた弱みだ、悪かったな。
とりあえず明日(というか今日の朝)に備えて寝なければ…って。

「なにやってんだ」
「え?もう一回」

彼女はいつの間にか洗濯挟みを取り出していた。そして僕に押し付ける。

「気持ちは嬉しいが明日も仕事だ」
「だってまだ疼くんだもん」
「だもんじゃない」
「放置プレイにするならバイブ入れて両腕縛っ「やめろぉぉああッ!!!」

まだまだ夜は続くらしい。


お粗末!
0124名無しさん@ピンキー2011/03/15(火) 22:33:44.73ID:kZDl+i2a
>>119->>123
以上。中身も脈絡もなくてしかも意味不明でスマン。
処女作だから許して。
とりあえず吐き出してスッキリした。

無駄な人物紹介
・シン君:晋
美琴の旦那。
スイッチ入ったらSだけど、元々理性が強い人間なので入るまでが長い。大概は薬かストレス溜めないとならない。
普段は凝らしプレイが好き。妻を名前じゃなく「彼女」と呼ぶのもそのうちとかそうじゃないとか。
快感でフニャフニャにするのがいいらしい。
本人曰く「自分のテクで気持ち良くなってくれないのが嫌だからSMはしたくない」とのこと。
とかなんとか言いつつやたら技術面では詳しい。縛りの種類とか道具とか。

・彼女:美琴
晋の嫁。髪の毛は肩までストレート。これだけは譲れん。
普段はおしとやかで可愛らしいが、発情期になるとやたら積極的なMになる。
発情期になると自分を壊すオ●ニーをやっては帰ってきた旦那に救助されることもしばしば。
カップはBからCになった。
大概ネタ(?)を提供するのは彼女の方。
●●したい!と言っては頭を抱えつつ折れて獣になる旦那が堪らなく好きなんだって。

結局二人共馬鹿。
0129名無しさん@ピンキー2011/03/21(月) 01:27:23.78ID:f6H4YjlH
女性向きかもしれないが
片恋生活という女性マンガがこちら向けかもしれないと思った
ほんやりしてはいるが
0130名無しさん@ピンキー2011/03/24(木) 04:38:22.01ID:Cz+fxhud
むしろその作者の別作品、パジャマでごろんもお勧め。
新婚ものだし。
0131名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 00:16:00.07ID:m/t5KB/A
投下期待
0133名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 20:36:16.03ID:T0CJ2mHn
>>119-123を投稿した馬鹿です。
再び供養しに来ました。
今回はおでかけ?編です。
やっぱり情事は表現出来なかったのでだれかお願いします。
0134名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 20:37:04.82ID:T0CJ2mHn
休日は二人で出掛けるのが基本だ。
映画見に行ったりウィンドウショッピングしたり。
今日は晩御飯の材料を一緒に買いに行こう、ということになったのだけど。
彼女が笑顔で首輪とリードを持ってきた。

「何を求めてるんですか」
「お出かけするんだったら必要でしょ、ご主人様ッ!」

マズイ、彼女は発情期だった。

「君は僕が補導されてもいいのかね」
「ちゃんとお互い了承得てるから大丈夫です!私がしてって言ってるから!」

ビシッと敬礼ポーズをしても無駄だ。それにしても綺麗にするな。

「仮に補導されなくても世間にどんな目で見られるかわかってる?」
「あぁ、ご主人様は私を辱めたいんだ…とゾクゾクします!」
「それは君の主観だ。何やってんのあのカップル、と思われ引かれるのが一般的な反応だ」
「カップルじゃないです、ご主人様と奴隷です!」

夫婦とは言わないのかよ。
今日はすこぶるM度が高いらしい。設定に入り込み過ぎて理解力無くしてる。敬語も使ってるし。
ここで負けたら務所行きなのでさっさと玄関へ。
0135名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 20:37:45.38ID:T0CJ2mHn
「とにかく駄目だ。普通に行くよ」
「お預けですね!いつ、いつされるのですか?!」
「しない、絶対」
「無期限お預け…」

ちょこちょこ後ろをついて来るのは発情期だろうが悪い気はしない…と脳内で惚気ながら靴を履き替えていると「ご主人様」と背後から声がする。
ご主人様じゃない、と立ち上がり振り返れば。

「堪えきれない奴隷は自分のあそこにバイブを入れて出掛ける事をお許し下さい…」

彼女は相変わらずどこからともなく大人のおもちゃを取り出し、片手はジーパンに手を掛けていた。

「なにやってんの!?」
「美琴はもう堪えられません…」
「ちょ…」

顔はほんのりピンク色に染まって、既に股下はシミが広がっていた。
ゆっくり息を荒げながら降ろす姿は艶めかしい。釘付けになる。
羞恥に堪えながら今度は下着を降ろす前にその手を取った。

「ご、ご主人様?」
「………」

もう、限界。
0136名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 20:38:50.51ID:T0CJ2mHn
ヽ(゜∀。)メ(゜∀。)メ(゜∀。)メ(゜∀。)メ(゜∀。)ノ


「意地悪」
「なんとでも」
「結局リードもバイブもお出かけも無しになっちゃったじゃない」
「でもヨカッたんだろ?立てないくらい」
「む…そうです……」

結局玄関でコトに至り、今は動けない彼女をベッドに寝かせている。
勿論腕枕はデフォルトだ。
気を取り戻した彼女が最初に発したのが冒頭の言葉である。

「奴隷はもっと酷い扱いをされなきゃ……」
「僕は君を奴隷だなんて思った事は一度もない」

淫乱ビッチかと思った事ならあるけど。

「さて、もう一度するかな」
「え?お買物は?」
「後で僕が個人的に行く」
「駄目!お出かけは二人で行くの!」

随分かわいい我が儘言ってくれるじゃないの。
こっそり後ろ側から手を彼女のあそこに滑り込ませる。
十分濡れそぼった音がした。
0137名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 20:39:51.22ID:T0CJ2mHn
「キャッ!?」
「それより僕の熱を冷ますのが先だろ?」
「…酷くしてくれるの?」

彼女は期待に満ちた目で僕を見詰める。
その返事として僕は微笑んだ。

「まさか、今日はとびっきり気持ち良く抱いてやる」

異議を言われる前に僕は彼女にディープキスをお見舞いしてやった。

お家でデートはまだまだつづく。





タヒね(゜∀゜)
0141小旅行2011/04/05(火) 02:25:29.61ID:XzTx8xWZ
「うわぁ、凄―い!」
たしかにスゲェ部屋だった。無駄に広い部屋。天井には豪華なシャンデリア。ふわふわな絨毯。壁紙も高級そうだ。
でかいテレビに、マッサージチェア、カラオケにピアノまであった。もちろん奥にはキングサイズのベッド。
「いやー、久々のラブホだけど、感動だねー!」
嫁が、テンションが高くなってくるくる回る。チワワみたいだ。
結婚して5年になるが、まだ可愛いと思えるのはこんな幼いところがあるからだろう。

「地方都市のラブホはとってもいいらしいよー」先日テレビの旅番組を2人で見ていたら、嫁が突然言い出した。
「・・・じゃ、ドライブついでに泊まってみる?」
「うん!じゃあさ、できれば、ここ泊まりたい。」
いそいそと出したのは、無料情報誌。ホテルコーナーのページを開け、指で示す。やたらと高級そうな部屋。
・・・高っ!リゾートホテル並だ。ラブホのくせに。まぁいいか。最近仕事が忙しくて遠出をしていなかった。
嫁のささやかなお願いなら、ちょっとの贅沢くらいいいだろう。―で、ここに宿泊する事になった。

「うう、寒い・・・!」
嫁が体を震わせる。確かに寒い。暖房は一応かかっているようだが、部屋が広すぎて暖かくなっていない。
ベッドボードの集中スイッチを探し出し、Minだった空調をMaxに切り替えた。
ゴォォ、という音と共に空調口から暖かい空気が部屋に流れる。暖かくなるまで時間がかかりそうだ。
「風呂入ろうか?」
「うん!」
抱きつかれて、キスされた。むふー、と胸に顔を擦り付けている。犬みたいで可愛い。駄犬だが。
0142小旅行2011/04/05(火) 02:29:22.72ID:XzTx8xWZ
風呂場もやっぱり凄かった。全身を伸ばして入ることができるジャグジー。ついでにミストサウナ付き。
2人一緒に風呂に入る時は相手の体を洗う。結婚前からのお約束。
俺の硬くなったものをボディソープに塗れた嫁の背中や腋にこすりつけて、変態といわれるのも昔からのお約束だ。
さすがに結婚前の引き締まった少女のような体ではないが、柔らかく成熟した、いやらしい女の体になったと思う。
子を生んだことが無いためか、腰の細さだけは昔と変わらない。
子ができないのは少しだけ寂しいが、嫁を独り占めできるのはある意味嬉しい事なのかもしれない。
ジャグジーに入る。嫁が俺の胸に背中を預けてきた。背中から手を回し、胸を揉む。
「あん!ふふ、えっちー。」
まぁ、大きくはない胸だが、揉める程度にはある。乳首を軽く摘む。すぐに固くなった。
これまで付き合った女の中で一番小さい胸、というのは墓場まで持っていかないといけない秘密だ。
嫁が首を回し、キスを求めてきた。突き出された舌をしゃぶり、舐め回す。
「ん、うう・・・んん・・・」
唇を奪われながら、呻くような喘ぎ声。胸を揉んでいた両手を下半身へ伸ばし、内腿をなぞる。
「あ、そこ、いい・・・」
唇を離し、うっとりと呟く。手はそのまま嫁の茂みの中へ潜り込む。指を突起へ伸ばすと、捕まれ動きを封じられた。
「だめ。感じちゃうから、ベッドで、ね?」
湯の熱さ以外で顔を赤くした嫁が耳元で呟いた。
0143小旅行2011/04/05(火) 02:35:49.26ID:XzTx8xWZ
嫁の長い髪をドライヤーで乾かし、先に上がらせて自分も後から部屋に戻る。・・・暑い。暖房が効きすぎていた。
嫁はベッドでへばりながら缶チューハイをちびちびやっていた。裸で。下戸のくせに。
「暑くない?つーか、お前酒飲んで大丈夫かよ?」
「暑いけど、スイッチわかんないー。それになんか飲みたい気分なんだもんー。」
目がすでにトロンとしていた。チューハイを取り上げ、俺が残りを飲んだ。・・・甘っ!カルピスかよ。

ベッドに上がり暖房のスイッチを切ると、嫁が背中にのしかかってきた。乳首をつまんでくる。
「さっきのお返し。どーだー、気持ちいい?」
「痛ぇよ。」
気持いいが、俺的に言ったら負けだと思う。ごまかすために背中をねじって嫁をベッドに落とした。
そのまま胸を揉み、乳首を攻める。固くなったのを見計らって、舌を這わせ、吸い、舐め上げる。
「お返しのお返し。気持ちいい?」
「う、うん・あ・・ああん。気持ち、いい・・・」
逃げるように身を捩る。逃がすまいと肩を掴み、嫁の唇を貪る。舌を絡め、息継ぎの時には耳を舐める。

「あ・・ああん・・ねぇ、大きな、声、出しても、大丈夫だよねっ?」
俺の耳に舌を這わせながら、切なげに嫁が問いかける。
アパートタイプの社宅住まいだから、隣室や階下に生活音やら声が聞こえないかと嫁が気にしていたのを思い出す。
結婚前の嫁はSEXの時は大きな嬌声を上げ、激しく求めていたのに、いつからか受身で喘ぎ声を我慢するようになっていた。
転勤族だからとはいえ、きつい思いをさせている。申し訳なくなってしまった。

「うん、大丈夫だよ。俺もHな声聞きたいな。」
嫁が恥ずかしげに微笑む。キスをしながら、下半身に少しずつ手を伸ばした。腹を触り、腰を撫でる。
茂みの奥を触ると、すでに熱く濡れていた。指を割れ目に這わせると、ぶるり、と体を震わせた。
「ねぇ、指、入れて・・・」
ゆっくりと、人差し指を割れ目の中に入れる。くにゅり、と呑み込まれた。熱いスープに指を入れた感じ。
指を曲げ、上をちょんちょんとつつく。ゆっくりと、指を中で前後左右に動かす。
「あ・・はぁっん・・ああん・・」
嫁が耳元で普段よりも大きく喘ぐ。ひどく興奮して、指の動きが早くなった。
「あ!あ!いいっ!指、もう一本、入れてぇ・・・!」
懇願され、聞き入れた。一度指を引きぬき、今度は中指と人差し指で中に入れる。
中指を真っ直ぐにし、人差し指を曲げて、嫁が一番感じる所を狙って別々に動かした。
人差し指はクリトリスの裏あたり。中指は上のザラザラした場所。痛みを感じさせない程度に激しく動かす。

「あ!ああん!ちょ、ちょっと待って!ストップ!」
手を押さえられ、動きを止められた。指先で膣内の肉がヒクヒクと動くのを感じた。
「どした?」
「ごめん、ちょっと、感じ過ぎて、怖くなっちゃった・・・」
へへ、と泣きそうな顔で笑った。さすがに昔の様に泣かせても強引にイかせる気にはなれず、そっと指を抜いた。
抜く動きに感じてぴくり、と嫁の体が動く。唇をついばむようなキス。
0144小旅行2011/04/05(火) 02:41:10.65ID:XzTx8xWZ
「今度は、私が、してあげるね。」
体を押され寝かされる。腰の上に嫁が屈み込んだ。亀頭を舌が這い回る。竿を下から上に舐め上げられた。
玉袋をひとつずつ口に含まれ、転がされる。舌を肛門まで伸ばし、下から性器の先端まで舐め上げられる。
そして、ぬるりと性器が口に呑まれた。ぐちゅ、ぐちゅと音を立てながら激しいストローク。
動かしながら、舌を絡ませる。顔を左右に傾け、頬肉で擦り上げる。ぐちゅ、じゅぷという音が部屋に響く。

「ま、待った!ストップ!」
今度は俺がギブアップする番だった。口内に射精しても良かったが、今日は嫁の中で果てたかった。
「あれー、早いよー?」
アルコールと自分の行為に酔った目で、俺を笑う。くそー。
嫁は膝立ちになってにじり寄り、仰向けになったままの俺の顔に股間を当てた。
「ねぇ、舐めてぇ・・・」
とろとろと熱い愛液を流す割れ目に舌を突っ込んだ。強く跳ねるようにクリトリスまで舐め上げる。
「あ!いや!ダメ!激しいっん!」
言葉と裏腹に股間を顔へ押し付ける。唇でクリトリスや襞を甘く噛む。噛むたびに腰がびくり、と痙攣した。
股間が顔から離れた。激しく唇を貪られる。唇と口内で、互いの性器の味と匂いが混じり合う。

「ねぇ、入れたい・・・」
嫁が俺の腰の上にまたがる。手で性器を保持して、入れやすいように介助した。ゆっくりと性器が呑み込まれる。
熱い。やがて、中へ全て呑み込まれた。腰の上に嫁の愛液が熱く広がる。反応して、中でビクリと性器が動いた。
ぐちょ、ぐちょと音をさせながら嫁が腰を上下させる。柔らかく締め付けられる。
「あ、音が・・あん・・!恥ずかしい・・あん・・・!」
ぐちゅ、ぐちょと水っぽい音が股間から響く。動きの度にあん!あん!と声を張り上げる。
俺も嫁の腰を掴み、より奥へ突き刺す。嫁が腰の角度を変えた。俺の性器の先端に少し固い肉が当たる感触。
「あ!奥ぅ!当たってるぅ!ああん!奥いいのぉ!!熱いよぉ!ああん!」
嫁が髪を振り乱し、俺の上へ被さってきた。歯が当たるのも構わず激しいキス。互いの腰の動きが合い、激しい衝撃。

「ダメぇ!熱いぃん!イく!イっちゃうよぉ!」
俺ももう限界だった。力の限り、嫁を抱きしめる。
「ああ!イくの!?私も!私もぉ!」
性器に痛みを感じるくらい、激しく射精した。体が痙攣する。射精の度、嫁も喘ぎもできずに体を痙攣させていた。
4度、5度と射精した。ぴくり、ぴくりと嫁の体が微かに痙攣する。目があった。照れくさそうに笑う。

「好き・・大好きだよ・・。」
優しく、キスされた。息を落ち着かせると、嫁がゆっくりと腰をあげ、俺の性器を引きぬいた。
とろり、と流れ出た白い精液が俺の性器と嫁の割れ目を繋いだ。
0145小旅行2011/04/05(火) 02:47:55.28ID:XzTx8xWZ
嫁と自分の始末をし、ベッドに潜り込んで嫁を抱き寄せた。
普段ならシャワーを浴びてから眠るが、今日は2人ともバテていた。2ラウンド目どころの話では無かった。

トロトロと微睡んでいると、嫁が俺の胸におでこをこつん、とくっつけた。
「ねぇ、もし、子供できなくても、ずっと、私の事好きでいてくれる?」
時々放たれる質問。いつもなら軽快なジョークのオブラートに包んだ上で、ずっと好きだと伝えるが、今日は余裕がなかった。
たまには、クサイ言葉で真っ直ぐに言うのもいいかもしれない。

「当たり前だ。2人で楽しく生きていこう。ずっとイチャラブしよう。老人ホームでもイチャラブしよう。」
せっかくだ。心にしまっていた誓いも伝えておこう。
「お前が最後まで寂しい思いしないように、死ぬ時は俺が看取ってやる。それまで絶対に生きるから。
その後で俺はお前の思い出だけ抱えて死ぬから。ずーっと、愛してる。」

嫁は震える声で、バーカ、クサイんだけど、と呟いた。胸が熱く濡れている感じがするのは気のせいだろう。
そだな。恥ずかしいな。でも、マジだよ、おやすみ、と呟きながら瞼を閉じた。
0149名無しさん@ピンキー2011/04/24(日) 23:41:35.55ID:2xt0PJy7
☆ゅ
0150名無しさん@ピンキー2011/04/27(水) 14:51:27.45ID:kUxZRPVb
最後泣けた

いい話だった
0154名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 07:27:56.32ID:K/qu7zyW
こんな朝っぱらからなんだけど
前スレの四十路夫婦、続きしつこく待ってます
0155名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 19:38:00.11ID:JTH7ViUE
>>139のために続編書いた。
勝手に地味にコラボしてますサーセン。
0156名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 19:38:49.93ID:JTH7ViUE
発情期の彼女は家に帰るとほぼ裸エプロンでいる。
しかし今日はそれに乗るほど気分が乗り気ではない。
むしろ僕は彼女に対して怒っている。

「シン君お帰りなさい」
「ただいま、今日はご飯いらない」

え?と驚いてる。
そりゃそーだ、今までなんだかんだで晩御飯は完食する僕がいらないなんて言うことはなかった。
けれど今日は同僚(男、そして独身)をひこずって適当なファミレスで晩を済ませた。
ケチと言われたが元々外食しないから感覚がわからなかっただけだ。メニューにも驚いた。

「風呂入る」
「は、はいぃっ」

いつもと違う僕にさらにわたわたしだす。
かわいい。しかし騙されてはいけない、これは罰だ。
勿論風呂の扉は彼女が入る前に鍵を掛ける。
風呂から出ても彼女とは一度も目を合わせない。

「寝る。お休み」
「えぇっ?!シン君どうしちゃったの?!」

普段よりも断然早く寝室に行って布団に潜り込む。
ついでに入り込まれないよう包み込む。

「やだよーシン君、悩みがあるなら言って?」

包まり込んだ僕を布団越しに揺する。
無視無視。ここで折れてはいけない。

「シンくーん」

僕を跨いで耳元で囁く。
甘えた声に誘惑されそうだけど無視無視。堪えろ僕。
流石に抱きしめられた時は理性飛ばしかけたが。

「………」

彼女は諦めたのか黙って僕から降りた。
しばらくして
0157名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 19:42:59.54ID:JTH7ViUE
「ぐすっ……ひんくぅん…」

彼女はこの空間に耐え切れなかったのか泣いてしまった。
元々泣き虫な彼女だ。いつもと違う僕に動揺し過ぎたのだろう。
放置するのは好きだが彼女を泣かせる趣味は無いのでごろんと彼女の方を向く。
床に座り込んで泣く彼女のなまめかしさったら。
いかんいかん、まだ罰は終わってない。

「ひんくん……」
「……僕は君に対して怒ってるんだ」
「ふぇ?どーして?」
「とりあえずまずは服着て」
「や」

もういい、寝る。

「ごめんなさいごめんなさい!服着ます!」

あー慌ててる、かわいい。
綺麗な形のお尻をついつい凝視してしまう。
しまった、起ちかけた。

「これでいい?」

彼女は裸エプロンから普段のパジャマに着替えた。
ほわほわの生地にピンクのリボン…かわいい。
あまり連呼するのもアレなので自重しようか、自分。

「さて…」

僕は布団からはい出てベッドの上に正座する。
彼女にも正座するように促した。素直でよろしい。

「まず、思い当たる節はないか?」
「無いよ、シン君朝もいつも通りだったし。昨日は普通だったし」

目を真っ赤にしたままキョトンとそういう。
溜息。

「…じゃあ、今日のお昼ご飯は一体何だったんだ」
「お昼?お家でパスタに挑戦したけど」
「君のじゃない!僕の弁当だ!」

八つ当たりがてらぼすぼすと枕を叩いた。

「何で性欲のつくものばっかり入れてたんだ!」

0158名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 19:45:15.35ID:JTH7ViUE
そう、僕の怒りの原因はこれだ。
字面だけなら意味不明だろうから昼の一部始終を回想しよう。

お昼の社員食堂。
テンション高めに愛妻弁当を開いたとき。

「ぬわっ!?」

思わず奇声。
そのあとすかさず

「なっ、クサッ!!」

同僚の感想に一発パンチ、KO。
慌てて弁当を塞いだが時既に遅し。
周囲が軽くざわつく。

「なんか凄く臭い…」
「ニンニク?」
「かなりキツイね…」

一先ずギャラリーを軽く睨みつけ黙らせた。
しかし開けるのが恐ろしい、が、食事を残すのは
久しぶりに勇気を振り絞り思い切り蓋を開けた。
が。

「ぅッ!!」

中身に驚いた。

豚キムチ、ニンニクの素揚げ、レバニラ、山芋とオクラのサラダ。
……欲求不満を具現化したような中身だ。臭いの根源は勿論ニンニク。

「大胆な奥さんだな…」

復活した同僚にもう一発パンチ。
根気で完食したものの、周囲の臭いに対する引き具合は予測通り酷かった。
なんせ口を閉じていても臭う。自分でも臭う。
好きではないブレ●ケアを大量に飲み込み、胃から湧き出るミント独特のスカッと感に吐き気を催した。
そして体の調子が狂い仕事に集中出来ずトイレに引きこもる羽目になった。下半身的な意味で。

回想終了。

0159名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 19:45:51.55ID:JTH7ViUE
「…というわけですが、どういう魂胆だったのかな?」
「そりゃあシン君にもっと大胆になって欲しくて」

モジモジしながら照れても今日は負けないぞ、負けてなるものか!

「夜の営みに不安があるなら善処しよう、しかしお弁当にあんなのは恥ずかしい」
「だってシン君薬とか使わなきゃなかなか理性ぶっ飛んで(SMして)くれないから!夫婦なんだよ!?」
「そ・れ・で・も!あのお弁当はいけません!罰として今回の発情期は一切君を相手にしません!」
「そんなぁ!」
「言い訳無用!その後いろんな(主に下半身的な)意味で大変だった僕の気持ちも含め、反省しなさい!」

布団に包まり寝る体制に入る。

「ちなみにオ●ニーしたら次の発情期は貞操帯するから」
「えぇッ?!」

ゆさゆさしてくるのも無視。

「ねぇ、本当?!ねぇ!!」

必死に尋ねるのも黙って無視。
その尋ねる時の彼女の表情が期待に満ちてたなんて、布団を被ってうずくまる僕は知る由も無い。

そして本当は僕自身あんな昼ご飯を食べさせられ性欲にやられそうで堪えるのも必死だなんて彼女は知る由も無い。


性欲ニ負ケロ!(゜∀゜*)
0160名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 19:49:32.91ID:JTH7ViUE
>>156-159
以上。低クオリティまじごめん。
ちなみにシンはSMは好きじゃないけど結局むっつり。
メニューは「鉄仮面と子猫」の第一話から引用。
0162名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 22:43:28.10ID:B1HX59Gv
臭いが充満するまでニンニク料理ってどうやって作るんだw
奥さん本気すぎるだろ
0163名無しさん@ピンキー2011/05/11(水) 22:55:51.48ID:mcceGeo7
コラボや時系列が同じ
なのは好きだ。
書きたくなってきたぜ!
0169名無しさん@ピンキー2011/05/22(日) 01:49:43.92ID:ojqGGeir
・嫁がベッドの上で虫の息、旦那が元気に出かける
・旦那がフラつきながら出かけ、肌ツヤツヤな嫁が笑顔で見送る
どっちだ
0170名無しさん@ピンキー2011/05/22(日) 01:52:48.17ID:OKuQVV3g
「ちょっと!出掛けにどこ触ってんのっ!?」
「おしり」
「や、それは分かるけどっ……あっ!バカ!スカートまくらなっ……んうっ!」
「あれ?文句言ってたくせに、撫でただけで感じてんの?」
「びっくりしただけっ!って、あ、下……だめっ……」
「もしかして、玄関先だから興奮してるとか?」
「やっ、ちがうぅ……」
「じゃあ、朝っぱらからこんなことしちゃってるから?」
「あっ!そこっ、さわったらだめぇっ!」
「もー。朝から玄関先でスーツ姿でエロい事されて濡れちゃうとか、どんだけ」
「バカっ!」
「おうっと!殴るなよぉ」
「バカ、こーゆー状況だから……ぬ、ぬれちゃっ……んじゃなくて、あなたに触られてるからこうなっちゃうんでしょ!?」


こうですか?分かりません!
0172名無しさん@ピンキー2011/05/22(日) 10:37:19.73ID:FABzy5A/
両者ツヤツヤが一番望みだけど
やっぱりどっちかが疲れはててる方が良い感じだよね
0181cure apple-12011/06/10(金) 04:31:05.65ID:6pbmB+8C
36℃。これは人間の通常時の体温である。人体は体温をこの温度に保っておく機構が存在している。
逆を言えば、体温がこれより上昇しているときは、往々にして何らかの病気にかかっている場合が多い。
これを踏まえると、37.8℃というのは明らかに何か病気にかかっている人の体温である。
今日の朝起きてすぐに頭痛を覚えた恭介が脇に挟んだ体温計には、はっきりと「37.8℃」という文字が表示されていた。季節の変わり目である3月。体を壊しやすい時期と言える。
 …どうりで頭痛いし喉も痛いわけだ。まいったな、せっかくの休みなのに。日曜日。しかも天気は晴れ。
本来なら妻を誘ってどこかデートにでも出かけようか、という日である。恭介の口から思わずため息が漏れる。
「おはよう。…どうしたの?」
先に起きて朝食を作っていた亜衣が寝室に入ってくるなり怪訝そうな声をかける。ベッドに腰掛けている1つ年下の夫は、体温計を片手にうなだれている。
よく見れば、顔色も若干悪い。黙って手渡された体温計は、亜衣の夫が風邪であることを告げていた。
「…風邪ね」
「ああ、風邪だな」
「そうとわかれば、ほら、布団に戻った戻った」
亜衣はやや強引に恭介を布団に戻した後、忙しそうに部屋を出ていった。
恭介は風邪をひいてるけど、こんなにいい天気なんだもの、洗濯しないと。それにお粥も作らないといけないし。
0182cure apple-22011/06/10(金) 04:39:02.51ID:6pbmB+8C
昼間の亜衣はいつにもまして献身的であった。食事はできる限り消化によく、かつ栄養価の高いものを作った。
恭介が汗をかけば、蒸しタオルで体をふき、新しい寝間着に着換えさせた。もちろん、氷枕がぬるくなれば取り換えた。
「悪いな、せっかくこんなに天気いいのにどこにも遊びに行けないよ」
「いいっていいって。ゆっくりしてなよ。せっかくの休みなんだから」
結婚してよかった。それは、「結婚したから」なのか、「相手が亜衣だから」なのかは言うまでもなかった。
 
0183cure apple-32011/06/10(金) 04:43:06.80ID:6pbmB+8C
夜、恭介は亜衣が作ったおかゆを平らげた。
「リンゴあるけど、剥こうか?」
「うん、じゃあお願い。」
「わかった。もってくる。」
 亜衣はリンゴを半分に切り、片方をサランラップに包んで冷蔵庫に戻し、残り半分の皮をむいた後、食べやすい大きさに切り分けていった。
「はい、あーん」
亜衣は切ったリンゴをフォークに刺し、恭介の口元に近付ける。
「ちょ、いいよ、自分で食べれるから!」
「いいからいいから、ほら、あーん」
「…あーん」
恭介はしぶしぶ差し出されたリンゴにかぶりつく。
まるで子供のころに戻ったようなその行為に恥ずかしさを感じたが、体を起こすのも億劫な恭介にはとてもありがたかった。
「まだ食べる?」
「…いや、もういいや」
「わかった。じゃあもう寝てなさいよ」
「うん、おやすみ」
恭介が再び布団にもぐりこむのを背に、キッチンで洗い物をすませた。キッチンの窓からは、晴れた夜空に浮かぶ満月が見える。
「おやすみ…」
夫の布団からは規則正しい寝息が聞こえる。体を壊すくらい頑張っている夫には、この際だからゆっくり休んでもらいたいものである。

まあ、たまにはこんな日もいいかな。…いけないいけない、洗いものすませないと。
0184cure apple-42011/06/10(金) 04:46:12.77ID:6pbmB+8C
翌日。すっきり目覚めた恭介とは裏腹に、亜衣の目覚めは最悪だった。
なにしろ、起きてすぐくしゃみの3連発。それに続く鼻水。一晩のうちに、恭介の風邪がうつってしまったらしい。
妻の異変に気付いた恭介は、心配そうに声をかける。
「どうした?」
「うーん、頭が痛いの…」
「どれどれ…?」
恭介はなんの気なしに、自分の額を妻のそれにあてる。
「ちょ…」
ほぼ0cmまで近づけられた夫の顔にどぎまぎする亜衣。心拍数の上昇に伴い、顔に血液が集まっていく。
「熱があるな…」
当たり前じゃない、あんた自分が何やってるかわかってるの!?
とはいうものの、熱があるのは事実だし、そもそも口に出す気力などない。
そんな亜衣はただ
「うん…」
とだけつぶやくと、すっ…と額を離す。恭介は表情を変えることなく、
「何か食べたいものある?」
と聞くと、亜衣は少し悩んだのち、
「冷蔵庫に昨日のリンゴあるでしょ?」
0185cure apple-52011/06/10(金) 04:49:28.15ID:6pbmB+8C
 冷蔵庫から取りだした昨日のリンゴをたどたどしい手つきで食べやすい大きさに切った恭介は、亜衣のいる布団へ戻る。
「おまたせ」
「うん」
布団から顔だけだした亜衣はちょっと逡巡したあと、消え入りそうな声で恭介に言った。
「ねえ、お願いがあるんだけど…」
珍しく大人しそうな声を出す妻にピンと来た恭介は少しためらった後、
「…食べさせてあげようか?」
「食べさせて…くれない…?」
同時に出た同じ内容の言葉は相手へと届き、その顔をほころばせた。
恭介は甘えてくる年上の妻にリンゴを食べさせていった。

まあ、たまにはこんな休日もいいか…珍しく甘えてくる亜衣も見れたことだし。

ところで恭介、リンゴ、皮くらいむいてよ。
…悪かったね、不器用で。
0186名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/10(金) 04:52:09.13ID:6pbmB+8C
以上です。きっと結婚していればこんなこともあるんじゃないですかね?www

まあ、なんでしょう、末永く爆発してくださいwww
01901742011/06/15(水) 07:32:55.07ID:zt/kkjcY
うわぁぁぁ、みんなありがとうありがとう

新婦(予定)は高校時代の部活の後輩で、とんでもなくツンデレのド天然なので、ここまでこぎ着けるのに苦労しました…………

>>180
GJそんな風になれるように頑張る
0192名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/16(木) 01:20:33.51ID:fDd01Ozl
>>190
>新婦(予定)は高校時代の部活の後輩で、とんでもなくツンデレのド天然なので、ここまでこぎ着けるのに苦労しました…………

ここでこんなこと言ったら後はどうするかわかってるよな?w
0193名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/16(木) 03:55:22.69ID:LO9+3aA8
>>190
>新婦(予定)は高校時代の部活の後輩で、とんでもなくツンデレのド天然なので、ここまでこぎ着けるのに苦労しました…………

情報ありがと!
SSにする? 会話を垂れ流す?
それとも も・げ・る?
01951902011/06/22(水) 08:46:49.30ID:MB1RsUGs
すまん、何やら妙な流れになってしまった
しかもおいらネタ提供しかできねぇ

気にせず次行ってくれ、みんなほんとにありがとうw
0199名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/27(月) 23:42:46.84ID:BbWSbUh1
彼女が病室通い?彼女の病室へ通い?
なんにせよ慎重にな。画面の奥には
お前を応援してる奴が居るのを忘れないでくれよ!


そして馴れ初めをSSで・・・
0200名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/28(火) 00:28:45.73ID:CXSM1Skc
>>199
俺が彼女の病室に通ってんのさ
小3からずっと仲良くて中2の時に恋人関係になった
勿論高校も一緒だったんだが高2の時の
事故で彼女は今も植物状態でな…
いつ学校に復帰しても大丈夫な様に授業中は
ずっと彼女の分までノート取ってたんだが(・ω・`)
目覚めないまま卒業
今は彼女を治すために一年浪人したが
医学部で勉強中なのさ(・ω・`)
0205名無しさん@ピンキー2011/07/10(日) 17:21:46.13ID:3EtuCC8H
本当。
イチャイチャが加速して
勃起しちゃって
そのまま汗だくセックスルートになるby妹の旦那
0206休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 00:40:04.33ID:Y8AsJSgj
鉄仮面と子猫7話投下します。タイトルは「休日の計画表」です。

・今回エロ描写薄めです。
・トリップつけたので、苦手な方はNG登録お願いします。
0207休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 00:43:28.24ID:Y8AsJSgj

「足首が痛むということですが」
目の前に腰掛けた、老年の医師に問いかけられ、
雪子はこっくりと頷いた。
背後では夫が、まるで重病の告知を受ける患者の家族のように、
難しい顔をして直立している。
いや、鉄仮面と異名をとる彼が難しい顔をしているのはいつものことであるのだが。
(子どもじゃないんだし、付き添いなんていらないって言ったのになぁ
……っていうか、ちょっと足が痛いくらいで、病院なんて大げさなのに……)
どうにも気恥ずかしくて、雪子はそっとため息を漏らした。
窓ガラスも溶かすかと思うほどの日差しが照り付けているが、
診察室の中はひんやりと涼しい。
老医師が、指紋のついた眼鏡を指で押し上げながら、
目の前の台に貼り付けられたレントゲン写真を指し示す。
「骨に異常はありませんが、関節の周りがやや炎症を起こしているようですな。
何か、激しいスポーツをなさってますか」
「いえ、何も」
とんでもない、という風に雪子が頭を振る。彼女は超がつくほどの運動音痴である。
0208休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 00:52:19.37ID:Y8AsJSgj
「では、特に足に負担がかかるようなことをした覚えは」
「……毎日、お買い物で歩き回るくらいですけど……うーん」
首をかしげる雪子に、貴巳が後ろから声をかける。
「商店街までなら結構、距離があるだろう。万歩計を持ってるんじゃなかったか」
言われて雪子は、ベルトに着けた小さな機械のことを思い出した。
貴巳の職場である市役所の職員全員に、健康増進という名目で配られたものである。
必要ないと貴巳が捨てようとしたのを、勿体無いからと雪子が着けていたのだ。
「これ、どうやって見ればいいんだっけ?」
毎日律儀に身に着けているくせに、歩数の表示の仕方すら知らない妻に呆れつつ、
貴巳は小さなボタンをいくつか押し、過去の歩数のデータを一日分ずつ呼び出す。
表示された数字に、貴巳と、覗き込んでいた老医師は同時に声を上げた。
「……1万8000歩?」
「……2万3000歩?」
「……この日も2万歩……奥さんずいぶん頑張って歩いておられるみたいですなあ」
0209休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 00:55:19.92ID:Y8AsJSgj
「待て、どうしてこんなに歩く必要がある?商店街までは片道せいぜい1kmだろう」
夫の詰問口調に驚いた雪子が、小首をかしげ、当たり前のように言う。
「だって……えっと、この日は確か、増田屋さんまでお醤油買いにいって、
それからいつものパン屋さんに食パン買いにいったら、まだ焼きあがってなくて、
だから先に兼よしさんでお味噌買って、もう一回パン屋さんに行って、
それから最後に魚ときさんでお魚買って帰ったの。だから……」
雪子が買い物に行くのは、縦に1km以上も延びる、老舗の多く並ぶ商店街である。
そのちょうど真ん中ほどの交差点まで、二人の自宅からは1km余り。
ちなみに増田屋は商店街の南端、パン屋は反対側の北端、
兼よしは増田屋の2軒隣、、魚ときは増田屋より更に南の商店街のはずれにある。
「どうしてそんなに効率の悪い回り方をしてるんだ?」
「だって……貴巳さん菓子パンは嫌いだし、それにお魚は最後にしないと、
鮮度が落ちちゃうし」
「そもそも……商店街にはスーパーがあるし、そこなら一度に用が済むじゃないか」
眉を顰める夫に、雪子はさも当たり前のように言う。
「だって、貴巳さん、スーパーで買った材料で料理しても何も言わないけど、
増田屋さんや魚ときさんで買ったのを料理したら、美味しいって言ってくれたから」
0210休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 00:58:27.96ID:Y8AsJSgj
「……え?」
「他のお店のも色々買って試してみたんだよ?それで、貴巳さんが一番、
おいしそうに食べてくれるから、最近はずっと決まったお店で……」
言われて、貴巳は今更ながらに気づいた。
そういえば結婚当初、雪子の作る味噌汁や煮物の味付けが、
比較的短いスパンでころころ変わったことがあった。
料理上手な雪子の作るものだから、不味いと思ったことなどないが、
暫く経つとそれが申し分のないほど貴巳好みの味付けになり、
それ以来はずっと安定していることに。
家庭料理とはそういうものなのだろうと、特に疑問にも感じていなかったが、
その陰に雪子のこれほどの気遣いと労力が掛かっていたことに、
貴巳は今更ながらに気づいたのであった。
「えー、それで、奥さんはいつもその靴で歩いてらしたのかな」
「はい、そうです」
医師の質問に頷く雪子の足元は、長距離を歩くにはいかにも不向きな、
踵が高めのパンプスである。
「その靴で2万歩も歩いてたのか?スニーカーはどうしたんだ?」
0211休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:00:36.36ID:Y8AsJSgj
ついきつくなる貴巳の口調に、雪子は叱られる子供のように首をすくめる。
「んっと……先月、靴底が磨り減って捨てちゃったの」
「新しいのを買えばいいだろう」
「だって、この前、夏のパジャマ買っちゃったばかりだし……」
犬も喰わない夫婦の会話を遮るように、老医師がわざとらしく咳払いをする。
「ごほん、あー、お二人の仲がよろしいのはよく解りましたがね、
足の話に戻させてもらいましょうか。
薬を塗って2〜3日もおとなしくしとれば、痛みは取れるでしょう。
それで奥さん、今後は新しい、歩きよい靴を履いたらよろしい。妙な遠慮をせんで」
「……はい」と雪子が恥ずかしそうに頷く。
「それで旦那さんはね、話を聞いたら、今時珍しいいい奥さんなんだからね、
もう少し気をつけて可愛がってあげるとよろしい」
「……」
老医師に思わぬ説教をされて、常にも増して憮然とした顔の鉄仮面であった。
0212休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:03:11.99ID:Y8AsJSgj

2

それからちょうど2週間後の土曜。
風はほどよく、日差しはまだ強くなく、爽やかな盛夏の朝。
愛しい年下の妻と、静かで穏やかな休日を過ごすのだと決めていたというのに、
玄関のドアスコープの向こうには、見慣れた、しかし休日にまで見たくはない顔が、
白々しい笑顔でこちらを覗きこんで手を振っている。

貴巳は、溜息をつきながらドアを少しだけ開けた。
「……橋本、土曜の朝に何の用だ?」
職場で鉄仮面と異名を取る男の、背筋も凍る冷酷な声音と凶悪な無表情を前にしても、
突然の訪問者はひるむそぶりもなく、くっきりした目鼻立ちを歪めて、
大げさにしなをつくる。
「やだ課長、部下が訪ねてきたっていうのに、
ドアチェーンかけたまま応対するってひどーい」
彼の有能なる部下、酒豪にして女傑、橋本あや。口元がにやついているのは、
突然の訪問をあからさまに迷惑がる鉄仮面の様子を見て、楽しんでいるのに他ならない。
0213休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:05:27.92ID:Y8AsJSgj
「あれ?あやさんだ!どうしたの?」
「雪子ちゃん、おはよー。朝ご飯食べた?」
奥のリビングから顔を出したのは、貴巳の12歳年下の妻、雪子である。
姉妹のように仲のよい二人は、憮然とする鉄仮面をそっちのけで、
のんきにお喋りに興じている。それを遮って貴巳が言う。
「……だから何の用だと聞いてるんだ」
ドスの効いた低音の、同僚曰く「氷の声音」でそう問われて、
平然としていられる人間はごく少ない。職場ではこの、橋本あやくらいのものだろう。
しれっとした顔で、とんでもないことを提案する。
「雪子ちゃん、プール行くよ」
「え?これから?」
「うん。前から約束してたじゃない?せっかく水着も買ったのに」
雪子が満面の笑みで「行きたーい!」と言うのと、
貴巳がこれ以上無いほど不機嫌な顔で「駄目だ」と却下するのはほとんど同時だった。
「え……やっぱり、ダメ?」
「決まってるだろう」
「課長、何で雪子ちゃんがプールに行っちゃいけないんですか?
夫だからって、そこまで妻の自由を束縛する権利はないと思いまーす」
学級会でやんちゃな男子を責める女子小学生のような口調で、あやが言う。
0215休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:08:59.36ID:Y8AsJSgj
「……女二人でプールなんて、悪い虫がついたらどうする」
「あら、私のことも女だと思ってくれてたんですね?」
「生物学的に分類するならの話だが、蓼食う虫も好き好きというしな」
「言ってくれますね。悪いけど、頭の軽い男の子にひっかかるほど
人生経験浅くないですから。もちろん雪子ちゃんもしっかりガードしますし」
「当てにならんな」
「それなら課長も一緒に来ればいいじゃないですか。課長が背後で睨みきかせてたら、
どんな男の子だって恐れをなして雪子ちゃんに近づいてきませんよ?」
「俺がそこまでしなきゃならない理由は無い」
「無いとは言わせませんよ?、ゴールデンウィークだってこの前の連休だって、
雪子ちゃんに聞いたら買い物と実家以外どこにも出かけてないって言うじゃないですか?
あんまりにも可哀想だから、せめて私が連れだしてあげようかな〜としただけですよ」
痛いところをつかれて、貴巳は一瞬言葉に詰まった。
人混みの大嫌いな貴巳の意向で、中嶋家では外出が極端に少ないのは事実である。
「……うちが休日をどう過ごそうと勝手だ」
「でも、さっき雪子ちゃんは行きたいって言ってましたよ?
夫に遠慮して行きたいところにも行けないなんて……可愛そうな雪子ちゃん」
0216休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:12:12.55ID:Y8AsJSgj
どうも、形勢は貴巳に不利なようである。あやの頭の回転の早さと弁の立つことは、
部下としては申し分ないのだが、こういう場合ひたすら忌々しい。
「だからといって当日突然誘いに来るというのは非常識だろう」
「前もって誘ったりしたら、課長は何かと理由付けて断るに決まってるじゃないですか」
「雪子は今、足首を痛めてるから無理だな」
「えっと……先週、病院行ってきたら、もう完治したって言われたよ?」
おずおずと口を挟む雪子を、鋭い視線で黙らせて、鉄仮面は更に言い募る。
「日頃ろくに運動もしていないのに、溺れたりしたら危険だ」
「今日行くK市のプールには、用心深すぎるくらい
監視員だのライフセーバーだのが沢山いるんです。もちろんAEDも完備です」
「……たかがプールに誘うだけのことで理論武装して恥ずかしくないか?」
「ぜーんぜん?可愛い雪子ちゃんの喜ぶ顔を見るためですもん」
そして本音はもちろん、鉄壁の無表情の上司の嫌がる様を見て楽しむためである。
ようやく黙った貴巳を前に、あやは勝ち誇った笑みをうかべた。
歴代最年少で課長職に昇進したこの上司は、完璧主義で仕事に対してやたらと厳しい。
理不尽な要求なら反論しようもあるのだが、
言うことがいちいち的を射ているので従うほかない。
0217休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:15:06.19ID:Y8AsJSgj
あやも仕事に対しては少々のプライドを持っているから、
意地でも求められる以上の仕事をしようと奮闘しているのだが、
その分ストレスのたまり具合もかなりのものだ。
こうしてたまに中嶋宅に押し掛け、素直でからかい甲斐のある雪子を愛でつつ、
絶品の手料理に舌鼓を打つ。そして、来客に心底うんざりしながらも、
妻可愛さに我慢している鉄仮面の様子を鑑賞することが、
あやの何よりのストレス解消なのである。

「さっ、じゃあ用意して行きましょうか」
勝利の喜びに浸りながらあやが言う。
が、眼前の鉄壁の無表情には、まだ敗北の陰りは見られない。
「残念だが橋本、それは無理だな。車がない」
「……は?」
「K市プールなら車がないと無理だろう。だが生憎うちの車は車検で業者に預けてある」
言われてみれば、中嶋宅横の駐車場にあるはずの面白味のかけらもないセダンが、
今日は見あたらない。
目の前に路上駐車しているあやの愛車は2人乗りである。だが。
0218休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:18:07.44ID:Y8AsJSgj
「……車検なら、代車はどうしたんです?」
怪訝な様子のあやに雪子が答える。
「んとね、マニュアルの代車が業者さんのところに無かったんだって」
「……はあ?」
眉をひそめているあやに、貴巳が淡々と説明する。
「オートマは運転していて、シフトチェンジのタイミングが微妙にずれて気分が悪い。
代車にマニュアル車が無いというから、必要ないと断ったんだ。
どうせ土日二日で車検は終わるしな」
「二日くらいその信念を曲げるって選択肢は無かったわけですね……
っていうか、今時マニュアルの代車なんて置いてある奇特な業者、
めったに無いでしょうよそりゃ……」
「ここから徒歩で行けるようなプールは無い。
というわけで、残念だがプールは無理だな」
形勢逆転、とばかりに余裕たっぷりな様子の鉄仮面が憎らしくて、
あやは必死で対応策を考えはじめる。
ほどなく頭に浮かんだいくつかの選択肢の中から、
最も手っとり早くて安上がりな方法を採ることにした。
0219休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:20:32.03ID:Y8AsJSgj
おもむろに携帯を取り出すと、アドレス帳から同僚の名前を探し出し、コールする。
土曜の朝だからか、なかなか電話に出ないので苛ついたが、
幸い留守電になる直前、「……ふぁい?」と寝ぼけた声が応答した。
「もしもし沢木?今すぐプールに行く用意して、課長の家まで車で来て。
いいから何も聞かずに急いで。そしたら、雪子ちゃんの 水 着 姿 見れるわよ?
オッケー、じゃ今から15分以内に来てよね。
無理っス、じゃないうるさい黙れ。はいカウントダウン開始〜」
一方的に電話を切ったあやは、どす黒いオーラを発しながら睨みつけてくる鉄仮面に、
今度こそ極上の勝利の笑みを返したのだった。
0220休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:23:32.71ID:Y8AsJSgj

3

「おー、中はすげー広いんだなあ」
開館直後にも関わらず、沢山の人でにぎわうプールの室内を見渡して、
沢木勇治は目頭にこびりついていた目やにをこっそり拭った。
土曜の朝からたたき起こされたせいでぼんやりしていた頭が、
室内プールのむわっとした熱気と、泳ぐ人々の響き渡る歓声で、否応なしに目覚める。
「うわぁ広ーい!滑り台まである!あやさん早くはやく」
「ちょっと雪子ちゃん、何でそんなに着替えるの早いのよ?」
背後から響く楽しそうな二人の声に振り向いた沢木の時間は、その瞬間凍った。
真っ白なビキニに、それに負けないくらい色白な、華奢で柔らかそうな肢体。
雪子ははしゃいだ様子で、小さく飛び跳ねながらあやを手招きしているのだが、
身体が弾むリズムに合わせて、細身な身体の割にはしっかりボリュームのある胸が、
ぽよんぽよんと揺れているのである。
(……ちょっ!これは……やばい!やばいくらい可愛い!むっ胸が胸が谷間がっ!
夢にまで見た横チチがー!
そんで腰細っせぇぇぇ!肌真っ白でどんだけ柔らかそうなんだよ!
ああああ白いビキニ!ナイスビキニ!清楚!エロ清楚!
つかやべぇ、これ勃ったらシャレになんねぇ!ああああでも目が離せねぇー!!)
0221休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:26:31.48ID:Y8AsJSgj
「……きさん?さわきさーん?どうしたんですか?」
目の前の雪子が、怪訝そうに自分の目の前で手のひらを振っているのに気づき、
沢木は慌てて飛びのいた。「うわっいやっなななな何でもないっすよ?」
「そうですか?何か顔が赤いみたいですけど、体調悪いんじゃないですか?」
そう言って雪子は、熱を計ろうと沢木の額に手を伸ばす。
その拍子に長いストレートの黒髪がさらり、と胸元に落ち、
少女のようにあどけない顔が、沢木の目の前30センチまで近づいてくる。
(やばい、水着姿でそれは反則だって!!
こんなとこでおっ勃てたら、俺マジ変態じゃねーかっ)
必死で理性を保とうとする沢木の肩が、おもむろに凄い力で後ろに引っ張られ、
あやうく沢木は尻餅をつきそうになった。何とか踏みとどまり、恐る恐る横を見やると、
鉄仮面の異名を取る彼の上司が、それは恐ろしい形相で睨みつけてきているのだった。
「……熱があるのか?ならもう帰ったほうがいいな」
「い、いや、無いっす全然、超元気っす」
自分の顔から血の気がひいていくのがよくわかる。
「本当ですか?……あれ、さっきまで顔赤かったのに、ちょっと青ざめてませんか?」
「雪子ちゃん、大丈夫だから放っときなさい……それより課長、何ですかその格好」
0222休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:29:08.75ID:Y8AsJSgj
つかつかと貴巳の前に歩み寄ってきたあやが、
唖然として目の前に立つ男の頭からつま先までに視線を走らせる。
いつも通り憮然とした表情の鉄仮面は、全く飾り気のないカッターシャツに
パンツという出で立ちで、つまりは水着に着替えていないということだ。
およそプールサイドにふさわしい格好ではない。
「貴巳さん、入り口のスポーツショップで水着買ってくればって言ったのに」
「今後一切使う予定のないものを買っても仕方ないだろう」
「えー、でもせっかく来たのに」
「そうですよ、大体TPOわきまえてないっすよ……いや、えっと、何でもありません」
沢木を一睨みで黙らせた鉄仮面は、鋭いままの目線であやに向きなおった。
ここまで来る車中、貴巳の水着がないことを心配する雪子に、わざとらしく親切そうに
「スポーツショップがあるから、そこで買えばいいのよ。あー楽しみ。ねぇ課長?」
とご機嫌だったあやである。
「……嫌がらせの種が一つ減って残念だったな」
「何のことですか?課長の水着なんて見ても嬉しくないですし、
自意識過剰なんじゃありません?……やだ、そんなに睨まれると照れるじゃないですか。
もしかして私のセクシー水着姿に見とれちゃいました?」
0223休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:31:31.82ID:Y8AsJSgj
「……そのゴーギャンが発狂したような色合いが最近の流行なのか?世も末だな」
ちなみにあやの豊かな胸とグラマラスな腰回りを覆っている水着は、
赤と水色とオレンジと黄緑の、滲んだストライプ模様という恐ろしく派手な代物である。
「あら課長ゴーギャンがお好きですか?」
「そんな事は言っていない」
「ゴーギャンってロリコンですよね。しかも幼な妻を別の男に寝取られたりしてたし」
「……橋本、言いたいことがあるならはっきり言ったほうがいいぞ」
「いえ別に」
最大の障害である鉄仮面があやと対峙しているのをいいことに、
沢木は再び雪子の真っ白で柔らかそうな肢体を盗み見ていた。
軽い近視のせいで、細部まではっきりくっきりと見えないのが非常に残念である。
(くそっ、こんな事ならコンタクトしとくんだった……しかし可愛いよ反則だよこれは。
あー、おっぱい超やわらかそー、横からがしっと鷲掴みにして、
ゆさゆさ揺らしたりとかさぁ……体中べろべろ嘗め回して味わいたい!
ていうかいっそ、あの尻の割れ目に顔を埋めて窒息してえ……
……ん?何だあれ、腕のとこと膝と……あz)
沢木の幸福かつ変態的な思考は突然体を襲った衝撃に断ち切られた。
「ごぼっぐへっがばぁぁぁっ!ちょっあやさん何するんすか?!」
0224休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:34:12.39ID:Y8AsJSgj
突然プールの中に突き落とされた沢木は、鼻から流れ込む塩素臭い水にむせながら、
必死で水面から顔を出した。
片足を軽く上げた女傑の姿から、突き落とされたのではなくけり落とされたのだと理解する。
「沢木があんまり鼻の下延ばしすぎで気持ち悪いから、つい。
嬉しいのはわかるけどさ、そもそも誰のおかげで今日ここに来れたんだっけ?
感謝しなさいよ感謝」
「いや、運転手にされて感謝しろって、俺どんだけ奴隷的な立場っすか……」
「……何よ?」
プールのふちに手をかけて上がろうとする沢木が、
自分を見上げたままぴたりと止まったので、あやは不審な顔をした。
プールの中の沢木からは、プールサイドに立つあやの姿を、
ほとんど真下から見上げる形になっていた。
ビキニの小さな布に吊り上げられている、いわゆるロケット型の巨乳は、
下から見ると更に大迫力である。加えてぷっくりとした三角地帯を包む布のラインは
実にきわどく、見てはいけないものまで危うく見えそうである。
「……あやさんGJっす。ゴチになりまsぐごふっげふっ」
白い歯を見せて爽やかに親指を立てた沢木は、
陸に上がりかけた肩口を思いっきり蹴られ、再び水中に没した。
0225休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:36:26.45ID:Y8AsJSgj
痛む肩を押さえながらようやく浮上すると、あやがプールの監視員から、
人を水に落とさないようにと注意を受け恐縮(した演技を)しているところだった。
「あやさん、いいトシして管理員に叱られるって恥ずかしくないっすか?」
調子にのった沢木を三たび水中に蹴り落とし、その頭をぐりぐりと踏みつけにしたあやは、
「すみませぇん、ちょっと汚物の消毒を」と、艶やかに笑って係員に会釈した。

「あやさん、流れるプールってこれだよね?」
いくつかある大型のプールのうちの一つを指差し、
雪子が目をきらきらさせてあやに言う。
「そうだけど、ここ結構流れ早いよ?雪子ちゃん泳げるんだっけ?」
「ううん、でも浮き輪があるから大丈夫!」
そう言うと雪子は、あやと貴巳が止める間もなく水に入った。
「わー冷たい!気持ちいい!……あれ?足がつかない」
小柄な雪子にはプールは深すぎ、そして泳げない雪子にプールの流れは速すぎた。
浮き輪につかまりながら、一生懸命に手で水をかいて戻ろうとするのだが、
水の流れはどんどん反対の方向へ雪子を押し流していく。
「あやさーん、たかみさーん、どうしようー」
心細げに流されていく雪子は、
さながらダンボール箱に入れられ川に流される捨てられた子猫のようである。
余りにも予想通りの展開に、貴巳とあやは、溜息をつきながら目を見合わせた。
0226休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:38:55.69ID:Y8AsJSgj
「……ここで服のまま飛び込んで助けたら格好いいですよ、課長」
「そういうのはここに誘った人間の仕事だな。俺は今忙しい」
プールに入場した直後から、雪子とあやの周りにうろちょろとまとわり付く、
およそ10代から30代まで幅広い年齢層の男たちの視線を、凍てつく視線で退散させ、
空気を読めず声をかけようと近づいてくる男に至っては、
進路を塞いで雪子を防御しなければならない貴巳である。
下心満載の男達が、顔をひきつらせてUターンしていく中、
一人だけ「ああ?何だオメーはよぅ」と突っかかってきた命知らずな男がいたが、
貴巳が至近距離で眉間に皺を寄せ、凶悪に不機嫌な顔で睨みつけると、
途端に顔面蒼白になり、あとずさりながら逃げていった。
「うわぁ課長がいると便利」
「……いいから早く雪子を連れ戻してこい」
「いやホラ、沢木が鼻の穴ふくらまして助けに行ったから大丈夫ですよ」
「……この間うちで空にしていった20年もののボウモアを返してもらおうか」
「あー、あのケムリみたいな匂いのするウイスキーですか?
カラにしたなんて人聞きの悪い。ちゃんと課長の分、残しておきましたよ?」
「底から一センチほどな。大体あれはがぶ飲みする酒じゃない」
「へいへい、行きますよーだ」
0227休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:41:02.45ID:Y8AsJSgj
会話の雲行きが怪しくなったのをしおに、あやはさっさと水に飛び込み、
綺麗なフォームで抜き手をきって、みるみるうちに沢木を抜き去って、
雪子の浮き輪をつかまえた。
「わぁ、あやさん泳ぐの上手なんだね」
泳げない雪子が、あやに尊敬の眼差しを注ぐ。
「実家が海の近くだからね。連れ戻せって仰せなんで、戻ろうか」
「えー、ここ楽しいのに。もうちょっとだけ、ね?あそこの広くなってるとこまで」
「別にいいけど、大丈夫?足つかないんでしょ?」
「っていうか、雪子さんって身長何センチすか?」
ようやく追いついた沢木が、耳に入った水を気にしながら聞く。
「沢木さんっ、じ、女性にそういうこと聞くのはマナー違反ですっ!……あ、あれ?」
雪子は途端に真っ赤にして、沢木の胸を手で軽く押す。
しかしその反動で、再び浮き輪ごとくるくる回りながら流れていってしまった。
「……雪子ちゃん、背が低いのそんなに気にしてたんだ……可愛いのにねぇ」
「ほんとっすね……で、あの、俺は別の事がすげえ気になってるんすけど、あの……」
「……ん〜?」
何やら言いにくそうなことを言いかけた沢木が、思い直したように軽い口調で言う。
0228休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:43:15.33ID:Y8AsJSgj
「あの、首のとこで結んであるビキニの紐、なんかの拍子にほどけないっすかねぇ」
「沢木、それ思っても口に出すとかなり変態的だから。
……ちなみに仮定の話として、その”なんかの拍子”にいくら出す?」
「マジすか?!……えーっと……っっ、夏のボーナス……3分の2くらいならっ」
「何、その中途半端な割合」
「冷蔵庫と洗濯機壊れたんでボーナス払いで……っていうか、なんか背後から殺気が」
「……だわね、こんだけ離れて、声が聞こえるはず無いのに、なんでわかるのかしら」
数十メートル隔たっても尚どす黒いプレッシャーを発する鉄仮面の視線に、
二人はいっそう声を潜める。
「……で、あやさん、どうっすかさっきの件は」
「前言撤回。命かけるには安すぎるし」
「えええ、頼みますよあやさぁぁん!」
「いやねぇ、私がお金で可愛い雪子ちゃんを売るような女に見えて?
さっきのは冗談よ冗談」
「嘘だ……さっき一瞬、金額次第では本気って目だったのに……」
涙目になった沢木を尻目に、あやはさっさと雪子を連れ戻しに泳ぎ去っていった。
0229休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:45:21.78ID:Y8AsJSgj
―――――

「今日はありがとうございました!ほんとにご飯食べてってくれないんですか……?
そうですか、あやさんも沢木さんも気をつけて帰ってくださいね」
中島宅の玄関先でにこやかに手をふる雪子と憮然とした鉄仮面に見送られ、
あやと沢木は夕焼けに染まる道を駐車場まで歩いた。
いつもの二人なら、誘われずとも中島宅に上がり込み、絶品の手料理を貪るのであるが、
今日はどちらからともなく雪子の誘いを断った。
横から送られる、凍てつくような鉄仮面の視線に怖じ気付いたからだけではない。
それぞれの車の前に着いても、二人は乗り込もうとはしなかった。
中島宅の玄関のドアが閉じられる音を確認してから、
沢木があやに向かい、今日一日じゅう気になって仕方なかったことについて、
耐え切れず口を開いた。
「あやさん、雪子さんのあの傷、なんですか?」
「やっぱり気になってたのってそれか……。私もさ、水着に着替えるときに聞いたけど、
散歩して転んだとか何とか」
「ちょっと転んだくらいじゃあんなにならないすよね……なんだろう、あの傷」
眩しい水着姿に見とれる余り、沢木は気づくのが遅れたが、
雪子の全身には無数の痛々しいアザや、かさぶたになった傷がついていたのである。
0230休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:47:29.47ID:Y8AsJSgj
沢木が色々と想像をめぐらせて悶々としていると、あやがぼそりと言う。
「あ、気になったのってそれだけ?」
「……は?もっと何かありました?」
「いや、傷のほうもなんだけど……帰りの車の中でさ、雪子ちゃんノーブラだった」
「…………は?はあぁぁぁ?!」
「見間違いかと思ったけど、あれだけばっちり見えてたらねぇ。
なんだ、そっちは気づいてなかったの?」
「いやいやいや!そこは全然ノーチェックでしたよ!
確かに、帰り道で雪子さんが何か、もじもじしてるなぁとは思ってたけど。
何で教えてくんないんすかあっ?」
「運転中にそんなこと教えて、
わき見して事故られたら困るからに決まってるでしょうが」
「ノオォォォっっ!なんか今日はもう色々と……ノオォォォォ!!!」
沢木の雄叫びが、日差しの傾きはじめた夏の夕方に木霊した……
0231休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:49:34.95ID:Y8AsJSgj

4

「あれ?なんか、今誰かの叫び声が聞こえなかった?」
玄関で靴を脱ぎながら、ドアの方を振り返って雪子が首をかしげる。
「野良犬の遠吠えだろう……それより雪子、ちょっと話がある」
改まった口調でそう言われて雪子が振り返ると、
思いがけないほど近くに、険しい顔つきの夫が立っていた。
「た、貴巳さん……どしたの?」
「どうした、はこっちの台詞だ。……雪子、どうして下着を着けてないんだ?」
「えっ……えっと、やっぱり、気づいちゃった……?」
夫の容赦ない視線が、Tシャツの薄い布越しに見える突起に注がれているのを意識して、
雪子の真っ白い頬が、途端に紅く染まる。
もしかして誰にも気づかれずに家まで帰れたかと思っていたのだが、
あらゆる事を正確に観察する貴巳の目はごまかせなかったようである。
ちなみに橋本あやにもあっという間にバレていたのだが、雪子は知る由も無い。
無言で説明を促す夫の目線はあくまで鋭く、
雪子はおどおどしながら必死で説明を試みた。
「あのね、別に、わざと下着つけなかったわけじゃなくって……
プールに行く準備してる時にね、小学生のころとか、
プール授業のある日は服の下に水着を着ていったなぁって思い出して、
早く着替えできるし、と思って、それで……」
0232休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:51:40.77ID:Y8AsJSgj
顔を真っ赤にしてうつむく妻に、話の結末を正確に予想した鉄仮面は、ため息を漏らした。
「……それで、帰り道で着る下着を忘れた、ということか」
恥ずかしさのあまり、雪子はただでさえ小柄な体をよりいっそう縮ませた。
(お、怒られる……よね?)
暫しの間があって、雪子は恐る恐る視線を上げた。
目の前には、眉間に深いしわを寄せた鉄仮面が、じっと自分のことを見つめている。
「……貴巳さん、怒ってる……?」
「どうして怒る必要がある?……まあ呆れてはいるが」
「うぅ……ごめんなさい」
「謝らなくていい。別に怒ってはいないと言ってるだろう」
これは本心からの台詞で、何故ならば、妻の際どい姿は、
一番見せたくない相手には全く気づかれていなかったようだからである。
助手席のあやが、バックミラー越しにちらちらと、
意味深な目線を投げかけていたのは気に食わないが。
そういうわけで、特にきつく問い糺したつもりもないのだが、
目の前の少女のようにあどけない妻は、肉食獣に追いつめられた小動物さながらに、
身を縮めぷるぷると震えている。
Tシャツの上に浮かび上がる突起のシルエットのいやらしさも相まって、
どうにも嗜虐心をそそられる眺めである。
0233休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:53:50.63ID:Y8AsJSgj
小柄な身体を玄関のドアに押し付けて、布地越しに浮かび上がる突起を指で弄くる。
「……っ、ん、や、っ……だめ……だめだよぅ……」
布に隠れていても、知り尽くした身体である。
乳輪のきわを、触れるか触れないかの力加減で何度もなぞる。
顔を赤くして頭を振る仕草とは裏腹に、突起は生き物のように、
ゆっくりと堅さを増して、その存在を主張しだした。
適度な弾力のある粒をつまみ上げ、指先で摘んでねじる。
そしてそれを、軽く弾くように離す。
からかう様な動きを繰り返していると、妻の吐息が細かく、熱を帯びていくのがわかる。
例えようもないほど柔らかな乳房ごと掌で持ち上げるように掴み、やわやわと揉む。
半開きになった雪子の唇からのぞく濡れた舌先が、貴巳を誘っている。
ゆっくりと口付けると、刺激を待ちわびた雪子の舌が、熱くぬめって、
貴巳の舌と絡み合おうとする。
しかし、舌先どうしをほんの少し触れただけで、貴巳の唇はあっさりと離れる。
「ん、や……」
名残惜しげな雪子の唇に、貴巳は左手の人差し指と中指をねじ込んだ。
驚いて目を見開いた雪子だが、指先で舌を挟んで嬲ってやると、
すぐにとろりと蕩けた表情で舌を絡ませてきた。
空いた貴巳の唇は、雪子の折れそうなほど細い首筋をなぞり、ゆっくりと下に移動する。
0234休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:55:52.72ID:Y8AsJSgj
プールの名残の塩素の匂いに混じって、甘い汗の香りが、
上気した雪子の身体からほのかに立ち上る。
布の上から、胸の頂点を唇にそっと含むと、
雪子は耐え切れず仰け反り、結果として二つのふくらみは、
捕食者たる夫の目の前に差し出された。
「……ん、ふぅ……っっ!」
右手で押さえつけた細い腰が、一瞬だが、貴巳の足に擦り付けるように動く。
最近の雪子は、今までにも増して感度が良好である。
ほんの少し、例えば貴巳が出勤する際に、気まぐれでした口付けひとつで、
雪子は立っていられないほどに蕩けるのだ。
雪子自身、そんな自分に戸惑っているらしく、
困惑と快感の狭間で涙目になっている妻の姿は実に艶かしい。
布の上から、更に執拗に突起を嘗め回す。
貴巳の唾液を吸って、シャツのその部分だけに淫らな目印ができる。
「あっ……あー!!あ、も、もう……っっ!」
歯を食いしばって耐えてはいるが、雪子がその部分に直に触れて欲しがっているのは
一目瞭然であった。
その求めには応じずに、貴巳は前触れなく、
濡れそぼった突起に、布越しに歯を立てた。
「……っっっっ!!!!」
びくびくと魚のように跳ねる雪子を、身体ごと強引にドアに押し付ける。
0235休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 01:58:00.77ID:Y8AsJSgj
突起を噛む歯の力を、それとは解らないほどにゆっくりと、徐々に強くしていくが、
苦痛を訴えるどころか、雪子は明らかに、絶頂へ向かって駆け上り始めていた。
「……きゃ、あああああ!!あ……も、もおっ……いき、そ……
あっあっあっあっ……あ、そんな、つよい……く、かんじゃ……ああああ!
い、や、いく、っいっ……ちゃ……ううう、っ……」
あとほんの一押しで高みに上り詰める、
そのタイミングを見計らったかのように、貴巳はあっけなく、突起を口から離した。
「……や、だ……なんでぇ……?」
恨みがましく見上げる妻に、今までの行為が無かったかのような無表情で言い放つ。
「今日の予定を、一つ忘れるところだった……すぐ着替えてきなさい、外で待っている」
「え?……って、まさか……ほんとに、今日もするの……?疲れてるんだけど……」
心底いやそうな顔の雪子に、「当たり前だ」と言い放ち、
貴巳は玄関を後にした。


―――――


「……だってあんな怪我してるのにほっとけないっすよ!」
「どうせ心配するだけ損だって……ま、擦り傷とはいえ気にはなるけど」
中島家の駐車場の陰で、あやと沢木は議論を交わしている。
別に後ろ暗いことはないはずなのだが、何故か小声になる二人である。
0236休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:00:10.88ID:Y8AsJSgj
「怪我して、その理由は言えないとか……やっぱりアレなんじゃないすか」
「でも課長に限ってDVは無いと思うけど?」
DV、ドメスティック・バイオレンス、いわゆる家庭内暴力である。
「……うーん、ま、確かに暴力とかは絶対しなさそうっすけど」
「それだったら、まだSMプレイで雪子ちゃんが怪我してる、って方が信憑性あるわね」
「あーそれならアリっすね」
部下からの信頼が厚いのか薄いのかよくわからない鉄仮面である。
首を傾げた二人の耳に、中嶋宅の玄関ドアが再び開く音が飛び込んできた。
あやと沢木は反射的に身をすくめ、駐車場の塀の影に身を隠す。
「……ちょっと、何で隠れるのよ?」
「いや、何となくっつーか……あ、課長出てきましたよ?」
「もーやだ……帰るわよ、私」
「今出ていったらマズイですって……何してんだろ?」
玄関から出てきた貴巳は、玄関脇の物置を開け、何やらがちゃがちゃ物音を立てている。
少しして、足取りの重い様子の雪子も外にやってきた。
歩き出した二人は、あやと沢木の隠れる塀の向こうを通り、
家の前から続く下り坂を、並んで歩いてゆく。
0237休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:02:20.16ID:Y8AsJSgj
気づかれないように充分の間を取って、あやと沢木の二人は、恐る恐る顔を上げた。
不自然に腰をかがめた沢木が、夫妻の後を追っていこうとするのを見て、
あやは慌ててその後を追い、小声でなじる。
「ちょっと、なんで後つけてんのよ?」
「だって、雪子さんすげえ嫌そうについてくじゃないっすか!
やっぱり、なんか嫌なことされてるんですよ!放っとけないすよ!」
「だから私らが首突っ込むことじゃないって……
後ろから見たら普通の仲良し夫婦じゃない。自転車なんて押しちゃってさー。
チャーミーグリーン状態ってやつ」
「何すかそれ、俺、若いからわかんないんで……ん?自転車?」
「……そっか、自転車……一台だけ?なんで?」

―――――

足首の痛みの原因がはっきりし、病院からの帰り道である。
立ち寄った大型ショッピングセンターの靴屋で、
早速買ったスニーカーを履いた雪子は、
必要以上にゆっくりと歩く貴巳に苦笑した。
0238休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:04:25.07ID:Y8AsJSgj
「大したことないって解ったんだから、そんなに気を遣わなくていいってば。
……あれ?貴巳さん、どこ行くの?駐車場そっちだっけ?」
「自転車屋だ」
「え?……なんで?」
「靴を買い換えたぐらいでは再発しないとも限らないしな。
自転車なら買い物もずっと楽だろう。雪子は免許が無いんだから、
今まで自転車無しで済んでいたのが不思議なくらいだ。
妙な遠慮はやめて、これからは欲しいものや必要なものはちゃんと俺に言え」
「……いや、えっと……でもほら、
うちの周り、坂が多いし、自転車はかえって辛いかなぁって……」
「電動アシスト付きのにすればいいだろう」
「うん……でも、ほら、えーっと……」
「何だ」
これ以上何を迷うことがあるのかと言わんばかりの夫に、雪子はおずおずと切り出した。
「……えっとね……貴巳さんは、自転車に乗れる……?」
「……何だって?」

―――――
0239休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:06:32.80ID:Y8AsJSgj
「やああーこわいいぃ!!!手、離してないよね?絶対はなしてないよねええ?」
中嶋家に程近い河川敷に、雪子の甲高い悲鳴が響き渡る。
茜色の夕焼けに染まる一本道で、よたよたと走る自転車と、それを見送る鉄仮面の影。
ほどなくして自転車は、派手な音を立てて雪子ごと路上にひっくり返った。
草むらに隠れてそれを盗み見ていたあやと沢木は、深く深くため息をついた。
「……すげー幸せそうっすね……チャーミーグリーン状態?」
「いやそれ違うんだけど……だから心配するだけ損だって……」
「帰りますか……蚊がすごいし」
物音を立てないように立ち上がった二人は、
背後に不穏な影がきざしているのに、うかつにも全く気づかなかった。

「帰ったんじゃなかったのか、二人揃ってこんなところで何の用だ?」
今、二人が一番聞きたくなかった氷の声音。
「……え?いや、えっと……さ、散歩?っすよ?」
「さっき雪子ちゃんの傍にいたのに……課長もしかして忍者の末裔とかですか?」
「忍者の真似事をしてるのはお前達のほうだろう」
「人聞き悪いですね、後をつけてたわけじゃないですよ?
涼しくなってきたから、二人で散歩でもしようかなって。ねえ沢木?」
「そ、そうっす」
あからさまな言い訳には耳も貸さず、
鉄仮面は二人に、最凶に不機嫌な視線を注ぐ。
0240休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:08:41.57ID:Y8AsJSgj
「橋本と沢木がそんなに仲がよかったとは初耳だな」
「あら、まさか職場内恋愛禁止とか言うんですか?どの口が?」
ちなみに雪子はかつて、貴巳たちと同じ、某市市役所の企画課職員であった。
「いや、ちょっ、あやさん、課長、その会話おかしいっす」
焦る沢木をしげしげと見つめ、何故か確信に満ちた様子で鉄仮面が頷く。
「な、何すか、課長」
「嘘から出た誠という諺もあるし、まぁ精精、蓼食う虫を大事にしたらどうだ?」
「ちょっと課長、それ私と沢木のどっちに言ってるんです?」
あやの怒声を背に、貴巳はすでに雪子の転んだほうへと歩きだしていた。
「……な、何でこういう流れになってるんすかね?」
「……誰のせいだと思ってんだああ!!!行くわよ!」
「え?ど、何処に?」
「飲みに行くに決まってんでしょうが!当然アンタが運転手だからね!」
「マジっすかーーー!!」
怒りに震える橋本あやに襟首をつかまれて、
夕日の沈みかける河川敷に、沢木勇治の情けない声がこだましていた。
0241休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:10:46.86ID:Y8AsJSgj



ごちそうさま、と夕餉の箸を置いて、雪子は軽いため息をついた。
食卓の上にあったメニューは、金目鯛の切り身の酒粕漬けをこんがりと焼いたのと、
朝のうちに焼いて冷蔵庫でよく冷やしておいた焼きなすに、
薄味のだしを張ったとろろとオクラの和え物。
魚の骨だけを残してきれいに食べつくされた食器のむこうに、
いつもの仏頂面の夫が、ビールグラスを傾けている。
自転車の練習を終えて家に帰ってすぐに雪子は、
転んで泥だらけの身体をシャワーで流し、休むまもなく大急ぎで夕食の支度をした。
朝から仕込んでおいたメニューだったからまだ手間がなかったものの、
さすがに疲労を覚えて、雪子は食卓についたまま、ぼうっと夫の顔を見つめていた。
0242休日の計画表 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:12:54.28ID:Y8AsJSgj
「今日はいろんな事して疲れたねぇ……」
貴巳が、ふと顔をあげ、雪子に言う。
「……そういえばまだ一つ、今日の予定が終わっていなかったな」
「え?何かあったっけ?プール行って、自転車の練習して、
シャワー浴びて、ご飯作って……」
「一つ抜けたな。まだ途中だった」
言うなり貴巳が、だしぬけに雪子の身体を、床の敷物の上に押し倒す。
「えっ?!いやっ嘘でしょ?無理!今日はもう絶対無理!」
「週末で一番大事な予定を途中で忘れるとはな……」
「な、なに一人で反省してるのっ!ぜったいやだ!……あっ、あ……んっ」
一度たりとも欠かしたことのない週末恒例の予定を遂行するため、
中嶋家の長い夜は更けてゆくのであった。
0243 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/07/15(金) 02:15:44.87ID:Y8AsJSgj
投下終了します。長々とすいません。
読んでくれたかたありがとうございました。
0245名無しさん@ピンキー2011/07/15(金) 06:35:44.70ID:XGguqCw5
鉄猫キタァァーーーーー!!
好きすぎて、最近はエロなくても登場人物が元気ならそれでいいと思ってたりする
出てくるメニューいちいちうまそう
0247名無しさん@ピンキー2011/07/16(土) 11:11:14.56ID:4WMSTIJv
鉄仮面の感情描写が意外に多くて少し萌える。
あやちゃんにタデクイムシがよりつかないなら俺が食べにいく。
雪子さん?手を出したら鉄仮面に殺されそうなのでやめておきます

短くいうと、GJすぎる。
0248名無しさん@ピンキー2011/07/16(土) 12:49:22.35ID:wWlkglFu
水着の描写が素晴らしい。
是非、水着プレイもしてください、貴巳さん
0249名無しさん@ピンキー2011/07/16(土) 16:34:51.38ID:iZRnndLo
雪子ちゃんはノーパンだったのか、それが問題だ

毎回楽しく読んでます まじGJ
0250 忍法帖【Lv=3,xxxP】 2011/07/16(土) 20:47:01.89ID:PduQjZ/D
そうか、下着忘れたんならそうだよな。
さらにGJだな。鉄仮面的にはNGだろうが。
0252名無しさん@ピンキー2011/07/18(月) 10:20:29.00ID:k13VVCDT
おおおおお!!!!ずっと待ってたGJGJ!!!

鉄仮面、よく公衆の面前でビキニのみを許したな………
0253名無しさん@ピンキー2011/07/19(火) 22:37:00.25ID:Ly2dl0H1
あいかわらず絶倫な鉄仮面イイヨイイヨー!!

あやと沢木コンビもけっこう似合ってると思うんだな。
もうくっついちまえよ。
0254名無しさん@ピンキー2011/07/21(木) 17:15:01.20ID:CrrXmYwB
>>254同意。あの二人の新婚とかも面白そう。
沢木が尻に敷かれてると思うけど。 
0255名無しさん@ピンキー2011/07/29(金) 03:13:15.95ID:gWJVfjaW
誰か結婚しよう
0258名無しさん@ピンキー2011/08/01(月) 21:08:25.77ID:EVsbA1Hp
加藤茶(68)が45歳年下の美女(23)と再婚

世の中どうなってんだ
0260名無しさん@ピンキー2011/08/11(木) 11:49:00.84ID:DIdf18wL
お盆休みだし誰か夫の実家に帰省した夫婦のSS誰か書いてくれ
0261保守小ネタ2011/08/16(火) 22:27:40.98ID:lCGv+L6Q
■新婚ミルク■

あるところに年の離れた若い夫婦がいました。
お嫁さんの方は、まだ子供と言ってよい年齢でした。
夫の方が結婚適齢期に入った頃、親せき筋から小さなお嫁さんを貰ったのです。

結婚したばかりの二人は小さな部屋を借り、新生活を始めました。
あまりお金を持っていないので、椅子もテーブルも棚も、全て
家具は夫の手造りです。
けして裕福ではありませんでしたが、喧嘩もせず仲良く暮らしていました。
年が離れすぎていると、喧嘩をしようにも喧嘩にならないのです。

幼い妻はよい奥さんになろうと、小さいながら頑張って家庭を切り盛りしました。
夫は働き者の真面目な男でした。
妹のような小さなお嫁さんを、いつも穏やかに見守っていました。

ところで、幼妻は毎日毎日牛乳ばかりを飲んでいました。
飲みすぎるほど飲んでいました。
早く大きくなって、大好きな旦那さまに釣り合うようになりたかったのです。

――ある晩のこと。

「ただいまー」
お土産にケーキを買い、夫が仕事から帰宅しました。
小さな妻を家に独りにしておくのが心配なので、いつも一目散に帰って来ます。

「……よいしょ、よいしょっと。ア、おかえりなさい。あなた。
 ごはん出来ましたよ」
幼妻はせっせと夕飯の支度をしていました。
ちょうど食卓の上にお皿を並べ終えたところです。
実家のお母さんが送ってくれた野菜を使った料理が、おいしそうに湯気を立てています。
サイズの合わない大きなエプロンを付け、ちょろちょろと立ち回る様は、
まるで小動物です。

一日の労働を終えた若い夫は、もうお腹がペコペコでした。
手渡された着替えを受け取り、汗を吸った重い作業着を洗濯物かごに放り込むと、
手を合わせ、さっそく夕食にガッつきます。
ガツガツと掻き込む夫に負けず劣らず、育ち盛りの幼妻もモリモリ食べました。

夫は食欲旺盛な幼妻を愛しげに眺めました。
もっと彼女に、たくさん栄養の付くものを食べさせてあげたくなりました。
「よし、俺の分も食べな。はい、あーん」
自分の皿から肉を掬い、幼妻の口元に宛がいます。
「ぁーん」
「たくさん食べな」
リスのようにぷっくり膨らんだ幼妻の丸い頬が、もぐもぐと動きます。
夫は、それを人差し指でつついて遊びます。

食後。
幼妻は日課となっている牛乳の摂取を始めました。
ストローから、一生懸命ちびちび牛乳を吸引しています。
その様子があまりにも可愛らしかったので、夫は少しからかってみることにしました。
0262保守小ネタ2011/08/16(火) 22:32:26.17ID:lCGv+L6Q
ニヤニヤしながら意地悪く質問します。

「そんなに大きくなりたいんだったら、
 俺の出す栄養たっぷりな牛乳も飲むか? イヒヒッ」
「ヒェーッ、あなた、牛だったの? それに、男なのにお乳でるの!?」
天真爛漫な幼妻は、目を皿のように真ん丸にして驚きました。
性知識が不足しているため、比喩表現が通じません。

「今日から自家製の牛乳をのめば、お金の節約になるね!」
無邪気に喜ぶ姿に虚を衝かれ、夫は拍子抜けしてしまいました。

「……風呂に入ってくる」
期待に満ち満ちた眼差しを送られ、引っ込みがつかなくなった夫は
そそくさと浴室に消えて行きました。
――石鹸をよく泡立て、いつもより念入りに股間を洗います。

入浴を済ませ、夫は大の字になって布団に寝転がると、清潔にした巨チンを差し出します。
すると、幼妻が上から物珍しげに覗き込んで来ました。

「いただきまーす」
「いや、そこじゃない。……股の間に、もう一つ生えてるのがあるだろ」
小さな唇が乳首に吸い付こうとしたところを、夫が別の場所へ誘導します。

初めて見る男の生殖器をしげしげと観察したあと、幼妻は素直に感想を述べます。
「このおっぱい、変なところについてるね。毛がもじゃもじゃ。
 なんだかぴくぴく動いてるし。
 ……ぁむ、じゅ、じゅっ……ちうちぅ」
それを食べ物だと信じて疑わない彼女は、迷わず口に含みました。
頬張った途端、先走りが舌に絡みます。

まるで牛の乳しぼりの要領です。
小さな手のたどたどしい動きが、分泌と流れを促します。
しかし吸い出すたび、勝手にストローの角度が変わるので、飲みにくいのです。
腹に張り付きそうな程、どんどん反り返ってゆきます。

「根元の、膨らんだところを手の平で押し揉んで。そこに牛乳を貯めてあるんだ。
 ……ちょ、ちょっと力が強い。もっと優しく……あふぅ、アァッ」
もう我慢出来ず、夫は身震いしました。
駆け上がって来た熱い子種が、低い喘ぎ声とともにおちょぼ口に放たれます。

「はぁ、はぁ……美味しいかい?」
荒い呼吸で尋ねると、幼い妻は顔を顰めます。
「超まずいッ! うぇ〜」
「だよな。ごめん」
ペッペと白濁液を吐き出す幼妻を膝に抱き上げながら、夫は反省しました。

反省しつつ、本当は下の口にも飲んでほしい……とも考えていました。
「それは、もうちょっとお前が大きくなってからだな」
「え、なあに? あなた」
「独り言だよ、マイハーニィ。さあ、買って来たケーキ、一緒に食べよう」

end.
0265名無しさん@ピンキー2011/08/26(金) 23:05:07.31ID:jdEYOnGh
あげ
0266名無しさん@ピンキー2011/08/30(火) 10:38:21.57ID:rtMCZY8x
新婚初夜にはじめてHっていうシチュに特化したエロゲってないよな
貞淑なあのヒロインが一線を越えてやっと……ていうのが好きなのに
0267名無しさん@ピンキー2011/09/13(火) 10:01:26.06ID:WC7PYa7r
保守
0268名無しさん@ピンキー2011/09/17(土) 16:08:39.48ID:Jf09y0WK
過疎だ……
0269名無しさん@ピンキー2011/09/23(金) 18:49:50.72ID:BftacP8v
治子「猛士、福引きで温泉旅行が当たりました」

猛士「ええっ!?す、すごいです。治子さん!」

治「ペアなので野上先輩を誘いましょう」

猛「はい」

なんて想像をした。
0270保守小ネタ:芸能人同士の結婚について2011/09/25(日) 23:56:23.53ID:/lnFmyjB
「あーあ」
夫は今日も発泡酒(じゃなくて第三のビールだっけ?)のCMを見ながらため息を吐く。
「…ったく、何度めよ」
「だってさあ、この笑顔がもう他人のものだって思うとさあ」
「そんなの仕事でしょう。この人は女優さんなんだから」
そう言ってやると、彼はあからさまにむくれた。
「だーかーら!夢のないこと言うなよ!」
「何が」
「だって、ありがちじゃん。共演した俳優と結婚なんてさあ。こっちの夢が台無しだよ」
とか何とか言って、医者と結婚した女優に対しても「夢が台無し」って言ってたじゃないか。
私だってあの俳優のことはけっこう好きだったし、今度のドラマも楽しみにしてるんですけど。
それに正直、あのCMの親父ドリームっぽさにはわりとイラっとくるし。
「なんか、両方知ってるとよぎるんだよねえ。あの『おかえり!』はアイツに向かって…とか」
「考えすぎでしょ。大体、発泡酒とか飲みそうな夫婦じゃな…あっ」
「やっぱり役者っていうのはあくまで夢を売る商売だからしょうがないよね」
「それはそうと…さっきからこの手は何かな」
「ああ、右手」
「だから、どこを触って…」
「だって、嫌じゃないでしょ」
まあ、嫌だったら払いのけてますが、何もテレビ見て芸能人夫婦の話をしながら妻の乳を揉まなくても。
「…テレビ消しなさいよ」
「あ、忘れてた」
「なんか片手間?」
「いや、今から本気出す」
ここで「こっちはやる気削がれた」なんて拗ねたらこの人はどんな顔するかなー、なんて。
でもまあ、こっちもわりとやる気なので、拗ねるかわりに彼の襟元をぐっと引き寄せキスをした。

秋の夜はまだまだ長い。
0272名無しさん@ピンキー2011/10/29(土) 23:06:57.00ID:TFmnhpXi
GJ
熱々ラブラブって感じではないけど、互いに愛し合ってるってのがわかってイイ!
0273名無しさん@ピンキー2011/11/18(金) 19:35:42.07ID:QdNvlZ4H
あげとく
書き手さん待ち
0274名無しさん@ピンキー2011/11/22(火) 19:50:22.59ID:8YMq4Yfx
いい夫婦の日なので温泉ネタ




私の名前は小沢治子。26歳の新妻です。
今日は福引きで2泊3日の温泉旅行が4人分当たったので先輩の野上家夫妻を
御招待しました。秋も深まった頃での温泉はなかなか魅力的です。
魅力的と言えば――――

「治子さん、私の顔に何かついてますか?」
「い、いえ…そこの壁に虫がついていたもので」
「ええっ!?む、虫ですか!や、やだ、私、虫は苦手なんです!」
私より若い野上明子夫人は24歳。背が148センチなので
高校生…いえ、見る人によっては中学生に見えます。
ですが……おっぱいとお尻が豊かに育っていて…その魅力的です。
すこぶる愛嬌があり可愛らしいので反則的に魅力的。
対する私はおっぱいそこそこ、お尻もそこそこ。何か残念です。
「治子さんってとってもスレンダーで、スラッとしていてモデルさんみたいですね
羨ましいです。私、背が低くって…はぁ」
「いえ…そんな事は…」
明子さん……私はそのおっぱいと愛嬌が羨ましいです。
0275名無しさん@ピンキー2011/11/22(火) 19:51:02.88ID:8YMq4Yfx
そして、その夜

『あなた、今夜もいっぱいパンパンしてくださいね』
『パパと呼びなさい』
『はぁい……パパ、明子にいっぱい種付けしてください』
『明子…いけない子だ…』
壁越しに聞こえる情事…ああ、エッチすぎます。やっぱり女学生としている
背徳的な行為に及んでいたのですね。
………かく言う私も
「た、猛士…た、立ったままなんて」
「治子さんの浴衣姿…とっても素敵です」
お風呂上がりの火照った身体。就寝前なのでブラはしていません。
猛士の意向で下着も履いていません。
前を開かれるとおっぱいがふるんとこぼれ落ちてきます。
「…………」
咄嗟に手で胸を隠そうとする私に猛士は言います。
「隠しちゃダメですよ」
私のアソコを軽く愛撫しながら猛士はくすくす笑います。
「で、ですが…」
「手をどけてください」
「………はい」
私は眼を閉じ、おずおずと両手を下げます。
愛撫によって勃起した桜色の乳首。
ほんのり蒸気した乳房が呼吸に合わせて上下しています。
0276名無しさん@ピンキー2011/11/22(火) 19:52:03.22ID:8YMq4Yfx
「綺麗です、治子さん」
猛士はむにゅ…むにゅとその手で乳房を堪能し、
その先端の突起を指で摘んだり、弾いたりしています。
あ…やっぱり…元・料理人の手触りは…んっ。
「ん…くっ…や、…やめ…」
猛士は私の乳房に食らいつき、びちゃびちゃといやらしく音を
立てて吸い始めました。
同時に片方の手で股間を股探りはじめ、陰核に指をつきたてます。
「こ、こんな…いや…や、やめ……んんんッ!」
ひとしきり私のおっぱいを堪能すると両肩を掴み、壁にそっと
沿わせるようにしました。。
「はっ……ん…猛士…?」
「これじゃ、入れにくいですよね?…自分で広げてもらえます?」
「………う、うう……」
帯を解いて、おずおずと前を開きます。うっすらと茂ったアソコ
を立ったまま晒すなんて…激しく恥辱です。
羞恥に顔が赤くなります。猛士は両手を私のお尻に回し、指を食い込ませました。
ぐむにゅっと弾む弾力に猛士はにこにこして
「治子さんのお尻…マシュマロみたいです…それに前より柔らかくなってます」
猛士はお尻に指を食い込ませて、揉みほぐし、思うがまま。
「や…やぁ…じ、焦らさないで……猛士…お願いします」
「は…はぁ…治子さん、いきますよ」
猛士は荒い吐息を漏らしながら私の股を割り、お尻を抱えてペニスの先端を
あてがいます。。
「いきます
「ん…んうう…あ、あ…」
や、やはり…お、大きい…キツイです。当の本人は
恍惚とした表情を浮かべ、ぷるぷると腰を震わせた。
「あ…はぁ…治子さん…すごいです。いっぱい、いっぱい種付けてあげますから
ん…ああ、とってもいいニオイ」
「た、猛士…もっと、もっと動いてくださ……もっと!もっとォ!激しくして!
わ、私が迎撃してあげるんだから!」
ああ…あられもない声…で、でもォ…あん、あん、あん、あん!
その日は朝まで続き、次の日は野上さんも我が小沢家も昼間まで寝ていました。
せかく温泉に来たのに……くすん。

おしまい

いつかこの夫婦で結婚ネタか披露宴ネタもやってみたいな。
02792762011/11/24(木) 18:29:41.72ID:LO2RlQWe
>>278
結婚式ネタだった。
『式』が抜けていてごめんなさい。
0282 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/12/25(日) 01:48:45.70ID:lXl6lGR2
一日遅い気がしなくもないですが、鉄仮面と子猫、クリスマス用小ネタ投下します。
0283 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/12/25(日) 01:49:41.18ID:lXl6lGR2
「貴巳さん、もうすぐクリスマスだねー?」
「それがどうした」
12月も下旬に差し掛かるころ。
にこにこと問いかける、まるで少女のようなあどけない妻に対して、
夫である鉄仮面、中嶋貴巳氏の答えはあまりにそっけないものだった。
「貴巳さんは、クリスマスプレゼント、何がいい?」
夫の反応が冷たいのはいつものことなので、全くめげることなく雪子は聞く。
「毎年言っているが、キリスト教徒でもないのにクリスマスを祝う必要はない」
とりつくしまもない様子の夫に、雪子は真っ白な頬をふくらませる。
「むー。じゃあ私クリスチャン」
「じゃあ、とは何だ」
「中学生の時に、学校で洗礼受けてるよ?洗礼名マリア・ジタだもーん」
「初耳だが」
「言ったことなかったっけ。カトリックの学校だから、入学したら形だけでも洗礼受けるんだよ」
雪子の通っていた聖稜女子学園は、日本有数のお嬢様学校であり、厳格なミッション系教育の場でもあったので

あった。
「雪子は教会に通ってもいないし、この間、新年には神社に初詣に行きたいとか言ってなかったか?」
「細かいことはいいの。神は愛なのです」
「……意味がわからん」
「だから、貴巳さんはクリスマスプレゼント何がいいのかな?って。
それに貴巳さんは毎年、私にプレゼントくれるじゃない?しかも何がいいか私に聞かなくても、
ちゃんと私の欲しいもの用意してくれてるし」
「あれは断じてクリスマスプレゼントじゃない。雪子の一年の主婦としての働きを労う意味での」
「うんうんうんありがとう。何も言わなくてもわかってくれるなんてほんとに貴巳さんはサンタさんみたい」
「人の話を聞け」
「今年は何くれるのかな?」
貴巳の顔を覗き込みながら言う雪子の目が、いたずらっぽい光を帯びていることに、貴巳は気づいた。
「……ネットの検索履歴を消すことを覚えたな?」
「あー!やっぱりそういうのチェックしてたんだー!」
12月に入り、そろそろ雪子へのプレゼントを手配しようとした鉄仮面であるが、
それまで全く手付かずであった自宅のPCの履歴がクリアされていることに気づき、焦りを覚えたものである。
「……どうせ橋本あたりの入れ知恵だろう」
「あ、ばれた?あやさんに、どうして貴巳さん私の欲しいものわかるのかな?って相談したら、
ネットの履歴とか見てるんじゃない?って。大当たりでしたー。さすがあやさん」
貴巳の部下であり、雪子の友人である橋本あや女史の読みは正確であった。
「……履歴が見れなくても、雪子の欲しいものくらいわかる。雪子はわからないのか?」
してやられた悔しさを押し隠すため、貴巳は雪子を挑発した。
根っから素直な妻は、口をとがらせ、
「わ、わかるもん!」と強がってみせたのであった。
0284 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/12/25(日) 01:51:14.17ID:lXl6lGR2

そして24日、クリスマスイブの夜。
ケーキだのチキンだののクリスマスメニューとやらの夕飯を覚悟していた貴巳であったが、
食卓に並んだのは意外にもいつもと変わらぬ和食の数々であった。
鶏肉のロール照り焼き、冷奴、卯の花、味噌汁。
浮ついたメニューの嫌いな貴巳は、満足げに頷いて箸を取った。……が、
鶏肉を一口食べて、ふと眉をしかめた。
「……これは、何だ?」
食卓の向かいに座った雪子が、してやったりとほくそ笑む。
「騙されたー!鶏肉じゃなくて七面鳥です!ちなみに中に巻いてるのは丸焼きの中に入れるスタッフィング。
照り焼きのタレ風なのはお醤油じゃなくてグレイビーソースでしたー!」
「この卯の花は何だ」
「あ、それはスモークサーモンとポテトのディップだよ。あとお味噌汁に見えるのはクリームコーンのスープ!
一番大変だったのは冷奴風ケーキだよ?何もトッピング無いように見えるけど、中にはちゃんとフルーツがサンドされてます!びっくりした?」
にこにこと嬉しそうに言う妻に、貴巳は深い深いため息をついた。
まあ、いい。一年に一度くらいは、雪子に付き合ってやるのもいいだろう。
何だかんだと言っても、雪子のおかげで毎日のちょっとした変化が楽しい一年だったのは間違いないのだから。

無言で、テーブルの下に隠してあったプレゼントの包みを雪子のほうへ押しやる。
「え、これプレゼント?ありがとう!じゃあ私もこれ、どうぞ」
目を輝かせて受け取った雪子は、隣の部屋から持ってきた四角い包みを貴巳へと手渡す。
がさごそと包装紙を取ると、雪子の持つ包みから出てきたのは枕であった。
「わあ、ありがとう!こういう頭にフィットする枕欲しかったんだ。どうしてわかったの?」
不思議そうに言う雪子に、貴巳はやや勝ち誇ったように答える。
「簡単だ。最近雪子の目の下にクマができていたからな。よく眠れないのかと思ったんだ」
「……え、うん。た、確かに……」
何やら物言いたげな雪子を尻目に、貴巳は自分への、ずしりと重いプレゼントの包みを開封した。
「……栄養ドリンク?」
「うん、貴巳さん無駄なもの嫌いでしょ?だから実用品がいいかなって。
それにこれから、お仕事も年末の大詰めで忙しいでしょ?だからちょっと奮発して良いの買いました!」
胸を張って言う雪子の頭を子供を褒めるようにぐりぐりと撫でて、貴巳はその中の一本を開封し、飲み干した。
「……え?今飲んじゃうの?明日もお休みだよ?」
「だから、だ。確かにこれ以上ない実用的なプレゼントだな」
そう言い放つと、貴巳はやおら雪子を抱き上げ、リビングのソファに押し倒す。
「えっちょっ……き、今日もするの?」
「もちろんだ」
「えっでも昨日もしたよね?それに一昨日もしたよね?」
「今日もする。というより明日までする。今年のクリスマスはうってつけなことに三連休だ。これ以上ないプレゼントだな」
「いやっ待って、や、あんっ、うそ、だめぇぇぇっ!もう、貴巳さんの性欲魔人!」
「巷では性夜、とか言われているらしいからな。本望だろう?」
「誰のせいで目の下にクマできてると思ってるのよぉぉっ!!!」

メリークリスマス。
0285 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/12/25(日) 01:54:32.77ID:lXl6lGR2
以上です。
読んで下さった方ありがとうございます。エロなくてすみません。
あと、申し訳ないんですが投下ついでに一つだけ告知させて下さい。
鉄仮面と子猫シリーズの過去作を加筆修正した保管庫を作りました。
現在2作目までですが、もしご興味のある方はトリップでググってみて下さると嬉しいです。
お目汚し失礼しました。
0289名無しさん@ピンキー2011/12/25(日) 12:54:40.53ID:QZvamzau
>>285
おおーこれはいい感じに…
出会い編とか楽しみです

>>288
書いてあるとおりトリップでググれば簡単に見つかる
0290名無しさん@ピンキー2011/12/28(水) 20:37:34.65ID:3U9Fjsht
>>289
「トリップでググる」ってのがよくわからないですw
すみません。。。
0291名無しさん@ピンキー2011/12/29(木) 03:49:35.77ID:JVPgx4qs
ご丁寧に単芝まで付けて釣りか?
わからないならまず「トリップ」とはなんなのかをググれ(検索)ばいいじゃないか
0293 ◆IyXS.0zNHsKv 2011/12/29(木) 07:09:58.58ID:hsTBtHve
作者ですが何だかスレ違いの方向になってしまい申し訳ありません。

>>290
トリップとは自分の名前欄に表示されてる文字列IyXS.0zNHsKvです。
これをコピー&ペーストしてgoogleなどで検索してもらえれば保管庫がヒットします。

皆様お騒がせして申し訳ありませんでした。
0294名無しさん@ピンキー2011/12/29(木) 11:16:06.89ID:dDRmx/Al
>>293
どうもすみませんでした。無事に見れました。
いつも楽しみにしてます。ありがとうございました。
0295名無しさん@ピンキー2012/01/14(土) 21:55:17.96ID:3In9OaSE
一昔前のラブコメによくあった「学校には内緒の高校生夫婦」ネタを読みたいです。
0298名無しさん@ピンキー2012/02/14(火) 22:20:27.08ID:k2jDsIP0
バレンタインのために保守しとくわ。
あと2時間弱だけどなw
0299 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/02/16(木) 00:54:02.03ID:ufcSD41S
せっかくバレンタイン保守があったので、遅ればせながら短編投下します。
鉄仮面と子猫バレンタイン短編です。
エロ無しで申し訳ありません。
0300 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/02/16(木) 00:58:57.28ID:ufcSD41S
「……今日は2月15日だ」
いつもの夕食を囲んで、ダイニングテーブルについている鉄仮面が呟く。
「え?うん、そうだね?」
向かいあって座った、まるで少女のような若妻が、不思議そうに首をかしげる。
「つまり昨日は2月14日だったわけだが」
「うん」
「……2月14日というのは、俗っぽい行事が……いや、女性にとって大事な行事があるという」
「ああ、バレンタインデーのことね?」
いつもの不機嫌そうな無表情でそう言う貴巳の顔を不思議そうに眺めて雪子が言う。
「……気づいていたのか」
「当たり前でしょ?お買い物行けばスーパーにはチョコが山積みだし、
テレビでもバレンタインスイーツ特集とかやってるし」
「そうか。てっきり雪子は気づいていないのかと思っていた」
そして食卓に流れる、妙に気まずい沈黙。
小鉢に入ったひじきの煮物の最後の一口を飲み下してから、雪子がおずおずと問う。
「貴巳さん……もしかして、チョコ、欲しかった……?」
「そういう訳じゃない。断じて違う」
「だって貴巳さん、私が普段チョコのお菓子買ってきても食べないから、嫌いなのかと思って」
「俺はただ、雪子がクリスマスには執着するのに何故同じようなイベントであるバレンタインには興味を示さないのか、
常々疑問だっただけだ」
「んー……ずっと女子校だったから、お父さん以外の人にバレンタインチョコあげる習慣が無かっただけなんだけど……」
「そうか。了解した。これからも我が家にはそういった浮ついた行事は必要ない。実に喜ばしいことだ」
全く喜ばしくない雰囲気の表情の鉄仮面がそう言い放ち、再び食卓を沈黙が支配する。
食事を終えた雪子が、ふと何か思いついたような顔になり、探るような目つきで貴巳を見上げた。
「貴巳さんって……もしかして、今までバレンタインチョコ、貰ったことない、とか……?ま、まさかね……?」
「……」
「……」
「……」
「……え?」
「何か問題でもあるのか」
「嘘でしょおぉぉぉ!?義理チョコは?家族からは?操さんからは?」
「何故そこで鈴木が出てくるんだ。義理で物を貰うなどという卑しい真似は俺は一切しない。職場でも虚礼廃止の通達が出ている。
大体製菓メーカーの陰謀に踊らされるのは馬鹿らしいというのが中嶋の家での不文律だ」
ちなみに鈴木操とは、貴巳の学生時代の友人にして初体験の相手、しかし恋愛感情は一切無く身体の関係だけ、
という、妻が把握しているにしては余りにもひどい間柄の女性である。
しかも、何故か操と雪子との間には友情めいた交友が持たれているのである。
「そっか……操さんからも貰ってないんだ……」
「だからどうして鈴木が関係あるんだ」
「ってことは、今私が貴巳さんにチョコあげれば……
それは貴巳さんにとっての初めてのチョコになるってことだよね?!」
雪子が俄然、目を輝かせて貴巳に詰め寄る。
「……まぁ、そうだな」
「あげる!今すぐ買ってくる!あ、買ってきたのは嫌い?やっぱり初めてのチョコだから手作りじゃなくちゃね?
あーでも材料あるかなぁ?あ!持ち出し袋に非常食の板チョコがいっぱい入ってる!ココアパウダーもあるし!
あーでも生クリームが無い!ねぇ貴巳さん生クリーム買って来て!」
興奮してマシンガンのごとく喋りながらごそごそと台所をかき回す雪子にやや圧倒される貴巳である。
「……別に今日でなくてもいいんだが……いや、そうではなく別にチョコレートが欲しいわけではないと」
「いいから早く!あと30分でスーパー閉まっちゃう!」
雪子に財布と車のキーを押し付けられ、貴巳は半ば放り出されるようにして玄関から出たのであった。
0301 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/02/16(木) 01:03:41.63ID:ufcSD41S
「……雪子、これは……?」
言いつけ通り、小さな紙パックに入った生クリームを買って帰ってきた貴巳は、
湯煎されたチョコレートの甘い香りの漂うキッチンに、
琥珀色の液体が僅かに残った小瓶が置かれているのを見て眉を顰めた。
「あ、生クリームありがとう!あーこれね?生チョコにブランデー使うんだけど、お酒の瓶が置いてある棚見たら、
これしかブランデーって書いてあるのが無かったから使ったの。ちょっとしか入ってないから量もちょうどいいし!」
「……」
キラキラと輝くブランデーの小瓶はバカラグラス製。雪子が惜しげもなくチョコ作りに使ったのは、
貴巳の友人である武内から、二人の結婚祝いに贈られたものである。
レミーマルタンのルイ13世。
小瓶の底から1センチほど残っているぶんだけでも数千円はする高級ブランデーだと、
倹約家の雪子が知ったら気絶しかねない。
「もうちょっとでできるから待っててねっ」
にっこりと天使の微笑みを浮かべる愛しい妻へ、貴巳は喉元まで出た言葉を無理やり飲み込んだ。

リビングのソファで待つ貴巳の元へ、雪子がチョコレートを乗せた皿を仰々しく差し出したのは、さらにそれから30分ほど経ってからのことだった。
横に座った雪子が、やけに身体を密着させてしなだれかかってくるのも気になるが、
貴巳はとにかく雪子に礼を言って小さな四角いチョコレートを口に運ぼうとした。しかしその手は、雪子によって阻止される。
「だめ!」
「……貰ったものを食べてはいけないのか」
「そうじゃなくってぇ……せっかく貴巳さんの、はじめて、貰うんだもん……食べさせてあ・げ・る」
普段のぽやんとした雰囲気とはうって変わって、妙に色気の漂う雪子の様子に、貴巳は嫌な予感を覚えた。
「……気色の悪い表現をするな……雪子、まさか酔ってるのか……?」
「酔ってなんかいましぇんよー、だ。ちょっと味見しただけらもん……おいしかったよ?」
チョコレートと、ブランデーの香る甘い息を吐きながら、雪子は貴巳に身体を押し付ける。
貴巳の唇に、ココアパウダーの塗された黒い塊が押し込まれた。
口の中ですぐにとろける、芳醇な香りと風味。
「……美味しい?」
「ああ、美味い」
「わたしにも……ちょうだい?」
口移しでチョコレートをねだる、いつもより数倍色っぽい妻の様子に理性をゆすぶられながら、貴巳はしかし、慌てて身を引く。
雪子はアルコールにごく弱い体質。その上、絡み酒である。酒乱といってもいい域にあるかもしれない。
これ以上ブランデーのたっぷり入ったチョコレートを食べさせたら、貴巳自身どういう目にあうかわからない。
とりあえず非常に危険なのである。
「なんでくれないのぉ……」
涙目になる雪子の表情が、貴巳の鉄壁の理性をまたもぐらつかせる。しかし貴巳もここで負けるわけにはいかない。
「……これは俺が貰ったものだから俺が食う。その代わりホワイトデーとやらには俺が雪子に好きな菓子をやるから今日は我慢しなさい」
「……ほんとに?お菓子なら何でもいいの?」
「ああ、何でも好きなものでいい」
「じゃあ、貴巳さんクッキー焼いて」
「……何だと?」
「私が手作りのチョコあげたんだから、お返しに貴巳さんは私にクッキー作って!」
あんまりな要求に頭痛を覚えながら貴巳が反論する。
「……俺が作るより、どこか有名な店で買ってきた方が数段美味いに決まっている」
「おいしくなくてもいいの!貴巳さんの手作りのお菓子が食べたいの!」
子供のようにだだをこねる雪子に貴巳はため息をついた。
「俺は菓子なぞ作れない。諦めろ」
冷たく言い放つ夫に、雪子は恨みがましい目線を送って、最終手段に出た。
「作ってくれないなら、貴巳さんがバレンタインにチョコ貰ったこと無いって、あやさんと操さんにばらしちゃうからねっっ!!」
「……」
構わない、と言おうとしたが、それを知った時の橋本あやと鈴木操の表情、
さらにその後に続く台詞の鬱陶しさを正確に予測して非常に嫌な気分になり、貴巳は言葉を飲み込んだ。
傍らに目をやると、雪子が拗ねたような目で自分を見上げている。
今夜は絶対に夜が明けるまで泣かせる、と復讐心にと煩悩に燃えながら、貴巳は天使のような子悪魔のような妻の身体を引き寄せた。


次回予告:鉄仮面と子猫シリーズホワイトデー編「鉄仮面だけどクッキー焼いたよ!」

……嘘です。お目汚し失礼しました。
0302名無しさん@ピンキー2012/02/16(木) 07:31:58.34ID:mC2zxQjq
まさかの投下にやられた……!
ほのぼのしてていいすなあ GJ
0304名無しさん@ピンキー2012/02/16(木) 18:00:27.44ID:K89OgiyD
おお〜キター!
>「鉄仮面だけどクッキー焼いたよ!」

あやにバラしてやりたい、いろいろとw
0306名無しさん@ピンキー2012/02/17(金) 18:55:10.02ID:urlnq3O2
どう考えても鉄仮面がチョコ欲しくてたまらなさそうな件

そして俺も最後の行が読めない
0308名無しさん@ピンキー2012/02/18(土) 01:50:08.31ID:HguL+qHJ
GJ
お菓子作りは分量がはっきりしてる分、鉄仮面のほうが美味しく作れそうだ
0309名無しさん@ピンキー2012/02/19(日) 05:34:50.35ID:csl8LoaK
最後の行?皆何の話をしているんだ?

まさかの投下でしたありがとう!GJ!
0310名無しさん@ピンキー2012/03/06(火) 09:16:23.66ID:Xo9fAJR/
嘘ですを信じたくないって言う意思表示w
とマジレス
gjっす!!!!
0312名無しさん@ピンキー2012/03/09(金) 20:41:44.66ID:DvKvM5z9
今日はさんきゅうの日!
いつもの感謝の気持ちをこめて迎えてみようと思います。

がちゃがちゃ。
鍵の音!帰ってきたぞ
「おかえりんこー」

このポーズかわいいだろ、と顔をちょこっとだしてみる
おかえり勇士さん。

「ただいまんこ!」
「サイッテー!」
目が合うなり元気よく応えてくれたけど失敗だった
しかも反射的に最低とか言ったけど最低なのは私ですごめんね勇士さんゆるして。

「あう……いやごめんわたしがわるかった。おかえり」
ちょっぴり俯いて言うと勇士さんがおでこにちゅーしてくれた。

「い、つもありがと、ね?」
「突然何だよ、エッチでもしたいのか」
「お風呂入ったらしようねー」

笑って食卓についた。
0313名無しさん@ピンキー2012/03/09(金) 22:16:22.90ID:UtuJy2aS
なにこのかわいすぎる夫婦。
風呂入ったらといわず、風呂場でやれw
0315名無しさん@ピンキー2012/03/10(土) 12:06:26.36ID:Bw5RuMbm
大丈夫だと思う。
前にもそんな作品幾つか投稿されてなかったっけ?

結婚してれば問題なし!気にせずに書いてくれ!
0316名無しさん@ピンキー2012/03/13(火) 18:00:04.04ID:tDuf8oRU
明日ホワイトデーだけど、
今頃鉄仮面がクッキー焼いてるかもしれない保守
0318 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/03/15(木) 00:03:33.33ID:wOI+ePqv
うっかり直リンしてしまいました。申し訳ありません。
お目汚し失礼しました。
0319名無しさん@ピンキー2012/03/15(木) 00:17:34.19ID:of4UP/nj
>>317
待っていた甲斐があった……!
ありがとうございます

なんかもう色々ごちそうさまです
0321sage2012/03/15(木) 14:45:10.15ID:f7OBfrjU
鉄仮面も雪子ちゃんもかわいすぐる〜
ホントに良かった。

なんかエロ無くてもずっと読みたい物語だよこれ。
作者さんありがとーーー



0322名無しさん@ピンキー2012/03/15(木) 21:19:44.95ID:d8rmhwve
>>317
キターーーー!!
鉄仮面、お菓子作りもエロもスゲー!
苦手なことはないんか苦手は。
0323名無しさん@ピンキー2012/03/16(金) 00:02:34.63ID:h2911MAT
>>317
いつもありがとうございます!
GJ!!!
鉄仮面と雪子ちゃんの大ファンです!
0325名無しさん@ピンキー2012/03/16(金) 10:08:35.50ID:dLtgqBUG
>>317
というかsweetというのは、やっぱりダブルミーニングなのだろうか
なるほど…
鉄仮面のセリフもなるほど…いやぁ、堪能しました
0328名無しさん@ピンキー2012/04/13(金) 00:29:36.43ID:KhJ+Nv6h
ふと思ったんだが、鉄仮面はアダルトショップに行くのか?
雪子ちゃんは恥ずかしがるだろうけど(ホワイトデーで恥ずかしがる雪子は鉄仮面的に燃えると判明)
鉄仮面はディズニーの二の舞になりそう。
0329名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 07:07:39.44ID:3Osr34VB
鉄猫は自分も大好きだけど、新規の職人さんにも来て欲しいな。
そう書きづらいテーマじゃないと思うんだが、2次は作品スレに行っちゃうからなあ
0330名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 17:54:53.54ID:lLV6d4Cu
鉄猫が人気なので新規職人さんが投下しにくいのかもな
「どうせ自分のなんてレス付かないだろうし」って感じで。
そんなことはないのになぁ…
0331名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 20:24:40.94ID:dCrddCD+
今日はよいこの日!
よいごではないのです、良い子。
ぐっどちゃいるど?

と言いつつもうサザエさん終わっちゃいました。
勇士さん明日から生きろ。生活のためだ頼むよ!

あと四時間くらいで月曜日さん襲来らしいよ、といつもなら勇士さんをいじめるわけですが
四時間くらいで良い子の日も終わるので優しくしようと思う。うん。

「勇士さん」
後ろからぎゅっとしてみる。
きょにゅーじゃなくてごめりんこ!
ぎゅー

「一緒に風呂入るか」
「おーよ!」

まさかの申し出に快諾し、お湯をはることにした。


お風呂での話?そんなのここで書くわけ無いじゃないですかあっ!
0332名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 23:23:30.07ID:Npqp76tq
宣伝する書き手を持ち上げる読み手しかいなくなったってことだよ
わざわざ具体的に書かんでもいいのに
そんなことないのになぁ…とか、イヤミとしか
だからオバサンだらけのスレって、怖くて落とせないんだよ
0334名無しさん@ピンキー2012/04/17(火) 01:08:41.68ID:Ee8XhGVo
>>331
ここで書かないでどこで書くんだよぉぉ!
いや、書いてくださいオネシャス
0337名無しさん@ピンキー2012/05/04(金) 10:30:53.04ID:CKbYddF2
今日一日中雨だったら、らぶらぶで馬鹿でいちゃらぶな話書く。
現在こっちは雨降りまっただなー。

良スレなんでこっそり覗いてました。
0340名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:07:39.60ID:286fIhS9
遅れましたが雨でした。携帯から。
目付きが悪い女の子、飲み物口移し。
展開とっぴ。本番無し。
文法や誤字脱字はめんご。
0341名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:09:01.50ID:286fIhS9
「っと、できたっ」
 制服を着た少女の目の前には、綺麗に盛り付けられた初挑戦のたまご丼。
なかなか上手くできたかな、と少女は笑顔を浮かべた。
その笑顔も瞬時に真顔へ変わり、使った鍋などの後片付けを手早く行う。
 小さくはないが鋭い目、黒目が他人より上向きに付いてるため、目つきが悪いだの恐そうだの散々言われてきた。
それでも今は学生生活をそれなりに楽しみつつ、新婚生活の真っ只中だ。

玄関が開く音に少女の心が跳ねる。
ちょうど片付けを終え、リビングのドアへ駆け寄る。愛用する「しろにゃん」のスリッパがぺたぺた鳴る。
「ただいま!」
帰宅と同時に少女は抱きしめられた。大好きな彼の匂いが鼻腔に広がる。
「んっ……おかえり優斗」
抱きしめられた温もりで心臓がとくんと跳ね、甘い声を漏らしてしまう。
「ケーキ買ってきたから食後に食べよーな」
飛び込んできた眩しい笑顔に、少女は頬を染め頷いた。
「んっと、ちょうどごはん出来たからんんっ!?」
ただいまのキスの不意打ち。
「小羽」
耳元で名前を囁かれ、
「ひゃっ、待っんっ!」
再びキスで言葉を塞がれてしまう。
「んんっ! ちゅ、ふぁっ、んんぅっ! ひゃ、ぷぁあぁぁっ……」
唇同士の浅く熱いキスから解放され、小羽は甘い溜め息を漏らした。
「あ、ぅ、ご、ごはん冷めちゃう、から……」
恥ずかしさのあまり優斗からしゅぱっと離れ、食事の準備にかかろうと食器棚へ向かう。
「ははっ、照れてる小羽可愛いなぁごはあぁあぁぁっ!」
可愛いという言葉に反応した小羽の音速突きが優斗の脇腹に直撃する。
「うるさいっ!!」
優斗が可愛いと言う度に、小羽の突きや肘打ちが繰り出される。
可愛いと言わない約束だが、優斗はつい本音を漏らし、いつも小羽の一撃を喰らってしまう。
「もう言わないって言った!」
小羽がドスの効いた目で睨み付けても、
「あたた、ははっ気をつけるよー」
笑顔で流されてしまう毎日。その度に小羽は溜め息を付く。
「はぁ……もういいから座ってて」
優斗のいつもの調子に負け、小羽は食事を並べていった。

「いただきます」
「ん、めしあがれ」
優斗と小羽は並んで椅子に座り仲良く御飯を食べる。
顔を見られるのが恥ずかしいという小羽の要望で、二人はこの形で食事を取っている。
「えと、国立病院で食べた味に近付けたつもりなんだけど……」
優斗の一口目をどきどきしながら見つめる。
「うまい! 小羽の方が上手だよ」
笑顔で頬張る優斗に、小羽は安堵の溜め息をついた。
「ふぅっ、よかったぁ……」
ようやく小羽も一口目を頬張り、なかなかの出来に頬を緩ませた。
0342名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:10:25.01ID:286fIhS9
「ごちそうさまでした」
「んっ、ありがとうございました」
二人は他愛のない話をしながらゆったりとした食事を楽しんだ。
食後は優斗が食器を洗い、小羽はソファーでくつろぐのが日課になっている。
小羽は愛用中の「しろにゃん」の等身大ぬいぐるみを抱きしめ、一日を振り返ったり優斗の事を考える。
時折ぱたぱたさせる足にも「しろにゃん」のふわふわスリッパ。
先程のキスを思い出し、頬を真っ赤に染めたり、上手く料理が出来たことに笑顔を浮かべたり。
そんなふわふわした事を巡らせていると、食器洗いを終えた優斗の姿が目に入った。
「しろにゃん」のぬいぐるみを脇に寄せる。
「終わったよ。ゆっくりしよっか」
優斗の言葉に小羽は笑顔で頷いた。

 小羽は先程ぬいぐるみにしていたように後ろから抱きしめられ、二人一緒にソファーに沈む。
密着した背中越しに心臓の音がとくんと伝わる。
「小羽制服着替えなくていいの?」
さりげない気遣いが小羽は嬉しい。
「ん、土日休みだから大丈夫……」
制服のシワよりも優斗と一緒にいることが小羽には大事なことだった。
それに制服を着ていると、嬉しそうな顔をする優斗が見れるのも小羽は嬉しかった。
「そっか、ありがとな」
言葉と同時に抱きしめる力が強まり、小羽の心臓がどくんと跳ねる。
柔らかい沈黙が二人を包み、感情に熱がこもる。
「小羽」
耳元で囁かれる名前。甘い魔法。
「小羽、好きだよ」
優しくて、甘くて、切ない囁き。小羽の身体中がぞくっと震える。
瞬間、身体中に甘い電気が走り、
「ふあっ!? んくぁぅうぅっ!!」
小羽は艶に満ちた声を漏らした。
「う、あぁ、ぁっ……い、きな、り……ず、るい、よっ……」
小羽はぽにゃぁっと崩れ、熱を帯びた可愛い顔を浮かべながら甘い余韻に浸った。
小さな身体が何度もぴくんと跳ねる。
「ふぁ、ぅっ、ゆ、うろっ……」
甘い感覚に呂律が回らない。
「好き」
言葉と同時に耳にキスが降る。
「にあぁああぁあっ!?」
身体をのけ反らせ甘く可愛い声を漏らしてしまう。
「ひあっ! まっ、てっ! おくっ、きゅんって、して、っる、からぁっ!!」
優斗の腕をぎゅうっと握り振りほどこうとするが、とろけた状態では何も出来ない。
「小羽」
再び囁かれる名前。
「ひゃわっ! すとっ、ぷ、だか、らっ!」
「ダメ、小羽の声聞きたい」
優斗の声が耳に染み込む度に、小羽の身体から力が抜けていく。
「ぅやあ、あぁっ! だっめだか、らっ」
小羽は甘い声で鳴きながら、言葉ではなんとか抵抗する。
「好きだよ小羽。好き。好きだ」
重なる「好き」の言葉とキス。
小羽はあまりの刺激に目を見開き、身体がぴぴんっ!と伸びた。
次の瞬間、
「ぅあぁあぁああぁぁっ!!」
今宵一番の甘い淫美な声が部屋に響いた。
情けなく開いた口からは涎が漏れ、制服に淫らな染みを作っていく。
眉を歪ませ、とろけた表情で甘い時間に浸る。
「いあぁっ……ゆー、とっ! ゆ、うとっ! す、きっ、すきぃっ! す、きっ!」
優斗に応えるように、小羽は大好きな人の名前を呼び、「好き」を繰り返す。
「ふぁあっ、ゆーと、す、きぃっ……」
小羽は優斗の愛を身体中に感じながらまどろみに飲まれていった。
0343名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:11:52.20ID:286fIhS9
「う、んっ?」
小羽が目を覚ますと先程と変わらぬ光景が目に入った。
「あ、起きた? やりすぎたかな、ごめん小羽」
優しく、包まれるように抱かれながら小羽は思考を巡らせる。
途端に小羽の頭の中でぼんっ!という音が鳴り、頬がみるみる赤く染まっていく。
「あ、あああ、の、あの、あ、う……」
「汚れたり濡れたとこは拭いておいたから」
優斗の優しい声。
「う、うん、あり、がと……って、拭いた? あ、そそそ、そんな、ことっ……!?」
わたわたと慌てる小羽。
「え? あ、だ、大丈夫だって! あんまり見てながぱぁああっ!」
小羽の豪速の肘が、優斗の脇腹にクリーンヒットした。
「ばかっ!!」
小羽は怒号を発しながら優斗から離れ、再びしろにゃんを抱く。
そのままぷいっと背中を向けご機嫌ななめ状態に入った。
「ご、ごめん……んと、さ、制服姿だったから調子乗っちゃって……」
「しらないっ」
振り向かず、しろにゃんをぎゅっと抱く。
「ほんと、ごめん……僕、さ、小羽のことほんとに好きだから、伝えてないと不安で……」
寂しそうな声に小羽の心がきゅっと痛む。
「小羽はあんまり好きとか言わないしさ、迷惑なのかな、って思って、その……」
愛されている、十分過ぎる程に。
「ん。いいよ。もう怒ってない、から……」
振り向き、笑顔で優斗を見つめる。
「あ……ありがと。ごめんな……」
しろにゃんごときゅぅっと抱きしめられ、小羽は目をつぶり温もりに身を任せた。
「そろそろケーキ食べよっか」
いつもの調子に戻った優斗の声に、小羽は胸を撫で下ろし頷いた。

「あっ!?」
いつものココアが一人分しかない。
「僕はいらないから小羽飲みなよ」
優斗が笑顔で返す。
「で、でも……」
「いいから。さっきのお詫び。僕は勝手に他の飲むから」
頭をぽんぽんされ、小羽は頬を赤く染めながら頷いた。
「んっ。ありがと」
夕御飯の時と同じように、二人は並んで椅子に座る。
「紅茶ケーキ?」
甘い匂いに小羽は思わず笑顔を浮かべた。
「そそ。はい。あーんして」
「えっ?」
優斗のいきなりの行動に、小羽は固まってしまった。
差し出された一口大のケーキ。
「あ、の、えっと……」
恥ずかしさに堪えられず視線を泳がせる。
「きっとおいしいよ? ほら、あーん」
小羽は一瞬にして頬を林檎色に染めてしまった。
このままでは終わりそうにないので、仕方なく差し出されたケーキを口にする。
「うぅっ、あむっ……」
口に広がる紅茶の香りと甘味。
「おいしい?」
目に飛び込む優斗のとびきりの笑顔。
「お、いしい、です……」
味よりも恥ずかしさが上回り、クリームとは対称的な真っ赤に染まる頬が際立つハメになってしまった。
堪えられなくなった小羽は俯きながらぶつぶつと文句を呟く。
「ばかっ、ばかばかばかっ……」
ケーキはまだまだ残ったまま。甘い時間もまだまだ続く。
0344名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:13:34.07ID:286fIhS9
「ココア遠慮しないで飲んでいいからね」
優しいのは嬉しいが、恥ずかしさで上塗りされてしまう。
「う、うん」
ココアを一口飲み心を落ち着ける。
「はい、あーん」
だが再び甘々の笑顔が小羽を包む。
「あぅ、ぅぅっ……あ、あむっ」
打ち消すようにココア。ココア。
「うぅっ……あっ、優斗飲み物いいの?」
ふと優斗の方へ目を向ける。マグカップはあるが中身はない。
「いいよいいよ。ケーキ楽しんでるからさ」
ひらひらと手を振り笑顔を返す優斗。
「でも……あっ、じゃ、じゃあ……」
小羽はココアを口に含み、優斗の口元へ運ぶ。
身長が小さいため、椅子から立ち上がり、優斗の顔に手を添えながらココアを流し込む。
「んっ、んんっ、ふゃあぁぁっ……」
小羽は上手く出来た安堵から甘い溜め息を漏らし、ぺたんと椅子にへたり込んでしまった。
「んと、これなら優斗も、ココア飲める、から……」
小羽は頬をさらに赤く染めながら視線を逸らす。
「あ、ありがと。小羽がこういうことしてくれるって思わなかったからびっくりした……」
優斗も頬を染め照れ笑いを浮かべる。
「うぅ……恥ずかしい……あっ!」
小羽が目を真ん丸くして叫ぶ。
「べ、別に、優斗と半分こすればいいだけじゃ……」
小羽の頭の中で「しばらくお待ちください」のテロップが流れる。
次の瞬間、頭の中がぼぼんっ!と爆発し、ぷしゅうと煙が漏れた。
小羽はテーブルに顔を突っ伏し、自分の行動を呪った。
「ばかばかばかばかばか……」
恥ずかしさで今すぐ消えてしまいそうな気分だ。
「でもさ、可愛い小羽の味もしておいしかったよ」
ぺかーっという効果音が鳴りそうな程の優斗の笑顔が広がる。
「うるさいっ!!」
小羽の強烈な突きが優斗の鳩尾にずびゃんと決まった。
「ごぼぉ!」
小羽は痙攣する優斗を尻目に、さっさとケーキを食べ終えてしまった。
「ばかっ……」
残ったココアをのんびりと飲んでいると、
「一口いい?」
痙攣から復帰した優斗が顔を覗かせた。
「だめ!!」
容赦なくギッと睨み付ける。
「小羽。お願い」
不意に耳元で囁かれ、ぴくんと身体が跳ねる。
「だ、だめ、だからねっ」
抵抗が弱まる。
「小羽」
普段とは違う低く真剣な口調に、心臓をぎゅっと掴まれてしまう。
「あ……あ、さ、最後だから、ね……」
小羽は震える両手でマグカップを握り、ココアを口にする。
「んっ……」
先程と同じように立ち上がり、優斗の口元へ自分の味が混ざったココアを運ぶ。
優斗の頭を優しく抱き、少しずつ愛の蜜を注いでいく。
「んんっ……、ひゅあっ、んんっ!」
漏れる熱を帯びた声。
「んっ、んっうっ、ふぁっ、ちゅぁぷっ、んあぁあぁぁっ……」
事を終えた小羽は淫美な溜め息を吐き、優斗に寄り添うように崩れ落ちた。
「ありがと小羽」
「あぁ、うぅっ……」
小羽は優斗の声に心地よさを感じながら甘い感覚に浸っていった。
0345名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:16:35.21ID:286fIhS9
「ひぁっ!?」
身体が浮く感覚に小羽は情けない声を上げる。
「ソファーで続きしような」
「あわ、わっ」
わずかな距離だがお姫様抱っこでソファーまで運ばれる。
優斗の膝の上にちょんと座らされ、向かい合う形になった。
「っ!? やだっ!!」
小羽は顔を思いきり背け、優斗から離れようとする。
「小羽の顔見せて」
「いやっ!」
ただでさえ恥ずかしい行為だというのに、見られながらするなんて小羽には堪えられない。
可愛くない姿を晒すのがとても辛い。
「今日もだめ? じゃあ……」
瞬間、ぐんっ!と引き寄せられる小羽。
「うあっ! んんっ!? んちゅぁっ、ふぅっんっ!」
突然のキスに小羽は戸惑いの声を上げた。
「ぅあっ……んっ」
キスが止むと、優斗の胸の中に促される。
「あ……ゆう、との匂い……」
きゅっと優しく抱かれ、小羽の心がとくんと跳ねた。
「これならいいよね?」
「う、ん……」
優斗の匂いが頭を柔らかく包み込み、小羽は頬を擦り寄せながら頷いた。
「僕は小羽じゃなきゃ嫌だから」
頭上から降る声。心が踊り、心に刺さる。
「可愛いよ。小羽が一番好きだ」
優斗の「可愛い」の言葉に胸が痛くなる。
他の人に言われても特別気にしないのに。
優斗に言われた時だけ胸が痛い。
「可愛いよ小羽」
まただ。
声は可愛い。名前は可愛い。料理は可愛い。何かが可愛い。
だったら可愛い「顔」は?
付き纏う三白眼。付いたあだ名は狼少女。
「う、るさいっ……」
優斗に抱き付く手に力が入る。
「うそ、ばっかりっ! やめてよっ!」
ギリッと優斗を睨み上げる。
「絶対趣味おかしいよ! なんで可愛い人と結婚しなかったの!? バカだよっ!」
心の堰が崩壊する。
「私なんて、いつも睨んだ、ような目だしっ、恐いって、ひっく、言われ、るし、ひぐっ狼みた、いだ、しっ」
溢れる涙と本音。
「も、うやだ、っ!! ひくっ、嫌われ、るの、やだっ!」
涙で優斗が見えない。
嫌いって言われたら楽なのに。
嫌いって言われたくないのに。
「ば、かぁっ! ゆ、とっきら、いっ! やさ、しい、ひくっからっ、きらいっ!!」
ボタボタと涙をこぼし、制服が悲しみで濡れる。
「きらいっ、て、いって、よっ! かわい、くないっからっ、ひぐっ、きらいって!!」
0346名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:18:05.19ID:286fIhS9
吐き出した。全部。汚い言葉で。馬鹿だ。
瞬間、頬をぐにっと摘まれた。
「はにっ!?」
いきなりの事に情けない声を上げる。
「僕の結婚相手は、小羽に付き纏う世間体なんかじゃないよ」
真っすぐで淀みがない真剣な声。
「僕は小羽と結婚したんだ。小羽が好きだから結婚したんだよ。
それとも小羽の人生を狂わせたいがために結婚したと思ってるのか?」
わずかに含まれる怒り。だがすぐにやんわりとした口調に戻る。
「もしまた同じこと言ったら、またほっぺぎゅーってしてあげるから。覚悟しといてね」小羽の目から別の味の涙がこぼれ、染み込んだ制服が少しだけ笑った気がした。
「小羽が一番可愛いよ」
とびっきりの笑顔に小羽は涙を流しながら応える。
「う、うる、さいっ、ばかっ」
小羽は突きの代わりにキスをお見舞いする。
「んっ……ぅんっ、ふぁっ……」
目を腫らしながら、見つめながら。
「時間たくさんあるからもっとキスしような」
優斗の囁きに小羽は頬を赤く染め頷いた。
「う、んっ……」
0347名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:21:00.06ID:286fIhS9
「ちゅっ、んんっ、ふぁっ、ちゅ、んっ」
キスの音色が部屋に甘く響く。
小羽はソファーに押し倒され、されるがままにキスを感じていた。
「んうっ! ふぁぷっ、ちゅっ、ちゅ、ぷひゃっ、んむっ!」
時折唇が離れ、笑顔で見つめられる。
「小羽」
「うーっ、はず、かしいから……」
優斗を無理矢理引き寄せ、小羽は再びキスを味わう。
「んっ、んくっ、ちゅっ」
浅くても愛を感じる優しいキス。
「んむぁっ、ひゅあっ! んっ、ちゅっ」
可愛い声を上げながら小羽の快感が高まっていく。
「んんっ! んっ、あぁっ、ちゅ、ちゅっ、んぅっっ、ふぁぁっ……」
唇が離れ、涎が糸となり二人を繋ぐ。
「なんか、幸せ、かも」
小羽はにへっと笑顔を浮かべる。
「僕もだよ。小羽。大好き」
優斗は応えるように小羽の髪をとかす。
「んっ……」
手から伝わる温かい安らぎに声を漏らす。
「じゃあ耳にもキスするよ」
小羽はぴくんと身体を震わせ、身体を強張らせた。
「緊張してる? 可愛いな」
耳に落とされるキス。ぞくっと甘い電気が走り身体の奥が熱くなる。
「やぁっ、んっ! ゆ、うとっ!」
キスも声も心も甘い。
「小羽。好き、好きだ」
優斗のキスと囁きが激しくなる。同時に小羽の甘い声も濃度が増していく。
「うぁあぁっ! だめっ、そ、んなっ、あっんあぁあっ! や、だっ、んぁああぁぁっ!」
身体をのけ反らせ快感に包まれる。
全身にキスを落とされたような甘く刺激的な感覚に心がとろけていく。
「ひゃぁうっ、あ、ぁあぁっ……」
ふにゃあっと小羽の顔が緩み、口から涎が漏れる。
普段の姿からは想像も付かない淫美な姿。
0348名無しさん@ピンキー2012/05/06(日) 10:22:00.30ID:286fIhS9
「そろそろいいかな?」
不意に伸びた優斗の手が、小羽の一番熱い部分に触れる。
制服と下着越しの感覚にも関わらず、小羽の頭に甘く白い電気が走った。
「ひゃうぅっ! あぁっ、だっめっ!!」
両手で優斗の手を押さえるが、とろけた思考では力が入らない。
「楽になっていいよ」
「まっ、てっ!」
小羽の言葉に重ねるように、優斗は小羽の甘い熱溜まりを撫で上げた。
「あぁああぁあっ!!」
視界が脳内が思いが弾ける。
「小羽。大好きだよ」
小羽は耳に愛の言葉とキスをプレゼントされ、甘い秘部を先程より強く撫でられた。
「んあぁああぁああぁぁっ!!!」
一瞬にして甘く可愛い嬌声が部屋いっぱいに広がった。
「にあぁあっ! やっ、えっ、ちなこえっ、やらっ!」
無意識に出てしまう淫らな声。恥ずかし過ぎて頬が林檎色に染まる。
「あ、あぁあっ、ゆーろっ、あ、ぁぁっ、」
ぎゅうっと優斗に抱き付き、快感の余韻から身体をぴくんと震わせている。
「わた、しも、すきっ、ゆう、とっ、すきぃっ……ふぁあ、ゆ、っとすきぃ……」
重なる心臓の音に心地よさを感じながら小羽は目を細めた。
「じゃあは反対の耳でエッチしよっか」
優斗の優しい甘い呟き。
「ふぁいっ……!」
小羽は優斗をさらに抱きしめ甘い声で鳴いた。
ソファーの隅ではしろにゃんが二人をまったりと見つめていたのだった。

えんど、れすらぶ!
0351名無しさん@ピンキー2012/05/25(金) 21:52:42.18ID:exkul+ql


0352名無しさん@ピンキー2012/05/29(火) 14:52:46.26ID:f0XY8Lj3
鉄猫新作キボンヌ
0354名無しさん@ピンキー2012/06/01(金) 14:37:02.42ID:gHhzFyLS
彼女が「御裾分けです♪」と言って蟹持って来てくれた
皆で夕飯の時食べようとなり、お袋と彼女が料理してくれた
蟹が出て来ると親父が動いた!w

親父:(;`・ω・´)‥‥(蟹の身をひたすら取り出し、溜めている)
お袋:(゚д゚)お父さんったら、もう。嫌な食べ方してー、彼女ちゃんに失礼でしょ!
親父:(;`・ω・´)‥‥(脚の取り出し作業終了。胴体へ移行)
お袋:(*゚∀゚)あらすごい蟹味噌!
親父:(;`・ω・´)‥‥(蟹味噌の詰まった甲羅に取り出した身を苦心して盛り付けている)
お袋:(*゚д゚)もう、お父さん!子供みたいな事しないでってば!
親父:(;´・ω・`)フゥ‥‥終った。

親父:(*´・ω・`)はい、お母さんどうぞ。
お袋:(*゚д゚*)‥‥

彼女の視線が痛かった・・・

0356 ◆xVyOMQDmAoh6 2012/06/30(土) 02:59:31.38ID:BuuCpJ9d
鉄仮面と子猫投下しようとしたのですが、規制中のためアップローダーに上げました。
・今回タイトル「再会」、長編で今回の投下は途中までです。残りは後日投下させて頂きます。
・今回投下分はエロ無し、シリアス展開です。
宜しければ下のURLからダウンロードしてお読み下さい。
ttp://firestorage.jp/download/07391bc205b7bf71668f0718be48f59b98704201
0357 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/06/30(土) 07:37:58.39ID:2w3Mq3Ev
トリップを間違えてしまいすみません。
お目汚し失礼しました。
0359名無しさん@ピンキー2012/07/01(日) 22:00:38.20ID:La2iObqg
鉄猫でシリアス展開になるとは…
ともあれ続きお待ちしてます
0360名無しさん@ピンキー2012/07/02(月) 18:04:06.09ID:Qf2T2M5E
途中までということで、我慢できる自信がないから読まずに待とうと思ったが
結局読んでしまった!
鉄猫クオリティ恐るべし!

続き全力全裸で待ってます!
0361名無しさん@ピンキー2012/07/11(水) 06:24:34.50ID:xlLuEAgW
いつもありがとうございます!鉄仮面と子猫大好き!
続きを楽しみにお待ちしています!
0362名無しさん@ピンキー2012/07/15(日) 00:51:09.22ID:SHIqXiNO
復帰
0363 ◆xVyOMQDmAoh6 2012/07/17(火) 02:06:56.48ID:fOOYl3vp
鉄仮面と子猫「再会」、残り投下します。
規制中のためロダに上げました。
注意:長編かつシリアス展開。エロは薄めで最後のほうに少しだけです。

再会 2章〜5章
ttp://firestorage.jp/download/b5acb276661ae8f569d52083fdd4700d45d6e2a9

再会 6章〜9章
ttp://firestorage.jp/download/34adf6bfec530868ea6021124ab67cd8d1152a9e
0366sage2012/07/18(水) 10:23:56.35ID:o5+Motq1
鉄仮面も雪子ちゃんも碧さんもみんなみんな凄く良かったよー
作者さんありがとう

0367名無しさん@ピンキー2012/07/19(木) 00:57:05.26ID:4oVETg5u
>>363
GJ!!!大号泣です
作者様、あなた様はなんてお優しい方なのでしょう
自分のドロドロに汚い心が今、洗われたような気がします
いつもありがとうございます!!!
0368名無しさん@ピンキー2012/07/19(木) 02:49:41.65ID:4a387Afe
こんなにも目から汗を滴らせてしまう物語に出会えてよかったと、心から思います。ありがとう、GJ!
0369名無しさん@ピンキー2012/07/19(木) 14:44:44.61ID:lWCRpR1G
読むほどに発見がある良作でした。
エロ少なくて何がエロパロだよ派だが何度も読み返してしまった。gj!
0370名無しさん@ピンキー2012/07/20(金) 17:39:49.37ID:EhVz4lSZ
うー!凄い好きだー

料理やちょっとしたことも凄い読んでて幸せになるよー

作者様ありがとうございます。
これからも応援します
0372名無しさん@ピンキー2012/07/29(日) 00:41:25.55ID:rpCHSQF1
え、エロパロで泣くことになるなんて…
初期から拝見してましたが始めて書き込ませていただきます。
本当にこの作品に出会えて良かったです。読んでいて、優しくて切なくて心が澄んでいくようでした。GJ!
0374名無しさん@ピンキー2012/08/28(火) 23:18:08.86ID:Af4en+xO
鉄仮面海へ行く。
砂浜でスイカ割りとか?



似合わねぇw
0377名無しさん@ピンキー2012/09/24(月) 00:04:35.62ID:H7R9vTu6
許嫁で初対面で結婚させられたロリとショタが、処女童貞同士でオタオタしながら初体験する話が読みたい!
0378名無しさん@ピンキー2012/10/10(水) 14:10:39.22ID:IWN0OUEH
保管庫に鉄仮面入ってたネー
職人さん乙ですー

もちろん作者様もありがとうございます。
ホントに子猫と鉄仮面のシリーズは大好きだー


新作読みたいっす
0380sage2012/11/21(水) 01:06:36.31ID:N7d4/kaP
保守!
0383名無しさん@ピンキー2012/12/04(火) 10:24:16.16ID:drb/azW/
いい夫婦の日にすら投下がなくて悲しい
0384名無しさん@ピンキー2012/12/04(火) 22:15:37.72ID:4d9QBWWq
作者様のサイトを見ると、今新作を書いていらっさるみたいだよ!
とっても楽しみだ
0385sage2012/12/07(金) 16:44:26.10ID:dJXZ5Xn9
鉄猫が気になるー!!
エロパロとかなくても良いから読みたいッス

作者様 よろしくです。
0386 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/12/08(土) 00:38:50.68ID:GT7IZQvl
皆様、地震は大丈夫だったでしょうか。
こんな日にどうかとも思いましたが、鉄仮面と子猫10作目、投下させていただきます。
タイトルは「令嬢のお仕事」、雪子の過去編になります。
長さは3万文字程度です。
ロダに上げたので下のURLからダウンロードしてお読みください。

ttp://firestorage.jp/download/158ea81e23b5d61fa139beb2b26967edeaf41547
0387sage2012/12/08(土) 02:39:12.76ID:8PxCc7Rx
新作キターーー!!

今回も濃くて良かったー
作者様ありがとうございます。
ごちそうさまでした!
0389名無しさん@ピンキー2012/12/09(日) 22:00:04.43ID:Wlnr0SO6
鉄猫キターーー!
愛情や人情あふれ、エロも溢れるこの作品の虜です

作者様、いつもありがとうございます!!!
0391名無しさん@ピンキー2012/12/23(日) 08:16:48.08ID:EdwBVuZF
鉄仮面って他の部署(?)に嫌われてんだよね?雪子ちゃんがキッカケで周りの見方が変わる話読みたいな〜。
(ちなみに自分は、会社にあるラジオorテレビで、雪子と分かるPNの手紙が読まれて(その内容は鉄仮面が恥ずかしい思いをするもの)高感度が上がる、みたいなの想像した)
0392名無しさん@ピンキー2012/12/23(日) 20:53:37.21ID:nPO/nGAu
幸せな気分でクリスマスを迎えられるな…
ありがとうありがとう
0393名無しさん@ピンキー2012/12/25(火) 19:13:22.16ID:O+Vgd3ZH
鉄仮面は雪子ちゃん似の娘が産まれたら親バカ父ちゃんになりそうだ…
0395 ◆IyXS.0zNHsKv 2012/12/30(日) 00:24:58.34ID:0uW+zjSy
鉄仮面と子猫、新作投下します。
今回エロ無しです。申し訳ありません。
タイトルは第十一話「帰る場所、還る所」
相変わらず規制中のためロダに上げました。
下のURLからダウンロードしてお読みください。

ttp://firestorage.jp/download/3d07599630dfbcd8ae65373dffe8c6c606c5c336
0396sage2012/12/30(日) 01:52:35.62ID:EHocGdkG
うぉーぉー!

新作キテター
今年は幸せな年越しになるー!!

作者様ありがとうございます。
大好きですーー
0397名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 13:02:42.36ID:j9aE36jg
今から旦那の実家に行くのに涙顔でどうしよう……

作者様GJ!
良い年を迎えられそうです!
0398名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:17:56.61ID:iywNz1SM
『引きちぎられたウエディングドレス!! 披露宴前夜に花嫁は・・・』

満島誠は週末には妻となる順子と愛を確かめ合っていた。婚約者の逞しい手で存分な愛撫を受けた順子の肉体は熱りきり、微笑むと三日月型に変わる瞳は潤んでいる。
騎乗位の体勢でやがて猛り立った誠の肉棒を受け入れると、順子はまるで処女を失った日を思い起こさせるほどに初々しく身悶え、喘いだ。
そして、誠が沸き起こる性欲をセーブしながらも、激しく腰を揺らすとその歓喜の声は次第に大きく、甘く、寝室中に響き渡る。
「アア・・・ ま、まこと・・・さ・・・ん いッ、いいッ!! あッ、あぁ・・・いぃッ!!、いいぃ〜〜ッ!」
結合部から聞こえる卑猥な粘着音。それすらも2人の結婚を祝福するシンフォニーに聞こえる。

自らのシンボルから湧き出るカウパー液が順子のラブジュースと混ざり合う感触に、言い知れない感触を味わいながら誠は妻となる女の乳房をモミしだく。
膨張した形の良い豊満とも言えるバストの上で、勃起しきった乳首がツンとそそり立っている。
フィアンセの快感の印を優しく下から指で挟んで、その悦びをさらに昇華させるべく愛撫を続ける誠。
「や、やんッ! ま、まぁことさぁんッ!」
順子は全身を痙攣させるように震わせ、愛らしい顔で天井を仰いだ。その可愛らしさに征服欲を刺激された誠は、性器に己の精力を漲らせながら順子に囁く。
「順子・・・幸せにするよ」
順子は喘ぎながらも、切なさと憐美な瞳で夫となる男の逞しさに敬意を払う様に見つめてくる。
「わ、私も…誠さんを・・・幸せにするから・・・10年も・・・待ち焦がれていたんだもの」

2人の出会いは高校時代まで遡る。誠が2年の時に新入生の中でひときわチャーミングな娘を発見した。それが順子だった。
サッカー部だった誠は、新体操部入部を希望していた彼女を半ば強引にマネージャーに引き込んだ。
困惑しながらも、恥ずかしげに逞しい先輩、といった眼差しで自分を見つめる順子の姿は今でも彼の高校時代の大切な思い出だ。
ほどなく相思相愛の関係に陥った2人は親、教師、公認の仲となった。
一線を超えたのは順子の18歳の誕生日の夜だった。すでに大学に進学し、上京していた誠のもとを訪れた彼女を万感の想いで抱いたのだ。

順子も誠を追うべく上京し、短大に入学してからは寸分を惜しんで逢瀬を続けたが、同棲することだけは避けた。
それは誠なりにけじめをつけたかったからだし、一人娘を上京させてくれた順子の両親への配慮でもあった。
卒業後、栄養士として就職した順子はすぐにでも誠と結婚したいと言い張った。
結婚がずれ込んだのは、大学院に残り研究者としての道を志していた誠の都合によるものだが、現在はすっぱりと諦め、中堅どころの私立高校の教師に収まっている。
ようやく生活の道しるべを確立し、共に生きるべき娘を伴侶として迎える決意をした誠は幸福だった。
0399名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:18:45.80ID:iywNz1SM
かなり精力は強い方と自負する誠だが、その荒々しい腰遣いにも順子は達することはない。
その愛の行為をすべて受け止めるようとその肉体を震わせ、膣痙攣でも起こすのではと思えるほど秘部で愛する男のそそり立つモノを捕えて離さない。
「俺達…よほど、相性がいいよね 心も…身体も・・・」
順子は身悶えよがりながらも、頷いて見せる。その彼女の唇から唾液が糸を引いている。あまりに淫微な婚約者の痴態に誠はピストンをさらに速めた。
順子もオーガズムに達したように、ビクンビクンと肉体の震えを加速させた。誠が「果て」、順子が「イク」のはほぼ同時だった。

既に深夜の12時。思えば、2時間近くも睦みあっていたのだ。誠は下着だけをつけた姿でベッドに腰をかける。
そこへ、花柄の純白のブラジャーとパンティ姿の順子が微笑みながら戻ってきた。小さなお盆の上に、少量のブランデーを入れたグラスが乗っている。
順子はお盆をサイドボードに置くと、艶めかしくも初々しい仕草で誠の肩をそっとさすりながら、彼の傍らにそっと腰をかける。
「飲もぅ! 誠さん はい」
琥珀色の液体の入ったグラスを一つ、誠に差し出した。
「どうしたんだい、順子が自分から飲むなんて」
「今日は酔いたい気分なの」
順子はブランデーで唇を潤すと、誠の右腕をとり、頬を寄せた。
「ちょっと張り込んじゃったかなぁ?」
順子の視線の先には純白のウエディングドレス。週末の披露宴で彼女が身につける特注品だ。
一生に一度のものだから、本番の前に眺めていたいという順子の希望で家に持ち込んでいた。
素封家とまではいえない地方出身の順子の父親は、愛娘を送り出すのに恥ずかしくないようにと、目一杯の予算を組んでくれた。
教会の挙式、そして都内のホテルを借り切っての披露宴は数百万円をかけて行われる。
その宴のヒロインを艶やかに彩るドレスの胸元にはバラがあしらわれていて、豊満だが、清楚で家庭的な顔立ちの順子が身につけると妖しげでコケティッシュでもある。
「楽しみだよね、披露宴 みんな来てくれるかなぁ?」
誠は男だけに、それほど披露宴にこだわりはなかった。でも順子は女の子らしく相当に入れ込んでいる。
それもこれも、自分との結婚を心底愉しみにしている証拠だと思うと誠も嬉しいのだ。
「ねえ、誠さん・・・私のウエディングドレス姿はどう?似合うかな」
順子が甘えるように訊ねる。
「綺麗だよ でもちょっと肉つきがよすぎるからなぁ、順子は・・・この辺が特に」
誠がブラに隠れた順子の乳房を指差す。
「もうH!」
順子は頬を膨らませたがすぐにまた甘えた表情になる。
「幸せになろうね、誠さん」
二人はまさに幸せの絶頂にいた。
0400名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:19:25.21ID:iywNz1SM
披露宴前夜の夜、勤務を終えた誠は郊外の自宅へと帰りついた。
日の暮れた新興住宅地に佇むマイホーム。実父に頭金600万の援助は受けたものの、30年ローンを抱え、決して生活は楽ではないだろう。
しかし、それも順子との愛の巣だと考えると活力が生まれてくるから不思議だ。
洒落た木製のドアを開くと、愛する女、順子が出迎えた。その姿に誠は息を呑んだ。順子は純白のウエディングドレス姿。
髪をホップさせているわけでもなく、メイクを入念に施していなくとも順子の美貌は輝いている。バラのあしらわれた胸元から覗く豊かな乳房もコケティッシュだ。
「おいおい、それは披露宴までとっておけよ・・・」
披露宴で招待客から喝采を浴びるであろう、花嫁姿を惜しげもなく披露する彼女に、誠は眼を細めた。
だが、順子の顔は対照的に沈んでいる。いや、そればかりか恐怖と困惑に強張っていた。背後から、男の声がする。
「愛する旦那様のお帰りかね?」
シラフにもかかわらず、爛れた響きだった。
「誠さん、実は・・・」
順子が誠に身を寄せる様にして泣きべそをかき始めた。
「ど、どうした、順子!?」

リビングでソファに腰かけた男たちが誠を出迎えた。彼らの顔を思い出すまでには時間がかかった。
それは懐かしい顔。しかし竹馬の友ではない。幸福だった青春期の汚点とも言うべき存在だ。
「よお、新郎様!」
大柄の男は宇佐美だ。
「色男クン、ついに初恋のカノジョへの純愛を貫き通したわけ、ね!」
皮肉るような口調でデップリ肥った体躯を揺らす男は久須美。
「まさか、満島と窪田が結婚するとはねぇ」
順子を旧姓で呼び捨てにする挑発的な物言いを知るのは林だ。
「お前ら…どうして家にまで…」
まさに突然の来訪。彼らと会うのは高校以来初めてだ。
順子は今にも泣きだしそうだ。それもそのはず、順子は高校時代、3人に襲われかかったことがある。
下校時に彼らに捕まった順子は危うく拉致されかかったのだ。
その時も、誠が救ってことなきを得た経緯があるのだ。
順子の両親が騒いだので、教師に知れることとなり、3人は後に退学。
元より評判の悪い3人のことなど、卒業時に口にする者もおらず、2人にとっても忘れかけていた悪夢だった。
0401名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:20:05.67ID:iywNz1SM
「決まっているじゃん、窪田のウエディングドレス姿を見せてもらいたくて、な 俺らには招待状は来ねえだろうし」
宇佐美が粘着質な言い回しで、誠の背後で強張った表情を見せる順子を見つめた。
「高校時代のマドンナの花嫁姿っていうのは格別だねぇ」
今度は久須美がだらしなく目じりを下げながら、下品な口調で言う。
「そうカリカリすんなって! せっかく祝福に来てやったんだ それにしても窪田のナマ着替え姿も最高だったけどな」
「何!?」
思わず、激昂する誠。こいつらの面前で順子は着替えをさせられたのか。
「ハハハ、冗談だよ」
林が茶かすように誠をなだめる。
「貴様ら、目的は何だ!?」
憤る誠を嬲る様に、宇佐美が切り出した。
「あんまり焦らすと新郎が可哀そうだぜ 実はな、俺ら会社を立ち上げてな」
宇佐美は一枚の名刺をテーブルの上に置く。
『エキサイティング・プロジェクト 専務取締役 宇佐美和孝』
「早い話がAV会社だよ」
宇佐美は何の後ろめたさもないように言う。
「俺たちは今、新企画を考案してさ 幸せの絶頂にいるモノホンの花嫁の欲情する姿を集めた素人DVDを制作するんだ その栄えあるヒロインにお前の女房が決定したっていうわけ!」
「貴様ら、そんなことをして済むと思うのか!? 女房に指一本触れるな!」
夫になる男の威厳で言い放った誠。しかし…。
「俺達にそんなことを言っていいのかなぁ〜〜」
久須美がソファから立ち上がり、誠の肩を撫でながら粘りつくような口調で囁く。誠は蛇に睨まれた蛙のように固まった。
宇佐美が順子の露出した白い肩を両手でモミしだく。
「さあて、新婦殿! ご主人の許可も下りたことだし、さっそく今から稽古と行こうぜ!」
「い、いや!やめさせて、誠さん」
順子が哀願する。しかし、誠は動けない。
「まずはいきなりで何だが、俺らの前でオナニーをしてもらいましょうか」
「い、いや、絶対にいや!!」
哀願するように首を振る順子。しかし、男たちは容赦しない。もうすぐ日本一幸福になるはずの花嫁が悲嘆にくれる姿に、嗜虐的な美しさを見出したらしい。
「大丈夫だよ 俺らは女を操るプロだ すぐに、自分から絶頂を求めて歓喜にむせび泣く、幸せな花嫁に仕立て上げてやるよ」
0402名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:21:21.42ID:iywNz1SM
若く希望に満ちた誠と順子の新築の住まいはなかなか瀟洒なつくりだ。
広めのリビングには洒落た床から天井に向けてウエーブのきいた木製の格子が取り付けられている。
その格子にウエディングドレスに包まれた健康的な肉体を大の字に固定され、晒された順子は惨めな表情で項垂れるだけだった。
手首足首はそれぞれ左右に広げられ、格子に荷造り用の紐で固く結ばれている。まさに磔だ。
女にとって最高の幸福を感じる瞬間に身に纏うべき、ウエディングドレス姿で残酷な磔刑に処された花嫁がかつているだろうか。
しかも、である。そのウエディングドレスの裾は中心から引き裂かれ、まるで羽を広げられるかのように、たくしあげられ格子に画鋲止めされている。
下腹部が露わになり、ドレスに負けず劣らず清楚な純白のパンティが丸見えだ。
その姿は美しい白鳥が罠に囚われ、羽をもがれかかっているかのようだった。
(お願いです!ウエディングドレスは切らないで!)
ウエディングドレスを引き裂かれる際の順子の哀願が誠の耳に残る。
しかし、彼には成す術がない。後ろ手に縛りあげられ、芋虫のように転がるだけだ。
そんな彼の目前で、妻として迎える女性は青春期から舞い戻った悪魔に穢され始める。

磔の順子が愛らしい顔を引きつらせた。宇佐美に女陰をなぞられたのだ。
宇佐美は丹念に、執拗に、パンティのうえからワレメに沿って指を上下させる。
「あッ、う、うぅ・・・」
順子は喘いだ。
(や、ヤダ…感じてる 私・・・)
誠以外と関係をもったことのない順子は、相容れない、いやそれどころか嫌悪を覚える男の指遣いに女芯を熱くし始めた自分に戸惑った。
「結構感度がイイねぇ、順子ちゃん 愛する旦那に可愛がってもらってるんだろうが? でも俺の指遣いに慣れたら、嫁に行く気がしなくなるかもな」
宇佐美はさらに順子の性感を昂ぶらすべく、責めを続ける。醜悪な、生理的に受け付けない筈の宇佐美の鼻息を陰部に感じながら、順子はビクンとその不自由な肉体を震わせる。
ほどなく、熱いラブジュースがじゅわあ〜〜っとパンティにシミを作る感覚に自分でも信じられない卑猥な感覚に襲われる。
「はッ!はぐぅッ!」
順子は柔和な表情を甘く崩し、耐えられません、という様に天を仰ぐ。
「ハハハ、最初はあれだけ嫌がってやがった癖にもうマン汁垂れ流して、値をあげてやがる」
久須美が嬲る様に誠を観た。
0403名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:22:00.97ID:iywNz1SM
「やめろ、順子は俺の妻だ!」
次第に宇佐美の意のままに嬲られていく新妻の姿を直視できず、叫んだ。自分の妻が他人の凌辱に感じている姿など、観たいはずがない。
ましてや、数日後に控えた披露宴で着る筈の花嫁姿だ。しかし、宇佐美は残酷な口調で言葉でも、誠を、そして順子を責める。
「女房だろうと、花嫁であろうと、女なんて濡れてきちまえば後はイクまで雌犬同然に‘欲しがる’だけで、貞操観念も何もあったもんじゃあねえよ」
指責めから解放された順子は、カクンと頭をもたげ、ウエディングドレスに包まれた肉体を心悸亢進で震わせている。
「満島!俺はなぁ、高校時代から仲睦まじ〜〜い、お前ら2人を見るとムカついてな 特にこの女の‘誠さんしかみていません’ていう表情が許せなかったぜ」
宇佐美は高校時代からの鬱屈した感情をぶちまけるように続けた。
「女は子宮でしかモノを考えないってとこをお前に分からせてやる それが、結婚間際の最高に幸せな時っていうのがグッドタイミングだぜ」
宇佐美は順子のラブジュースが滲み出るパンティの上から、己のベロを泉の源に突き立てる。
「はあうぅッ!やめてぇ〜〜ッ」
順子は敢え無く、喘ぎ悶える。その声に触発されるように宇佐美の舌は、新婦の性感を昂ぶらせていく。
「ハハハ、宇佐美 おまえ気に入った女をいたぶる時はいつも回りくどい責め方だな 早く‘本題’に入れや」
林が性感を弄ばれる順子の姿を嘲るように言う。
「まあ、いいじゃねえかよ 高校時代のマドンナを徹底的に祝福してやる幸運に恵まれたんだ たっぷりと生き恥、いや、快感を味合わせてやらなきゃ、と思ってよ」
宇佐美は順子の愛液を唇から滴らせながら、残酷な目を妖しく光らせる。股間をヒクつかせ、白いパンティの陰部をびしょ濡れにされた順子はその痴態を夫に公開されてしまう。
「どうだぁ?太腿までエッチなジュースでびしょ濡れじゃあねえか よっぽど、俺の‘お祝い’が気に入ってくれたらしいな」
「お、お願い・・・も、もう許して・・・彼の前で・・・こんな・・・」
順子は快感を覚えた肉体をひた隠すように、哀願する。
「まだ、そんなこと言ってやがる こりゃあ、本格的に可愛がって、亭主のモノより気持ちいいものがあることを教え込んでやらないと、こっちも沽券にかかわるな」
宇佐美はほくそ笑む。

愛液まみれのパンティをずりおろした宇佐美の人差し指と中指が、磔の新婦の聖なる穴に滑り込む。
ビクンと痙攣する順子をさらに嬲る様に女芯の源を乱暴につまみあげる。だが、嫌悪感を覚えたのは一瞬だった。
クリ×リスを弧を描くように快擦されると、宇佐美への憎しみよりも快楽の虜になり、堕ちてゆく自分を感じざるを得ない。
「あ、あぅあぁぁ・・・あぁッ・・・あッ、あぁ〜〜〜・・・・」
宇佐美の激しくも粘着質な指遣いが、囚われの花嫁の女芯を嬲る。まるで女の快楽のツボを心得たような苛め方・・・。
「どうだぁ? 俺の指コキは? 下手なバイブよりもよっぽどお前のGスポットを理解してるぜ 下手すると、旦那のモノよりも・・・」
認めたくはないが、順子自身、誠の愛撫でここまで肉体を燃え上がらされた経験はない。
夫の眼前で屈辱的に縛められ、女は子宮がすべてという侮辱まで受けた身としては、死んでもこの男の指遣いになど感じてたまるものかと思っていた。
しかし、愛情も嫌悪感も無関係の、女としての本能を弄ばれる感覚。
3人の男の手に堕ち、不可抗力の状況で性感を昂ぶらされるというマゾヒスティックな気持ちも次第に強まる。
熱いラブジュースが股間を滴り落ち、太股に糸を引く感覚に順子は昇天が近いことを自覚せざるを得なかった。
0404名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:22:47.38ID:iywNz1SM
そんな順子に引導を渡すべく、久須美と林も卑劣な手段を企てる。
「いいねぇ、旦那の前で新婦順子のオナニーショー 披露宴のサプライズビデオを作ってやるぜ」
林がビデオカメラを向けてくる。
さらに久須美は妙な薬品を紙の上でライターの火であぶり、四肢の自由を奪われたままの順子の鼻下に差し向ける。
奇妙な香りが鼻孔を突き、次第に意識が虚ろになる。それとは正反対に宇佐美にいたぶられている股間を起点にして異様なまでの快感の波が押し寄せてくる。
「ハハハ、チョっぴりヤバ目の薬だが、新婚祝いにはちょうどいいだろ!? 思いっきり恥ずかしい声出して、旦那を愉します予行演習してやれ!」
「あ、あぁ・・・いッ、いひぃぃ〜〜ッ!!・・・」
相変わらず、宇佐美は快楽の源泉をつまんだり、扱いたり、膣壁をなぞったり、そしてバイブのように指を震わせ、花嫁の昇天を寸止めしたり・・・。
額に艶めかしく汗をかき、全身を熱らせ身悶え喘ぐウエディングドレス姿の順子はある種の妖艶さも放っている。
(ど、どうにかなりそう・・・ま、誠さん・・・ゆるして)
この恥ずかしく、ややもすれば、発狂してしまいそうな状況から逃れるためにはその性欲から解放されるしかない。
夫となる男に性欲を発散する姿を見られるのはこの上ない屈辱だが、これ以上弄ばれる姿をさらされるのは花嫁となる順子には耐えられないことだった。
「あッ、お、おねがい・・・い、いか・・・いか・・・いかせてッ!」
「ええ!? なんだって? 聞こえねぇな」
宇佐美の言葉に、他の2人の爆笑する。意地悪くも、宇佐美は順子を指コキから解放し、じらすように訊ねる。
「お、お願い! イカせてくださいぃ〜〜ッ! も、もうッ、我慢できませぇん〜〜ッ」
順子はまるで自分から快感を要求するように、大の字に縛られた肉体を捩り、己の愛液に濡れた恥毛を揺らし、腰を振る様にして催促するのだった。

室内に散乱するウエディングドレスの切れ端。その傍らで、一糸まとわぬ全裸で後ろ手に縛められた順子が、猛り立った林のペニスを口に含んで呻いている。
「ほらほら・・・イカせて欲しきゃあ、まずはちゃあんとしゃぶってもらうぜ」
性器を露出した林の前に跪かされた順子は抗うこともなく、その凌辱を加えた相手のシンボルを口に含んだ。
もはや、凌辱から逃れることを諦めたのか、己の性欲を満たして欲しいが為に忠実な性奴隷になったのかは分からない。
だが、目の前でそんなフィアンセの姿を見せつけられた夫の誠を打ちのめすには十分な姿だった。
高校時代から続く、順子への愛。そして命が尽きるまで共に生きるであろう彼女が、赤の他人の愛撫に悶え、性感を弄ばれ、快楽を求めた。
3人がかりで嬲られれば、責め手は強し、身は弱し。理屈では分かっていても順子の「アへ顔」は宇佐美の公言通り、女は子宮でモノを考える、という言葉そのものだった。
そうこうしている間にも、順子はオーガズムに達した林のスペルマを唇から滴らせ項垂れた。
「次は俺だぜ! 高校時代のサッカー部の美人マネージャーさんにしゃぶってもらえるなんて・・・ヘへへ、最高だね」
久須美の黒々とした性器が、順子の愛らしい鼻筋をなぞる様を見た誠は歯ぎしりをして縛られた身体を捩った・・・。
(こ、こんな奴らに俺の順子が・・・・)
しかし、彼になすすべはなかった。
0405名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:23:56.06ID:iywNz1SM
「やめろ、やめてくれぇ〜〜」
芋虫のように転がる満島誠はただ哀願するしかなかった。残酷にも誠の眼前で順子のレイプが今始まったところだ。
順子を抱きかかえるようにして、夫の方へ顔を向けさせ己の絶倫で「串刺し」にするのは無論、「新婦順子凌辱計画」の首謀者宇佐美だ。
「やめるわけにいかねえんだよ、満島! お前の花嫁さんに絶頂を味合わせる約束をしちまったからな」
黒々としたイチモツが順子の茂みを分け入り、夫となる自分以外のソレが侵入したことはなかったであろう聖なる場所に恨み嫌う男のシンボルが「領海侵犯」しているのだ。
卑猥な音を立てる結合部。それを目にし、耳にするだけで誠は嫉妬と悲しみで発狂しそうになる。
「はぁ、はぁ・・・ま、まこと・・・さ・・ん、あんッ、あッ、あッ、ああッ!」
順子は愛くるしい顔を甘く歪め、苦悶に首を左右に振りながら夫の名を呼ぶ。
「おら、順子! 気持ちイイ癖に、なんで旦那の名前なんか呼んでんだ!?」
宇佐美は激しいピストン運動で順子を突き上げ続けながらも、ほとんど息を乱さない。恐ろしいまでの精力がさらに誠を打ちのめす。
そのエネルギーに妻となる女が「感じている」のは事実だったためだ。
全身を汗ばませ、豊かな乳房は膨張し、その上で乳首は信じられぬほど勃起し、結合部からは互いの混じり合った液体が、宇佐美の太腿から床まで流れ落ちている。
それでも、順子が誠の名を呼んだのは、不可抗力で犯されているとはいえ、快感を覚えている自分ができる夫へのロイヤリティであろう。
その証拠に、順子は心底快感に身を委ねてはおらず、必死に何かをこらえる表情を時折見せる。
しかし、宇佐美はその2人の絆を断ち切るとどめの一手を打った。
「教えてやろうか、窪田? 高校時代お前を襲ったのは俺たちだが、それを命令したのは誰か?」
宇佐美の肉棒を秘部に戴き、身悶えていた順子も一瞬ビクンとする。そう、順子は高校時代にも彼らに犯されかけていた。その記憶を改めて蘇らせたのだ。
だが順子以上に誠はぎょっとした。そう、彼の青春時代に暗い影を落とす一つの出来事。常に笑顔に溢れていた順子との思い出の中で唯一後ろめたい過去。
今日、目の前で最愛の順子を嬲り者にされているにもかかわらず、無抵抗の理由。
「そこで転がっているお前のフィアンセ、満島誠だよ!」
「あッ、ああ・・・な、なんですって・・・」
呻きながら、絶句する順子。
「こいつ、お前との仲を深めたいとか何とか言って、わざと俺らに襲わせて、それを助けるっていうガキの漫画にも出てこないような筋書きを立てたんだよ」
「ああ・・・」
誠はすべてを失ったように、床に顔を伏せる。
「ほ、ほんと・・・な・・・の?」
順子の問いかけにも無言だ。それは事実と認めた証拠だった。
高校時代、付き合い始めたはいいが、なかなか本格的に進展しない関係に苛立った誠は、ワルと目されていた3人に順子の襲撃を依頼したのだ。
彼女を自分の手で守る強さを示すことで、2人の絆は深まると思ったのも事実だし、実際にそれが功を奏し今があるわけだが…。
「今夜の俺らの‘贈り物’は、本当は高校時代に渡す筈のプレゼントだぜ それがこんなにいい女になってから抱かせてもらえるとは、な へへへ」
そういい終えると宇佐美は順子を抱きすくめ、白い首筋に舌を這わせその愛らしい顔をねじると、背後から唇まで奪った。
さらに豊かな乳房をわしづかみにし、乳首を指で扱く。
「やめろ、ぉ〜〜頼むぅ」
絞り出すような声で哀願する誠。
「あぁ・・・」
だが、正反対に順子は甘い吐息をもらす。そんな高校時代のマドンナに興奮したらしく、宇佐美は激しいピストンを繰り返した。
「あ、あんッ!やぁんッ!ひいぃッ! はうッ、いッ、いッ、いいわッ!! ああぅあぁぁ〜〜ッ・・・」
くちゅくちゅという結合部の音、妻の漏らす甘い声、宇佐美の息遣い。すべてが誠を責め苛む。
罪悪感が消え失せたのか、順子はあろうことかピストンに合わせて自らも快楽を求める様に腰を浮かし、艶めかしく悶える。
その頬には潤んだ瞳から一筋の涙が漏れた。
0406名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 14:39:33.88ID:iywNz1SM
公言通り、絶倫を味合わされた順子は猛り立ったままの宇佐美のペニスを引き抜かれた瞬間、潮を吹き果てた。
おびただしい液体が、ジュワジュワッと噴出し、絨毯を濡らす様を見せつけられた誠は何かが自分の中で壊れていくのを実感した。
いたぶり尽くされ、床に投げ出された順子の太腿から湯気が上がる。尿道が緩んだのだろう、ハードなプレイにより失禁した証拠だった。
「おいおい、こっちはまだ一度もイってないのに、潮吹きとお漏らしかよ!?」
宇佐美はズボンをあげながら、嘲笑った。
「お前たち夫婦にはまだまだ借りがあるぜ いずれたっぷり楽しませてもらう そのためにもお前ら夫婦には幸せになってもらわなきゃな」
「そうそう、花嫁AVの主演にはマジで幸せな嫁でいてもらわないと実感が伴わないしね」
林がビデオカメラを片手に満足そうに笑う。3人の男はまだ、順子をそして誠をいたぶるつもりらしい。
「もっとも、俺らにここまで‘幸せにされた’順子を愛せれば、の話だがな」
宇佐美の言葉は単に妻を凌辱された男として、いや寝とられた男として認識させるのに十分な重みを感じた。
レイプの最中に見せた順子の艶やかな表情は間違いなくそれを物語っていた。(完)
0408名無しさん@ピンキー2012/12/30(日) 18:03:35.73ID:roXh00+U
鉄猫、やっと最後まで読み終わりました。
この作者の方。。。プロですよね?
職業作家の方ですよね?
文体といい、情景描写といい、更にはベッドシーンの艶やかさといい、そこいらのLN作家では及びもしない力量だと思います。
是非とも続編をお願いさせてください。
0409名無しさん@ピンキー2012/12/31(月) 11:50:03.76ID:gKESYwpm
鉄猫キタwww!GJ!
作者様いつもありがとうございます
良いお年を!
0410名無しさん@ピンキー2013/01/13(日) 11:16:34.28ID:5ID4Lv8u
鉄猫シリーズ、二人で一緒にお風呂入るところが読みたい。。。
0412名無しさん@ピンキー2013/01/13(日) 20:53:46.70ID:hSLU4m1h
2作目じゃなかったっけ?

雪子ちゃんがおはぎを職場に持って行って、鉄仮面と喧嘩する話。
04134102013/01/15(火) 23:17:06.71ID:/SRXv+Zp
>>411->>412
そうでした!
お風呂シーンを読み直して萌えてきたよ、ありがとう!
嫉妬する鉄仮面もよい
0415名無しさん@ピンキー2013/02/26(火) 12:53:55.86ID:p2cw0hap
鉄仮面達ってデートどこ行くんだろ?遊園地には行ってたけど、結婚後はどこにも行ってないんかな?
誘うなら雪子からだよね?鉄仮面が誘うの想像できん(笑)
健康にいいから森林浴とかか?(体の免疫力が上がるらしいから)
0417名無しさん@ピンキー2013/03/25(月) 23:11:01.57ID:FrBl1zcf
鉄仮面と子猫、やっと全部読んだ。泣いた
続き楽しみにしてます
0418名無しさん@ピンキー2013/04/06(土) 11:54:51.42ID:cmSZx6zm
鉄仮面と子猫の新作読みたい〜
作者さんはお忙しいんだろうか、

保守保守。
0419名無しさん@ピンキー2013/04/23(火) 06:24:56.21ID:21adz8tx
鉄仮面と子猫、短編投下します。
規制中のためロダに上げました。
下のURLからダウンロードしてお読みください。

ttp://firestorage.jp/download/4bdd6a2a10725270c55dbf769fd00d0f7ca21605

鉄仮面と子猫のシリーズは次回で完結予定です。
最終回の投下は5月中を予定しています。

読んで下さった方、ありがとうございました。
0420名無しさん@ピンキー2013/04/23(火) 12:54:52.56ID:YIv83e8p
>>419
GJ!
いよいよ終わりなのですか・・・最終回後も番外編とか希望したいです
0421名無しさん@ピンキー2013/05/02(木) 06:14:28.47ID:7EvDz8Yb
GJ!
終わってほしくないですwww!
0422名無しさん@ピンキー2013/05/07(火) 23:39:32.35ID:NFaAnUiG
>政略結婚で好きでもない男に嫁がされる薄幸の美少女
個人的に↑のシチュが見たい

男に身体中弄られ激しく突かれる中唇噛み締めてすすり泣きながら耐えてるようなの
0423名無しさん@ピンキー2013/05/31(金) 12:08:09.93ID:wSwko8It
鉄仮面と子猫の最終話投下します。
ロダに上げたので、下のURLからダウンロードしてお読みください。
パスワードは設定していません。

エロは1章のみとなります。
全6章になります。


鉄猫12「days」-1章「営み」
http://firestorage.jp/download/827b72802836bbcba300486836711e75e1ec8a97

鉄猫12「days」-2章「余命」
http://firestorage.jp/download/88b1cfa947b98dbd7b736d3d83080a4b30bd5353

鉄猫12「days」-3章「喪失」
http://firestorage.jp/download/c9f2f6a04344e061606b864d2b91ee057377d229

鉄猫12「days」-4章「予感」
http://firestorage.jp/download/6c3baa607f6d533682128003d38fa96046798a24

鉄猫12「days」-5章「写真」
http://firestorage.jp/download/68000c8e3971ac1d925f306fd3e0b36e2b5a39c6

鉄猫12「days」-6章「日々」
http://firestorage.jp/download/4549c227b1bda27bc8746b4b1080b738adf59051
0424名無しさん@ピンキー2013/05/31(金) 17:51:00.60ID:lnJQmbAq
いやぁ……泣いたわ。
涙なみだの最終話、作者さんお疲れさまでした!
本当にGJ!
また続き、番外編で鉄仮面と雪子ちゃんに
会えるのを切に願っています!
本当にありがとう!
0425名無しさん@ピンキー2013/06/01(土) 03:24:50.37ID:aJiBKKvi
>>423
一話からずっと拝読させていただいておりました。
長らくの執筆お疲れ様でした。
番外編など構想がありましたら是非お願いします。
0426名無しさん@ピンキー2013/06/01(土) 21:00:34.38ID:qmxWByFR
作者さん本当にお疲れ様でした
なんかこのスレの一時代が終わったみたいな寂しさがあります
エロも涙もある素晴らしい作品をありがとうございました!
0427名無しさん@ピンキー2013/06/02(日) 02:26:06.56ID:wHO6KDV5
うわあぁぁ
泣きました、ホントにこの作品に逢えてよかったです。
鉄仮面が雪子ちゃんが、周りの全ての人たちが
いとおしいです。

作者さまお疲れさまでした。
ありがとうございます。
感謝と出逢えた喜びに乾杯です
0428名無しさん@ピンキー2013/06/03(月) 02:42:38.75ID:Pc8kp3rO
最初の投下からほぼ6年間、ずっと楽しみに読み続けてました
笑いあり涙ありエロありのこの作品に出会えて本当によかった。もう子猫も立派な親猫じゃないか

長い間お疲れ様でした
鉄仮面と子猫たちの物語は一生忘れない
0429作者 ◆IyXS.0zNHsKv 2013/06/03(月) 23:44:26.62ID:iipD8rKt
温かい感想レスありがとうございました。
皆様のお蔭で遅筆ながら完結にこぎつけることができました。

番外編は、いくつか考えておりますので、少し時間がかかるとは思いますが、
完成した際にはまたお付き合い頂けると嬉しいです。
永い間、本当にありがとうございました。
0431名無しさん@ピンキー2013/07/25(木) NY:AN:NY.ANID:uw2kSh3V
保守
0433名無しさん@ピンキー2013/10/22(火) 21:19:43.21ID:aj3QOIQ4
保守age
0434名無しさん@ピンキー2013/11/02(土) 12:31:19.66ID:kZpO0r4K
途中までしかできてないんだが、長くてエロが遠い上にエロ薄いんだけど…需要ある?
04364342013/11/04(月) 23:22:23.86ID:WzuDQ3+B
>>435
仰る通りだ。

投下させていただきます。長い、エロ遠い、エロ薄いの三重苦ですので、
必要に応じて「434」をNGでお願いします。
04374342013/11/04(月) 23:24:41.91ID:WzuDQ3+B
 西洋哲学の祖、ソクラテスは言った。

《結婚せよ。良妻なら幸せになれる。悪妻なら哲学者になれる》

 この言葉の解釈は、それこそ星の数ほどもあるだろうけれど。
僕からしてみると、結局、男は結婚して悪いことが無いんじゃないかと思ってしまう。
 もちろん、その解釈に意見をしたいという人は沢山いるだろう。青二才が何を偉そうなことを、と思う人もいるかもしれない。
そう感じた人には心から謝りたい。決して、結婚に対して楽観的な印象を持っているわけじゃないんです。本当に。
 ただ…女の人は、結婚したら、どうなるんだろう。
僕の、大事な大事なお嫁さんは、幸せだと思っていてくれているだろうか。
04384342013/11/04(月) 23:28:22.41ID:WzuDQ3+B
 篠原葵がお嫁さんと出会ったのは、もう十二年も前の話になる。
 葵は十五歳。高校受験を控え、皆がラストスパートの追い上げを図っている十一月の頭頃。
 普段から、出張や海外出張で家を空けることが多い共働きの両親が、やたら神妙な顔つきで彼を呼んだのが、ことの始まりだった。
 揃って正座した両親が話した内容をざっくりまとめると。
「親友一家が事故っちゃって娘一人を残して逝っちまった。しかもじいちゃんばあちゃんもいないらしい。遠い親戚一同からも疎まれてるっぽいから、我が家に迎え入れたいんだけど駄目でしょうか」
 重い経緯with両親の土下座。二人とも、三つ指をついて額を床にこすりつけてる。
 これ駄目って言ったら僕は人でなしじゃねぇかとやさぐれたかった。

 こんなわけで、街中がイルミネーションに彩られる十二月の中ごろに、二歳年下の妹としてやってきたのが、木村茜。
 後の葵のお嫁さんである。――どこのエロゲだよと思った人は是非とも握手をしていただきたい。
 葵も、まさか自分がエロゲの主人公と同じ立場になるとは思っていなかった。

 茜は、元々の性格に加えてこれまでの経緯もあって、それはもう大人しい、手のかからない良い子だった。
 受験だのなんだのでピリピリしていた葵に負担をかけようとせず、以前よりも家にいることが増えた両親との関係も良い。
 葵も、茜が大人しくしているのをいいことに、受験時はひたすら勉強に打ち込み、合格が決まってからは我慢していた本を読み漁り、
 高校に入ってからは、充実した蔵書これ幸いとばかりに下校時間ぎりぎりまで図書館にこもってばかりいた。
 当然ながら級友から変人という呼称を頂いた葵であるが、彼以外にも妙な生徒はわりといた上に、
 自然とたまっていった知識を当てにされることも多かったので、そんなに嫌な思い出も無い。

 今となっては、ああもう僕の大馬鹿野郎SHISHUNKIなんてさっさと乗り越えろよ! と頭を抱えたい葵であるが、
 高校一年の途中まで、彼と茜の関係はそれはもう薄っぺらなものだった。
04394342013/11/04(月) 23:32:35.38ID:WzuDQ3+B
 
 そんな関係に変化が出たのは、夏休みに入ってしばらくしてからだった。

 当時中学二年生である茜は陸上部に所属していた。
 最初のうちは、これ以上迷惑をかけられないと帰宅部のまま家事を一手に引き受けようとした彼女だったが、両親がそんな理由を許すはずが無く。
 葵も、家事は苦手ではないし、折角の学生時代を好きなことに費やせないのは辛いよねと思ったので、三対一で彼女の部活所属が決まったのだ。
 閑話休憩。

 陸上部の練習は、大体週に五日のペースで行われていた。
 昼間の猛暑にやられないため、午前八時から昼前までの午前練習を行うことが多かった。
 午前中走り回って疲れ果てて帰ってきた彼女に、ご飯を作れなんて言うのはあまりにも酷だろう。
 そう思って、彼女が部活の日は、本を読む以外にやることがない葵が、昼食を始めとする家事全般を引き受けていた。
 なので、茜の帰宅時間も大体把握していたのだが。

 その日、茜は、帰ってくるのが遅かった。
 最初のうちは、友達と盛り上がっているのかとか、練習が長引いたのかと思っていた葵だが、時刻が一時半を回った辺りでおかしいと思った。
 茜が、なんの連絡も無くこんなに遅くなるなんてあり得なかったからだ。
 それから葵は、家から学校までの通学路を中心に、脇道や、お店や、公園などをしらみつぶしに探しまわった。
 恋愛小説とかだと、探す側が「…もしかして、あそこに…!」なんてとんでもない察しの良さを発揮することがあるが、葵には無理だった。
 というかあんな察しの良さを発揮できる人間なんているのか。いや、いない…と思いたい。

 散々駆けずり回り、ようやく近所の神社の社の前で膝を抱えている彼女を見つける頃には体中汗でびしょびしょで、
 我ながら随分と情けない格好だっただろうなと昔の自分を振り返る。
 正直なところ、炎天下の中歩き回った上に疲れていたので、見つけ次第怒鳴ってやりたくて仕方なかったが。
 肩を寄せて縮こまっている姿や、葵に気がついて、弾かれたように上げた涙が滲んでいる目を見てしまうと、なんというか。

 笑ってほしいとか、傍にいたいとか、守りたいとか。

 そんな、今まで思ってもいなかった感情が込み上げてきて、何も言うことができなかった。

 これが、葵と茜の馴れ初め話だ。
 この時から彼の世界の中心は茜になって、色々諸々山があって谷があって、彼女と夫婦になることができた。
 お互いの仕事も上手くいってるし、お嫁さんは毎日毎日可愛いしで、僕は本当に幸せ者だと葵は思う。
 しかし同時に、幸せであればある程、考えてしまう。
 家族に会いたいと、声を押し殺して泣いていたあの時の女の子は、少しでも、幸せだと思ってくれているのかと。
04404342013/11/04(月) 23:37:10.45ID:WzuDQ3+B
「…熱っ」
 答えのない答えを探していたからだろうか。
 ことこと煮込んでいるシチューの鍋にうっかり触れてしまって、葵は思わず苦笑する。
 昔のことに意識をとらわれすぎだ。
「葵? どうしたの、大丈夫?」
 うっかり漏れた声が聞こえたのか、お風呂上がりの茜が心配そうな目を向けてきた。
 上気した顔がなんとも色っぽい。
「鍋さわっちゃった。なんてことないよ」
「…そう?」
「そう。僕のことはいいから髪乾かしておいで。飯食おう」
 そう言って蓋を開けると、ホワイトシチューの香ばしい香りが部屋中に広がった。
 茜は、わぁ、と嬉しそうな声をあげて洗面所に引っ込む。

 お互いの仕事との兼ね合いもあって、現在、家事全般は葵が受け持っていたりする。
 在宅可能な翻訳家である葵と、市役所で働いている茜とでは、家事を担う負担は大分違うからだ。
 葵自身は、家事は好きだし茜も喜んでくれるからと不満を感じてはいないのだが、茜曰く「妻の立場が無い」とのこと。
 翻訳の仕事が安定するまでは世話になりっぱなしだった上に、休日は手伝ってくれてるんだから十分だと葵は常々思っているのだけれど。

 少し味付けを変えてみたシチューは好評で、茜が後片付けをしている間に風呂も入り、
 今日も素晴らしい一日だった、とソファに腰掛けた葵に、甘えた様子のお嫁さんが体重を預けてきた。ああ、可愛い。
 肩辺りで切りそろえられた黒髪を撫でてみたら、心地よさそうに目を閉じる。
 こうやって、何を話すでもなく一緒にいるだけで気持ちが安らぐ相手なんて、茜くらいだ。
「…ありがとな、茜」
「…急にどうしたの」
「いや…なんか、言いたくなった」
 なぁにそれ、と笑う姿に頬が緩む。
 キスがしたくなって顔を寄せると、茶色の瞳は恥ずかしそうに伏せられた。もう何百回もしてるというのに初々しい反応は変わらない。
 もしかすると、彼女は一生こうなのだろうか。それとも、ある程度年がいったら落ち着くのか。
 …実際に確認してみないと何とも言えない。また楽しみが増えた。
「ふぁ…葵…」
 たった一度、唇同士を触れ合わせていただけだというのに葵を見上げる顔は熱を帯びている。
 その反応に気をよくして額や頬にも口付けた。唇をなめるとぴくりと反応するのが面白い。
 ねだるように舌先でくすぐっていたら、少々ためらった様子で受け入れられる。
「ふ…ぁ、ん…あお、い…」
 甘えた声で名前を呼ばれて、今すぐに組み伏せたい衝動が湧きあがってきた。
 落ち着け、と自身に言い聞かせる。乱暴するのはよろしくない。

 後頭部を支えながらじっくりと口内を味わう。
 歯列をなぞったり上あごをくすぐったりしていると、最初のうちは遠慮がちだった茜も積極的になってきた。
 お互いの唾液を交換するようなそれに、抱きしめている体も熱くなる。もう無理だ。抱きたい。
04414342013/11/04(月) 23:41:30.55ID:WzuDQ3+B
「っは…はぁ、ふ…」
「茜、いいか?」
「っ……一々、聞かなくて、いいってば」
「ん」
 場所は変えてという希望に従って、若干腰砕け気味の茜と共に寝室へ向かう。
 なるべく優しく横たえた上に覆いかぶさると、期待と不安がないまぜになった瞳が見上げてきた。
「…明日、出かけるって約束覚えてる…?」
「せっかくのデートを台無しにする気はないよ」
「私、本当に、買いたいものがあるんだからね?」
「分かってる」
 尚も念押ししようとする彼女に口付けてみたら、ずるいというように困った顔になる。
 敢えて気にせずに、耳を撫でたり頬を撫でたりキスしてみたり。段々力が抜けて、とろんとした目つきになってきた。
「……かわいいな」
「そ、んなこと…言わなくて、い、ひゃんっ」
 わざと乳首に触れるように胸をこすってみると可愛らしい声が上がる。
 うらみがましい視線には気付かないふりをして、服の上から優しく撫でる。
 大きくはなく、されども小さくもない、形のいい柔らかいおっぱいだ。とても可愛い。
「っ…は、葵、あの…ふぁ、ぅ…」
「ん、どした?」
「あの…ひぁっ、っ…!」
 言いたいことは何となく分かる。服の上からだと物足りないんだろう。
 とはいえ、おねだり無しに聞いてあげるつもりもない。
「茜、言いたいことがあるんなら、ちゃんと言わないと」
「わ、わかって…あんっ」
「僕は鈍感だからな。言ってくんなきゃ分かんないぞ」
「う、うそつきぃ…!」
 嘘じゃないというに。まったく。そんなことを言う子はこうだ。
「ひあっ!?」
 少しだけ強く乳首をつまむと、我慢しきれなかったのか甲高い声が上がる。
 すぐに両手で口を覆った茜だが、乳首を押しつぶすようにこねてみたらぎゅうっと目をつぶった。
 ぷるぷる震えるのが可愛いなぁと思いながらパジャマの背中側に手を入れる。
 なめらかな肌の感触を楽しんでいると、泣き出しそうな目で葵を見つめた。
「あ、葵…」
「どうした?」
「あ、の…ぅ…ちょく、せつ…さわって…?」
 ……茜にしては頑張ったほうか。
「ぁあっ! あっ、や、ひぁん!」
 ボタンをはずし、露にされた胸にしゃぶりつく。
 あいているほうの胸も手で愛撫すると、体全体がしっとりと湿ってきた。
「あっ、やっ…あお、葵っ、も、ふぁっ」
「うん。我慢しないでいいよ」
「やんっ! あっ、あっ、葵っ、あお、ふっ、っ〜〜!」
 自身の名を呼んで大きく震えた茜の頭を撫でる。
 荒い息をついていた彼女は、とろりとした目のまま、甘えるようにすり寄ってきた。
 右手で幼子にやるように撫でながら、もう片方の手でズボンと下着も取り払うと、茜は恥ずかしそうに身をよじる。
「ぅ…葵も脱いでよ…」
「茜が脱がせてよ」
「……ちょっかい出さないでね?」
 その約束はできないなぁ。

 胡坐の間に彼女を座らせ、ボタンに手を伸ばす茜を抱きかかえる。
 中高大と続けた陸上の影響か、習慣になっていて今更やめられないと続ける週一のランニングの影響か、はたまたその両方か。
 彼女の体はしっかりと引き締まっていて、瑞々しい張りと成熟した健康的な美しさを兼ね備えている。
 夫の贔屓目をなくしたとしてもきれいな身体だ。

 背中や腰なら手の動きを妨げはしないだろう。
 ぴたりと吸いついてくる感覚を楽しみながら撫でていると、たまりかねたのか、茜が非難めいた声を上げる。
04424342013/11/04(月) 23:46:55.15ID:WzuDQ3+B
「っ…ぅ…もう、葵っ…!」
「んー?」
「ちょっかい…んっ、出さないで…って、ぁんっ…いった、のにぃ…!」
「出してないじゃないか」
「ふぁっ…せなかっ…弱いの、ゃんっ!…ぁ…知ってるでしょっ!?」
 もちろんですとも。開発したの僕だし。とは言わずに背骨のラインを撫で上げた。
 艶めいた声の合間に、もう馬鹿とか、ずるいとか、中々なことを言ってくれる。
 黙らせてやろうと口付けると、一瞬抵抗があったもののすぐに背中を掻き抱いてきた。
 ちゅうちゅうと吸いあって、舌を絡め、茜の目の焦点が危うくなった辺りで口を離す。
 ぼうっとしたまま胸元に寄り掛かってくる茜の口周りは互いの唾液でべたべただ。
「今日は、茜のこと、めいっぱい甘やかしたいんだ。上だけで十分だよ」
「…いつも、あまい、でしょぉ…」
「そうだったか?」
「私だって…葵に、気持ちよくなってほしい、もん」
「じゃ、我慢できなくなったらな」
 これ以上理性を飛ばすようなことを言われてはたまらない。
 ふるふると瞳を揺らす茜を押し倒し、抵抗になっていない抵抗をいなして陰部に口を寄せた。
「まって、あおい、そこはだめっ」
「ダメじゃないダメじゃない」
「だめだって、まっ、ぁっや、ぁぁぁあああっ!」
 陰核を口に含んだ瞬間、甘い甘い悲鳴が上がる。
 痛みを感じないように唾液を絡ませながら舌で刺激すると、より多くの蜜が溢れ出てくる。
 嬌声を上げ、強すぎる快感から逃れようと身をよじる茜を巧みに押さえつつ、葵は秘部に指を当てた。
 ぐちゃぐちゃに濡れているそこは、指を軽く当てただけで切なげに震える。
「…相変わらずすごいな」
「やぁっ! そ、そこでしゃべんないでえっ!」
「ごめんごめん」
 詫び代わりに中指を差し入れると熱い壁が絡みついてきた。同時に茜の背も弓なりになる。
「ふぁ…あぁああっ!?」
 ぎゅうと指が締め付けられて、知らずのうちに満足げな笑みを浮かべた。
 指を入れただけでこの歓迎ぶりである。本当に可愛らしい。
「…ぁ…はっ…ぁあ…」
「またいっちゃった?」
「ん…ぅ…あおくん…」
「っ……!」
 普段は呼ばれなくなった愛称を愛おしげに呟かれ、葵の分身は一気に熱を持った。
 いや、決して、今まで興奮していなかったわけではないのだが。
 今までの茜の痴態で、葵自身の理性もいい具合に壊れかけていたのだが。

 なんでか分からないけど愛称呼ばれると弱いんです。分かってやってるかは不明だけど。

 そんな内心を知ってか知らずか、茜は蕩けきった笑顔を浮かべる。
「…ね、あおくん…ほしい、な…?」
 想像していただきたい。
 可愛い可愛い嫁さんが、普段の清楚な姿からは想像できない淫らな姿で、嬉しそうに微笑んで、己を欲してくれたのである。
 これで理性が飛ばない人間がいるだろうか。
「……あかね」
 引き千切りかねない勢いで身に着けていたものを取っ払い、縋るように手を伸ばす彼女を抱きしめて秘裂に自身を差し入れた。
「ふぁっ…あ、あ…」
「っ…熱い、な…」
 肉のひだに柔らかく誘いこまれ、火傷しそうなほどの熱に思わず声を漏らす。
 膣内は怪しく蠢いて、蕩けそうな快感を葵に与えた。
「はぅ…あおく…きもち、いい…?」
「…すごくきもちいい…」
「よかったぁ…」
04434342013/11/04(月) 23:51:57.11ID:WzuDQ3+B
 だからそんなに嬉しそうな笑顔でそんな可愛いことを言うなと。
「……辛かったら、言ってくれな」
 額に口付けを落とし、腰を奥まで突き入れる。
「う、んんっ!? あっ、あおくん、ふゃ…はげし、よぉっ…!」
「痛い、か?」
「だいじょぶ、だけどっ! やっ…だめ…あぅ、やぁ…!」
 ぎゅうとしがみついてくる茜の背に腕をやり、抱え込むようにして抱き起こす。
 身体の奥まった部分を突き上げられ、悲鳴じみた嬌声が上がった。
「やぁぁああっ! あおくっ、ふかい、ふかい、よぉっ!」
「っ…あかねっ…!」
「んあっ、あっ、ひゃ、ぁぁあぁあっ! そこっ、そこだめぇっ!」
「ん…ここ、だな?」
「あぁぁぁああああっ!」
 膣全体から与えられる快感に意識が持っていかれそうになるのを必死で堪え、快感から逃れようと身をよじる茜を逃がすまいと抱きしめる。
 雁首で弱い部分を擦るようにして突きあげると、茜はいよいよ切羽詰まった悲鳴を上げた。
「あおく、も、きちゃうっ! きちゃうよっ…あおくんっ!」
「っは…あかね、好きだ…!」
「―――!」
 瞬間、彼女の中が大きく震えた。
 声にならない悲鳴を上げ、全身でしがみついてくる茜を抱きしめる。
 愛しい男の精を受けようと蠢く膣からの刺激に、耐え切れず、最奥で果てた。



「……葵は、ずるいと思います」
「なんでですか」
 事後特有の穏やかな気だるさに浸っていた葵は、不意に言われたいわれのない不満に目を瞬かせた。
「だって。家事完璧だし、仕事だって出来るし、頭もいいし、性格もいいし、……床上手、だし」
「おお、それはよかった」
 恥ずかしそうに言われた言葉に頬を綻ばせると、茜は首元に額を押し付ける。どうやら照れているらしい。
「…ほんとに、ずるいよ。私だって葵に夢中になってほしいのに」
「僕はとっくに君のものだぞ?」
「そういうことをサラッと言わないの!」
「……事実なのに」
「もう!」
 ぐりぐりと額を押し付けられて、これは黙っていたほうが吉かなと口を閉じた。
 何やら可愛らしい理由で膨れているらしいお嫁さんを抱きしめて、あやすように背中を撫でる。
 しばらくの間そうしていると、心地よかったのか疲れたのか、小さな寝息が聞こえてきた。
 安心しきった寝顔に頬が緩むのを感じながら毛布を肩まで持ちあげる。

 茜が幸せでいてくれるか。そんなことは、本人にしか分からないんだから。
 僕にできるのは、一生かけてこの子が笑顔でいられるよう努力すること、だろうなぁ。

 いやはや先は長いなと微笑んで、葵も静かに目を閉じた。
04444342013/11/04(月) 23:54:04.08ID:WzuDQ3+B
ここまで!

情熱的な旦那さんに愛でられるお嫁さんが書きたかったんですが、なんだか違う気がしてなりません。
ともかく、お目汚し失礼しました!
0445名無しさん@ピンキー2013/11/05(火) 10:06:03.36ID:9yBVw23o
おつー
過去編が気になるといえば気になるけどそれよりもデート編が気になります
また投下してもらえるとありがたいです
0446名無しさん@ピンキー2013/11/05(火) 15:58:57.71ID:t9G+HJcA
葵×茜夫婦を支援。
初めは葵→女?と思ってしまった。
このスレしばらく停滞してたみたいだけど
これを機に活性化するといいね
04474342013/11/06(水) 21:14:41.23ID:C/NzZpEQ
レスありがとうございました。デート編ができたので投下します
設定は作りつつも一話完結のつもりで書いたので、こういうレス頂けると有り難いです
すっきりまとまってしまったのでエロはありません。NGは「デート編」でお願いします
0448デート編2013/11/06(水) 21:17:22.18ID:C/NzZpEQ
 日の出にはまだ時間がある午前五時。
 目を覚ました葵は、僅かに残る眠気を振り払いながら身を起こした。ひんやりとした初秋の空気が身に沁みる。
 隣で熟睡中の茜が冷えぬよう毛布でくるみ、手早く衣服を身に着けて伸びを一つ。さぁ、仕事開始だ。

 ベッド脇の机に腰掛けてスタンドライトの灯りをつける。
 寝ている人、主に茜が眩しくないよう工夫されているそれの光を、葵の方がもろに見てしまって思わず目を押さえた。目が、目がぁー。
「……お、慣れてきた」
 よし今度こそ仕事開始だ。

 他の人がどうしているのかは分からないが、葵は、仕事を依頼されている時は基本的に休み無しで毎日机に向かっている。
 …というと、仕事狂いとのお言葉を頂戴することが多いが、決してそういうわけではない。原文を日本語に落とす作業だけならば、
 一日二時間、長くても四時間以内で終えることがほとんどだ。
 もちろん、翻訳上必要な本を読んだり、日本語の推敲をしたり、細々とした事務作業を行ったりもしているので、
 一日の仕事時間が二時間から四時間だなんて言うつもりはない。だが、仕事狂いと呼ばれるほどの時間でもないだろう。

 現在訳している本はスペインの小説だ。初めて手掛ける続き物なので、思い入れの強い作品の一つでもある。
 作者は陽気で朗らかな中年女性。葵、という名前を聞いて「まぁ! GENJIの葵ね!」と大喜びした人リストにも名を連ねている。

 職業柄外国人の知り合いも多い葵だが、"Aoi"のスペルを見て、すぐさま葵の上を連想する人が多いのは流石小説家というところか。
 もっとも、良い名だねと褒めた後に「葵の上は女性じゃなかった?」と疑問符を飛ばす人も多いけれど。
 茜に好きだと言われるまで、光や薫は有名すぎるとしても夕霧や惟光をもじれなかったのか、
 いや葵の上からもらったんじゃないって知ってるけどさ、と落ち込んでいた身としては、中々に心にくる質問だ。
 いつも「葵は中性的な名前なんだ」と誤魔化している。

 少し息をつくと窓の外は明るくなっていた。日が昇ったようだ。少しだけカーテンを開けると、柔らかい朝日が差し込んでくる。
「…………」
 茜が眩しくないよう気をつけながら窓の外の空を見上げた。素晴らしい。快晴だ。
「…おし。もうちょい頑張るか」
 すやすやと眠る茜の頬を撫でて、もう一度机に向かう。
 今日はデート。仕事はちゃちゃっと終わらせてしまおう。
0449デート編2013/11/06(水) 21:22:22.92ID:C/NzZpEQ
「わぁ…。すごい人だね」
「土曜だし、天気もいいからなぁ」
 最寄りの駅から電車で二十分。様々な種類の店舗や娯楽施設が集まっている地域にやってきた二人は、道行く人の多さに目を白黒させた。
 駅前ということもあるだろうがこの人の多さは予想外だ。
「買いたいものっていうのは?」
「えっと…あのビルの中のお店で売ってる」
「分かった。行こう」
 そう言って茜の手を握ると頬を染めて控えめに笑う。
 もー初心だな可愛いなと内心悶えつつ、二人は連れ立って歩きだした。

 ビルに入ったはいいものの"買いたいもの"の内容は秘密らしいので、一時間後に入り口前で待ち合わせをした二人は早々に別行動を取っていた。
 てっきり敬老の日のプレゼントかと思っていた身としては少々拍子抜けだ。
 別行動はいいとしても、秘密とはなんだ秘密とは。仮にも僕は旦那さんだぞ。…いや、そういうこと言って束縛する気はないけれど。

 なんとなく釈然としない気持ちを抱えていた葵だが、ワンフロア丸々使った本屋に足を踏み入れた途端にそんな感情は吹っ飛んだ。
 広い本屋さんである。久しぶりの広い本屋さんである。新品の本がてんこ盛りの広い本屋さんである。
 別に何かを買う予定はない。単純に、大量の本がある場所が好きなのだ。
 古本屋のように少しくたびれた趣のある本屋もいいが、新品の本で満ちている溌剌とした雰囲気の本屋もいい。
 あまりにマニアックだと理解しているので賛同者を求めたことはないにしても、葵は本屋や図書館という空間が大好きであった。

 小躍りしたいほどうきうきしながら本屋を巡っていると、いつの間にか約束の時間の五分前になっていた。
 流石は本屋。ずーっといても飽きがこない。
 ついうっかり見つけてしまった戦利品を手にして入口に戻る。
 今月の小遣い残額がほとんど無くなってしまったが、良い本には変えられまい。

 内心ほくほく顔で待ち合わせ場所に向かった葵だったが、
「……む」
 お嫁さんの背中のみならず、彼女に絡む、やたらにちゃらちゃらしている男どもを見つけて顔をしかめた。ええい言い辛い。
 顔を見るでもなく困りきった様子の茜に歩み寄り、チャラ男Aが彼女の手に触れる前に肩を抱き寄せる。
「わっ…」
「…ん? なんだよおま」
「失礼。妻が何か不作法でも?」
 人の嫁さんにちょっかい出すな。今すぐ失せろ。

 怒気を纏った葵の言葉にチャラ男どもは表情を引きつらせる。
 駄目押しでにっこり笑ってやると、なにやらもごもご口を動かして去って行った。
「…来るの遅くてごめん。大丈夫だったか?」
 男どもが退散するのを確認してから茜の顔を覗き込む。
 強張っていたであろう表情は、葵の顔を見ると安心したようにゆるりと綻んだ。
「…大丈夫だよ。ありがとう、葵」
「ん。…ったく、ナンパするにしても指輪くらい確認しろってんだ」
「まぁまぁ。葵が助けてくれたんだからいいじゃない」
「僕が来なかったらどうする気だったんだよ」
「本屋さんまで全力疾走、かな?」
 ……確かにそれならなんとかなりそうだ。というか実際になんとかなったことも結構ある。
 反論できずに口を閉じた葵を見て、茜は楽しそうな笑顔になった。
0450デート編2013/11/06(水) 21:26:41.08ID:C/NzZpEQ
「そういえば、買いたかったものは買えた?」
 折角だからお昼は家で作りづらいものを、とお好み焼き屋の暖簾をくぐった二人は、賑やかな店の中で向かいあって座っていた。
 楽しみだなぁと嬉しそうにしていた茜は葵の質問に笑顔で頷く。
「最後の一個だからぎりぎりだったけど、ちゃんと確保できました、隊長殿」
「うむ、よくやったぞ。任務遂行ご苦労だった」
「いいえ。お付き合い頂き、光栄の至りと存じます」
「気にするな」
 即興の小芝居に笑いながらも、心には僅かなしこりが残る。
 茜の全てを把握したいなんて馬鹿げたことを思っているわけではないが、あえて内密にされると逆に気になってしまうのだ。
 茜のことだからと思う反面、わざわざ秘密にするなんてとも思ってしまう。
 あー嫌だなこの感じ、と心中で頭を振って、一度だけ聞いたら大人しく引こうと決意する。が。
「…あの」
「お待たせしましたー。ネギ豚玉と山芋モチでーす」
「ありがとうございます」
 ナイスなタイミングで店員のにーちゃんに遮られ、茜の嬉しそうな笑顔も見てしまい、結局尋ねることができなかった。
0451デート編2013/11/06(水) 21:30:02.75ID:C/NzZpEQ
 一抹の懸念材料はあったものの、海や山や公園ばかり行く二人にしては珍しい街デートである。
 いつまでも気にしてデートを台無しにするのは避けたかったので、葵は腹を決めることにした。
 デートは楽しむ。茜との時間を大事にする。秘密の内容は帰ってから聞いてみて、それでも内緒だったらもう何も聞かない。
 一度定めてしまえば後は簡単だ。にこにこと嬉しそうに笑いっぱなしの茜に手を引かれながら、

「見て、葵。きれいな石!」
「本当だ。トルコ石にラピスラズリ…お、あっちの方に色々ありそうだよ」
「行ってみよう!」
 アクセサリー兼石屋を覗いてみたり、

「…なんで僕の服なんだよ…」
「似合いそうなんだもん。ね、着てみて?」
「りょーかい…」
「……あ。葵、これも」
「え。…ズボンですか」
「内側はこれね」
「えっ。あ、はい」
「……うん。葵、あと、これも着てみて」
「おお? えーと…」
「それが終わったらこれねー」
「ちょ、ちょっと待ってください茜さん!」
 茜の着せ替え人形にされてみたり、

「うーん…どれがいいかな…」
「……茜なら、こっちかな」
「え? …派手じゃない?」
「似合ってるよ。職場にも着て行くならこっちも良いけど」
「あ、これも可愛い」
「…うん、似合ってる。その上着に合わせるなら…スカートはこれとか」
「わぁ…。…素敵だけど、私、スカートは十分持ってるからなぁ…」
「ならパンツスタイルでもいいかもね。えーと…これはどう?」
「…いいかも。あ、でも待って、こっちも着やすそう」
「確かに」
「うー、どうしよう…?」
「……よし。あの、ここにあるの全部頂けますか」
「待って葵それはだめっ!」
 茜の服も選んでみたり、

「……どっちにしよう……」
「どれとどれで迷ってるの?」
「抹茶あずきと黄粉あずき…!」
「…それ迷う要素あるかー?」
「抹茶と黄粉は大分ちがうよ…!?」
「さいですか。…すみません、抹茶あずきと黄粉あずき、一つずつください」
「えっ」
「かしこまりました!」
「はんぶんこで、ね」
「…うん!」
 クレープを買ってみたりする。中々に年相応なデートコースではなかろうか。
0452デート編2013/11/06(水) 21:34:38.04ID:C/NzZpEQ
 少し休憩をと最初の駅から大分離れた公園のベンチに落ち着いた二人は、そろって安堵のため息をついた。
「あー、流石にちょっと疲れたね」
「うん…こんなに人が多いとこ来たの久しぶりだし…」
「まったくだー…」
 あー空が青いと目を細める葵に微笑んだ茜は、近くに人がいないことを確認して、深呼吸をひとつ。
 太陽燦々ーと伸びをする旦那さんに向き直る。
「ね、葵。あの…今日、買いたかったもの、なんだけど」
「うん?」
 あちらから切り出されるとは思っていなかったので少々慌てて姿勢を正す。
「……これ。葵にどうかと思って、買ってみたの」
「へ。僕に?」
「うん。…開けてみてくれるかな」
 差し出された手のひらほどの包みを受け取る。
 包装を破らないよう注意して開けてみると、小さな箱には銀色の懐中時計が収まっていた。
「茜、これ…」
「その…ほら。葵って、腕時計付けるの好きじゃないでしょ?」
「そうだね。仕事中とか邪魔だし」
「でも時間の確認は大事だから仕方ない、って言ってたよね」
「タイムセールとかあるからさ。…あ、もしかして、だから懐中時計?」
 細いチェーンがついている時計を手に乗せる。
 艶消しの加工がされているシンプルなデザインのそれは、初めて持ったとは思えないほど手にしっくり馴染んだ。
 これならば、首からかけるなり服に結ぶなりして、ストレスなく身に着けることができるだろう。

「…これは嬉しいな。ありがとう」
 顔をくしゃくしゃにして笑う葵を見て不安げだった茜も目を輝かせる。
 実はもう一つプレゼントが、と彼女が鞄の中から取り出したのは紙で作られた栞だった。両面に一輪ずつ押し花がされている。
「ナデシコと…紅葉葵、か?」
「うん。秋らしくて良いかなと思って」
 自分の名の由来である花と、秋の七草のひとつである白い花が押されている栞だ。どう考えても市販だとは思えない。
「これ、茜が作ってくれたのか?」
「花屋さんに調度良い花があったから。栞、たくさんあっても困らないでしょ?」
 喜んでくれるかなと思って。
 そう言って、恥ずかしそうに笑う。
 そんな彼女に、心の端に引っ掛かっていたわだかまりは消え、代わりにどうしようもない程の情愛が込み上げてきた。
 この気持ちを伝えきれる言葉が見つからない。何度か口を開閉した葵は、堪えきれずに茜を腕の中に閉じ込めた。
 公共の場でいちゃつくのは好きではないが、ほんの少しだけ許してもらいたい。だって、茜が、愛おしいんだ。
「ひゃっ!? …あ、葵…?」
「……茜」
「う、うん。…どうしたの?」
「…あかねっ…」
「…うん。私はここにいるよ、あおい」
 かみしめるように名を呼ばれ今すぐにこの熱を移してやりたい衝動にかられるも、辛うじて、ここは公の園だ落ち着けド阿呆! と理性が働いた。
 息を大きく吸ってはいて、密着していた体同士を引き離す。
「…本当にありがとう、茜。大切にするよ」
「うんっ」
「…そろそろ帰ろうか。日も落ちてきたし」
「烏も山に帰るもんね」
「その通り」
 にこにこと笑いあいながら立ちあがり、それから、と茜の耳元に口を寄せる。
「帰ったらたっぷりお礼するから。覚悟しといてね」
 とびきり甘く囁いて口付け一つ。
 真っ赤になって固まったお嫁さんの手を引いて、我らが家への帰路に付いた。



 紅葉葵の花言葉「温和」「優しさ」
 ナデシコの花言葉「純愛」「思慕」
04534342013/11/06(水) 21:37:24.27ID:C/NzZpEQ
ここまで!

ご期待に添えたか分かりませんが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです
このスレの活性化を切に願って
0455名無しさん@ピンキー2013/11/07(木) 11:36:49.41ID:q1O+gC1X
おつです。ありがとうございます
落ち着いた雰囲気が心地よかったです
04574342013/11/22(金) 20:36:06.76ID:v97jgs2u
いい夫婦の日なので投下
いい夫婦の日なのに暗めな話ですが
エロまで遠い、エロが薄い、ちょいちょい暗めなので注意してください
NGは「いい夫婦の日」でお願いします

エロいエロが書けるようになりたい
0458いい夫婦の日2013/11/22(金) 20:38:10.01ID:v97jgs2u
両親が事故で亡くなったという知らせを聞いた時、茜は、悲しむより泣くよりも先に、これからどうしようと途方に暮れてしまった。

自分が親族から疎まれるだろうと予想はした。
親戚同士の仲が悪かったわけではないが、盆と正月に挨拶をし合う程度の付き合いしかしておらず、
ただでさえ引っ込み思案な茜は特別目立つ子どもではなかっただろう。
そんな子どもを、自分たちの生活を崩してでも受け入れようという人はいないだろうし、事実、そんな変人は親族内にはいなかった。
それが非情だと思ったことはない。皆、自分の生活を守るので精一杯なのだ。
茜の今後について話し合う親戚の大人たちを、こんなに面倒くさい存在を抱え込んじゃっておじさんたちも大変だなぁと、
他人事のように眺めている自分がなんだか可笑しかった。

だから、葵の両親が茜を引き取ると言いだした時、この人たちは何を言っているのかと呆れてしまったのだ。
血の繋がった人でさえ敬遠したい自分を、ただ両親と仲が良かっただけの他人が引き取って娘として面倒をみるなんて。
訳が分からない。この人たちが何をしたいのか分からない。
思考の冷静な部分ではそう思っていたけれど、同時に、ぽっかりと穴が空いてしまった家にひとりで暮らすのも限界だった。
だから、何があっても大事にするから私たちの子どもにならないか、と聞かれて、反射的に頷いてしまったのだ。
今思えば、お父さんとお母さんに向けた呆れには、自分へのものも多いに含まれていたような気がする。

親戚をどう説得したのかは分からないが、茜の養子入りはトントン拍子に進んでいった。
両親のお骨と最低限必要な物だけを持って、昔ながらの日本家屋風な家の玄関に立ったのは、街全体がクリスマスムードに包まれている12月の中頃。

「…し、失礼します…!」
「ん、こんにちは。…あ、いや、違うな。おかえり、か」

ガッチガチに緊張していた自分に柔らかく笑いかけた、ひょろりと背の高い男の子が後の旦那さんになるなんて。
当時の茜は想像すらできなかった。
0459いい夫婦の日2013/11/22(金) 20:42:31.82ID:v97jgs2u
正直に言うと、出会った当初は葵のことが苦手だった。
読書が異様に好きな変な性格の愛息子だと聞いていたし、今年度受験だから普段以上に変だと思うんだごめんなと事前に言われていたが、それでも。

「あ、葵さん、おはようございます」
「おはよう。…なぁ、なんでこの国の受験ってのはこう、知識を詰めるだけ詰め込んだヤツが勝つ仕組みになってるんだと思う?」
「えっ…? え、ええと…物知りで困ることはないから、とか…?」
「物を知っていても使う技術がないとなんの意味も無いのに? 使う技術を伸ばさずに好きでもない勉強をするなんて、おかしくないか?」
「え、ええと…そうかもしれない、ですけど…」
「こら、葵。受験のフラストレーションを身内に当てるな」
「……ごめん」
 あんなことや、

「た、ただいまっ! 葵さん、お疲れ様でし…あれ?」
「茜おかえりー。葵なら、これでようやく本が読める! って部屋に篭もってるわ。悪いけど放っといてあげて」
「…あ、はい…」
こんなことや、

「ただいま」
「葵さん、合格おめでとうございます! 今夜はお祝いですよ!」
「ええ? 別にいいよ、大したことじゃな」
「葵! お祝いをって言ったのは茜なんだぞ」
「えっ、あっ…ご、ごめん。…ありがとう、嬉しいよ」
「…はい…」
そんなこと、

「葵さん、高校ってどうで…ど、どうかな?」
「蔵書がいっぱいあるな」
「蔵書…? え、えーと、クラスの人とか…部活とかは?」
「クラスは男が17人で女が18人。部活は、運動部が10個、文化部が17個」
「…えーと…葵さんは、なにかやらないの? 文芸部とか…」
「僕は本が読みたいんだ。書きたいわけじゃない」
「そ、そっか…」
はてはこんなことまで。
なんというかまぁ、両親からも変人認識されているだけはある。
攻撃的になられたりいじめられたわけではないし、変な人と思いつつ嫌いでもなかったが、当時の茜は葵との間に薄い膜のようなものを感じていた。
0460いい夫婦の日2013/11/22(金) 20:45:05.41ID:v97jgs2u
その膜がいつ破れたかといえば…やはり、中学二年の夏休みだろう。

その日は、確か、練習が少しだけ早く終わったのだ。
これでご飯が食べられるやったねと友人と笑いあい、いつもの曲がり角で別れた後、何故だかいつものようにまっすぐ帰る気にならなかった。

真夏の焼けつくような太陽から逃れるように、篠原家の近くの、長い階段を上った先にある神社へとたどり着いた茜は、空気の清涼さに驚きつつ社の前に腰を下ろした。
残っていた飲み物で喉を潤し、火照った体を風に撫でられるままにしていると、上手く表現でいない気分になった。
鎮守の木々の隙間から見える空はどこまでも青く高くて、そういえばパパとママが骨になった日もこんな空だったなぁと思いだして、
そこで、今まで堰止められていた何かが決壊した。


泣いた。生まれて初めてだと思うくらいに激しく泣いた。最初は声を抑えていたが、それもできなくなって声を上げて泣いた。
ぼろぼろと零れる涙が妙に大きいとか、鼻が詰まって息ができないとか、涎と鼻水が喉の奥で絡まって気持ち悪いとか、
口から漏れる声が、人間というよりは動物の鳴き声みたいだとか。そんなことばかりを考えていた。


それからどのくらいの時間が経ったのか、泣き疲れて、立ちあがる気もしなくて、ただぼんやりと目を閉じていた時。
このまま死ねたらいいのになぁ、なんて思っていた茜は、社内の砂利を誰かが踏みしめる音で現実に引き戻された。
ハッとなって顔を上げると、全身汗だくで、肩で息をしている葵が数メートル先に立っていた。

なんでここにとか、そう言えば連絡してなかった怒られるとか、なんだか疲れてるなんでとか、しまったすっかり忘れてたとか、
今思えばわりと散々なことで思考を埋め尽くした茜を、けれど、葵は黙ったまま見つめていた。
完全に混乱して固まってしまった茜だったが、葵が何故だか表情を緩め、何も言わずに隣に腰掛けたので、
あぁこのままいていいんだと心が落ち着かされた。

暫くの間、二人の間には沈黙が降りていた。いつもなら、葵と一緒だと緊張してしまっていた茜も、この時は不思議と安心していた。
葵から、お父さんとお母さんに会いたいか、と尋ねられた時も、心の中は凪いだまま、会いたい、と素直に言葉にすることができた。
そうだよな、と頷いた彼が不器用な手つきで目元を拭うまで、自分が涙を流していたことにも気付かなかった。

空が鮮やかな夕焼けに染まっても、茜と葵は社の前にお互いに黙ったまま座っていた。
帰ろう、と差し出された手を握った時は、ああ、私は帰っていいんだと、胸の中が一杯になった。
茜のものよりも大きい筋張った暖かい手や、あおくんって呼んでいいと尋ねたら返ってきた優しい笑顔が、心の奥深くに刻まれた気がした。


多分、この時から、茜は葵のことが好きになっていたのだろう。その感情に気付くのは大分遅くて、それでも今は、葵が隣にいてくれる。
私はすごく幸せ者だよね、と茜は常々思っている。そう、思っているのだ。……思っているのだから、

「ただいまー。…葵ー?」
「…あ゛ー…あかね…おかえりー…」
「…葵? どうし……」

仕事から帰ってきたら、大好きな旦那さんが血まみれの左手を布巾で抑えて台所の床に寝っ転がっていたなんて修羅場に遭遇しても、甘んじて受け入れるべきなのだろうか。
0461いい夫婦の日2013/11/22(金) 20:49:31.51ID:v97jgs2u
半泣きになりながら手当てをしたところ、幸いなことに傷は指先だけであった。
それに心底安堵しつつも、大分深く切ってしまったのか血が止まらないので、翌日病院に連れて行ってきちんとした処置を受けてもらい、
ようやく茜は人心地がついた。
なんのことはない。料理をしていたら指を切ってしまって、止血処置や料理に被害がいかないようにしていたら貧血を起こしたという、
終わってみればただの笑い話だったのだが。
「…本当に、大事がなくて、よかった…」
「ご、ごめんな…?」
しかしそれでも、茜にとっては一大事である。
帰宅後も、葵の代わりに家事をこなしつつ、リビングにもお風呂にも挙句トイレにもついてこようとした茜に、葵は内心苦笑していた。
彼女がそうなる理由は何となく分かるのでうっとおしいとは思わないが、なんというか、
料理中に考え事をしていた自分は迂闊だった。反省。
「痛くない…?」
「大丈夫だよ。痛み止めも飲んだし、念のために化膿止めももらったし。きれいに切れてるからくっつくのも早いだろうってさ」
「……よかった」
安心した様子で首元にすり寄ってくる茜を撫でる。

折角良い夫婦の日だからご馳走を作って喜んでもらおうと思っていたのに、失敗だ。
チキンライスが血筋ライスになるのを阻めても、茜が落ち込むのを阻めなくては意味がない。
心配かけてごめんな、と額に口付けると、お返しとばかりに鎖骨にキスを落とされた。
あーやばい幼児返りしてるこの子、と内心焦る葵には気付かずに、茜は手足を絡ませ唇も寄せてくる。
葵の首や鎖骨や腕や指にちゅうちゅうと吸いつくその姿は、劣情を煽るのが目的というよりは、
大事なものがちゃんとあることを確認している子犬のようだが、こちらからしてみれば、それはもう。

――めっちゃくちゃそそられるんだけど、駄目かなぁ。……駄目だよなぁ。

ただでさえ、茜の身体に負担をかけないよう、欲望を全開にするのは月に一回までと我慢しているのだ。
今月は、それこそ、良い夫婦の日にでもしようかな丁度金曜だし、と妄想、もとい計画を膨らませていたのである。
自業自得とはいえ、お預けされているところにこの刺激だ。葵の理性も体も限界だった。

「…っ…あ、葵、あの…えと…」
「……ごめん」
完全に元気になってしまった愚息が茜の下腹に当たる。
畜生空気読めよ僕ー…と内心涙目になった葵の一方で、茜は、頬こそ赤らめたもののくっついていたい欲求が勝り身動きが取れずにいた。

葵に触れていたいんだけど彼はそれだけじゃ満足できなさそうで、それならとは思うものの
お医者さんから二、三日は激しい運動を控えてくださいと言われており、
指先とはいえ葵が怪我をしているのにそういうことをするのも気が引ける。
が、当の葵は物欲しそうな切なそうな目をしているのだ。

どうしようどうしよううーん…と考えて、あることを思いついて、恥ずかしいけど葵が喜んでくれるならと目を合わせる。
0462いい夫婦の日2013/11/22(金) 20:52:57.07ID:v97jgs2u
「…葵…あの…えっと…。……きょ、今日は私がする…よ?」
「…いいのか!?」
「……うん。だから、葵は動かないで、ね」
真っ赤になりながらもそろそろと自身に覆いかぶさった茜に、葵の方もなんだか気恥ずかしくなって二人揃ってゆでだこ状態になってしまう。

基本的に茜を可愛がるのが好きなので、いわゆる女性上位の体勢には免疫がないのだ。
女は奉仕させてなんぼ派の友人からは童貞思考だと笑われることが多いが、人の好み、特に性嗜好なんて人それぞれだと思うのだ。
童貞思考の何が悪い。茜泣かせるくらいなら人に笑われる方が万倍もマシだ。

――駄目だ混乱してる落ち着け僕素数を数えろえーと1、2、3…てこれは整数だ!

大分愉快な脳内になっている葵だったが、遠慮がちに寄せられた茜の唇に意識が奪われる。
ついばむような口付けがもどかしくて右手で後頭部を撫でてみると、一瞬だけ体が強張って、小さい舌が恐る恐る差し込まれてきた。

葵の真似をしているのか、たどたどしい動きで上あごや歯列をくすぐられる。
お世辞にも技巧があるとは言えないが、この上ないほどの興奮を呼び起こされた。
「ふ…んぅ…は、葵…」
普段とは異なる状況に興奮しているのは茜も同じだ。
いつもは優しく少し意地悪く自身を翻弄する葵が、
さほど上手くもないであろう茜に身を預け、受け入れている姿は、彼女に奇妙な喜びと興奮を与えた。
もっと自分を感じてほしくて頬や耳の後ろをくすぐってみると心地良さそうに微笑まれる。
それが嬉しくて茜も頬を綻ばせた。

深い口付けを交わしながら葵の寝間着のボタンを外していると、自分のものも同じように肌蹴させられていた。
あちらは片手のはずなのに、相変わらず器用な人だ。
下から見上げられているという恥ずかしさは思考の外に追いやって、引き締まった胸や腹に口付けるとくすぐったそうな声が漏れる。
舌先でくすぐるようになめてみたら若干表情が強張った。止めないなら嫌じゃないんだよねと自分を励まして、
へそ周りの腹筋を指や舌で確かめながら下も取り払うと、猛々しくそり立った怒張が目に飛び込んでくる。
「……すごい、ね。おっきい…」
「茜、君、分かって言ってんのぅあっ…!」
血管が浮き出てびくりびくりと震えているそれに手を添えると葵が悲鳴を上げた。
痛かったのか、と視線を向けると、困ったような情けないような熱っぽい複雑な表情をしている。
その表情は彼が気持ちいい時に見せるもので、茜はますます嬉しくなった。
0463いい夫婦の日2013/11/22(金) 20:57:01.35ID:v97jgs2u
「えっと…たしか…」
「っ…! 茜あのさいきなりそこはっ…!」
「え、い、嫌だった?」
てっぺんが気持ちいいんじゃなかったっけ、と慌てると、心底情けなさそうに眉を寄せる。
「…いや…気持ち良すぎてすぐに出ちゃうんで、できれば避けてもらい、っ…!」
気持ちいいなら嫌なことはないだろう。

竿をしごきながらもう片方の手で亀頭を撫でる。
ぬるぬるとした液を擦りつけるようにしてみると、葵は何かを堪えるように眉根を寄せた。
茜は、こういう風にされるとすぐに達してしまうのだが、それは葵も同じらしい。
一緒だ、とまた嬉しくなって、手のひらで包むように撫でてみると、焦ったような声の直後に熱い白濁液が飛び出してきた。
「わっ…わぁ…」
どくりどくりと吐き出されるそれを両手で受け止める。
生臭いにおいがツンと鼻をつくが、葵が気持ちよくなってくれた証なのだと思うと愛おしい。
どんな味がするんだろうと口をつけるよりも早く、射精の余韻で荒い息のままの葵が手早く拭き取ってしまった。
「…なんで拭いちゃうの…」
「そんなもん、舐めんでよろしい」
「そんなもんじゃないもん…赤ちゃんのもとなんだよ?」
「……分かったから」
何やら疲れた様子の葵に首を傾げると、上半身を起こした彼の膝に招かれる。茜も服を脱いでしまったのでお互いを遮るものは何もない。
触れ合った素肌の心地よさに目を細めたら優しく口付けられた。

「…んっ…葵、今日は…わたしが、やるの…」
「分かってる。でも、ちゃんと解さないと」
「も…濡れてるから、いいよぉ…」
「ちょっとくらいは僕にもやらしてくれ。好きなんだ、茜のえっちなとこ見るの」
「……もぅ」
言葉を交わす合間にも、葵の右手は優しい愛撫を与えてきて、茜から抗う気を奪ってしまう。
葵を責めながらも彼の反応に興奮して、茜の秘部は既にはしたなく潤いを帯びているのだ。
撫でるような優しい愛撫も普段以上に感じてしまい、茜はたまらず葵に縋りついた。
それを待っていたかのように今度は背中や腰がくすぐられて、再び熱を持ち始めた剛直が自身の秘裂と擦りあって、
もどかしい快楽に自然と腰が動いてしまう。
「…茜。声、聞かせて」
「っ…や、だぁ…!」
「可愛いから、聞きたいんだ。駄目か?」
返事をしたら漏れてしまいそうで、口を結んだまま首を振る。
耳元で囁かれるのはどうもよくない。
普段よりも低い熱っぽい声に、耳の奥から脳全体までが愛撫されているような心地になってしまうのだ。とてもよろしくない。

ぴちゃぴちゃと互いの愛液で湿った音をたてる秘部や、絶妙な加減で理性を引きはがす葵の手に、
いつの間にか茜の思考は普段のように追いつめられていた。
ずっと我慢していた声も、亀頭で入口をくすぐられたのを皮切りに、我慢しきれなくなってしまっている。
「や…ん…あお、いっ…も…へいき、だからぁ…!」
「だから?」
「ぅ…ぁ…いれ、て…なか…いれてよぉ…」
これじゃあ足りない、と泣きそうになる茜に口付けて、葵自身待ち望んでいた繋がりを得ようとする。
やはり、こうやっておねだりされるのは嬉しいものだ。
0464いい夫婦の日2013/11/22(金) 21:01:06.75ID:v97jgs2u
しかし、ついうっかり彼女のお尻を両手で持ち上げようとしたのがいけなかった。
肌とは違う感触に理性を取り戻した茜は、大慌てで葵の両手を押さえつける。
「だ、だめっ! あおくんが、いれちゃ、だめ!」
「まて、茜、ここでお預けはお互い拷問だぞ!?」
「分かってるもん! わたしが、いれる…から…!」
「いやちょっと待て、そんなへろへろで支えなしに入れちゃ」
まずい、と言い終える前に、入れるというよりは滑り込ませるような動きで茜が葵を受け入れる。
だが、彼女の体からは力が抜けきっており、足腰も立たない状態でそんなことをしてしまっては、当然、
「ひっ、ゃ、ぁぁぁぁああ!?」
「う、あっ…!!」
お互いの愛液を潤滑液にして、剛直は膣の奥深くまで咥えこまれる。

焦らされた茜の身体は全身を貫くような刺激を耐え切れず絶頂に達し、
熱くうねる膣壁に痛いほどきつく締めあげられた葵も我慢の甲斐なく果ててしまう。
絶頂の余韻も感じぬままに子宮に精液を注ぎ込まれ、茜の目の奥で火花が散った。
「…ぁ…ぁ…」
「っは…はぁ…あかね、大丈夫か…っ!」
意識が半ば朦朧としている茜の一方で、彼女の身体は更なる喜悦を貪欲に求めている。
根元から雁の先端まで全てをしゃぶるような膣の動きに、柔らかくなりかけていた葵の分身も再三硬く立ち上がる。
「…ぁ、やあっ!? あ、あおくっ…わたし、へんだよぉっ! なんで、とまんないっ…やだ、あおくんっ…!」
怯えの混じった悲鳴に、今すぐ茜を組み伏せ、蕩けるような柔肉を味わい尽くし、
子種を欲しがる彼女の奥に溢れるほど注ぎこんでやれと本能が喚きたてた。
そんなことしてたまるか馬鹿野郎、と暴力的なまでの衝動を無理矢理捩じ伏せ、自身の身体に怯える茜を抱きしめる。
「あかね、だいじょぶだ。へいき、だから」
「やだ、あおくん…やだよ…やだぁっ…」
「あかね。あかね、大丈夫、だから。僕の声、聞こえるか?」
「ぅあ…ひ、や…あお、くん…あおくん…!」
「うん、そうだ。…あかね、大丈夫だから…ちょっとだけ、任せてくれ」
こくこくと頷いてしがみついた彼女に口付けて、せめて葵の体温は感じられるようしっかりと抱きしめる。
大丈夫とか、任せてくれとか。偉そうなことを言ったけれど、葵自身も、もう限界だった。

「っ、あぁぁぁあああっ!」
「くっ、う…!」
茜を押し倒して奥まで押し上げる。彼女の中が再び蠢いて、互いの愛液がぐちゃぐちゃに混ざり合った。
それでも腰の動きは止めずに奥へ奥へと突き上げる。
悲鳴じみた嬌声の合間に縋るように名前を呼ばれた。ほんの少しも離れたくなくて、茜の身体を押さえ込む。
何度も何度も名前を呼ぶと、彼女の中が、腕が、足が、離さないとしがみついてくる。


何度絶頂を迎えても、まだ足りないとお互いを求めた。
もう何回達したのか分からなくなって、互いの名が唯一意識を留める止め具になって、感覚も分からなくなってきた頃。
「―――っ!」
ようやく最後の精を放った葵は、それを受け止めてぶるりと震えた茜の上へと倒れ込む。

大きく息をする肩を腕の中に抱え込んだら、安心したように笑いながら目に涙を滲ませるなんて器用なことをする彼女に、自然と葵の頬も綻んだ。
0465いい夫婦の日2013/11/22(金) 21:08:23.06ID:v97jgs2u
「…結局、動いちゃったね」
「動いちゃったなぁ」
次の日。

完全に足腰立たなくなった茜と共に、ベッドで食事なんて行儀が悪いことをしている葵は、しょんぼりと呟かれた言葉に苦笑を返した。
動くなという医師の言いつけを破った代償は、幸いにも血がそれなりに滲んだ包帯の交換だけで済んだ。
シーツに付いていなくて本当に良かったと思う。
どれもこれも全て自業自得であるし、茜にもそう言って一応納得してもらったのだが、
自分の責任で無くとも葵が怪我をしているのは嫌なのだという。僕のお嫁さん可愛い。
「……痛くない?」
「大丈夫だよ。それより、茜の方が辛いだろ?」
「うん…でも、私はうれしいから」
 ……僕のお嫁さんかわいい!

心の中で歓声を上げつつ、ツナトーストを茜の口元に持っていく。パクリと一口。表情は浮かない。
「あーかーね。そんな顔してたらおいしいものもまずくなるぞ」
「葵の作ってくれたものはなんでもおいしいもん」
「カップラーメンでも?」
「買ってきたお惣菜でも」
それはまたちょっと違うんじゃないかと思いつつも、そこまで言ってもらえて悪い気がするはずない。
だが、茜が落ち込んでいるのに葵ばかりが喜んでいるというのも嫌だ。
とはいえ、こればかりは彼女が自力で落とし所を見つけなければいけないから、葵がどうこうできることでもない。
さて困ったどうしよう、と腕を組んだ葵を見て、茜は小さく微笑んだ。
「…でも、うん。命は無事だし、あーんなに激しいのも平気なくらい元気なんだから、大丈夫かな」
「ん? うん。そりゃもう、元気ですよ。今すぐプロレスごっこできるくらいにはな」
「それは嘘でしょ」
「…ごめん嘘」
茜ほどではないとはいえ昨日のはかなり来ましたはい。
素直に頷くと茜は楽しそうに笑い声を零す。

よかった、一応落とし所が定まったみたいだと頬を緩ませる葵の左手を茜が撫でる。
傷付いている指も、そうでない指も、丁寧に。
「……葵は、いつも、一緒に悩んでくれるもんね。私がどんなにうじうじしてても、急かさないで、待っててくれる」
「うん? …そうかな?」
「そうだよ。…葵のそういうとこ、私、だいすき」
甘い声で柔らかい笑顔でそんなことを言われて、瞬時に首まで真っ赤になった葵に、茜は楽しそうな笑顔を向けた。
04664342013/11/22(金) 21:15:05.88ID:v97jgs2u
ここまで!

過去話編はもう少し待ってもらえると助かります
構想はできかかってるんですが、エロを入れる場所がない…!
拙い話ですが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです
0467名無しさん@ピンキー2013/11/22(金) 21:18:32.63ID:DcH9Iazt
リアルタイム遭遇ktkr
茜が可愛すぎて、葵が羨ましい限り。
投下お疲れさまです。新作、また読めるのを楽しみにしてます。
04694342013/12/15(日) 15:02:10.79ID:6I6I97Bn
過去話編を保存してたUSBが水にポチャンしてついカッとなったので投下します
…猫は悪くない。水の近くに置いた俺が悪い。
相変わらず長い、エロ遠い、エロ薄いの三重苦ですので
NGは「ある日の喧嘩」でお願いします
0470ある日の喧嘩2013/12/15(日) 15:06:00.12ID:6I6I97Bn
 僕にとって本がどういうものなのかを説明するのは難しい。

 覚えている一番古い記憶でも本を読んでいた。
 夏の暑い日、今よりもっと大きい蝉時雨や家の中を駆け抜ける爽やかな風に包まれながら、僕は縁側に寝そべって、分厚い図鑑をひっくり返していた。
 様々な動物の絵や写真、そしてその下に書かれている不思議な記号を見ているだけで満足だった。
 それが何を意味しているのかは知らなかったけれど、見たこともない動物の姿や、
 きっとこの生き物を説明しているのだろうと予想がつく、羅列してある記号を眺めるだけで十分だった。 

 小さな世界だ。誰も知らない、僕だけの世界。

 今でも、心のとても深いところに入って来る本を読むと、僕の魂はあの場所に飛んで行く。
 寒い冬の日だろうと、座り心地の良い椅子に座っていようと。どんなところにいたとしても、僕は、暑く爽やかな空気に包まれて、縁側に寝そべっていた。
 イ草の匂いや青々とした深緑の匂いが鼻孔をくすぐる、蝉がつがいを求めてわんわんと声を張り上げる、あの世界で。


 だから。…いや、だからなんて言葉を使うのは、言い訳か。

「――もう! 葵は、私と本の、どっちが大事なの!?」
「…………へっ?」

 今にも泣き出しそうなほどひび割れた茜の声が、透明に透き通った雫を湛えた明るい茶色の瞳が、
 僕を呼んでいたことに、まったくもって気付けなかった。
0471ある日の喧嘩2013/12/15(日) 15:11:06.88ID:6I6I97Bn
「…あ、あかね? あの、えと…どうした?」
「どうしたじゃない! ちゃんと返事してよっ!」
「え…ご、ごめっ…え、あれ…返事…?」
 完全にご立腹の茜の姿を見て僕はうろたえた。どうしよう、全然、申し訳ないくらい茜が怒っている理由が分からない。

 茜に話しかけられていた記憶はある。相槌を打っていた記憶もある。
 というか、お風呂あがったから葵もどうぞ、って言われて、分かったありがとう読み終わったら入る、って返事した記憶がある。
 返事はした。それは確実だ。僕が茜を無視するなんてあり得ない。

 ただ――茜の瞳は、彼女の表情は、間違いなく傷付いていた。

 大急ぎで茜に焦点を合わせる。
 本の世界に入りこんでいた自分を引っぺがして、僕の目の前で、自分自身の口から零れた言葉に愕然としている茜の手を掴んだ。
 本を脇に置いて、膝の上に茜を招き入れる。茜は少し身じろぎしたけれど、一度名前を呼ぶと大人しくなった。
 今度はちゃんと見れるように、心半分気もそぞろではなく、全身全霊で彼女を感じられるように、茜と目を合わせる。
 すぐに俯いてしまった瞳には、怯えと、怒りと、緊張と、驚きと、それから、隠しようのない疲労が滲んでいた。

 そういえば、と夕食時のやり取りを思い出す。
 最近忙しくて、職場の人たちもストレスがたまっていて、全体的にピリピリしているのだと零していた。
 茜がこんなことを言うなんて珍しいな、と思っていたから、思いきり本に集中した直後の今でもすぐに思い出せたのだ。
 ……そうじゃない、いつも通りの話なら、きっと思い出せなかっただろう。
 そんな自分を苦々しく感じる一方で、それでもこれが僕なのだと受け入れるしかない。とにかく、今は、茜のことだ。

「…茜、ごめん。ちゃんと話を聞いてなかった」
「……うん」
「本に夢中になってた。…決して君をないがしろにするつもりはなかったけど、結果的にそうなった。本当にごめん」
「……いいよ。いつものことだもん。…本を読んでる葵は、…嫌いじゃないし」
 眉根を寄せる僕の首元に額を預けてきた。きりきりしていた雰囲気が少しだけ和らぐ。気を鎮めようとする深い呼吸が首に当たってくすぐったい。
 茜の背中を撫でながら、触れ合っているほっぺをくっつける。
「…僕にとっては、本は水で、茜は食べ物なんだ。…比べられない。ごめんな」
 本当は、嘘でも茜の方が大事だって言うのが正解だろうけど。
 そんなことをするのは、本にも、茜にも、とてつもなく失礼なことのような気がして言えなかった。…いや、そう思うのも甘えかもしれない。

 僕の言葉を聞いた茜は、額を擦りつけてくる。見方によっては首を振っているようにも見えた。
 両腕に縋りついている手に力が込められる。
「…ごめん、ね」
 僕は驚いた。茜が謝ることなんてあっただろうか。
「なんで茜が謝るんだ」
「…あんなひどいこと、言いたくなかったのに」
「酷いことって?」
「……私と本のどっちが大事なの、なんて。すごく嫌な言葉」
「いや…それだけ、僕が追いつめちゃったんだ。茜は悪くないよ」
「言っていいことと悪いことがあるよ。…ごめんね、葵。私…なんだか、すごく疲れちゃってて」

 甘えるように唇が求められて一瞬だけ躊躇してしまう。僕のしたことをキスで誤魔化すようで。
 いやいや他でもない茜が求めてくれたんだからと自分を納得させて口付ける。茜は嬉しそうに微笑んだ。
 背中や頭を撫でながら、頬に額にと唇を寄せるとくすぐったそうな声を上げる。
 雄々しくつりあがっていた眉が下がり、瞳は柔らかで優しい光を取り戻した。もう一度互いの唇を触れ合わせる。
 緊張と不安が混ざっていた空気はとうに霧散して、穏やかで落ち着いた、思いやりに満ちた空気が僕たちを包んだ。
「今日は早く寝よう。急いで風呂入って来るから、少しだけ待っててくれるか?」
「……一緒に入っちゃ、だめ?」
「……僕の理性はそんなに強くないぞ」
「我慢しなくていいから」
「…疲れてるんだったら、やめといた方がよくないか」
「くっつきたいの。…やさしく、してくれれば平気、だから」
 駄目なんて、言えるはずがなかった。
0472ある日の喧嘩2013/12/15(日) 15:15:10.24ID:6I6I97Bn
「…本を読み終わった後の葵って」
 湯船に浸かったまま、浴槽の縁に両手を置き、更に両手の甲の上に顎を乗っけたままこちらを見ていた茜は、ぼんやりのほほんとした声を上げた。
 スポーツドリンクも飲んだし、念のために浴槽内にも持ってきたから脱水症状ではない筈だ。単純に力が抜けているのだろう。

「んー」
「…ちょっとだけ、苦手かも」
「ん゛ん゛!?」
 なんだって、と髪を洗う手を止めて茜を見ると、ゆったりと微笑んで、暑さのせいではない熱を秘めた視線を返してくる。
 上気した頬や薄い桃色に染まっているしなやかな肢体とも相まってとてつもなく色っぽい。
 普段の、可愛らしさが残るものとはまた違う、蠱惑的で妖艶な姿に心臓が跳ね上がった。茜がこんな表情をするなんて。
 そう感じる一方で、心の底から大好きなお嫁さんに面と向かって苦手と言われた僕は、わりと、いやかなり、落ち込んだ。
 表情と言葉の落差とも相まって、どうにもこうにも、困ってしまう。顔に出たのか、茜が笑みを深くした。
 わぁどうしよう凄く色っぽい。
「早く洗って? のぼせちゃうよ」
「あ、はい…」
「なんで敬語なの」
「いやなんとなく」
 ばしゃり。頭からお湯を被ったら少しだけ落ち着いたような気がする。
 動揺しているのが表にでているのか、茜は楽しそうに笑っているだけでそれ以上の言葉を続けようとはしなかった。

 手早く体も洗い終えて、茜を後ろから抱きしめるようにして湯舟に浸かると、甘えるようにもたれかかってきた。
 僕とは違う、柔らかくて滑らかな肌が心地良い。
「なぁ、茜、さっきのってどういう意味だよ」
「んー…さっきのって?」
「本を読み終わった後の僕が苦手だって」
「…んー…」
 彼女のお腹前で組んだ両手に自分のものを重ねた茜は、僕の手をなぞるように優しく撫でた。ゆっくり、言葉を選んで話しだす。
「…葵って、本を読むとき、すっごく集中してるでしょ?」
「そうだな」
「その時って多分…他のことは、何にも考えてない…というか、考えられないんだと思うの」
「…そうだな」
「あ、責めてるわけじゃないよ。そうやって集中してる時の葵って、すごく…かっこいいから。
 それに、集中してても、私が話しかけたらちゃんと答えてくれるでしょ?」
「茜だからね。他の人じゃ、多分、気付けないよ」
「知ってる。…葵、自分がもてないって思ってるみたいだけど、違うからね?」
 …なんで今の流れでそんな言葉が出てくるんだ?

「…まぁいいや。だから、えーと…何を言おうとしてたんだっけ…そうそう、目だよ。葵の目」
「目? 僕の?」
「うん。凄く集中して本を読んだ後の葵って、目が、澄んでるの。
 きらきらしてて、でも落ち着いてて、静かで…私のことなんて、何もかも見通してるんじゃないかって思っちゃうくらい。
 それに、その目をしてる時の葵は、いつも以上に鋭いんだよ。
 きっと、本の世界とこの世界が混じりあって、普段は見えないものも見えてるんだと思う」
 茜の声は弾んでいた。まるで、自分の宝物について一生懸命説明している子どものように。
 頬に口付けて彼女の顔を覗き込む。僕に笑いかけた茜の顔こそきらきらと輝いていた。
 もう一度口付けて、右肩に顔を預けたら頬擦りされる。…かわいい。
「…葵は、本の世界も生きてるのに、私はこの世界だけだから。ちょっとだけ不安なの。
 でも、最後には必ず、私に気付いて、帰ってきてくれるのも分かってるんだ。
 …だから、本を読んだ後の葵はちょっと苦手だけど、それ以上に、好き」

 ――好きだよ、葵。
0473ある日の喧嘩2013/12/15(日) 15:19:26.79ID:6I6I97Bn
 柔らかい慈しみと愛おしさに満ちた声で、歌うように囁かれて、どうすればいいのか分からなくなった。
 機能を停止した思考と理性は放り投げて、心のままに茜を抱きしめる。楽しげな笑い声が鼓膜をくすぐった。
「……ひどい殺し文句だ」
「いつもいつも言われてる私の気持ちが分かった?」
「僕は、言ったことない、はず」
「無自覚って怖いね」
「…大体、自分の目がそんなことになってるなんて、知らなかったよ」
「役者は舞台全体を見ることはできない。葵が言ったんだよ?」
「……茜の仕事が落ち着いたら、温泉でも行くか」
「いいの?」
「当たり前だ。…茜、僕は、君が望むなら出来る限りを尽くすぞ?」
「分かってるよ。遠慮してたんじゃなくて、思いつかなかっただけだから。…これで仕事も頑張れるな」
「無理はしないでほしいけど」
「もぅ、分かってるってば」
 言葉とは裏腹に、茜の表情は明るいままだ。唇を頬に寄せて、次いでふわふわの耳たぶを食む。もらす吐息に熱が宿った。

 耳から首、うなじ、背中へと舌を這わす。柔肌に少し強めに吸いつくと抱きしめている体が震えた。
 両手を胸に寄せたら右手が抱きかかえられる。ちゅ、と音を立てて吸いついてきた。
 くすぐったくて笑い声を零したら、何を思ったか、人差し指を口にくわえた。
 指の形や関節を確かめるように舌を絡めてくる。茜のもらす息が熱くて甘くて、たまらない。
「…茜」
「ん…ふ…ぁ…」
「茜、好きだ。愛してる」
「わたし、も…」
「ん」
 左手で胸元をくすぐりながら背中に唇を寄せる。
 何度も吸いついて赤い痕を散らすと、その度耐えるように指に歯を立てて、すぐに謝罪を込めて舐められた。
 全然痛くないから平気なのに。この間切った指先だって、完全にくっついてからもう時間が経つのだから。

 時折うなじや肩にも唇を寄せつつ愛撫を続けていたら、あぐらの間に収まっている両足を擦り合わせた。
 もじもじと指に口付ける彼女の頬を撫で、胸からお腹、腰、太ももとを撫でて秘所に触れる。
 普段なら指先に伝わる湿り気はお湯に溶けてしまっていたけれど、ひだをかきわけて奥に触れると、とろりとした愛液がまとわりついてきた。
 入口辺りをくすぐりながら、もう片方の手で茂みを撫で、その下の粒に触れると体が跳ねた。
 僅かにもれた声が風呂中に反響して、抱きしめている身体の熱があがっていく。
「…声、結構響くな」
「っ…ゃ…!」
「僕は嬉しいけど。恥ずかしい?」
 茜は必死に頷いた。いつもなら聞かない所だけど、今日は優しくすると約束したのだ。

 陰核を弄っていた手を口元に持っていき、ひくひく動いている口元を押さえる。ぴく、と肩が震えた。
「これだと怖いか?」
「…だ、だいじょ、ぶ…」
「我慢しなくていいから。じゃあ、指噛んで」
「え…や、やだよ!」
「傷つけてもいいから。茜にだったら嬉しいしさ」
「いや!」
 むぅ。どうしたものか。
「…じゃ、茜、こっち向いて」
 今度は素直に従った彼女を膝の上に乗せて口付ける。
 唇は離さぬままお尻を撫で、湯に溶けきらない量の愛液を指に絡めて軽く差し込む。
 茜の中は潤いを帯びていて、歓迎するように僕の指を咥えこんだ。
 甘い悲鳴は互いの口の中でくぐもって、浴室全体に反響することはなかった。
「これは、どうだろう?」
「…ん…」
 首に手をまわしたのだから肯定と取っていいだろう。腰を傷めないよう座りなおし、もう一度唇を落とす。
 ゆっくりゆっくり解しながら二本目も入れて、ざらざらした部分を中心に擦ると気持ちよさそうに眉根を寄せた。
 体を軽く揺すってみたら、乳首への刺激から逃れるように背を逸らしたけれど、空いている方の手で押さえられるからあまり意味はなかったらしい。
 結果、前と後ろの両方から撫でられて、茜は困ったように身をよじる。
0474ある日の喧嘩2013/12/15(日) 15:24:07.13ID:6I6I97Bn
 僕の耳に届くのは、湯が動く音と、くぐもった喜悦の声と、お互いの荒い息だけだった。それだけなのに、どうしようもなく興奮する。
 堪えきれず、茜を抱きしめ自身を突き入れると、一度も達しておらず焦らしてもいないわりにはすんなりと受け止められた。
 多分、お湯が一緒に入ったからだ。…あ、でも、後でちゃんとかきだしておかないと気持ち悪いかな。

 頭の隅でぼんやり考える一方で、体は貪欲に茜を求めていた。
 両手で可愛らしいお尻を鷲掴みにして、何度も何度も彼女の身体を上下させる。

 辛うじて激しくはしていないけれども、茜からしてみれば、ゆっくりした動きで奥深くに打ちつけられるのはたまったものじゃないらしい。
 声を抑えるのを忘れ、あられもない悲鳴を上げて僕から逃れようと身をよじっていた。入れた時に達したから、一呼吸もおかずにするのは困るのだろう。
 でも、こうして続けると、茜はあり得ないくらいに艶めかしく美しく乱れるということを、僕は知ってしまった。
 最近忙しくてご無沙汰だったんだから、もうちょっとだけ許してほしい。まだ辛くはなってないみたいだし。
「あおくっ、やぁ…! もっと…もっとぉ…!」
「矛盾、してるぞ、茜」
「し、らなぁああっ! っあ、も、ひゃ…あぁぁああっ」
 全身を弓なりにしならす茜の胸にしゃぶりつく。倒れないよう背中を支え、ぴんと硬く尖っている乳首を舌でこねた。
 甘い悲鳴に気をよくして、柔らかくうねる奥を小刻みに突き上げると、もがくようにして僕に縋りついてくる。
 ぬめるひだが肉棒を味わいつくすように絡みついてきてたまらない。
 体全部で求められることが嬉しくて、どうしようもなく心が満たされた。
「あ、かね…あかね…だいじょぶ、か…?」
「あおくん…やぁ、ぅあっ…も、りゃめぇ…!」
「もう少し、だから」
 しゃにむに口付ける。すぐに舌が求められた。ざぷざぷとお湯が波打つ音に、互いの唇を吸い、舌を絡める音に、頭の芯が痺れていく。
 一際大きく突き上げた直後、茜の中が別の生き物のように蠢いて、下半身が溶けるのではと錯覚するくらい深い絶頂に達した。


 肩で息をする茜を抱きしめながらも、僕は、暫くの間目を開けることができなかった。
 最初に心配になったのは茜の身体で、まだ小さく震えている彼女の肩を撫でつつ届く場所に置いておいたペットボトルを掴む。
 茜、と声をかけると幸いにも意識はあるようで、ぼんやりした目を向けられた。
 蓋を開け飲み口を近付けてみたら、何故か嫌がってもう一度僕の肩口に顔を埋める。
 仕方が無いから、先に一口あおり、二口目は呑み込まないで口付けた。
 スポーツドリンクは風呂の熱気で生温くなっていたけれど、何も飲まないよりはいいだろう。

 じゃれつきながらペットボトルを空にして、ようやくお互いの目に力が戻ってくる。
 刺激しないよう逸物を引きぬくと、お湯に混じって白濁液が零れ出てきた。明日の洗濯は水道水決定だ。
「…茜、立てるか?」
「ん…」
「ゆっくりでいいから。掴まって」
 転ばないよう慎重に浴槽を出て浴室の床に腰を下ろす。滑り止めのマットを敷いているから冷たくはなかった。
 茜の秘裂からは精液が零れていて、今すぐにでも二回戦を始めたい気分になったけれど、残念ながら明日は平日だ。
 彼女を腰砕けにするわけにはいかない。心の中で法華経を唱えながら秘裂に指を差し込む。
「んゃっ?! あ、あおくん…?」
「出しとかないと気持ち悪いだろ。あと一回だけ我慢してくれないか」
「……ん」
 素直に力を抜いた茜に口付ける。顔中に唇を落としたら気持ちよさそうに目を閉じた。
 刺激し過ぎないよう気をつけながら、ぬるぬるした液とお湯とプラスαをかきだしていく。
 あらかた終わった所で指を引きぬくと、茜は物足りなさそうな顔で僕を見上げた。
 キスを落としながら少しだけ考えて、陰核をこねて茜に達してもらい、夢見心地の彼女の脇で処理を終えた。
0475ある日の喧嘩2013/12/15(日) 15:25:30.35ID:6I6I97Bn
 のろのろと服を着た僕たちは、揃ってベッドに倒れ込んだ。
 柔らかい布団に体を預け、ほかほかな茜を抱きしめると何とも言えず幸せな気分になる。
 ほうと息をつくと、茜が甘えるような目を向けてきた。
「ね、葵。今読んでる本って、どんなお話なの?」
「あー…言葉と、言葉と共に生きる人々の物語、かな」
「葵みたいだね」
「……そうかもしれないな」
 眠そうにふやけた頬を撫でる。ぼんじゃりした空気を纏う茜は小さく微笑んだ。
「葵が読み終わったら、私も読んでみようかな」
「うん、あの本はおすすめだ」
「じゃあ読んでみる」
 楽しみ、と呟いて目を閉じる彼女に口付けた。おやすみ、と囁くと、辛うじて聞きとれた返事が返ってくる。


 茜は、大切な人だ。本の世界で生きることを止められない僕も、受け入れて、尊重してくれる。

 はなせないなぁと呟いて、穏やかな寝息を立てる茜に口付けた。
04764342013/12/15(日) 15:32:01.21ID:6I6I97Bn
ここまで

この二人にとっては、久しぶりに激しい喧嘩の話でした
過去話編頑張ります、お待たせしてすみません
毎度拙い話ですが、暇つぶしにでもなれば幸いです
04774342013/12/15(日) 16:12:44.97ID:6I6I97Bn
連投すみませんひとつ聞き忘れていたことが
このスレ的には同性愛や性同一性障害みたいな、いわゆるセクシャルマイノリティと
呼ばれてる人たちのペアの作品はどうでしょう?
少し出てくるならアリか、がっつり書いてもよしか、ノータッチの方がいいかで迷っているので
よかったら意見を聞かせてもらえるとありがたいです
0478名無しさん@ピンキー2013/12/15(日) 19:46:57.42ID:/wIiFhjq
>>477
ホモネタ、性同一性障害のようなものは、このスレだけじゃなく板全体であまり歓迎されない
04794342013/12/15(日) 23:08:46.83ID:6I6I97Bn
>>478
そうだったのか。きちんと把握していなかったです。すみません
確かに少しでもやらかしたらすごいことになりそうなネタだもんな…
大人しくノータッチにしときます。ありがとうございました!
0480名無しさん@ピンキー2013/12/16(月) 10:49:33.73ID:Hc+r513d
やるとしたら前書きに注意をしっかりして苦手な人のためにNG指定にできるようにしておくといいよ
個人としてはやってもらえるなら読みたいと思うが
04814342013/12/18(水) 22:11:55.37ID:Fuz84osE
>>480
遅ればせながらありがとうございます
それならば、もし書けちゃった場合は注意書きとNG指定を出来るように心がけます
…まぁいずれにせよ過去話が先だがな!
もう少しで出来るので、申し訳ありませんがもう少しだけお待ちください
0482名無しさん@ピンキー2013/12/19(木) 00:25:17.78ID:IcajxfI+
理不尽かもしれないけど、百合はあってもホモが歓迎されないのは
801板が隔離板として古くから存在してることを考えればわかると思う
少なくともガッツリはすすめられない

個人的には百合も苦手なんだけど、板として全体的に許容してる風潮なので
注意書きを参考に読まないことにしてる

あとはホモネタは一つ許すと歯止めがきかなくなることが多いので
板が占拠されることのことのないよう棲み分けが強調されてた面もある
今はどうなんだろうね
0483名無しさん@ピンキー2013/12/19(木) 00:33:38.15ID:IcajxfI+
あと、ごめん
この是非論もデリケートな問題で荒れる原因になりかねない
できるなら、板全体を見て傾向を掴んでほしいと思う
オリシチュ系を少し見て回れば何となくラインがわかるんじゃないかな
0484名無しさん@ピンキー2013/12/19(木) 00:39:09.34ID:GI1eo7+i
そうなんだよね。ホモネタ一つ許すと後から後から腐女子が湧いてきて、結局スレを乗っ取られる
あいつら、凄く排他的で他の住民と共存しようなんて気さらさら無いから、一度乗っ取られたら取り戻すのはほぼ不可能
だからホモネタは嫌われるんだよ
04854342013/12/19(木) 20:03:26.52ID:GmhoGpan
度々すみません。ご意見ありがとうございます
皆様の仰る通り、デリケートな話題を軽々しく扱ってしまったと反省しております
こちら側の知識不足、勉強不足でご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません
このスレを荒らそうという気は毛頭なく、単純に一つのテーマとして思いついただけでしたが、
軽率な発言でした。申し訳ありません

これ以上この話題を続けてスレが荒れるのも、スレの趣旨から話が逸れるのも避けたいので、
こちらから尋ねたのに勝手な話ですが、このネタについてはノータッチにしたいと思います
個人の勝手でお騒がせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした
きちんと調べて傾向を把握した上で出直したいと思っておりますので、その時はよろしくお願い致します

長文失礼しました
0489名無しさん@ピンキー2014/02/02(日) 01:14:49.85ID:7nDDE7Mo
結婚式でみんなに見守られながら公開種付けっていいよね
04904342014/02/02(日) 13:20:17.40ID:YDOppH67
テスト
04914342014/02/02(日) 13:21:52.49ID:YDOppH67
お、いけた

434です。昨日の投下を失敗してしまったので、もう一度投下させて頂きます
長い、エロまで遠い、エロが薄い、本番無しなので、必要に応じて「過去編」をNGでお願いします
0492過去編2014/02/02(日) 13:26:27.79ID:YDOppH67
葵にとって本がどういうものか説明するのが難しいように、私にとって、葵がどういう存在であるのかを説明するのはとても難しい。

……いえ、あの、確かに、旦那さんって言えばそうなんだけど。一言で説明出来ちゃうんだけど。
旦那さんである前に、葵は一人の人間で。私にとっては今も昔も大事な人で。昔は、戸籍上とはいえ兄妹だったわけで。
葵をお兄ちゃんだって思ったことは一度もなくても、戸籍上は。
今でこそ、大好きな旦那さんって胸を張って言えるけど、昔は…というか、数年前までは、
葵がどういう存在かを説明するのは、自分にも他の人にも、とても難しかったのだ。


中学生の頃は、変だけど優しいお兄さん、だった。お兄さんって言うのは近所のお兄さんの方で。

神社の一件があってから、葵は、私のことをとても大事にしてくれた。
何故かは分からないけれど、多分、私が彼に懐いたのと似た理由だと思う。つまり、お互いに色々な意味で慣れた、と。
今と同じように、当時の葵は家事をほとんど受け持ってくれていた。
本当に有り難いことに、いつも、部活から帰ると温かいお風呂と美味しい夕ご飯が準備されていた。
実は、新婚さんにありがちな「ご飯にする? お風呂にする? それとも…」というやり取りを、私たちは毎回繰り返していたりする。
「それとも…」は無しで。

お父さんとお母さんは、葵曰く家にいることが増えたらしいけど、それでもやっぱり帰ってくるのが遅かった。
だから、ご飯は大体二人きり。その日あったことを話しながらのご飯を終えたら、葵がお風呂に入ってる間に私はストレッチ。
お父さんとお母さんが帰ってくるのは、二人で勉強をしている時が多かった。
…あの頃の葵は、私専属の家庭教師だったなぁと今でも思う。
わりと厳しい部活に所属していた私が、テストや受験でもあまり焦らなくて済んだのは、どう考えても葵のおかげだった。本当に。

この生活は、高校に入ってからもあまり変わっていない。

私は葵と同じ高校に進学した。
真似をしたんじゃなくて、当時、陸上部が盛んで勉強もできて県立高校で、且つ自宅から通える高校はそこしかなかったから。

高校に入ってからも、葵という優秀な家庭教師に教えを乞うていた私は、そこまで大きな負担もない幸せな高校生活を送ることができた。
勿論、思春期真っ盛り故の悩みはあったし、それがくだらないものだったとか、今に比べれば楽だなんて言うつもりはない。
今も昔も、私は精一杯生きているつもりで、いつの私が良い、なんて言いきれないから。
単純に、もし、お父さんとお母さんが手を差し伸べてくれなかったら、そして葵が受け入れてくれなかったら、
もっと、色々な意味で大変なことがあった、そう思っているだけだ。

ただ、私と葵は、わりと注目を浴びることが多かった。

私自身も含め、周りは皆、多感で不安定な思春期という時期だ。
男の子と同棲なんて(戸籍上家族とはいえ)、友達が、想像力を働かせてしまっても無理はない状況だ、と思う。
しかも、葵はやっぱり、変人だけど滅茶苦茶頭が良い先輩、って有名だったから。
加えて、所属していた部活はこう…忙しくて。男の子とそういう意味で親しくなる人は、ほとんどいなかった。
つまり、遠征先とかで恋愛話が出てきた時に…うん、その、少しだけ…大変だった。質問とか、そういうのが。

私の反応はと言うと、昔から鈍いというか、どんくさいというか…とにかく鈍感だったから、最初のうちはそんなに気にしていなかったんだけれども。
あまりにも沢山言われると、否応にも、ちょびっとだけ、葵とどう接すればいいのか分からなくなって。
それに、正直なところ、そういうことに興味が無いわけではなかったから、その……。

白状しよう。私は一度、葵に迫ったことがある。今となっては思い出したくないくらい恥ずかしい、いわゆる黒歴史というヤツだ。
0493過去編2014/02/02(日) 13:30:26.13ID:YDOppH67
その時、葵は大学受験を終えて、例によって本の世界に入り浸っていた。私は春休み。
部活はほとんど毎日あったけれど、毎日夕方には帰れていたから、時間もあった。
重ねて言うなら、お父さんとお母さんは、出張で帰ってこない。なんというか…そう、計画を実行に移すのにおあつらえむきすぎた。

時刻は夜。いつものように、ご飯を食べて、お風呂を済ませて、私と葵は並んで本を読んでいた。
「……ねぇ、葵」
「…うん?」
緊張で震える声に、一拍間をおいて返事をされる。
集中して本を読んでいる彼に話しかけて、このくらいで反応が返ってくるのは結構凄いことだ。その事実が、私のいらない自信を増長させてしまった。

「あの…えっと。葵って、その…今まで、誰かとお付き合いしたこと…ある、の?」
「いや、一度もない」
「ええと…じゃあその…き、きしゅとか、したことあるっ?」
「恋人でもない相手とは、僕個人としては、したくないな」
緊張と焦りとで思いっきり噛んだ私を追いつめることはせず、柔らかい声が返ってきた。
少しまどろっこしい言葉を使うのは葵の昔からの癖で、私はそれが好きだったけれども、この時ばかりは妙に焦れてしまったことを覚えている。
とにかく、本題はここからだ。理由の分からない安堵感に励まされた私は、
「じゃ、じゃあ…し…してみない…?」
「……茜?」
本を読んでいる彼が、思わずこちらを見てしまうほど突飛なことを言ってしまった。

一つだけ断っておくと、この時の私に葵が好きだという自覚は無い。無いけれど、私は、間違いなくこの時既に葵のことが好きだった。
当時は、好奇心と緊張と理由の分からない期待で一杯一杯になってしまっていたから、分からなかったけれど。
キスとか、それ以上のことをしたいと思ったのは、葵だけだった。それは今も変わっていない。きっとこれからも変わらない。
ただ、重ねて言うけれど、当時の私に葵が好きだという自覚は無い。私は、とんでもなく、本当に、救いようがないくらい、鈍感だったのだ。

「……してみるって言うのは、キスのことか?」
言ってしまったという緊張と、恥ずかしい子だと思われたらどうしようという不安とで固まってしまった私に、葵はあくまでも優しい声で確認をしてきた。
私は何度も頷くしかできなかった。耳どころか体中が熱かった。
「…僕には、キスだけで止まれる自信が無い。それは、分かってる?」
一瞬言っていることの意味を捉え損ねて、次いで、顔が爆発するかと思うくらい熱くなった。
とても混乱した私は、物事を冷静に考える思考力を完全に失っていて、阿呆みたいに首を上下させた。
葵の目つきが少しだけ鋭くなる。初めて見る表情に、訳もなく泣きそうになってしまった。

「……目、閉じて」
この時の心情を、上手に表す言葉が見つからない。
緊張と、不安と、期待と、喜びと、羞恥とがぐちゃぐちゃになって、とにかく、私の心はぐちゃぐちゃだった。
ぎゅうっと目をつぶると、頬に手が添えられた。大事なものに触れるかのように、優しく、優しく撫でられて、胸の辺りがきゅうっと締めつけられた。

頭が真っ白になっていても、葵が近付くのは気配で分かった。緊張のあまり強く握りしめた両手に、彼の左手が乗せられる。
一瞬だけ迷ったような気配がして、

「……え……?」

柔らかい感触がしたのは、額だった。

それを認識して目を開けた時には、葵はもう、困ったような笑みを浮かべていた。どうして、と尋ねる前に、頬を撫でていた掌が頭を撫でる。
「…やっぱり、さ。こういうことは、好きで好きでしょうがない人としたほうが、いいと思うんだ」
だから、これで終わりな。
そう言って、葵は本を片手に部屋に戻っていってしまった。残された私はというと。
「………………」
何だかとてもホッとしたのに、同時に凄く寂しくなってしまって、暫くの間座り込んでいた。
初めて見た葵の表情や、優しく口付けられた感触が頭の中をぐるぐる回っていて。
色々と考えて妙に張り切って準備していたのが、馬鹿らしくなって。
でも、それ以上に、私のことを大事にしてくれているのが伝わってきて。
「……寝よう……」
色々と限界だった思考は、考えることを放棄した。

「……え? ……あ、あれ?」
たったあれだけで腰が抜けてしまっていて、結局、動けるようになるまで眠れなかったのだけれども。
0494過去編2014/02/02(日) 13:33:32.15ID:YDOppH67
こんなことがあっても、私と葵の関係をどう言えばいいのかは、本当に分からなかった。

葵が私を大事にしてくれているのは分かる。でもそれは、多分、家族愛みたいなもので。
私の方は、大学辺りでようやく(しかも人に指摘されて)好きなのだと分かったけれど、
葵との距離があまりにも近すぎて、なにをどう言えばいいのか、どう伝えればこの感情が伝わるのか、全然分からなくて。
葵が翻訳家という夢を決めてからも、私はただその背中を見つめていることしかできなくて。
私はどうすればいいのか。何をしたいのか。どうすれば、葵の力になれるのか。
そんなことばかり、ただ、ぐるぐると考えているだけだった。


思考の渦からいつ抜け出せたのか、どう抜け出せたのかは、未だによく分かっていない。
だけど、きっかけは、あった…と思う。

葵は、大学を卒業してから近くに家を借りていた。
なんでも、編集者さんとの打ち合わせは東京ですることが多いから、駅の近くに住んでいたほうが都合が良い、らしい。
それ以外にも理由はあったんだろうけど、葵は何も言わなくて、私もお父さんお母さんも何も聞かなかった。

とにかく、駅から歩いて五分程にあるアパートの1DKが葵のお城になったのだ。沢山の本と、必要最低限の家具以外は何もない、葵らしい部屋。
私はそこがとても好きで、暇さえあれば押しかけて、葵が無視しがちな食事を作ったり、家事をしたり、
挙句寝袋と着替えを置いておいて泊まったりもしていた。今思い返してみると、葵の理性の限界を更新させていたのは間違いなく私だと思う。

その日は、私が初任給をもらった日で。次の日に、おじいちゃん達とお昼ご飯をする約束をしていて。
でも、私は、例によって葵の部屋に転がり込んでいた。お父さんとお母さんに連絡をして、資料とにらめっこしている葵の隣でご飯作り。
当時の葵は、講師として働いていた塾をやめて、本格的に翻訳一本に集中するところだったから、大分無茶苦茶な食生活を送っていた。
会うたびにげっそりしていく葵が見ていられなくて、仕事帰りに買い物袋を引っ提げたまま突撃したのだ。

もう少しでご飯ができる時に葵の溜め息が聞こえてきた。私が何も言わないうちに机の上を空けてくれる。
「ご飯、もう少しでできるからね」
「ありがとう。今日の飯なに?」
「キャベツとカブと豚肉の炒め物、お揚げと豆腐とジャガイモのおみそ汁、ご飯と納豆です」
「素晴らしい」
腹減ったぁと苦笑しながら食器を並べていく葵は小さい子どもみたいで、心がほっこりと暖かくなった。
こういう何でもない会話でも、葵とだと普段以上に幸せを感じられて、私は馬鹿だなぁと内心笑みがこぼれる。

「はい、完成」
「よしきた」
ご飯を並べて手を合わせる。いつも通り、幸せな時間。その日あったことを話すのが、中学時代から変わらない習慣だ。
けれど、何故だかその日は仕事のことを話す気にならなくて。私は、今までしたことがない質問をぶつけてみた。
0495過去編2014/02/02(日) 13:38:32.23ID:YDOppH67
「…葵ってさ」
「うん?」
「なんで翻訳家になりたいと思ったの?」
がっつくあまりほっぺについていた米粒を取りつつ尋ねると、葵は不思議そうな表情になる。
「…言ったことなかったっけ?」
「ありません」
「言った気になってたよ。僕は、橋になれたらいいと思ってさ」
「ごめん、流石に抽象的すぎて分からないな」
頭の中のイメージをそのまま話すからこうなる。思わず苦笑すると、葵は恥ずかしそうに頬をかいた。

「だな。えーと…ちょいと長くなるけど」
「聞かせて?」
「ん。…翻訳家を目指す理由は、人それぞれだと思うんだ。だから、あくまで僕個人は…ってことで聞いてほしいんだけど」
「うん」
「初めて、外国の小説を原文のまま読んだとき、驚いたんだ。こんなにすごい本がある、世界には、数え切れないくらい沢山の物語があるって。
 でも、同時に、その本の日本語訳がないってことに、驚いた。こんなに面白い話なのに、って」

葵の目は、きらきらと輝いていた。本や物語の話を聞かせてくれる時に、見せる目だ。
小さい子どもが、宝物について、一生懸命話しているような、すごくきれいな目。
「もちろん、翻訳が無くっても原文を読めばいい。でも…原文が読めなかったら、どんなに面白い話でも意味が分からない。
 それはもったいないって思ったんだ。本の内容は、好みによって好き嫌いがある。それは当然だ。
 だけど、言葉が分からない、ただそれだけのことで面白い物語が読めないなんて、すごくもったいない」
だから、と葵は頬を緩める。

「一冊でも多くの素晴らしい物語を、それを読みたいと思っている人に届けられたら、素敵なことだと思って。
 …橋っていったのは、それなんだ。翻訳は、物語と人をつなぐ橋になり得る。
 その橋のレンガ一つにでもなれたら、こんなに嬉しいことはないと思った。僕の一生を掛けてもいいと思った。
 だから、翻訳家になりたいと思ったんだ」
朗々とした声を聞いていると、私の頬も自然と綻んでいた。少し気恥ずかしげにお味噌汁に口を付ける葵が、とても眩しく感じた。
もしかしたら、私は嫉妬するべきなのかもしれない。大好きな人が、これ以上ないほど幸せそうに、他のことに夢中になっているのだから。
けれど、不思議なことに、嫉妬心はこれっぽっちも湧いてこなかった。それどころか、なんだか凄く嬉しかった。
葵の意思を、少しも迷わずに、私に見せてくれたことが。

その後は、ひたすらほんわかした雰囲気が私たちを包んだ。
後片付けはやるという言葉に甘えて、私はお風呂に入っていた。湯船の中で、葵が言ったことを考える。
きらきらしたきれいな目で、人と物語をつなぐ橋になりたいと、そのためになら一生を掛けてもいいと言いきった、葵のことを思い出す。

ぼんやりしながら、私は何かを考え続けた。
ずーっと心の内にあるこの塊が、もう少しでどうにかできるような気がした。それは、後もう少しで、掴めるような気がした。

ぼんやりとしたままお風呂を出る。髪を乾かしてリビングに行くと、葵は椅子に座ったまま本を読んでいた。
何となく近付き辛くてぼうっとしたまま見つめていると、私に気付いたのか、顔が上がった。


葵は、帰る場所を見つけた子どものような柔らかい目で私を見て、優しい響きの声で私の名を呼んだ。
それだけで、十分だった。心の中の塊が、体の隅々まで溶けていく気がした。私のやりたいこと。私の、一生を掛けてもいいと、思えること。


「――あおい」
「ん、どうした?」
「私たち、結婚しない?」
0496過去編2014/02/02(日) 13:42:27.93ID:YDOppH67
ばさりと大きな音がしたと思ったら、両手がきつく握りしめられていた。
驚いて目を瞬く私を、怖いくらい真剣な葵が見つめる。
「……茜」
「は、はい」
「本気か?」
「う、うん…あのっ、私、役に立てると、思うんだ。お給料も頂けたし、自分のことは自分でするし、葵に迷惑かけな」
「そんなことはどうでもいいんだ。そうじゃなくて…僕は…本の世界から、離れられない。茜を、一番には、できない。それでも、いいのか?」
「えと、ほら、同率一位も、あるから」

我ながらトンチンカンなことを言ったと思う。
なのに、葵は痛いくらいにまっすぐな目を向けてきた。
「その気になれば、茜だけを一番にしてくれる人は、沢山、」
「あおく、葵…その、ね。わたしは…葵のことが、好きで好きで、しょうがないの」

だから、と続けることはできなかった。口が塞がれていたから。
突然のことで驚いた私に、あの時と同じ、鋭い光が向けられていた。
深い黒に、私だけが映っていることが嬉しくて、でも少し恥ずかしくて、私は目を閉じて葵に縋りついた。

どのくらいそうしていたのか、実はあまり覚えていない。
最初は触れ合うだけだったのに、葵にもっと深いものを教えられて、私はお互いの熱を交換することに夢中になっていた。
しんとした部屋の中に水音が響いて恥ずかしかったけれど、それが意識に上るよりも速く葵の熱に流された。

「ふぁっ…は…ぁぅ…」
「あかね、かわいい」
「ひぁっ…」
私は完全に腰が抜けていた。興奮でかすれた声で囁かれただけで背中がぞくぞくするくらい、くたくたにされてしまった。
「茜、ごめん、ぜんっぜん我慢できない」
「っ……」
臆面なく言われて頬が熱くなったけど、我慢できないのはこちらも同じだ。少し背伸びして口付けると、葵は嬉しそうに笑って私を抱きあげた。
……ずっと運動部に所属していたのだから軽い筈はないんだけどとか、その細腕のどこにそんな力がとかの疑問よりも、嬉しさが勝ったのは言うまでもない。

「て、あおいっ、本落ちてる!」
「えっ、…あ、ほんとだ。ついうっかり」
ついうっかりって、あなたが本を落とした上に放置するなんて姿、初めて見るんですけど。
「それだけ衝撃が大きかったんだよ。…あー、でも、女の子に言わせちゃったなぁ…」
「心を読まないでね。それに、こういうプロポーズがあってもいいと思うんだ。世界は広いんだから」
「そうかもな」
楽しそうに笑って、危なげなく私をベッドの上に寝かせた葵は、それはそれは嬉しそうに覆い被さってきた。
なんというか、その、こんな姿は想像すらできなかったから、結構新鮮。

「あ、そうだ。僕こういうことするの初めてだから、何かあったらすぐ言ってくれな?」
「え、あ、うん」
「後できれば、どうすれば気持ちいいのかも教えてほし」
「無理だよっ!?」
「じゃあ探しますか」
そう言って、再び口付けてくる葵。
ムードも何もないって言うのに、触れ合っている箇所から伝わってくる熱だけで、私の体は完全に脱力してしまう。
ていうか、正直なところ、キスされてるだけなのにあり得ないくらい気持ち良くて、どうすればいいのか分かんないんですけど葵さん。
0497過去編2014/02/02(日) 13:46:39.63ID:YDOppH67
上顎をくすぐられたり、舌を吸われたりするだけで、背中をぼんやりとした快感が走る。
その感覚がもどかしくて身をよじると、頬を優しく撫でられた。
葵に触れられている、そう思うだけで、お腹の奥がきゅうと疼いた。……ちょっと、簡単に感じすぎじゃないかな、私。
「んぅ…ふ…ぁ…」
「…茜…なんか、すごくその、あいやごめんなんでもない」
「……誰が、こうさせてるの?」
「僕です。ありがたいことに」

ちゅ、と口付けられるのと同時に、胸元に手が添えられる。いつの間にか前を肌蹴られていたようだ。
真っ赤になった私に笑顔を返して、葵はこそばゆいほど慎重に力を込める。柔らかい刺激を逃したくて小さく身をよじった。
「あれ、痛い?」
「…たく…なぃ、けどっ…」
「そうか。えーと…こういうのは?」
「ひゃんっ!?」
いきなり胸の先を押し込まれて思わず声を漏らしてしまう。自分の意志ではなく、しかも甘い響きの声が出て、思わず真っ赤になってしまった。
半ば非難も込めて葵を睨むと、意外なことに彼の顔もリンゴのようで。
「……ごめん。あの、その…こんなすぐに出るものとは思わな違うごめんなんでもないっ!」
「……大分手遅れだと思う、よ?」
「……申し訳ありません」
なんともくすぐったくて思わず笑みを零すと、葵も一瞬だけ困ったように笑って、すぐにぎゅうっと抱きしめられた。力強い腕の中がとても心地良い。
「うーん…カッコよくリードできれば、よかったんだけど」
「初めて、なんでしょ? しょうがないよ」
「でも、こう…年上の威厳が…」
「そんなの無くても葵はかっこいいってば」
「……はい」
それに、こうして一緒になって駄目駄目なのは、凄く嬉しい。
葵としては、余裕たっぷりでいたいのかもしれないけれど、私としては、情けない姿を見せてくれるのも嬉しいのだ。
だって、こんな葵、滅多に見れないんだから。

「…そういや、ちゃんと言ってなかった」
「え、なにを?」
「心から愛してるよ、茜」
……情けない姿を見せた直後にこういうこと言うとか、ずるいと思うのですが葵さん。
「へ、そうかな」
「だから心を読まないでってば!」
言葉こそ怒った風を装っているけれど、私の心はそれこそ天にも昇る心地だった。ちょっと、嬉しすぎて、なんて言えばいいのか分からない。
うぅ、と唸る私に口付けて、葵はにっこり笑顔を見せる。本当に、ずるい。そんなに嬉しそうな笑顔を見せられたら、もう、なにをされても許してしまう。

そんな内心が伝わったのかは分からないけれど、葵は額、鼻筋、唇と口付けて、そのまま首を舐めてきた。
ぞくりと背筋が震えて、再び艶の濃さがましてくる。勝手に震える身体も押さえられて、段々なにを考えているのかも分からなくなってきた、その時。
「んっ…」
鎖骨を強く吸われて、ぼんやりとしていた意識が少しだけ明確になる。満足そうな目で私を見上げた葵は、今度は胸元に唇を寄せた。
「ひゃぁっ…」
ぬるりとした感覚の直後にまたしても強い刺激。
視線を落とすと心臓の上辺りに赤い痕が残されていた。そう認識した途端、身体がかぁっと熱くなる。羞恥ではなく、喜びで。

「茜が僕のお嫁さんって、印な」
「っ……!」
思ったのと同じことを言われて、上手な返事を思いつけなかった。どうにか頷くと、葵は一層笑みを深くする。
そのまま左胸に口付けられ、乳首を口にふくまれる。
「っ、あぁっ!?」
またしても自分のものとは思えない声が零れて、慌てて両手で口を抑えた。そうしている間にも、葵は優しい動きで私の胸を愛撫している。
乳首をつぶされたり、こねまわされたり、乳房全体を甘がみされたりして、声を抑えるのが本当に大変だ。
そんな努力を知ってか知らずか、びんと張っている反対側の胸も手で愛撫されて、いよいよ声を抑えるのが辛くなってきた。
刺激を逃そうにも、葵にしっかりと押さえられているから、もどかしさが溜まって逆効果だった。
0498過去編2014/02/02(日) 13:49:44.99ID:YDOppH67
「んっ…ふ、ぅっ…んぅ…!」
「…茜、この部屋って、前住んでた人がピアニストとかで、防音加工されてるんだ」
「っふ…んん…!」
「後、演技で声を出されるのは困るけど、自然に出ちゃうとかなら大歓迎なんだ」
なにが言いたいの、と聞くよりも早く、両乳首を優しくつままれる。
「やっ、ぁんっ!」
「つまり…声、無理して我慢しなくても、平気だぞ」
軽い絶頂で身を震わせた私に、そんな言葉が投げかけられた。
色んな意味で衝撃を受けていた私は、とっさの判断ができなくて、
「ぁ、やっ…あおい…そこ、やぁ…」
「……ごめんな。どう考えても嫌とは思えない」
ぐしゃぐしゃに濡れている秘部にあっさり到達されてしまう。

ごめんとか言ってるのに嬉しそうに微笑んで、葵は私の羞恥心を増幅させるようなことを。
「脱がせたいから、腰浮かせてくれるか?」
「…っ…一々、断らなくても、いいから…!」
「そう? あ、あともうちょい足を開いてくれると助かる」
「あおいぃっ…!」
今この体勢だってすっごく恥ずかしいんだよ!? と睨んでみても、葵は素知らぬ顔で指先を動かしただけだった。
それが丁度一番敏感な所を撫でて、私は再三あられもない悲鳴を上げてしまう。
羞恥心と、指先が当たっている箇所からじわじわ広がってくる快感と、この先への期待と、悦びで、おかしくなってしまいそうだった。
「…な、茜」
「……ぅ」
「僕も、結構、理性が危ないから。協力してくれ。頼むよ」
言葉こそ穏やかだけれども、確かに、葵の目は興奮でぎらぎらしていた。
その目を見てしまうと、羞恥心とかそういうのよりも悦びや期待が勝って、私は大人しくせざるをえなかった。
熱くなる身体は無視をして、腰を上げ、葵がやりやすいように足を開く。恥ずかしすぎて自然と滲んできた涙は優しく拭われた。

目を細めた葵は、逃げられない獲物を前にした肉食獣のようだった。
ああでも葵になら食べられても嬉しいかな、なんてことを思うのと、彼の指が私の中に入るのはほとんど同時で。
「ひっ…ぁ……――っ!」
「……すごいあつい」
「ぅ、ぁ…ふぁ…」
「それに、せまいな。…大丈夫なのかな。壊れたりしないのか…?」
多分思ったことをそのまま口にしている葵に返事をする余裕はなかった。
痛みはほとんどない。けれど、体の中に何かが入って来るという体験は、とても、不思議な感覚を私に与えた。
半端じゃない異物感を感じるのに、それが葵の指だと思うだけで、どうしようもなく嬉しくなってしまう。
一歩間違えれば気持ち悪さに直結しそうな刺激も、葵が私の全部を確認しているのだと実感できて、これまた嬉しくなってしまう。

「あかね、大丈夫か?」
「ぃ…ぁあ…あおくん…」
「……うん」
「あぁあっ!? やっ…そこは、だめぇっ」
反対の手で陰核をつままれて身体が跳ねた。中の感覚が上書きされるような刺激に腰が震える。
「ここ、気持ちいいんだな」
「やっ、あぅ、ひゃ…ぁんっ」
「……皮? ええと…」
「ひゃうっ!? やっ、あおくっ、それやだぁっ!」
「…すごい締まった…」
葵は何やら感動しているけれど、より敏感な所を露にされたこちらはたまったものじゃない。
身をよじって強すぎる刺激から逃れようとしてみても、上手に圧力を掛けられて逃れられない。
「やぁぁあっ! も、やぁあ…あおくんっ…もぅ、ぅ、ぁぁああっ!?」
「……あかね、すごいかわいい」
「ひゃんっ…や、ぁ…も、だめ…あおく、だ…ぁ、はぅ…ゃ、――っ!」

瞬間、頭の中が真っ白になった。初めて感じる深い深い絶頂に、私は、葵にしがみつくことしかできなかった。
強く強く抱きしめて、この、訳の分からない感覚の中に放り出さないでほしかった。
0499過去編2014/02/02(日) 13:52:19.81ID:YDOppH67
「…かね…あかね?」
「……ぅ……?」
「茜、大丈夫か? 僕のこと、分かるか?」
「……ぁおくん……?」
ぼんやりした意識のまま返事をすると、葵は目に見えてホッとした。
その表情が、三年前、初めて肌を合わせた時の顔と重なって、なんとなく頬が綻んでしまう。
回数を重ねても、どんなに慣れても、私のことを心配してくれるのは変わらない。それが、なんだかすごく嬉しい。

「ごめんな、ちょっと無茶させちゃったか」
言いながら身を引く葵。当然、一緒に私の中を埋めているものも離れそうになる。だけど。
「……あの、茜さん? そんなにぎゅってされると離れらんないんですけど」
「…もうちょっと、このままがいいな…」
「いやあの、抜かずの五発目は流石の僕もキツイかなと。せめて休憩を」
「……もうちょっとだけでいいから」
「……はい」
諦めたような笑顔で抱きしめられたまま寝転がる。
身体は、それはもう、私だって疲れているんだけれども。昔のことを思い出したからか、このまま離れるのは嫌だった。

「……やっぱりね、葵」
「うん?」
「初めてなのに、一言目が"ゴムつけてて良かった"は、どうかと思う…」
「……ず、随分とまた昔の話を……!」
「うん、そういえばちゃんと言ってなかったなぁって思って」
あの時は、圧迫感だの幸福感だのお腹の奥で感じる不思議な感覚だの、自分のことで精一杯だったから。

思い出したことこれ幸いとばかりに見上げると、葵はそれはもう恥ずかしそうな申し訳なさそうな顔で、私をぎゅうと抱きしめる。
「いや、あの…仰る通りなんだけどさ。二言だけ弁解してもいいですか」
「どうぞー?」
「あんな可愛い顔で見上げられてた上に、物凄く気持ちよかったんだぞ。ゴムで感覚が鈍くなってなかったら入れた瞬間限界だった!」
「…力説されても…」
「…そうだよな…」
悪かった、と額の上に口付けを一つ。怒ってるわけじゃないんだけどなぁと思いつつ、嬉しいからお返しのキス。
ちゅうちゅうと吸いあって、そういえば、と葵が少しだけ表情を引き締める。
0500過去編2014/02/02(日) 13:54:46.51ID:YDOppH67
「…どうしたの?」
「あのさ、今度…できたら近いうちに、結婚式挙げないか?」
「……え」
けっこんしき、と口の中で呟いて、その単語の意味を頭の中に浮かべた瞬間、顔どころか体中が熱くなった。

「えっ、でも…ええっ?」
「その…ずっと考えてたんだけど、やっぱり、今からでも式は挙げたいなと思って」
「で、でも…お金は?」
折角の申し出にこんなことを返すのは悲しいけれど、これは大事なことだ。
だって、籍を入れるだけにしたのだって、葵の部屋でそのまま暮らしているのだって、生活が落ち着くまではとにかく貯金! って結論に至ったからで。

私の質問に、葵は穏やかな笑顔を浮かべる。
「お小遣いから貯金しました。まぁ、本当に身内だけになっちゃうけど…父さんに母さん、両方のじーちゃんばーちゃんくらいなら、大丈夫なくらいはな」
「ええ…い、いつの間に…?」
「うーん…いや、ほら…子どもはまだ無理だけど、せめて結婚式はなぁ、と思って。可愛い娘、孫娘のハレの姿、見たいだろうし。
 それに、女の子にとっちゃ、結婚式って特別なものだろ? …あと、まぁ、その…」

一度言葉を切った葵は、それはもう恥ずかしそうに笑って、
「……何よりも、僕が、茜の花嫁姿、見たいから、さ」
だから、ちょっと頑張ってみよっかなーと、なんて。少しおどけたように、私の頭を撫でた。

……もう、ほんとに、本当に、葵はずるいと思う。
別に、結婚式なんて、普通に諦められたのに。葵の傍にいられるなら、結婚式なんて、挙げなくても良かったのに。
周りの人は皆祝福してくれて。大好きな人が、大好きだよーって言ってくれて。それだけで、私はもう、十分すぎるほど、幸せなのに。


――本当はね。少し…ほんとにちょびっとだけ、残念だったんだ。きれいな花嫁さん、憧れてたから。


心の奥に隠した言葉。誰にも言わなかった。態度にも出さなかった。それなのに、こんな。

「……ええと、茜。あの…僕の、世界でひとりだけの花嫁さんに、なってくれませんか?」

こんなに優しい笑顔で、こんなに嬉しいことを、言ってくれるなんて。
ずるい、と思う。優しすぎて、ひどいと思う。こんなこと言われたら、私は――

「――はいっ!」

とびっきりの笑顔で頷くしか、できないんだから。
05014342014/02/02(日) 13:56:42.37ID:YDOppH67
ここまで!

以上、過去編でした。
もしお待ち頂いた方がおられましたら、本当に申し訳ありません。お待たせしました。
相変わらず拙いですが、暇つぶしにでもなれば幸いです。
0502名無しさん@ピンキー2014/02/03(月) 00:20:36.33ID:68DCIj94
おもしろかったよ。
暖かい文章が内容にあってていいと思う。
0504名無しさん@ピンキー2014/02/04(火) 00:01:26.31ID:cvRcheUl
裸エプロンの新妻をバックからズコズコ
05064342014/02/09(日) 10:35:49.18ID:AJiGjOQJ
昨日の雪が凄かったので投下

いつもの二人じゃない、エロまで遠い、エロが薄い、人によっては不愉快になる個所がある、
ヘタレで女々しい旦那とデレがないクーデレの嫁さん、等々いつも以上に好き勝手やっているので
ふざけんなバーローって方は「雪の日の夫婦」をNGでお願いします
0507雪の日の夫婦2014/02/09(日) 10:41:32.57ID:AJiGjOQJ
朝起きてカーテンを開けると一面白い世界が広がっていた。
「……雪か」
ぽつりと零し、なに当たり前のこと言ってんだ俺と頭をかく。
どっしりした雲から落とされる雪は衰える様子が無い。
「これは止まないね。……雪かきしとかないと」
誰に言うでもなく呟いて、彪は寝間着に手を掛けた。


和泉彪が藍沢彪になってからもう半年が経つ。

生まれてこの方浮いた話など一つもない彪に、どんな縁があったのか見合い話が転がり込んできたのが7か月前のことだ。
相手は、23歳にして実家の定食屋"あいちゃん"を継ぎ、彼女を男手一つで育て上げた父親と共に厨房を切り盛りする、藍沢偲乃。
小柄で華奢な体躯からは想像できないほど、力強く鮮やかな技を見せる料理人である。

可愛らしい顔立ちとどこか儚げな雰囲気を纏った彼女は、料理の腕とも相まって人気者だ。
冷静かつ強気な性格のためいわゆる愛嬌はあまりないが、逆に、顔と性格のギャップがイイ! 偲乃ちゃんになら踏まれたいなじられたい罵られたい!
という具合で、人気に拍車をかけていたりもする。

そんな彼女だ。わざわざお見合いなどしなくとも、引く手数多だった。
実家のことがあるので婿入り希望の制限を掛けたって、そんなの関係ねぇ! と言いきる輩が多々いるはずだった。
それなのに、偲乃は彪と見合いをし、夫婦になり、今に至る。一体どうしてこうなったのか。


一言で言ってしまうと、跡継ぎのためである。

お見合い当日。慣れないスーツを着込んでおどおどと様子を伺う彪に、偲乃はこう言い放った。

「私は仕事を辞める気は一切無い。家のことはあなたにまかせっきりになると思う。
 それに、正直に言って、あなたに愛情は求めていないの。跡継ぎさえ産めれば十分だから。それでも良かったら結婚してください」

つまり、あられもない言い方をすれば、夫という名の家政婦兼子種が欲しいということだ。
下手に好意を持った相手だとそれだけでは納得しない。彼女を想い、尽くそうとし、想われたがる。
それは人として当然の感情だと思うが、偲乃からすると面倒なことであった。

その点お見合いならば、相手はこちらに好意を持っていない。
最初から条件を提示しておけば――とても我侭で理不尽な条件だし――相当の物好き以外は呑まないはずだ。最悪、人工授精という手もあるのだし。

こういったあちらの思惑を、彪は瞬時に理解して、この人凄い正直だびっくりしたーと思いつつ、
「あ、はい。分かりました」
二つ返事で頷いた。彼も中々のイエスマンだった。
0508雪の日の夫婦2014/02/09(日) 10:45:10.66ID:AJiGjOQJ
「おはようございます…」
「おはよう」
下に降りると偲乃は既に仕込みを始めていた。

定食屋あいちゃんは、偲乃と彪の住居でもある。
一階はお店スペースで調理場兼台所とトイレが、二階が居住スペースで二人の部屋と風呂場とトイレが、それぞれ設置されていた。

偲乃の父親の亮太郎は、彪がここにやって来るまで偲乃と一緒に暮らしていたが、彼が越してからは近所に安い部屋を借りてそこから店に通っている。
部屋はまだあるのだから一緒に住めばいいとも思ったが、それを提案した途端、泣く子が更に大泣きしそうな目で睨みつけられたため、
それ以上言うことはしなかった。お義父さんは強い。

「今日は雪ね」
「うん。寒いね」
言いながら上着を着込んで外に出る。途端、身を切るような風が吹きつけてきた。
情けない悲鳴を上げながらドアを閉め、庭の方においてあるシャベルを持ってくる。
「こんなに雪が降るなんて珍しいなぁ…」
これも温暖化の影響か、と首を傾げつつ雪にシャベルを突き立てた。厚さは10cm程。
「さーむいー、さーむいー、さーむいーなーと」
即席の歌を口ずさみながら入り口周辺の雪を除けていく。
傍から見たら怪しいことこの上ない姿だが、こうやって馬鹿らしいことをしていないと、最近の彪は鬱っぽい気持ちに囚われるので仕方がない。


偲乃との夫婦生活は、大体があちらの思惑通りに進んでいた。

元々意思が弱く、ヘタレで、声を荒げる姿など想像もできないほど気の弱い彪である。
偲乃や亮太郎から言われたことを行い、必要に応じて邪魔にならない範囲のことをし、それ以外は自分の時間として大人しくしていた。

彪に割り当てられたのは、家事と、店が忙しい昼時と夕方はそちらの手伝いの二つだった。
どちらも決して楽な仕事ではないけれど、慣れればそこまで苦しいものでもなかった。
お客さんは、なんだかんだ偲乃と彪を祝福したし、亮太郎も彪を息子として可愛がった。

ただ、夫婦間の愛情という話になると、それはもう希薄なものだった。

誤解が無いよう述べておくと、偲乃は決して悪い人ではない。
人を不当に馬鹿にするような真似は決してしないし、料理やお客に対しての姿勢は生真面目そのものだ。
お見合いでの発言だって、今考えてみれば、相手が断ることを期待したものだったのだと分かる。
彪が即答した直後、とても焦った様子で何度も何度も確認してきたのだから。
今だって、あまりに情けない姿に呆れることはあっても、彪を軽んじることは一切無い。

しかし、相手に気を使うのと相手を愛することには、それこそ雲泥の差がある。
偲乃は、彪を嫌ってこそいないが、愛してはいなかった。少なくとも、彪の認識では。
どうして分かると問われれば、見ていれば分かると答えられる。彪に向ける表情は、言葉は、あくまでも親しい他者へのものだった。
恋しくて愛おしくてたまらない相手に向けるものでは、なかった。

それが悪いわけではない。そもそも、偲乃は、一番最初に宣言したのだ。
そして彪は、それを承知した上で今ここにいる。偲乃を責めるのはお門違いだ。
そう頭で分かっていても、この、ドロドロとまとわりついてくる暗い感情は払えなかった。
これだけじゃ足りないと、もっともっと、彼女の全部が欲しいと、彪の心は駄々をこねた。

強い意思に惹かれた。美しい姿勢に惹かれた。
黒曜石のような目に、艶やかな黒髪に、ほっそりとした傷だらけの手に、しなやかな身体に、きれいな心に、惹かれた。

あれだけ言われたにもかかわらず、彪は、偲乃のことが、好きで好きでしょうがなくなってしまったのだ。
0509雪の日の夫婦2014/02/09(日) 10:49:21.23ID:AJiGjOQJ
「…ゆーきーやこーんこ、あーられーやこーんこ、ふってもふってもまーだふーりやーまぬ」

またしてもどす黒い感情が心に広がって行って、彪は慌てて口を動かした。
訳もなく目の奥がじんわりと熱くなってくる。畜生めこれだから童謡は困るのだ。妙に物悲しくなってしまう。
「いーぬーはよーろこーびにーわかーけまーわり、」
「雪かきはそこまででいいから」
「ぅおわっ!?」
突然後ろから聞こえた声に跳び上がる。慌てて振り返ると、偲乃がどこか呆れたような笑みを浮かべていた。
「お疲れさま。朝ご飯できたわ」
「あ、うん。…っと、ありがとう」
「……どうしたの?」
ふと気遣わしげな声がかけられる。慌てて目元を拭い笑ってみせた。
「寒気にやられちゃっただけだよ。大丈夫。…ご飯食べたいな」
「…そうね」
偲乃は少しの間だけ探るような目を向けていたが、笑顔を保ったままでいると諦めたように溜め息をついた。
それでいい、と彪は思う。この感情のせいで偲乃から離れることには、なりたくないから。


雪もあって、その日、お客はほとんど来なかった。

「雪ですいてるかなと思って」なんて理由で来た篠原夫妻を除けば、飛び込みのお客が3人ほど。普段の賑わいからするとこんなことは珍しい。
……まぁあの二人に関しては、偲乃と話すためにわざと店がすいてる時を狙ってやって来ているので、普段通りと言えば普段通りなのだが。

そんなことを考えながら部屋の戸を開けると、偲乃がいた。
二つの枕がある一つの布団の上に腰をおろし、ゆったりした仕草でスケッチブックをめくっている。

「……ってちょっと待って!」
「ん? あ、おかえりなさい」
「え、うん、ただいま。…じゃなくて! 偲乃さんあの、それ、そのスケッチブックはっ…!」
「彪が描いたのよね? すごく上手」
「っ……!」
感心した様子で頷かれ、彪は言葉を失くした。
「……風呂行っただけなのにこんなことになるなんてっ……!」
「え、あれ、見たらいけなかった?」
「いや…あの…目の前は止めてほしいです…」
「そう、なの?」
不思議そうに言いつつスケッチブックを閉じる偲乃を見て、ようやく気が静まってくる。

何を隠そうあのスケッチブックは、彪が暇な時に色々なものを描きためているものなのだ。
さほど巧くもない、完全なる自己満足の捌け口を熱心に見られるなんて、恥ずかしすぎて埋まりたくなってくる。
「……きれいな絵なのに」
「…お願いだから…アレのことはこのくらいで…」
「ふぅん…そうだ、まえから聞きたかったんだけど」
「…え、な、なに?」
「そこの木工具ってあなたのよね」
「う、うん」
「彪って、大工仕事とかもできたりするの?」
「ええと…簡単な日曜大工の範囲内なら…」
質問の意図が掴めず頭の上に疑問符を飛ばす彪の一方で、偲乃は頷いたきり黙りこくってしまった。
0510雪の日の夫婦2014/02/09(日) 10:52:47.43ID:AJiGjOQJ
(えっこれどういうこと? ていうか偲乃さんがわざわざ俺の部屋来たってことは致すってことだよね? 今日休み前だし、そうだよね?
 あれでもいつもはこんな話しないような…来て脱いでやって終わりだよね…? え、あれ、どういうことだ?)

大混乱している彪の前で、偲乃は小さく溜め息をつくと自分の服に手をかけた。
「ちょっ、し、偲乃さんっ!?」
「なに?」
「いや何ってあの…ええと…あれ…?」
「……いつものことでしょう?」
つまり、いつもの通り今日もやりますよ、ということらしい。そこまで把握して、彪は慌てて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待って灯り消すから」
「ん、ありがと」
「わぁ待って待って脱ぐのはやい!」
ムードの欠片もないが、大体いつも通りの光景である。
彪が灯りを消すのと偲乃が下着を脱ぎすてるのはほとんど同時だった。月明かりが彼女の身体をぼんやりと浮かび上がらせる。
ただでさえ白い肌が月の光に照らされて一層白く見えた。

「………………」
「……彪?」
「…あっ、ご、ごめっ、見惚れてた!」
急いで毛布を羽織らせると、偲乃は何故か形容しがたい表情で笑う。
「…あなたって…」
「うん?」
「……なんでもない」
「そ、そう?」
「そう。ほら、早くして」
「はいっ」
恐る恐る手を伸ばす。別に今日が初めてというわけではないが、それでも、彼女の身体に触れる時はいつもいつも緊張した。なんというか――
「…別に、そんな怖々としなくたって、私は壊れないわよ」
「…こ、心を読まないでほしいのですが」
「顔に出てるわ」
さらりと返される。

「………………」
返事が出来なかったので目の前のことに集中することにした。
白くて柔らかい身体。ふにふにした胸。薄いとか控えめとか形容できるけれども、彪はこれが好きだった。
小さくても十分柔らかいし。可愛らしいし。可愛らしいし。

「…っ…」
偲乃が小さく息を呑む。
行為の最中ほとんど声を漏らさない彼女だが、声以外の反応はとても素直だ。よく注意して見ていると面白いくらいに反応してくれる。例えば、
「……!」
乳輪をなぞると身をよじるとか、
「……っふ、……!」
ツンと立った乳首を優しく撫でると目をぎゅうっと閉じるとか。
0511雪の日の夫婦2014/02/09(日) 10:57:32.90ID:AJiGjOQJ
右手で乳房を愛撫しながら空いている方の胸を口に含む。小さく肩が跳ねた。
毛布がずり落ちないよう手で押さえながら口を動かす。乳首を舌先でつついてやると頭が抱えられた。
乳房を舐めたり、唇で食んだり、指先に力を込めるたびにぴくりぴくりと身体が震え、少しずつ汗ばんでいく。
以前よりは上達したとはいえ、まだまだ未熟であろう己の手で偲乃が感じている。その事実は、彪に大きな喜びを与えた。

「っ…あき、ら…」
「…う、うん」
小さいおねだりに従い下側に手を伸ばす。本音を言うともう少し味わっていたいところだが、そんなことは望まれていないだろう。
しっとりと汗ばんだ身体を布団に横たえる。そろそろと手を寄せると秘部は十分潤っていた。
念のため愛液をたっぷり指に絡ませてから中に沈ませる。瞬間、
「――っ!」
偲乃の身体が弓なりにしなった。
いつもより早い、などと感動しつつ、余計な刺激を加えないよう頭を撫でる。

偲乃は少しの間荒い息をついていたが、ある程度落ち着いたのか彪に手を伸ばす。
「……ね、きて」
「平気?」
「うん…大丈夫、だから」
いつもは冷静な瞳を熱で潤ませ、上気した頬でこんなことを言われてはたまらない。

ズボンを脇に放って華奢な身体に覆いかぶさる。すらりとした足を割り、熱い秘部に剛直を押し当てると小さい深呼吸が聞こえてきた。
「…ちから、ぬいてね」
「……ん」
もう一度頭を撫でてなるべくゆっくり差し込んでいく。
最低限濡れているとはいえ、ただでさえ小柄な偲乃の中は大分狭い。熱く濡れた膣壁に締めつけられて、気を抜いたらすぐにでも達してしまいそうな刺激を受ける。

「っ…ぁ…ん…!」
「…っ…しの、さ…だいじょ、ぶ…?」
「ぅ…ぁっ…んぅ…」
「動く、よ」
宣言してから腰を軽く前後させる。
ゆっくり、ゆっくりと自分に言い聞かせているが、必死に声を我慢している偲乃を見ていると、理性を捨てて滅茶苦茶にしてやりたい衝動に駆られた。
それをどうにか堪え、なるべく優しく、緩やかに突き上げる。
「…っふ…ん…くぅっ、ぁ…」
「……かわいい」
「んんっ!」
ぎゅうと締めつけられる。

一瞬だけ咎めるような目が向けられるが、ぴんと立った乳首を弄るとすぐに顔を逸らした。両手で顔を隠し、自身の痴態を彪に見せまいと顔を背ける。
が、そんな努力もむなしく、偲乃の身体は淫らに動いて彪を喜ばせた。
身を引くと逃さないとばかりに絡みつき、突き入れるとぐちゃぐちゃにふやけて包みこんでくる。結合部は互いの愛液でびっしょりと濡れていた。

いつしか彪は気遣いを忘れ欲望のままに腰を打ちつけていた。
偲乃も、声こそ抑えているものの、がくがくと腰を震わせ、身をよじり、快楽を与えられる悦びに震えている。
「…ぁきらっ…も、ぁ…りゃ、めぇ…!」
「はっ…俺も、もすこし、だから…」
「ぅぅ、あ…も、だ…ひぁっ…ふ…ぅ…!」
「っ…偲乃さん…偲乃…!」
「ゃ、あ…ッ――!」
二つの身体が一際大きく震えた。何度も何度も吐き出される白濁液で、偲乃の身体を埋めていくのを感じる。
大きく息をつきながら、同じように息を吐いている偲乃の上に倒れ込む。互いの呼吸が重なるこの時だけは、感情のままに触れていたかった。
0512雪の日の夫婦2014/02/09(日) 11:01:03.63ID:AJiGjOQJ
「……ん……」
まだ夜明け前の暗い中で偲乃は目を覚ました。手で探り当てた時計を見ると短針は4と3の間を指している。
起きるにはまだ時間があることを確認して、暖かい腕の中に身をひそめる。ぐっすりと眠りこんでいるのだろう。彪はぴくりともしない。

「…中々うまくいかないわ…」
小さく溜め息を零す。
結婚して6カ月も経つのに、体を重ねた回数だって両手の指を軽々と越えるのに、偲乃と彪の心は遠いままだった。
その原因は間違いなく偲乃にあるのだけれども。


愛情を求めていないと言ったのは本音だった。
実際、彪と暮らすようになってからも、彼に媚びたり、必要以上に頼ることはしないよう自制していた。
とにかく気が弱くてヘタレで女々しくて情けない相手なんて、そも好みですらないのだから、まかり間違ってもほだされたりはしないだろうとも思っていた。

――それなのに、こうだ。どうやら心というものは、自分で思っていた以上にどうしようもないものらしい。

彪を好きになるはずがない。そう思っていたはずなのに、いつの間にか、気付いたら彪を探すようになっていた。
いつの間にか、あの気弱な目に見つめられることが、優しい声で名を呼ばれることが、筋張った手に怖々と触れられることが、嬉しくてたまらなくなっていた。
いつの間にか、困ったような笑顔の持ち主が、欠かせない存在になっていた。

なんて勝手な話だろう。我ながらそう思う。散々我侭を押し付けておいて、自分が言ったことを反語にするなんて。
けれど、このままでは嫌だった。もっと求めてほしいと思った。偲乃の意思なんて捩じ伏せて、彪の好きなようにしてほしいと願った。
我侭だと呆れられてもいい。勝手すぎると怒られたっていい。
ただ、嫌いにならないで、離れないでいてくれれば、どんなに酷いことをされても構わないとすら思った。

「……直接言ったら、どんな反応するのかしらね」
想像するだけで悶死するほど恥ずかしいから、言えたとしても相当先の話になるだろうけれど。偲乃は目を閉じ夢想する。

不器用で、頑固で、偏屈で人見知りの上に、あんなとんでもない条件を突き付けた自分を受け入れてくれたのだ。
きっと、優しく笑って受け入れてくれるのではないだろうか。
そう思う一方で、流石に拒まれるのではと不安にもなる。
今まで彪に拒まれたことは一度もないけれど、ないからこそ、拒まれた時の自分が想像できなくて、偲乃は自分に対する呆れの笑みを浮かべた。

けれど、このままの距離ではもう満足できない。
どうにかして、彪のことをもっと知って、偲乃のことを知ってもらって、互いが互いを理解できるようになりたいのだ。

できないことはない、と思う。そのためのヒントも、今日、こっそりと聞けたのだし。
『夫婦円満の秘訣? うーん…ちゃんと話すこと、かなぁ』
『そうだな。自分の気持ちを言葉にして相手に伝えることは大事だ』
尊敬する先輩方の言葉を思い出し、少しだけ考えて気合を一つ。

「……大好きよ、あきら」

いつか直接言えますようにと強く願い、穏やかに眠る彪にすり寄って目を閉じた。
05134342014/02/09(日) 11:04:19.69ID:AJiGjOQJ
ここまで!

夫婦なのに両片思いとか、いつも頭に花生えてるようなのしか書いてないからたまには切ないのをとか思ったんですが…
これじゃないと叫びたい。俺には頭悪い話しか書けないのがよくわかった畜生め

色々な意味でいつも以上にひどい話ですが、少しでも暇つぶしになれば幸いです
0514名無しさん@ピンキー2014/02/10(月) 12:00:32.40ID:Uj7WT2dx
>>513
GJGJ 変わらず本編で満足させた上に続きを期待させてくれる話です
素直になれた後を想像するだけでにやにやが止まりませんね
0515名無しさん@ピンキー2014/02/26(水) 10:44:35.90ID:6nK+ADOB
>>434
茜可愛いよ茜
相変わらずGJ!
結婚式編楽しみにしてます!

「雪の日の夫婦」
GJ!続き読みたいなぁ
両片思い、切ないけど何処か優しい
踏まえたうえでの気持ちと心、身体の交わる姿が見たいです!
05164342014/03/09(日) 21:22:22.82ID:e2DX1qMl
藍沢夫妻の続きができたので投下します

エロ遠い、エロ薄い、本番あってないようなもの、人によっては不快になる表現あり
等々好き勝手やっておりますので「夫婦の墓参り」をNGでお願いします
0517夫婦の墓参り2014/03/09(日) 21:26:25.89ID:e2DX1qMl
藍沢彪は慄いていた。
別に辛いことや悲しいことがあったわけではない。むしろその逆だ。最近、
「……彪、起きてる?」
「あ、うん。どうしたの?」
「ええ、と…寒くて」
「そ、そっか。…あの、アレだ、そのー…に、人間カイロとかどうでしょう」
「……お願い」
気が強くしっかりしていて甘える姿など見せなかった筈の大事なお嫁さんが、藍沢偲乃さんが、
なんでだかやたらと理由を付けてくっついてくるようになったのである。訳が分からない可愛い。

「……あたたかい」
「よ、よかった。寒いのは辛いもんね」
「うん」
ちなみに本日の最低気温は6度だ。日中はうららかな春のぽかぽか陽気だった。当然夜もそこまで冷え込まない。
「今日は、なにをしてたの?」
「昨日と同じだよ。家事やってから将棋の駒作り。もう少しで全部そろえられるかな」
「そう。…ごめんね、おじいさん達が面倒なこと頼んじゃって」
「平気平気。細かい作業は好きだし、頼みごとをしてもらえるのも嬉しいよ」
「ならいいけど。…完成したら見せてね」
「うん」
「一番にね?」
「うん、分かってます」
言いながら、抱きしめた状態のまま頭を撫でてみると、偲乃は満足げに目を細めた。
日向で寝転んでるかゴロゴロ言いながら爪を出し入れしてる猫みたいだ、と呆けた頭の端で思う。
それ以外の頭の中は「偲乃さん可愛い超かわいいなんなのコレなんなんだよこれ」という言葉で埋め尽くされていたが。


どうしてこうなったのか、正直なところ、彪にはまったくもって覚えが無い。
この感情を伝えたわけでもないし、彼女からの印象が変わるような劇的な言動をしたわけでもない。筈だ。
ただ、思い返してみれば、偲乃がこのようにくっついてくれるようになったのは、二度目の雪の日からだったような気がする。

(いやでもあの時だって別に何もしてないよなぁ。
「自宅周りの雪かきしながら"恋人といる時の雪って特別な気分に浸れて僕は好きです"って言ってみろリア充どもーっ!」とか思いながら一日中雪かきしてただけだし。
 お客さんだって茜さん待ちの葵さんしか来なかったし。……そういえば、偲乃さんと葵さん、随分話しこんでたなぁ。何話してたんだろ。……もしや葵さんが何か言っ)
「ふぁっ?! ひ、ひのひゃ、にゃに?!」

正解に辿り着くよりも早く偲乃に両ほっぺを引っ張られ、彪は情けない悲鳴を上げた。
「今何か考えてたでしょ」
「か、考えてまひひゃけど!」
「私がいるのに」
「ひのひゃんのこと考えてひゃんだよ!?」
「…………」
「……し、偲乃さん?」
不意に頬が解放されて目を瞬いた彪の一方、偲乃は何かを堪えるようにぷるぷると震えている。
どうしたのだろうと顔を覗き込むと、驚くくらい真っ赤な仏頂面が目に入ってきた。どうしよう俺何かやっちゃったのかな。
0518夫婦の墓参り2014/03/09(日) 21:29:07.24ID:e2DX1qMl
「あの…偲乃さん…?」
「……もう寝る」
「う、うん…? て、あ、そうだ! 偲乃さんごめんちょっとお願いが!」
「……なによ、もう」
彪の胸に顔を埋めたままくぐもった声だけが返ってくる。眠いのだろう。
「ごめんね。でも、大事なこと思い出して」
「……なに」
「来週の日曜、休ませてもらってもいいかな。地元に帰りたくて」

 瞬間、空気が凍った、気がした。

「……ど、ゆう、こと?」
恐る恐るこちらを見た偲乃は何故だか表情を凍りつかせていた。あれその日用事入ってたっけ、と思い返しつつ、彪は呑気に言葉を続ける。
「いや、そのまんまの意味なんだけど…まずいかな?」
「…いや…まずいとか、じゃなくて…そりゃ、彪がそうしたいのなら私に止める権利なんて無いけど…」
「そうかな? いやでも、その日何か手伝うことがあるのならその次の週でも平気だよ?」
「次の週って…あの、あなたが忍耐強いのは知ってるけど、そこまで我慢しなくったっていいのよ?
 ていうか、わざわざ宣言するものでもないんだから…」
「え、宣言は必要じゃない? お店やってる日は無理だし、休みだって仕入れが入ることもあるんだからさ」
「お店って…まぁ確かに急にいなくなられちゃうと困るけど…でもそこまで律儀にならなくても…」
「いなくなる? 誰が?」
「……うん?」

どうも話が噛み合っていない。

「…待って、彪。来週の日曜、休みたいのよね? 地元に帰りたいから」
「うん。事前に言っておかないと、って思ったんだけど」
「…そう…よね。……その、帰ってきて、くれる?」
「えっ帰ってきちゃ駄目かな!?」
夜には帰ってこないと次の日辛いんだけど、と零すと、偲乃は少しだけ硬直して、次いで深々と息を吐いた。
「……馬鹿だわ、私」
「偲乃さんが馬鹿だったら俺は大馬鹿だよ!?」
「そっちの馬鹿じゃなくて。ていうかあなた馬鹿じゃないでしょ」
「…馬鹿だよー…体育と技術家庭科以外は全滅だよー…」
「だからそっちじゃなくて」
もう一度溜め息をついた偲乃は、どこか安堵した様子で彪にすり寄る。反射的に速まった鼓動を耳にした偲乃は頬を緩ませた。

「…まぁ、それなら、いいわ。ご家族に会うの? それともお友達?」
「いや、墓参り行こうと思って」
「……ご家族はご健勝よね?」
「うん。子どもの頃お世話になった小母さんの7回忌なんだ。
結婚してから行くのは初めてだし…あ、もしよかったら偲乃さんも行く? わりと遠いんだけど」
「行くわ」

即答であった。

その後は、少しばかり話をして、おやすみのちゅーとやらをしてから眠りに落ちた。これもここひと月程で築いた習慣である。


藍沢彪は慄いていた。
お嫁さんが積極的で、毎日が幸せすぎて、どんどん我慢が効かなくなっていて、慄いていた。
もしかしたら偲乃は、自分のことが好きなんじゃないかなんて、とんでもない勘違いをしてしまいそうで、怖くて怖くて仕方がなかった。
0519夫婦の墓参り2014/03/09(日) 21:31:28.75ID:e2DX1qMl
一週間はあっという間に過ぎていった。
朝起きて、昼間は懸命に働いて、夜、偲乃とのんびりした時間を過ごしてから一緒に眠る。
一日が過ぎるのが早くて、周りが猛スピードで進んでいるのに自分だけ止まっているような、そんな気分になった。
驚くほど幸せな筈なのに、何故か、置いていかれているような――そう、世界から置いていかれているような気がして、彪は酷く心細かった。

おかしなことを感じている自覚はある。
愛しい人が笑いかけてくれて、触れてくれて、触れさせてくれて、自分のことを知ろうとしてくれて、何が怖いんだと言いたくなる。
偲乃も自分を好いてくれたのだと、いっそ勘違いしてしまえば良いだろうにとも思う。
あの葵だって「恋はある種錯覚みたいなところがあるな」と言っていたのだから。

それでも、何故か、この状況を喜んで受け入れる気持ちにはなれなかった。
どうして偲乃がこうなったのか、自分は彼女に好いてもらえる人間なのか、分からないまま、ただずるずると流されるのはどうにも嫌だった。

「……うん」
完全に自己満足だけど。彪は思う。

きちんと偲乃に告白しよう。今までは、拒否されて、離れることになるのが嫌で考えないようにしていたけれど。
好きだと言って、受け入れてもらえたら万々歳。もし駄目だったら、これまでのお礼を言って潔く離れよう。
偲乃なら、彪がいなくなったって、すぐにもっと良い人を見つけられるから。
今までは、それを認めるのが嫌で、彼女の隣を他人に譲りたくなくて、夫というこの上なく強力な立場にしがみついただけだ。
そんなことはもう、止めにしなければ。傷付くのが怖くて逃げてばかりじゃ、彼女の隣にいることに負い目を感じてしまう。それは、すごく、辛いから。
0520夫婦の墓参り2014/03/09(日) 21:34:47.01ID:e2DX1qMl
「…偲乃さん、今平気かな」
「彪?」
というわけで、彪は初めて自分から偲乃の部屋を訪れた。
「珍しいわね、あなたが来るなんて」
「う、ん。あの、なんていうか…ええと、言わなきゃいけないことが、あって」
「……どうしたの?」
疑問9割怯え1割の光を目に宿した偲乃が対面に座る。
風呂上がり故か彼女の頬はうっすらと紅色に染まっていて、ああもうきれいだなぁと現実逃避をしたくなった。

「ええと、ですね」
「うん」
「あの、最近…じゃないや。えーと、わりとまえから、なんだけど」
「…うん」
「その…なんていうか…あの…」

しまった言葉が出てこない。

自分の語彙力の乏しさに泣きたくなった彪だが、偲乃はあくまでも真摯にこちらの話を聞いてくれている。
その、人にも仕事にもまっすぐな姿勢を最初に好きになったのだ、と思いだして、彪の口は自然と動いた。

「俺、偲乃さんのことが、好きです」
「うん、知ってるわ」
「…………はい?」

今なんと申されたか。

「えっ、ちょあの、待って。偲乃さんあの、知ってるって、え?」
「いやだから、彪が私のこと好きだってこと。それで、わざわざ宣言したってことはなにかあったのよね。どうしたの?」
「ま、待ってくださいちょっと待って。知ってるって、あの、えと、いつから?」
「確信したのは10月の半ば頃だけど…ってまさか、あなた、私が気付いてないとでも思ってたの?」

思ってました。

二の句が継げなくて黙り込んだ彪を見て、偲乃は思いっきり呆れ顔になった。
「あのねぇ…そりゃ、茜さんみたいに壊滅的に鈍感な人だったら気付かないでしょうよ。でも、生憎私は人の機微には敏感なほうなの。
 お客さんが本当においしいって思ってくれてるかなんて、言葉だけじゃ分からないんだから」
「……さすがです」
「どうも。で、あんたね、自分がすっごく分かりやすいってこと自覚したほうがいいわよ。
 まず第一に顔に出すぎ。目が合っただけで真っ赤になって嬉しそうな顔されたらすぐ気付くわ。
 あと、意図的にかどうか知らないけど言葉にも出てる。可愛いだのきれいだの凄いだの。確かに好きって言われたことはないけど、さすがに気付くわよ」
「……い、言ってましたか、俺」
「思いっきり言ってたわ」

うわー恥ずかしーはははー
(10月半ばって、それ俺が自覚するよりも早いじゃないっすか。なんつーか、もう、俺は駄目だははははー)
0521夫婦の墓参り2014/03/09(日) 22:09:46.00ID:e2DX1qMl
「……思いつめた顔して来るからなにかと思ったけど。もしかして、それを言いに来たの?」
「…うん…そうです…」
「私が気付いてないと仮定して。言って、どうしたかったの?」
「迷惑じゃないようなら今までどおり置いてもらって…迷惑だったら潔く実家に帰るかーと…」
「ふぅん。で、今はどうしたいの?」
「恥ずかしいので今すぐ逃げたいです…」
「却下」
即答だった。

「…だ、だめかな」
「駄目よ。絶対駄目。…大体、漸く言葉で言ってくれたのに、逃がすわけないでしょ」
偲乃の声は嬉しそうに弾んでいた。思わず顔を上げると、ほとんど同時にぎゅうっと抱きつかれる。
石鹸の優しい香りが鼻孔をくすぐって頭がくらくらした。

「……偲乃さん」
「そろそろ呼び捨てにしてほしいんだけど」
「え゛」
「同い年でしょ。誕生日だけなら私の方が遅いし」
「…し、偲乃さ…偲乃?」
「うん。聞いてる」
「……だいすきです」
「私もよ。……もっと早くに言ってたら良かったのにね。ごめん」
「偲乃が、謝ることは、ないと思うな」
「あるの。あんなこと言ったくせに好きだなんて、都合良すぎるって思ったのよ。でも、ちゃんと、言えばよかった」

震えた声に顔を覗き込むと、想定外に気弱な視線が返ってきた。
守りたいなぁ、とぼんやり思って、自分はそれを言うことが許されているのだと思いだす。胸の内が熱くなった。
「……偲乃?」
「なぁに?」
「あの…キス、してもいい、ですか」
「うん。…うれしい」
「……それ以上のことを、しても?」
おっかなびっくり求めた言葉は面白いくらいに震えていたが、偲乃は心底嬉しそうに微笑んだ。
「うん、して。たくさん、して」
0522夫婦の墓参り2014/03/09(日) 22:13:07.47ID:e2DX1qMl
熱に浮かされてるみたいだ、と彪は思った。頭の芯がぼんやりとぼやけて、なのに身体は燃えるように熱い。自分も、偲乃も。

「んっ…あきらぁ…そこばっか、ぅ…やだぁ…」
「…もうちょっと」
「も…っふぅ…ん…!」
偲乃の文句を先送りにして右胸にしゃぶりつく。甘い声が喉の奥で殺された。
もうかれこれ10分以上も上半身ばかりを弄っているのだから、いい加減焦れてきたという偲乃の気持ちも分かる。分かるのだが。
「…おちつく…」
「こっちはおちつかな、っひゃん!」
乳房をふにふにと唇で食んだり、乳首に優しく吸いついてみたりするのが想像以上に心地よくて止められないのだ。
それに、一々びくりと反応する偲乃を感じるのも楽しい。

「ぅ…もぉ…ばかぁ…!」
「どーせ俺は脳みそまで筋肉でできてますよー」
「そっちじゃっ…なぃぅんっ…やっ、あきら…そこ」
「ん、これ?」
うなじを指先でくすぐると偲乃は逃れるように身をよじった。どうもここが弱いらしい。
「ふぁっ!? あ、あきっ…ぅ…だめ、あきら、だめっ…」
「どうして?」
反射的に尋ねると、真っ赤な顔で涙に濡れた黒曜石の瞳が向けられる。
「…まだ、もらってない、のに…きちゃう、からぁ…」

理性という名のストッパーは吹き飛んだ。

「っや、まって、あきら…や…ぁっ――!」
弓なりにしなる身体を抱きしめる。口に含んだままのぴんと張り詰めた乳首を舌先でくすぐると、偲乃はいやいやと首を振った。
とはいえ、彼女の両手は縋るように彪を抱きしめているのだから、本当に嫌がっているわけではなさそうだけれど。

「まっ…ぁ、あきらっ、も…んぅ、んんっ、ゃだぁ…!」
「偲乃、ごめんね。もうちょっと我慢して」
「やぁっ…も、ほしぃのに…!」
「うん、ごめん。でも、偲乃、すごく可愛いんだ。もっと見たい」
そう言ってキスを落とすと、偲乃は泣きだしそうな顔で身体の力を抜いた。
ありがとう、と頭を撫でる刺激だけでも感じるのか、鼻にかかる声をもらす。

(おかしいなぁ…俺、Sじゃないはずなんだけど…すごいなかしたい。二つの意味で)
完全にいかれた思考の端で思いながら、今度は後ろから抱きかかえるようにして座らせる。
あぐらの間にすっぽりと納まった偲乃の、頬、耳たぶ、首筋にと唇を寄せて細いうなじに吸いついた。
「ぁっ、やぁぁっ! あき、ゃだ、そこやだぁ…!」
「分かってる。こっちもするから」
「ちがぅ、のっ…ぁ…ぁあ…」
どうやら声を押さえることも忘れてしまっているらしい。
愛らしい声を零す偲乃に口元を緩めながら、ちゅうちゅうとわざと音を立ててうなじを吸う。
時折なめたり、強く吸いついて赤い痕を残すたびに偲乃は大きく震え、両手で胸を転がすだけで背筋を逸らす。
自身に身を委ねきっている彼女が愛おしくて仕方なかった。
0523夫婦の墓参り2014/03/09(日) 22:16:24.32ID:e2DX1qMl
「…好きだよ」
「っや…ぁぅ…あきら…」
「うん、大好き。…ほんとに、俺は幸せ者だ」
「ぇ…ぁ…〜〜っ!?」
しみじみと呟くと偲乃の身体が大きく震えた。一瞬何が起こったのかついていけなくなる。
肩で息をする彼女が振り向いて、涙と色で潤み上気した表情を見せたところでようやく達したのだと理解した。

「…ほん、とに…?」
「えっ、えと、ごめんなにが?」
「ほんとに、しあわせって…思って、くれてる…?」
「思ってる! 思ってます! 俺以上の幸せ者はいないよ!」
脊髄反射で心の底から即答すると、偲乃は潤んだ表情のままふわりと微笑んだ。
力の入らない身体を引きずって、半ばもたれかかるようにして彪に縋りつく。

「…よかったぁ…」

耳元で、普段からは想像もつかないほど蕩けた声で、言われて。彪は自分の中の何かが致命的になってしまったことを、妙に冷静な思考で認識した。
「……偲乃」
「ん…なぁに、あきら」
「俺は、どうすればいいかな」
「…なにを?」
「どうすれば、この、偲乃が好きだー! って感情を、伝えられるかな」

この上ないほど真剣に言ったつもりなのに、きょとんとした偲乃は、次の瞬間たまらないというように噴き出した。
頭の上に疑問符を飛ばす彪の前で、くすくすとおかしそうに笑っている。
「……変なこと、言った?」
「ふふっ…ううん、ぜんぜん。でも、嬉しくて、笑っちゃったのよ」
納得はいかなかったが、楽しそうに目じりを下げる彼女を見ているとなんだかどうでもよくなってきた。一緒になって笑い声を零しながら偲乃を布団に押し倒す。

ズボンと下着を取り払うと秘部はしとどに濡れそぼっていて、またしても胸がいっぱいになった。
「…俺は、すごく幸せだよ」
「それ、こんな状況で言う台詞かしら」
「言いたくなったから言っちゃった」
「……私も、幸せよ」
「よかった」
どちらからともなく口付ける。互いの唇を夢中になって味わいながら、猛る剛直を秘裂に差し込む。

熱くぬめるひだは蕩けそうな喜悦を与えたが、彪はゆっくり労るように肉壁をこすった。
激しい快楽を得ることよりも、今は、互いの温度を感じていたかった。

「っは…あき、らぁ…」
「ん…好きだよ、偲乃」

偲乃は嬉しそうに笑っていた。彼女の目に映る自身も、この上ないほど能天気に笑っていた。

(ああ、しあわせ、だな)

深い喜びと思慕を携えて、二人はほぼ同時に天辺に達した。
0524夫婦の墓参り2014/03/09(日) 22:21:20.67ID:e2DX1qMl
「……本当に遠かったわね」
「そうなんだよ。もうちょっと来やすい所にお墓作ってくれたらよかったのにね」
次の日の昼すぎ。二人は彪の地元で一番高い山の頂付近にいた。

眼下の町のみならず遠い先まで見通せるその場所は、山の頂上にあるお寺に隣接する墓地だ。
計画通り墓参りを終えた二人は、椅子に座ってここまで登ってきた足を休ませていた。
天気は快晴。遠くの地平線には海も見える。空の蒼と海の藍が混ざり合ってまさに絶景だった。

「…でも…すごくいい眺め。冴子さん、この眺めが気に入ったからこの場所に決めたのかしら」
「どうだろう? "私が死んだら誰も来れないような場所で誰にも邪魔されず眠ってやる!"って豪語してたから」
「面白い人ね」
「そうなんだよ」

冴子――小田切冴子というのが、二人が弔った墓の主である。豪胆且つ口が悪く、性根は優しいのにそれを認めようとしない捻くれ者。享年93歳。大往生であった。

「…ほとんどの人に悪い人だって誤解されて、誤解を解く努力もしなくってさ。
 旦那さんもいないし、家族と縁も切れてたとかで…お葬式も、ほとんど人が来なくって。
 …あの時は悲しかったなぁ。人一人が亡くなったっていうのに、清々したなんて言う人もいたんだ」
「言っていいことと悪いことの分別が付かない愚か者ね」
「そうだね、今はそう思う。…けど、当時は高校生だってのに分からなくて、随分悩んだんだよ。教えてもらった遊びも手に着かなくなっちゃって。
 夏休み全部使って自転車旅行したこともあるんだよ」
「……初耳なんだけど」
「そうだっけ?」

穏やかな微笑に影はない。それを確認して偲乃は心の中で安堵の息をついた。
過去を引きずっているわけではなく、今と過去の区別を付けて、大切な思い出として語っている表情だ。

「言った気になってたなぁ。…なんか、なにをすればいいか分かんなくなってさ。どうにもこうにも混乱して、嫌になって"よし、走るか!"って」
「"よし、走るか!"って…すごい勢いね」
「あの時はわりと必死だったんだ。夏休みの前までバイトしてお金貯めて、夏休み全部の時間とバイト代をつぎ込んで、北海道一周旅行。
 …まぁ、ほとんど野宿だったし色々大変だったから、他人には絶対に勧めないけどね。て言うか止める」
「無事にここにいてくれてよかったわ。で、なにかふっきることはできたの?」
「ぜーんぜん!」

あまりにもあっさりと笑われて偲乃は少しだけ絶句した。呆然とした表情が可笑しかったのか、彪は無邪気な笑顔を見せる。
0525夫婦の墓参り2014/03/09(日) 22:23:33.89ID:e2DX1qMl
「北海道一周しても、なーんにも変わらなかった。俺は落ちこぼれのままだし、冴子おばさんも嫌われ者のまま。でも、そういうもんなんだって分かったよ。
 周りが変わるのを待ってるんじゃなくて、変わらない世界の中で、どうやって生きていくかなんだなって思った。それで、少し楽になった」
「……そう」
なんとなく頭を撫でるとくすぐったいと笑われた。
それでも振り払うことはしない彪が、たまらなく好きなのだと伝えたら、どんな顔をするだろう。

「…それに、周りは変わらなかったけど、俺は変わったと思う。
 旅行から帰ってから、お父さんに"これ以上勉強でやってくのは無理だから高校出たら働く"って言えたんだ。最初は反対されたけど、結局あっちが根負け」
「あなたが、あのお義父さんに? すごいわね」
「我ながらそう思う。…色々大変だったし、散々迷ったけどさ。これでよかったんだなぁって思えるよ。…偲乃たちにも会えたし」
唐突に名を出されて偲乃は少しだけうろたえた。優しい微笑を湛えていた彪は、そういえば、と笑みを深くする。

「冴子おばさんに"お前は絶対に結婚しろ"って言われたことがあるよ」
「冴子さんに? ええと…どうして?」
「"私は一人の方が良かったし、一人でいるのを後悔したことはない。けどお前はよわっちいから、いい人を見つけて結婚しろ"って」
「……優しい人ね」
「俺はそう思う。…生きてるうちは無理だったけど、こんな素敵なお嫁さんを紹介できて、よかった。ありがとう、偲乃」

不覚にも。不覚にもその一言は、偲乃の琴線に触れた。
熱くなる目頭を押さえて俯くと、彪は仰天した様子で偲乃の肩を抱く。暖かい手の温度が優しくてますます涙が溢れてきた。

「……あきら」
「なっ、なに!? どうした!? なにか持ってくる!?」
「…ううん、いらない。…なにも、いらないから…傍にいて」
「わ、分かった!」

ぎゅうっと力強く抱きしめられてどうしようもなく嬉しくなる。大きな背中に手を回すと腕に込められる力が強くなった。

愛しい人の肩越しに見上げた空は、どこまでも深く青く澄んでいた。
05264342014/03/09(日) 22:26:55.51ID:e2DX1qMl
ここまで!
途中エラーが起こって投稿に間が空いてしまい、申し訳ありませんでした

本当はシリアスからのラブラブになるつもりで、そのつもりで書き始めたのですが
…最初っからお花畑全開でどうしてこうなったマジで。マジで

いつも閲覧・コメントまで頂きありがとうございます。嬉しく思っています
少しでも暇つぶしになりましたら幸いです
05304342014/04/17(木) 21:16:31.22ID:jN4WETeV
保守代わりに小ネタ投下
エロなしな上誰が得するんだって話なので必要に応じて「小ネタ」をNGでお願いします
0531小ネタ2014/04/17(木) 21:20:17.71ID:jN4WETeV
「助かったよ、彪」
「いえいえ。こんなことで良かったらいつでも言ってください」
偲乃の祖父藍沢弘喜に彪は笑顔を返した。
ここは、定食屋"あいちゃん"から自転車で20分程の場所にある偲乃の祖父母の自宅である。

あいちゃんにも住む場所はあるのに何故こんな所にも家があるのか。それにはちょっとした理由がある。
あいちゃんは偲乃の曾祖母が始めた店だ。初代店主である曾祖母藍沢愛(あいざわまな)から、
2代目の祖父弘喜が後を継ぎ、3代目を父亮太郎が継ぎ、その後を継いだ偲乃は4代目になる。
店を始めた当初は利便性や金銭面等々の理由で自宅兼店舗の形にしたが、
幸いなことにあいちゃんは人気が出、跡継ぎも立派に成長したので改めて自宅を買い直したのだ。
自然に囲まれているこじんまりとした平屋の一軒家。老後を過ごすには最適だとか。

こんな理由で、彪はわりと近くに住んでいる義祖父母にも可愛がられているのだ。閑話休憩。

「…うん、きれいにできているね。彪に頼んで正解だった」
彪が渡した将棋の駒をしげしげと眺め、弘喜は満足げに頷いた。たこや切り傷が残る大きな掌には飛車と歩と角が乗っている。

以前ここを訪れた時に、困ったような笑顔の弘喜が頼んできたお願いが将棋の駒作りだ。
曰く、いつものように友人と打っていたところ、一つは猫にとられ、一つはまっぷたつに砕け、一つは焼け跡が付いてしまったらしい。
百歩譲って猫にとられたのは仕方がないとしても、後半二つは一体何をやったのかと問いただしたい衝動に駆られた。
新しい駒を買うのも考えたが、駄目にしてしまった三つの為だけに全ての駒をそろえるのは少々もったいない。
そこで、自覚はないが細工や絵画系が異様にうまい彪に声をかけたのだ。
彪も、将棋の駒ぐらいなら――勿論きちんとしたものを作るには素晴らしい職人芸が必要だ――なんとかなるかな
弘喜さんのお願いだし、と引き受け、きっちり完成させた次第である。

「そう言ってもらえると嬉しいです。他に、なにかできることはありますか?」
「いいや、平気だよ。どうもありがとう」
のほほんと笑われて彪の表情も緩んだ。弘喜の、どんな時でものんびりゆったりしている雰囲気が、彪は好きだった。
この穏やかさのおかげで、緊張しいな自分でもわりとすんなり藍沢家に馴染めたと思っている。
なにを隠そう、藍沢家で一番最初に親しくなったのも弘喜だったのだ。こんなこと天地が逆さまになっても偲乃には言えないが。
「そうだ。彪、昼ごはんはまだだろう?」
「へ? あ、はい。そうです」
「一人で来たということは、偲乃もいないんだね?」
「ええ。ご友人とお出かけで」
篠原茜から誘いを受けた時の「茜さんとお出かけしたいしお話もしたいけど彪と一緒にいれないのは寂しいどうしよう」
とでも言いたげな葛藤した様子を思い出しつつ、彪は答える。きのうのしのさんはすごかったです。
「なら、一緒に食べよう。お礼がてら作るから」
「え、いいんですか?」
「もちろんさ」
わぁい。
「…とはいっても、簡単なものしかないけれどね」
「嬉しいです!」
「じゃあ、作ろう。ちゃちゃっとやっちゃうから、洋子を呼んできてくれるかい」
「分かりました」

台所へ向かった弘喜を見送って、彪は裏庭へ回る。
0532小ネタ2014/04/17(木) 21:23:02.21ID:jN4WETeV
裏庭では、白髪混じりの長い髪を一つにまとめ、紺色の作務衣をびしっと着こなした女性が小さな畑の世話をしていた。
「洋子さん」
声をかけると、女性は未だ衰えを感じさせない鋭い視線を彪に返す。しゃんと伸びた背筋や汚れを落とす機敏なしぐさは年齢を感じさせない。
「彪か。…弘喜がご飯を?」
「はい」
「では、戻りましょう」
そう言って凛とした笑顔を見せたのが偲乃の祖母の藍沢洋子である。
女性としては高い身長にすらりと長い手足、おまけに冷たい印象を受けそうなほど整った顔立ちはさながら宝塚俳優のようだ。
性格も、今は大分丸くなったらしいが強気且つ勝気。男勝りな性格で、学生時代は男性よりも女性からの方がより人気だったとのこと。
偲乃と亮太郎曰く「「私(俺)の性格はおばあさん(おふくろ)から受け継いだ」」らしい。そうかもしれない、と彪は思う。
ちなみにこの言葉は「「だからおじいさん(親父)には弱い」」と続く。確かにそうだ、と彪は思う。

「そうだ。将棋の駒のこと、ありがとうございました」
「いえいえ。あのくらいならいくらでも」
「あのくらいとは言うけれど、大変だったでしょう? なにかお礼をさせてください」
「弘喜さんのご飯が食べられますから」
「……それはお礼になるでしょうが」
困った様子の洋子を見て、彪は自然と笑顔になった。

居間に戻ると、机の上には既に美味しそうな料理が湯気を立てて並んでいた。
彪が洋子を迎えに行ってから戻ってくるまで10分もかかっていない筈なのだが、いつも通りのことなのでもう慣れてしまった。
「おかえり、二人とも。さあ、食べよう」
「ありがとうございます!」
「いつもありがとう」
各々席に座り、いただきますと合掌して早速箸を手に取る。
本日のメニューは、白米と玄米が混ざったホカホカご飯、鰹節の出汁が効いた筍の煮物、鰆の塩焼き、付け合わせに春キャベツとカブの甘辛炒め、
ジャガイモと玉ねぎと油揚げが入ったお味噌汁だ。全然簡単じゃないとか、あの短時間でどうしてこれだけのものができるのだとか、
突っ込みたいところは山ほどあるが、いつものことなので何も言わずに美味しく頂く。
「お味噌汁は今朝作ったもので筍は昨日沢山作っただけだから、そんなに手はかかっていないんだよ」
「心を読まないでください弘喜さん!」
「顔に出てたからねぇ」
「そんなに分かりやすいですか俺」
「…あなたの、素直で正直なところは美徳ですよ」
「……フォローありがとうございます」

何も言えなくなったので大人しくお味噌汁を口に含んだ。白味噌の柔らかい甘さと丁寧にとられた出汁が胃を優しく解していった。
「「……おいしい」」
煮物を食べた洋子と彪の声が被る。思わず顔を見合わせた二人を見て、弘喜は笑みを深くした。
「二人とも、喜んでくれるから作り甲斐があるよ。
 感想は強要するものではないし察することもできるけれど、言葉にしてもらえると、やっぱり嬉しいね」
にこにこ笑う弘喜を見て、洋子は恥ずかしさを誤魔化すように鰆を食べる。
しかし、どこか憮然としていた表情も、絶妙な塩具合の鰆を食べる頃には大分緩んでいて、それを見た弘喜はにこにこにこにこと笑っていた。
(お義父さんが同居をしない気持ち、ちょっとだけ分かるかもしれないなぁ)
いつだったか、あの二人は幼い頃からあんな具合なんだと遠い目をしていた亮太郎に思い馳せつつ、彪は筍を口に入れる。
一から調理するのは難しいと聞くが、流石と言うべきか、程良く柔らかくも噛み応えがある筍には出汁がよく染み込んでいて非常においしい。
こんな料理を無料で食べれるなんて得だ、と笑った彪は、ふとあることを思い出す。
0533小ネタ2014/04/17(木) 21:24:12.18ID:jN4WETeV
「…そういえば、外でご飯食べるの久しぶりだ」
「そうなんですか?」
独り言は存外大きく響いた。
「あ、はい。いつも、偲乃さんが作ってくれるので」
「ああ。……そういわれてみると、私も最近外食をしていませんね」
「やっぱり、弘喜さんが?」
「はい、毎回。妻としてのプライドは大分昔に捨て去りました」
「あはは、なるほど」
料理ができないわけではないんですよ、と弁解する洋子に彪は同意する。
勿論作れと言われれば作るが、偲乃の方がはるかに上手だし、彪が申し出る前になんでもない顔で美味しいご飯が並べられているのだ。
作る機会が減っても仕方ないだろう。

「たまには変わろうかと言ってみても、平気平気の一点張りで」
「うん。それはそうだよ」
ため息交じりの洋子の言葉に、弘喜は柔らかく微笑んだ。
「せっかく料理が得意なんだからさ。大事な人のご飯を自分が作りたいと思うのは、自然な感情だろう」
「そうかもし……」
あまりにもあっさりと、さらりと言われて普通に同意しかけた洋子だったが、時間差で効いてきたようで言葉を止めた。
じわりじわりと頬を染め、丁寧に箸を置き、大きな溜め息をついて頭を抱える。
「…せめて人前では止めてくれと何度言ったら分かるんだ…!」
「事実だからねぇ」
「年齢を考えろ年齢を…!」
「事実だからねぇ」
真っ赤になったまま文句を言う洋子と、のほほんと笑いながら文句を受け流す弘喜を見て、彪は思う。
(お義父さんが同居できない気持ち、分かるなぁ)

塩が効いているはずの鰆は、何故かとても甘かった。


その日の夜、偲乃のご飯を食べながら弘喜の言葉を思い出して、目の前のどこか満足げな偲乃を見た彪は時間差で悶える羽目になるのだが、それはまた別の話。
05344342014/04/17(木) 21:26:23.26ID:jN4WETeV
以上!

いやほんと誰が得するんだって話ですが個人的に老夫婦がとても好きで
その思いが暴走した結果こんなことになってしまってそのすみませんでした
0535名無しさん@ピンキー2014/04/18(金) 09:24:59.00ID:HdhJlalg
GJ!
年をとってもラブラブでいたいものです
見習わねば!
05384342014/07/12(土) 15:06:34.04ID:+jGiZldD
台風が熱気を連れてきたので投下します

調子にのって夫婦2組ぶっこんだら1万字軽く超えてしまったので
微妙な区切りですが前半だけ投下させてください。すみません
葵茜夫婦で、エロ薄い、本番無し、山も落ちも意味もない話なので
必要に応じて「銭湯編」をNGでお願いします
0539銭湯編2014/07/12(土) 15:09:56.88ID:+jGiZldD
昨晩の台風が嘘のような、台風一過の晴天が広がる土曜の午後。
一月ほど前に発売された、訳を担当した本の振り込みを確認して、
「……あ」
僕は小さな声をもらした。

僕の背中に寄り掛かるように座って、今朝届いた先月の結婚式のアルバムを眺めていた茜が、どうかしたのかという風にこちらを見やる。
いつもであれば即座に応えるところだが、僕は、何よりも先に残高の合計額を確認した。その金額を見て、頭の中で色々なことを計算する。
幸いにも茜の仕事は安定しているし、僕の方も、新しい文章を幾つか頼まれた。加えて、有り難いことに訳している小説の内、
とあるシリーズが大人気と言っても差支えない程人気になった。それを考えると……よし、計算終了。
「なあ、茜」
「うん。どうしたの?」
「子どもつくろうか」
「…………はい?」
僕の言葉を聞いた茜は、たっぷり間をおいて、呆然とした顔でこちらを見上げてきた。少し急すぎただろうか。
「子どもだよ、子ども。僕と君の、子ども」
「えっと……あおくんと……わたしの……こども……?」
「ああ」
「…………」
「………………」
「……………………」
「……茜?」
硬直したままの彼女を覗きこんでみると、茜は、とても混乱していた。やはり急すぎたようだ。反省。

「……ちょっ、ちょちょ、ちょ、ちょっとまってあおくん!」
あ、復活した。
「うん、どうした?」
「子どもって、あの、えっ、だって……えっと、待って待って、その、こ、こどもですか!?」
「そうです、子どもです」
「な、なんで!? いや、その、どうして急に!? せ、説明してください!!」
「承知しました。まずはこれをご覧ください」
おそらく言葉での説明は必要ないだろうと思いながら、先ほど記入してきたばかりの通帳を見せる。
最新の欄には、それなりに中々の額が記載されていた。茶色の目が何度も瞬き、確認するかのように金額を読む。
「……こういう時、なんていえばいいんだろ。目標額達成?」
「うん。それでいいんじゃないか」
「そっか……もう、こんなにたまってたんだ……」
「幸いなことにね」
感慨深げに頷く茜を軽く撫でる。
0540銭湯編2014/07/12(土) 15:12:50.68ID:+jGiZldD
子育てには、お金が必要だ。
だから僕たちは、これだけ貯めたらある程度は大丈夫だろうという目標額を定め、それを達成するまではしっかり避妊をすることにしていた。
喜ばしいことに、つい先ほど、その目標額を達成していたことに気が付いたので、お誘いをしたわけだ。ということで。
「僕の言いたいことは分かったな?」
「うん。もっと時間かかると思ってたんだけど…すごいなぁ。さすが葵だね」
「そっちでなく」
「え? って、ゎひゃあ?!」
どこかずれている茜を抱きあげた。
目を見開いて、訳が分からない様子で固まっている彼女からアルバムを受け取り
――ちょうど、白いウエディングドレスの茜とタキシードの僕が、笑顔で寄り添っている写真だった。改めて見ると恥ずかしい――通帳を挟んで机に置く。

そのまま寝室の扉を開けたところで、ようやく僕の意図が分かったのか、茜は一気に顔を赤らめた。可愛い。
「あ、葵?! 葵さん、あの、ちょっと待ってください!」
「なんでだ」
「なんでって、だって、まだ明るいんだよ!?」
「大丈夫。それはそれで燃える」
「燃えないよ! あの、あと、私、今日、まだ、お風呂入ってない…!」
「大丈夫。今日は汗かいてないし、茜の匂いは大好きだ」
「全然大丈夫じゃない!」
あわあわと叫ぶ彼女をベッドに座らせ、その隣に腰掛けてなるべく真剣な顔で茜を見る。
「なあ、茜。僕の子ども、産んでくれないか」
「えっ…え、あの…えと…。……う、産みたい、です」
「話はまとまったな」
流れるように押し倒す。
「あああ私の馬鹿!!」
「……もしかして、嫌なのか?」
「そんなわけないでしょ! 産みたいよ! 産むよ! だけどちょっと待って心の準備が!」
「なるほど。なら、40秒で準備しな」
「囚われの女の子を助けに行くんじゃないんだから! それに微妙に違う!」
ツッコミを入れるのはそこか。
我慢できず、つい苦笑した僕の下で、茜はこの現状をどうにかしようと焦っていた。
顔を赤らめ、両手を手持無沙汰気味に漂わせ、なのに本気での抵抗はしない。ああ、なんて可愛くて、夫思いのお嫁さんなんだろう。
0541銭湯編2014/07/12(土) 15:16:05.24ID:+jGiZldD
彼女の気持ちも分からないでもない。
普段、電気を薄く点けるのでさえ恥ずかしがる茜だ。こんな明るい時間からこんなことを始めるのに抵抗があるのだろう。
その気持ちは一応理解できるし、貞操観念がしっかりしているお嫁さんで大変喜ばしいのだが、
大好きな子を孕ますことをずっと我慢していた僕は、限界だった。

きっと、そんな気持ちが顔に出たのだろう。
僕を見上げた茜は、元々赤かった顔を更に赤くし、彼女を見降ろす視線から逃れようと目を逸らす。が、逃がさない。
「茜。僕はもう、わりと限界だ」
「っ……!」
「これでも、我慢していたほうなんだ。ここには僕と君しかいない。明るかろうがなんだろうが、今、抱きたい」
「だっ…!? あ、あおくん、おねが、ちょっと落ち着いて…?」
「無理」
二文字で切り捨てると、茜は言葉に詰まったが、不意に何かを思い出した様子で僕の肩を押さえる。
「そ、そうだよ、ほら、銭湯!」
「……銭湯?」
何故に今このタイミングでそんな言葉が出てくるのか。
「公園の近くに新しい銭湯ができたから、行ってみようって言ったでしょ?
折角の休みだし、早い時間から行けば空いてるだろうから、今から行ってみない?」
「…えー…」
「ほ、ほら! 最近色々あって疲れてるし、たまには温泉でリフレッシュするのも楽しそうだよ?」
「……否定はしないけどさ」

この状態でお預けなんて、中々に鬼畜なことを仰ってくれる。
だが、僕はともかく茜が疲れているのは確かだし、そもそも銭湯の話をしたのだって、彼女にリラックスしてほしいのが主な目的だ。
僕の欲求より茜の体を優先すべきなのは言うまでもない。
僕の勢いが減少したのを察したのか、茜は更に言葉を重ねる。
「その、そういうことをした後に、ちゃんと洗わないで外に出るのは嫌だし…色々、本末転倒でしょ?
だから、帰ってきてからならいいから、今は、行こう?」
茜の声は安堵の響きを持っていた。
考えるまでもなく、最後までやっちゃったら風呂に入ってからじゃないと外出できない。
銭湯に行こうって言っているのにそれじゃ、なんとも馬鹿馬鹿しい話だ。
茜がそういう目で見られる可能性を上げるのもどうかと思うし…とそこまで考えて、僕は天啓を授かった。

「なら、中にいれなければいいんだな」
「……え?」
「だって、そうだろ? 君だけなら、拭けば問題ないじゃないか」
言いながら覆いかぶさるようにして近付くと、予想だにしなかったのだろう、茜はとても慌てた。
「ま、待ってよ葵! それじゃ、意味ない…」
「子どもはあくまで結果だからね。今の僕の目的は、子どもを作ることじゃなくて、茜のやらしいとこをいっぱい見ることだ」
「ちょっ…ま、待ってくださいあおくん! だって、だって、こんな時間なのに!」
「僕は、朝昼晩関係なく24時間いつだって、茜を抱きたいと思ってる」
「少しは自重して!?」
「常に自重してるよ。…なあ、頼むから、これ以上焦らさないでくれ。本当に限界なんだ。つべこべ言わず抱かせろください」
「なんかそれちが、んんっ!」
これ以上押し問答をしても意味がない気がしたので、半ば強引に口を塞いだ。
当然、茜は非難がましい目で僕を見る。が、それには気付かないふりをして唇を割る。
舌を侵入させ、反射で強張っている彼女の舌を絡め取る。茜が僕の肩を優しく押したが、止まれなかった。
「ふ、んん…っは、あお、ぅん…!」
言葉も全部呑みこんでしまう。それだけ必死だった。茜に夢中になっていた。
そんな僕の様子が、言外の空気で伝わったのだろうか。
茜は仕方ないなぁと目元を緩めると、肩に触れていた手を首の後ろに回し、僕を抱きしめた。辛うじて残っていた理性が、吹き飛んだ。
0542銭湯編2014/07/12(土) 15:20:03.76ID:+jGiZldD
茜に触れる時、僕はいつも思う。彼女以上に、柔らかくて、暖かくて、心地よいものが、この世に存在するのだろうか。
「んっ、は…ぅ、あお、いぃ…」
甘い吐息が混じった言葉を聞きながら、柔らかくも張りがある乳房をゆっくりしゃぶる。
茜は僕の髪をくしゃくしゃとかきまぜていたが、空いている手でおへその下を撫でると身を震わせた。
下腹から腰に、腰から足の付け根にと徐々に下がりつつ、口では彼女の胸を舐めたり、吸ったり、軽く噛んだりする。
……ああ、僕は、なんて贅沢なことをしているんだろう。
「あおいっ…ぁ、それ…や…」
「嫌じゃ、ないだろ」
言って、もう片方の胸をぺろりと舐めた。細い首が軽くそる。
その反応に気をよくして、控え目ながらも硬くなっている乳首を唇で食み、舌でこね、歯を当てた。堪えきれなかったのだろう、か細い悲鳴がもれた。
滑らかできめ細かな肌は仄かに染まり、じんわりと熱を帯びている。本当なら、強く吸いついて鮮やかな痕を残したいところだが、今は我慢だ。

形の良い胸を堪能しながら、逃げないよう片手で腰を抱いて、もう片方の手を秘所に寄せた。
茜の身体で一番熱いそこは、刺激を待ちわびるかのようにしとどに濡れそぼり、軽く指を動かすだけで水音がした。
「やっ…音、やだぁ…!」
「そうなのか? こんなに喜んでるのに」
「やだ、よ…恥ずかし…ぁんっ」
「ほら。ちょっと触っただけなのにくちゅくちゅいってる」
「ふぁっ…そ、それだめぇ…」
わざと音が出るよう指を動かすと、茜は恥ずかしがって逃れようと腰を引く。
もちろん逃がすつもりは毛頭ないのでしっかり抱き寄せ、中指と人差し指をそろえて秘部を撫でた。
茜はたまりかねたように顔を逸らし、秘裂からはとろりとした愛液が溢れてくる。
「茜、目閉じないで」
「ひっ、ん…だ…って、ぅぁっ…はずか、し、よぉ…」
「恥ずかしくないって。すごくかわいくて、きれいだよ。な、顔見せてくれ」
そう言って頬に唇をよせると、涙が滲んだ茶色い瞳が僕を見た。羞恥心の奥に、情欲や期待が隠されている。
0543銭湯編2014/07/12(土) 15:25:08.58ID:+jGiZldD
いつもなら、じっくり時間をかけて羞恥心を溶かして欲しがってもらうところだが、今それをしたら僕の我慢が効かなくなるのは目に見えている。
そうなるわけにはいかないので、ついばむような口付けを落としながら、しっかり濡れている中指を一気に中へ突き入れた。
「んあっ?! ぁ、やぁぁあああっ!」
一拍置いて、茜の背中が弓なりにしなった。中指が柔らかく締め付けられる。
「…ぁ…あ…」
「…茜、すごく色っぽい」
言いながら、中指を抜き差ししてお腹側の壁を刺激する。
柔らかい襞の感触を楽しみながら探っていると、少しザラザラした一角を見つける。
軽く触れた途端、茜が小さな悲鳴を上げたが、気にせず指の腹で擦り上げた。
「ふぁああっ?! やっ、あおく、そこだめぇっ!」
「だめじゃないだめじゃない」
「だめっ…だめ、なの! んゃっ…きもち、よすぎる、からぁ…ひゃああっ」
そんなことを言われて止めるわけがない。
びくびくと震える茜の身体を撫でながら一瞬考え、今日はこっちがいいかな、と親指を陰核に寄せる。
半ば夢見心地の茜が気付くよりも早く、
「ひああっ!? あっ、やっ、ああっ、だめっ、あおくん、だめぇ…!」
充血してぷっくり膨れ、ひくひくと震える陰核を擦りあげた。

内と外を同時に責められ、強い刺激から逃れようと身をよじる彼女を押さえ込む。
半ば無意識だろう、しなやかな足を僕の腰に絡め、淫らな動きで腰をこすりつけ、上気した顔で僕を見る茜は、艶めかしい美しさに満ちていた。
「ほら、まだ終わらないぞ」
いいながら、中指を鉤型に曲げ、指の先でざらついた部分を小刻みに抉る。
再三、茜の身がしなり、甘い悲鳴が上がった。自然と零れた涙をなめて、柔らかい唇にかじりつく。
涙と色に染まった茶色の目に映る僕は、心底楽しそうな顔で笑っていた。
0544銭湯編2014/07/12(土) 15:28:01.89ID:+jGiZldD
あんな茜相手でも堪えられるようになったなんて、僕は、理性が強くなってきたのかもしれない。
そう心の中で呟いて、隣の、楽しそうな茜に目を向けた。

風が涼しくなってきた夕焼け空の下を、僕たちはのんびりと歩いている。
茜が受け入れてくれたおかげで、まぁなんとかそれなりに満足をしたので、当初の予定通り銭湯に行くことにしたのだ。
茜が疲れているのは本当だし、新しくできた銭湯はスーパー銭湯というヤツで、温泉以外にも
食事を食べたりマッサージをしてもらえたりするらしいのだから、リフレッシュのため行かない手はない。
だが、昔の、それこそ結婚したばかりの僕であれば、銭湯の予定は次の日に繰り下げて、心ゆくまで茜のことを味わっていただろう。
そうせずに我慢できたあたり、理性が強くなったか、もしくは、
「……僕もそろそろ年かなぁ」
「ううん、それはない」
きっぱり即答された。

だけど、と茜を伺うと、彼女はいたずらっ子のような笑みを浮かべて僕を見る。
「いつも、私がもう無理って言ってるのに、全然聞いてくれないでしょ。
葵がさっき我慢できたのは、年のせいじゃなくて、銭湯で私の疲れを取ることを大事なことだって思ってるからです」
「…………」
つい、言葉に詰まってしまう。
年だという発言だけで、僕が思っていることをほとんど全部把握されて、狐につままれたような気分になった。
表情に出たのだろう。茜が笑みを深くする。
「十年以上、葵がなにを思っているのかなって考えてるんだよ? 私だって、たまには当ててみせます」
少し得意げな彼女を見て、僕は別の意味で目を逸らした。茜が可愛すぎて目が合わせられない。
「……もしかして、照れちゃった?」
「いや、その、まあ、それなりに」
ちょっと違うんだけど、とは言わずに認めると、茜は嬉しそうににこにこ笑う。
くそっ、昔の、それこそ結婚しばかりの茜ならば、気付いたとしても恥ずかしがって言わなかっただろうに。
月日を経るにつれ、段々と、恥ずかしがってばかりいた茜にも余裕が出てきて、可愛いだけじゃなく大人の余裕も兼ね備えてきたのだ。
どうしよう。最強じゃないか。
「……ああ、でも、茜はどんな時も最強か」
少なくとも、僕にとっては。
「あ。葵、あったよ。あの建物じゃない?」
本当に小声で言ったから気付かなかったのだろう。輝いた目で僕を振り返る茜に笑顔を返し、つないだ手に少しだけ力をこめた。
0545銭湯編2014/07/12(土) 15:34:57.69ID:+jGiZldD
銭湯は、スーパーという形容詞が付くだけあって、広々としていた。
一階は駐車場になっていて、入口は二階にある。中に入ると、温泉特有の硫黄っぽいにおいが漂ってきた。
内装は和風で、柱が走っている天井は高く、開放感がある。お風呂は建物の奥にあって、それ以外の場所は、休憩所兼お食事処になっていた。
和風の扉の先にはマッサージ屋さんもある。
茜と二人、すごいすごいと喜んでいると、親切そうなスタッフのお姉さんがいろいろと教えてくれた。
食券を買うのと同じ要領で切符を買い、タオル等を受け取って、男湯の入り口前で茜と別れる。

時間が早いからか人の少ない更衣室で服を脱ぎ、荷物をロッカーに入れて中へ入ると、これまた凄い光景が広がっていた。
解放感のある空間には、複数のお風呂がどーんと構えている。手早く髪と体を洗い、さてどれに浸かろうかと首をひねる。
お湯は、基本的に源泉掛け流しらしい。熱いお湯と温いお湯、電気風呂にバブル風呂に…外には露天風呂と岩盤浴が出来る場所もあるらしい。
こんなに沢山のお風呂を用意してどうしろというのか。
内心ぼやきつつ、ひとまず、むわっとした熱い空気から逃れようと露天風呂の方へ向かう。
そこで、思いがけず知り合いを見つけた。
「やあ、彪じゃないか」
「…へ? あ、葵さん。こんにちはー」
定食屋あいちゃんの入り婿、藍沢彪だ。早い時間ではあるが、あいちゃんを閉めてすぐに来たのだろうか。

隣に座る了承を得てぬるめのお湯につかると、自然とため息がこぼれた。彪が力の抜けた柔らかい笑みを浮かべる。
「お風呂って、いいですよね」
「ああ」
「俺、結構のぼせやすいんで、普通のお風呂だとあまりのんびりできないんですけど、露天風呂だと長く浸かれるんです」
「それはいいな。今日は、偲乃も一緒なのか?」
「はい。ちょっと疲れることがあったんで、もう夜は怠けちゃおうかーって話になって」
「へぇ、珍しい」
思わず言うと、彪は少し困ったように笑って「偲乃、真面目ですからね。たまにはこんな日があってもいいかと思って」と言った。
僕が言ったのはそっちの意味ではないのだが、敢えて言わなくても良い気がしたので話を合わせる。
そこで、なんとなく違和感を感じた。なんだろうと考えて、つい、気持ち良さそうに目を閉じている彪を観察する。直後、気付いた。
普段は服を着ているから分からなかったが、彪は、意外と筋肉質で引き締まった体をしている。
身長は男性平均とさほど変わらず、そうでなくても気弱な性格の印象が強すぎて僕以上にひょろひょろなのではと勝手に思っていたのだが、
それは間違っていたようだ。顔立ちは柔和なままだが、しっかりした体躯と合わせると、どこか野性的な印象を受ける。これが違和感の正体か。

一人で納得し、彪と同じように目を閉じた。雨が止んだからか、どこからか鳥のさえずりが聞こえる。
「……そういえば」
「はい?」
「疲れたことって、なにがあったんだ? 君がそんなことを言うなんて、珍しいよな」
尋ねてみると、彪は穏やかな顔を苦笑させ、頬を掻く。
「実は今日、兄が来たんですけどね」
「お兄さんいたのか」
「あ、はい。兄と姉が一人ずつ。……言ってませんでしたっけ?」
「初耳だよ」
言った気になってました、と笑い、彪は続ける。
「兄さんが、9歳年下の金髪の美人連れてきて、その子と結婚するって言い出したんです」
その言葉は、彼を質問攻めし、ついうっかりのぼせさせてしまい、偲乃に睨まれる結果につながる程度には、衝撃的だった。
05464342014/07/12(土) 15:50:14.47ID:+jGiZldD
中途半端ですみません、しかも規制に引っ掛かって遅くなってすみません!
とりあえずここまでです!
投下した後で銭湯の影が薄いことに気付きました

相変わらず拙い作ですが、少しでも楽しんで頂けると幸いです
05484342014/07/20(日) 23:05:12.05ID:H5UIrV1l
予定より遅くなってしまいましたが投下します

彪偲乃夫婦、エロまで遠い、微妙なSM表現と言っていいのか分からないくらい微妙なの、
本番なるのにエロくない!不思議!なので
必要に応じて「銭湯に行った夫婦」をNGでお願いします

あと、連投規制が怖いのでゆっくり目に投下します、すみません
05494342014/07/20(日) 23:09:03.56ID:H5UIrV1l
土曜日の午後二時。

お昼時をどうにかさばききったことや、あと二時間もすればお店を閉められることもあって、私は自分でも気付かないうちに長いため息をついた。
18の頃から五年間、もうすぐ六年目になるのだから、ある程度は慣れたとはいえ、
いつもより早い時間からお父さんの助けもなく厨房に立つ土曜日は、普段よりも疲労感が増す。
最後のお客さんを彪とともに見送ると、否が応でも力が抜けた。
「偲乃、お疲れさま」
「あなたも、お疲れ様。ご飯作るから少し待ってて」
「たまには俺がやるよ?」
「いいから」
気持ちだけありがたく受け取って冷蔵庫を開ける。
料理人が私生活でも料理を作るとは限らないし、彪の料理はおいしいことも分かっているけれど、彼のご飯は、なるべく私が作りたい。
唯一、これなら、と思えることなのだから。
冷蔵庫の残りを確認したら、鶏肉とうどんが多く残っていたので頭の中で算段をつける。
外はむしているから冷やもいいが、冷房は効いているので温かくするのも良いかもしれない。さて。

「はい、お待たせ」
「大して待ってないけど…」
「お父さんなら30秒は早いし、おじいさんなら2分くらい短いと思うわ」
「それは比較対象が凄まじいんです」
そうかもしれないけれど、だからって妥協するわけにはいかないでしょう。

言葉にしなくても伝わったのか、彪は困ったような笑顔を見せた。その反応は敢えて無視をして机の上に料理を置く。
だしの効いた温かいつゆに手延べうどんを入れ、その上に刻んだ水菜とネギ、鶏肉の照り焼きを乗せた即席のまかないと、おまけに茄子の煮浸しだ。
彪は、わぁい、と嬉しそうに手を合わせる。私の頬も自然と綻んだ。
料理人として、相手が誰であれ、作ったものを美味しいと言ってもらえるのは嬉しいことだ。それが彪なら、喜びは一層深くなる。
一年前、この人と初めて会った時は、自分がこんなことになるなんて想像すらできなかったのに、人の心とは不思議なものだ。

嬉しそうに食べていた彪は、けれど、私が自分の分を用意して隣に腰掛けると眉根を寄せた。
「……またそれだけなの?」
「十分よ」
彼の目は私の昼食――朝のうちに作っておいた梅むすびに薄味のだし湯をかけ、なすの煮浸しを添えたもの――に向けられていた。
「それとも、これじゃ不服?」
彪は口をへの字に曲げる。
「中身に文句があるわけじゃないよ。お米はお腹にたまるし、梅干しは疲れをとるし、水分も取れるしお湯なら体も冷えにくい。野菜だってちゃんとある」
「ならいいじゃない」
「量が少なすぎるんです、量が」
改めて自分の食事を見る。
小盛用の小さいお椀に一杯と小鉢に少し。確かに、世間一般の女性が食べる量と比べても少ない自覚はある。けれども。
「作ってるだけでお腹いっぱいになるんだもの。本音を言うなら食べたくないくらい」
「だとしても、もう少し食べてください。倒れるんじゃないかって不安になる」
「平気よ。これまでもこれで平気だったんだし」
「……だからこんなに細くて小さいんだよー」
「貧相な体で悪かったわね」
「そんなことは言っていない」
余計な遠慮のない会話に胸が暖かくなる。今までなら、こんなこと、お互いに言えなかったはずだ。
意図せず緩んだ目元を「真面目に言ってるんだよ」ととがめられたが、そういう彪の表情も柔らかい。
激しい言動がなくたって、互いが思いあっていることが伝わってきてなんとも嬉しかった。

そんな、穏やかな時だった。
「よお、こんちは」
「こ、こんにちは…」
「あ、いらっしゃいま…兄さん!?」
彪の兄で私の義兄、和泉樹さんが、どこからどう見ても日本人離れした美人を伴って店にやって来たのは。
0550銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:14:01.13ID:H5UIrV1l
「日本人離れした美人…ってことは、外国の人?」
隣で首を傾げる茜さんに、私は肩をすくめてみせた。
「ハーフみたい。父親がドイツ人なんだって。
 でも、生まれも育ちも日本育ちで、性格も、夫の三歩後ろに控えてる古き良き日本女性、って感じだったわ」

色々と面倒になってやって来たスーパー銭湯で偶然出会った茜さんは、その説明を聞いて楽しそうに目を細めた。
私より二歳年上だけど、十年程付き合ってきた今でもそのことが信じられなくなる。それくらい、茜さんは可憐な人だった。
「じゃあ、偲乃の二人目のお姉さんだ」
「年下だけど」
「そうなの?」
「しかもまだ学生よ。将来有望な二十歳」
「二十歳!?」
これには茜さんも驚いたようだ。その気持ちはよく分かる。私だって、危うく振っていた鍋を落としかけたのだから。

いくら茜さんとはいえ、この話は言わないつもりだけれど、
私の義姉になる予定の恵実・バイルシュミット・高坂さんと、お義兄さんが交際を始めたのは五年前だと言う。
当時、お義兄さんは24歳で、彼女は…計算するまでもない。
我慢できなかったのだろう、彪は「犯罪だ!?」と悲鳴を上げ「馬鹿言うな籍を入れるまで手ぇ出す気はねえ!」と言い返された。
「大体、外見だけ見ればお前の方が犯罪だ」とおまけまで付いて。
一瞬、鍋の中のレバニラ炒めに山盛りの唐辛子と山椒と柚子胡椒をぶちこんでやろうかと思ったが、プライドがそれを許さなかった。

「二十歳かぁ…。……私が自覚した年と同じだ」
「しかも私に指摘されてね」
「……その節は多大なるご迷惑を……!」
お風呂のせいだけではないだろう。茜さんは顔を赤らめ、ぶくぶくぶくとお湯に沈んだ。
その仕草だけ見れば愛らしい子どものようだけれども、髪をお団子にしているせいでちらりとのぞくうなじには色気が浮かんでいる。
葵も大変だ、と無責任に思う。
同時に、私も結べるくらいに髪を伸ばしてみようかと考えてみて、すぐに却下した。おそらく、似合わない。

「そ、それはそれとして! 彪のお兄さんって、そんなにすごいこと言いだす人だったっけ?」
「私も、彪も、あんなお義兄さん初めて見た」
お義兄さんは、私が見る限り、三兄弟の中でお義母さんと一番似ている。
明るく快活で直情的。少々型破りなところもあるけれど、兄妹の中では一番常識的で、いざという時は頼りになる、まさにお兄さんだ。
深く付き合えば付き合うほど、九歳年下の女の子と仲良くして、挙句結婚するなんて言い出すような人ではないと分かる。
…………そう、思っていたのだが。
「なんていうか……恋愛って、良くも悪くも人を変えるじゃない」
「ああ、それをもろに体現しちゃったんだ」
「凄いのよ、近年まれにみる真剣な顔で、
 “初めて会った時にこの人だと思った。その感情は日に日に強くなった。もう結婚するしかねえ!”とか言いきっちゃうの」
「ちょっ、ええっ!?」
すごいね、樹さん、と茜さんはのんきに笑っているが、実際に目撃したこちらからしたら、笑い事なんかでは断じてない。
あのお義兄さんがあんな顔であんなこと言うなんて、ちょっとしたホラーだった。

確かに恵美さんは美人だ。すらりとした長身でスタイルも良い。
金と焦げ茶のツートンの髪は複雑な色味できれいだったし、愁いを帯びた鳶色の瞳や大人しい話し方にも後押しされてとても大人っぽい。
私だって、言われなければ、二十歳で学生だなんて気付かなかった。
それでも、だ。
あの常識的でしっかり者のお義兄さんが、きっとそうは見えなかっただろうとはいえ15歳の女の子に一目惚れして、
結婚するなんて言い出すなんて。しかも、デレデレに惚れているだなんて。
0551銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:20:36.03ID:H5UIrV1l
言葉が見つからなくて大きなため息をついた私の頭を、茜さんが優しくなでた。
気恥ずかしいような嬉しいような気分で大人しくなった私に、柔らかい声がかけられる。
「そんなことがあったのなら、いつも以上に疲れたでしょ」
「そうなのよ。だから、もう、何もやる気が起きなくて」
素直に白状すると、茜さんは何故か笑みを深くする。
「偲乃がそんなこと言うなんて、珍しいね」
「……そう?」
「そうだよ。今までは、私や葵がどんなに言ったって、弱音もはかないし、頼ってくれないし、甘えてくれないし」
「……かなり、甘えたり頼ったりしてると思うんだけど」
認めるのは恥ずかしいが、そんな風に思われていたのかと少し慌てて言う。なのに、茜さんはいじけた様子で口を尖らせた。
「分かってるけど、素直に口に出してくれなかったでしょ。さっきみたいな話だって、最近になってやっと教えてくれるようになったし」
「そ、そんな…」

なんと言うべきか困っておろおろしてしまう。しかし、茜さんはそれ以上文句を言うことはせず、むしろ目を輝かせて、
「やっぱり、彪のおかげかな?」
「……え」
 私は言葉に詰まる。茜さんは、逃してくれない。
「だって、偲乃が初めて相談してくれたのって、夫婦円満のコツでしょ?」
「…………」
「彪との関係を、ただの同居人以上にしたかったから相談してくれたんでしょ?」
「…………」
「言葉で伝えるのが恥ずかしすぎるって葵に相談したのだって、彪に、自分の気持ちを分かってほしかったからだよね?」
「…………」
「沈黙は肯定ととるよ?」
「なっ……ぅ……」
肯定ととられるのは恥ずかしかったが、否定なんてするわけにもいかないので、答えに窮してしまう。顔が、熱い。

真っ赤になっているのであろう私を見た茜さんは、それはそれは楽しそうに、少女のように無邪気な顔で微笑んだ。
「恋愛って、良くも悪くも人を変えるよね」
「……そうですね!」
半ば自棄になって叫ぶ。嬉しそうな笑顔が見ていられなくてそっぽを向いた。
全身で、いじけてますこれ以上こちらの弱い部分に触ったら逃げますオーラを出していると、茜さんが笑う。
「ごめんごめん、ちょっとからかっちゃって」
その声は、いつものように、いや、いつも以上に優しい。
「偲乃って、頑張り屋さんで一生懸命だから、自分だけで全部やっちゃうでしょ?
 凄いなぁって思ってたけど、ちょっと心配でもあったんだよ。弱い所、全然見せてくれないんだもん」
そこで言葉を区切り、優しい手で私をなでる。
「だから、彪が来てくれて安心したんだよ? 彪といる時の偲乃、リラックスしているように見えたし。
 葵風に言うと、抜き身の刀だったのが、あるべき鞘を見つけて落ち着いたんだねって」
そう言う茜さんは本当に嬉しそうで、彼女が心から私のことを考えていてくれるのが分かる。
「……茜さん」
「うん?」
私は小さく息をついて、年下のようだけど頼りになる友人に振り向いた。
0552銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:24:55.86ID:H5UIrV1l
「何を企んでるの」
「やだなぁ、協力者の権力を使って偲乃と彪の話を聞き出そうだなんて、思ってないよ?」
「白々しいにも程がある」
「だって、気になるんだもん」
「あなたは、そんな、下世話な話に興味ないでしょ」
「偲乃は特別です」
「その特別扱い、全然嬉しくない」
「まあまあ。で、どう? 最近の彪とは」
「答えなきゃいけない義務はないはず」
「もちろん義務はないけど。いいの? 偲乃がこれまでしてくれた相談や、ノロケにしか聞こえない悩み事、全部彪に伝えるよ?」
「っ……!」
さらりと言われて、私は思わず戦慄した。茜さんは笑みを深めて、
「"彪は優しすぎる"とか、"人を疑うってことを知らない。無防備すぎ"とか、
 "人当たりが良いから好かれるのは良いけど…他に好きな人できちゃったらどうしよう"とか
 "どうすれば彪が喜んでくれるかしら"とか、"なんで私、彪のことこんなにす」
「す、ストップ! ストップ!!」
慌てて静止すると、さらさらととんでもない暴露をしてくれていた茜さんは、ふふふ、と笑い声をもらす。

訂正しよう。茜さんは可憐な少女みたいだ、と言ったのは嘘ではないが、純真無垢な少女にしては強すぎる。
出会った頃の彼女はもっと素直でからかいやすかったのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
心の中で嘆きながら、嬉しそうに笑う彼女に視線を返す。
もう、こうなったら、仕方がない。覚悟はできた。なんでも聞けば良いのだ。どんな質問にもきっちり答えてやろうじゃないか。
よし、と気合を入れて、いつも通り、強気に宣言する。
「じゃあ――お願いだから、今度何かおごるから、ほどほどに、控え目に、無難な範囲内の質問でお願いします」
「はーい」
0553銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:28:31.97ID:H5UIrV1l
「ふー…今週もお疲れさま、偲乃」
「ん。あなたも」

結局、篠原夫妻と夕食を食べ、のんびり帰って来た私たちは、帰宅早々寝る支度を整えて布団の上に寝転んでいた。
一組の布団を二人で使うのは少し窮屈だけれども、不快な狭さではない。
のんびり笑う彪にくっついてみる。
しっかりした腕に頭を預け、引き締まった身体にすり寄ると、彪は顔を赤らめた。が、嬉しそうに微笑んで私を撫でる。
こそばゆい力加減で髪を梳かれ、体全体がじんわり暖まる。快楽と言うほど強くはないけれど心地よい。
多幸感にうっとりしながら彪を伺ってみると、柔和な表情の奥に仄かな熱量が見えた。それにつられて、私の奥もふるりと疼く。

我ながら、ずいぶんとまあ色好みになってしまったものだ、と内心苦笑する。
初めての時は、痛いし緊張するし疲れるしで、絶対好きになれないと思ったのに。
私の様子に気付いたのだろう。
彪は顔を更に赤くしながらも、ゆっくりと、どころかおっかなびっくり、私に覆いかぶさってきた。
私は彪のものなんだから、遠慮なんかしなくていいのだけれど、思いが通じても彪が遠慮しいなのは変わらない。
もしかしたら、地がそういう性分なのかもしれない。
それならそれでいい、とも思う。もどかしかろうと強引だろうと、彪がくれるものなら、どんなものでも嬉しいから。

両手を彼の頬に添えると耳まで赤くなって眉を下げた。情けないはずの表情が言いようもなく可愛らしく見えて頬が緩む。
ぴんぴん跳ねている柔らかい髪をくしゃくしゃと撫でてみたら、彪は恥ずかしそうに笑って唇を寄せてくる。
「あの……いい?」
「もちろん」
両手に力を込め、嬉しそうに笑う彪に私からキスをした。
0554銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:32:31.25ID:H5UIrV1l
身体を寄せあい、足を絡め、互いの呼気を交換するかのように口付けを交わす。
彪は、最初のうちこそ遠慮がちだったけれど、段々開き直ってきたからか、次第に積極的になってきた。
舌を押し付け合うだけではなく、下唇を優しく食み、上唇をちゅうっと吸う。
初めは私の方が押していたのに、彪に求められる内に、頭の中が朦朧としてきてなされるがままになってしまう。
優しい口付けが降ってくるたびに背筋が震え、筋張った手で撫でられるだけで肌が泡立つ。
彼の頭を撫でていた私の両手は、いつの間にか、縋るようにしがみついていた。
「…ふ…はぁ…」
「っ…偲乃、かわいい」
どこか堪えるように呟かれる。
恥ずかしさと反感が混じってつい睨んでしまうと、切羽詰まった、切実な目を返された。思わず言葉に詰まる。なんで、そんな顔をするの。
「偲乃…偲乃、好きだよ。好きだ」
切なげな声で何度も名前を呼ばれ、心が震えた。好きだよ、と囁かれるだけで、お腹の奥からどろりとした熱が零れる。
ほとんど触られてもいないのに、まったく、私の身体はどうなってしまったのか。

こちらの戸惑いには気付かないようで、彪は少し苦しそうな、けれど幸せそうな笑顔で私を見つめる。
なんだか待てをしている犬のようだ、と思って、現状と合わないにも程があるその発想に苦笑してしまう。笑い声の代わりに無駄に甘い声が零れた。
「偲乃、ねえ、もっと声聞かせて」
「っ、いやよ、ばか」
「そんなぁ」
そこをなんとか、とかなんとか言いながら、彪は私の寝間着を脱がせにかかった。
以前に比べればぎこちなさの抜けた手つきでボタンを外し、前をはだける。
好意的に表現しても控え目な胸があらわになって、私は、思わず目を逸らした。

それまでは、不便さは覚えつつも自分の身体に不満はなかったのに、想い人ができた途端に自身の貧相さが気になりだす。
そんな、ドラマや小説のような感情は、一生縁がないものと思っていたのだけれど。
「……ごめんなさい」
つい、思わず、考えるよりも先に言葉が飛び出した。何の脈絡もない発言に、当然、彪はきょとんとする。
「どうして偲乃が謝るの?」
「や…あー…その…」
「うん?」
とっさに誤魔化そうとするも、優しい力加減でそっと皮膚を撫でられると、どうにもまともな思考を保っていられない。
「……あの、ね?」
「うん」
「私の身体って、さわっても楽しくないから」
「そんなことないよ?」
「だって、ん…あなた、別に、幼児趣味無いっ…でしょ?」
彪は、私の言葉を真剣な顔で聞いてくれているけれど、その手は悪戯に動いてこちらを乱す。
緩やかな乳房をてのひらで包まれ、時折指先に力を込められるだけで、私の身体は面白いくらいに反応してしまう。
「もしかして、兄さんに言われたこと気にしてる?」
「べ、つに…っっ、そ、ゆうわけじゃ、ない…けど…」
どちらかといえば、大分前から気にしていた。彪と一緒に外を歩いていても、大体は兄妹に見られてしまうし。

彪はふっと目元を緩め、柔らかく口付けてきた。
深いものを期待した私に反し、数度軽くついばむと、頬から首筋、鎖骨へと舌を這わせる。
手とは違う熱いぬめりが体に触れるたびに鼻にかかった声がもれる。
「確かに、俺はどっちかっていうと年上のお姉さんがす――いたい、いたいです偲乃さん」
「自業自得よ」
「話は最後まで聞いてくださいって」
反射的に髪を引っ張った私に情けない笑顔が返された。
ふん、と息をつくと、ご機嫌伺いのように唇が寄せられる。今度は期待通り、深いものを。
小癪なと思いつつも、舌を吸われ時々噛まれ、混じりあった唾液を飲まされると、不満よりも喜びが勝ってどうでもよくなってきた。
0555銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:40:58.53ID:H5UIrV1l
否応にも力が抜けた。
ぼんやりとした視界に彪を映すと、彼は、普段は見せない満足げな目で私を見おろしている。
「人の好みって変わるじゃない。今の俺にとって、偲乃以上に魅力的な人はいません」
「……ロリコン」
ああ、また可愛くないことを言ってしまった。
「別にちっちゃい子には興奮しないからロリコンじゃないです。…それに」
私の答えに気を悪くした様子もなく、彪は片方の手を私の下着に潜り込ませた。
とっさに寄せた足を軽々と割り、既にびしょぬれになってしまっている秘所に触れる。
軽く動かしただけだろうに派手な水音が耳に届いて、一瞬で身体が熱くなった。
「…こんなにえっちなんだ。ちっちゃい子とは思えないよ」
「っ……!」
返す言葉が見つからない。ので、精一杯睨みつけてみても、彪は眉を下げるだけで動じなかった。

今までの彪だったなら、こんな、私の羞恥心と被虐欲を煽るような真似はしなかっただろうけれど。
これも、少しずつ遠慮が抜けてきた成果…だろう。多分。きっと。おそらく。
「ぐ、ぐだぐだ言ってないで、その…わ、分かったでしょ。もう、入れてよ」
「……ごめん、もうちょっと」
「ちょ、んぁっ」
言葉と一緒に秘裂をなぞられ悲鳴を上げてしまう。
とっさに口を押さえようと手を動かしたが、それより先に両手首を掴まれ頭の上に押さえつけられた。
「偲乃、声聞かせて」
「やっ…んん…!」
「…我慢強いんだもんなぁ…」
呆れとも感嘆ともつかない言葉を零し、彪は胸に口を寄せた。挨拶代わりに数度口付け、乳房を食み、ぴんと張っている乳首を舌でこねる。
空いている手で秘裂をくすぐり、気紛れに一番敏感な部分をつまむ。
私の弱点を知り尽くした、的確な愛撫だ。
なのに、どろどろした熱を孕み、彪を欲して震える奥には触れてくれない。一番、いちばん、さわってほしいのに。
「…っ…あき、らぁ…」
「んー?」
「も…ちゃんと、さわって…!」
「ん。これはどう?」
言って、乳首を強く吸う。同時に肉の芽を強くつままれ、私は、呆気ないくらい簡単に絶頂に達した。
背中が弓なりにしなり、腰が意思に反して小刻みに跳ねる。
手を押さえられているのがもどかしい。彪を抱きしめたくて手を動かすと、意外なくらいにあっさり解放された。
必死でしがみついた私を力強い腕で抱き返してくれる。心がきゅうっと締めつけられた。
「……偲乃、すごく、かわいい」
噛みしめるように言われ、大人しくなっていた火がまた燃え上がった。内に篭もる熱をどうにかしたくて彪にすり寄る。
0556銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:44:08.90ID:H5UIrV1l
彪は何度もキスをくれた。
嬉しそうな目に物欲しげな私が映る。羞恥心で顔が熱くなるが、それよりも、とにかく彪のことが欲しかった。
「あきら…あきらぁ…」
「うん…ほしいの?」
「ほしぃ…ほしい、のぉ…おねが、いれて…?」
「そうだね。俺も入れたい」
はしたなくすり寄る私を撫でさすり、彪は器用に剛直を取り出す。雄々しく立ち上がるそれが愛おしくて、お腹の奥から雫がこぼれた。

彪の名前を呼びながら何度も口付ける。熱い身体をどうにかしたくて、早く私の中を埋めてほしくて、とにかく必死だった。
「あきら…あきら、お願い…ちょうだい、ね、これ、ほしぃ…!」
いつもの私であれば、恥ずかしすぎて言えるわけがないことも言えた。すると、彪はふと目を細めて、口元の端を持ち上げる。
「そんなに、ほしいの?」
「ん…ほしい…あきら、おねがいぃ…」
「じゃあ、自分でいれてみようか」
「……え」
言われていることの意味が分からなくて戸惑う私に、彪は、いつも通り優しく微笑んで繰り返した。
「偲乃が、自分で、入れてみよう? 俺も手伝うから」
言って、彪は私の身体を持ち上げる。
あぐらをかいた彼の上に、膝立ちのような格好の私が乗っかったところで、ようやく彪の言いたいことが分かった。
同時に、どこかへ行っていたはずの羞恥心が帰ってくる。
「なっ…そんなのっ…!」
「無理?」
私を見上げる彪はどこか寂しそうで、そんな顔をされたら無理だなんて言えるわけないと泣きたくなった。
言葉に詰まる私に微笑んだまま、彪は私の腰の位置を調節して、物欲しげに震える秘裂に鈴口で触れる。
待ち望んでいた感触と、その先への期待とで胸が締め付けられる。あきら、と呼んだ私の声は、淫らな色に染まっていた。
「ね、偲乃」
「ふっ…うぅ…」
「俺も、しんどいんだ。お願いします」
「……ぅー……」

彪に支えられながら、慎重に腰を落とす。
ぐしゃぐしゃに濡れている秘裂は呆気ないほど簡単に剛直を呑みこんだ。張り詰めた怒張に膣が押し広げられ、彼の形を覚えこまされる。
待ち望んでいた刺激を得られた充足感と、愛しい人を受け入れている喜びで胸がいっぱいだった。
「…あ…あぁ…」
「……すごいなぁ」
熱くて狭い、としみじみ呟かれる。思わずぎゅっと締めつけてしまった私に、彪は心地良さそうに目を細めた。
「あき、らぁ…」
「ん?」
「すごぃ…の…いつもより、深く、て…んぁっ」
一物がひと回り大きくなって悲鳴がもれた。勝手に大きくしないでほしい、と彪を見ると、気まずそうに口付けられた。
「ふぅ…ぁ…」
「あのね、偲乃。そういうことを言われるとこっちも我慢ができなくなるっていうか」
「…がまんなんて、しなくていいのに」
私は、彪のものなんだから。
0557銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:51:11.28ID:H5UIrV1l
「…………あーもう」
彪は何やら瞑目する。何か、変なことを言ってしまったのだろうか、と不安になった私は、
「っや、ああっ!?」
けれど、その疑問を口にすることはできなかった。彪が私の腰をしっかりつかみ、より深くまで打ちつけたからだ。
ごりっと音がしたのではと錯覚するほど深く突き上げられ、目の奥で火花が散る。
待ち望んでいたところに強い刺激を与えられ、私は早々に高みへ押し上げられた。でも、彪は止まってくれない。
「ひっ、あああっ!? やっ、あきっ…あっ、まって、あきらぁっ!」
「っふ…偲乃、ごめんね、もうちょっと」
「い、ぁぁあああっ?!」
あっさりと二度目の絶頂を迎える。膣がびくびくと震え、彪の精を受け取ろうと何度も締めつける。けれど、
彪はきつく眉根を寄せて、
「ふわぁ!? あきらっ…まって、まってぇ! 強いのっ…また、またきちゃうからぁっ」
何度も何度も突き上げてくる。

力強い刺激に目の前が真っ白になる。暴力的なまでの快感から逃れようと、身体は意思に反して彪から逃げようとした。
腰が震え、背中が反り、両手は必死で彼の背中をかき抱く。
「偲乃…好きだよ」
耳元で低い声で囁かれ、再三奥がぶるりと震えた。
耳たぶを食まれ、耳の縁を舌で丁寧になぞられて脳髄が愛撫されているような錯覚を受ける。きもちよすぎて、おかしくなる。
情けない悲鳴が口からこぼれる。
私を好き勝手蹂躙しているモノがひと回り大きくなって、彪も限界が近いのだと分かった。
あきら、と名を呼ぶと、その声すらも呑みこんでしまおうと口付けられる。息苦しくて、彪が求めてくれるのが嬉しくて、涙が滲んだ。
「――く、うっ」
「ぁ、やぁ、ぁ――っ!!」
痛いくらいに抱きしめられ、奥深くで精が放たれる。
どくりどくりと脈打ちながら、お腹の奥が温かいもので満たされていった。
0558銭湯に行った夫婦2014/07/20(日) 23:55:15.95ID:H5UIrV1l
ぼんやりと呆けつつ、びくびくと震えるそれの感触を楽しみつつ、今日は激しかった、と息をついていた私だったが、
「……ぇ? あ、れ?」
ゆっくりと押し倒され、阿呆みたいに目をしばたかせて彪を見た。
いつもなら、どんなに激しかろうとねちっこかろうと、彪が出してくれた時点で終わり、なのだけれど。
「え…と…彪?」
「ごめん。もうちょっと」
「え――」
直後、奥深くまで貫かれた。
達したばかりの敏感なところを強く突かれ、入口付近の敏感な場所をこすられ、息が詰まる。

「っあぁぁあああっ!?」
身体が反り、腰が跳ねた。頭の中が真っ白になって、現状を把握することすらできない。
強張った身体を布団に押さえつけられた。
閉じようとする足をこじ開けられ、何度も何度も打ちつけられる。ぱんぱんと肉同士がぶつかる音が、遠くなる意識の隅で聞こえた。
「……偲乃」
低い声が聞こえたと思ったら、首に硬い感触があった。
数拍遅れて、彪に噛まれたのだ、と気付く。ぼんやりしていた思考が明瞭になる。
「ひぁぁああっ! あっ、やっ、ああっ…んぅ、あぁぁあああっ!」
身体が震える。信じられない。笑ってしまうほど優しくとはいえ、急所を噛まれたのに、私は悦びに打ち震えていた。

滲んだ視界に彪が見える。
堪えるように目を細め、荒い息を吐く姿にどうしようもない悦びが込み上げてくる。私で、こんなに興奮してくれているのだ。
「偲乃…偲乃っ」
「あ、ふぁああっ! あきらっ、ああ、ぁ、や、くる、きちゃうっ…!」
「ん…大丈夫、だよ。そのまま」
「あきらぁ…っあ、もぉ…あ、あっ…ひっ――」
ごりゅ、と奥深くを突かれ、何回目かも分からない絶頂に達した。同時に、彪も目をつぶり、私の中に精を吐きだしていく。
勢いの弱まらないそれは、内を埋め尽くしただけでは飽き足らず、結合部から零れてきた。
少し、もったいないな、と思う。折角彪がくれたものなのに。

けれど、そんなことを考える余裕があったのもそこまでだった。
私の中のモノは、二回も出したにもかかわらず、硬い張りを取り戻していく。思わず頬が引きつった。
「……ちょっと」
「…はい」
「まだ、する気?」
「……できれば、もうちょっと」
言葉や言い方こそ遠慮がちだったが、彪の目は爛々と輝いていて、私の意思には関係なく食べられてしまうだろうと予想はついた。
が、それでも、黙っていられない。
「ちょ、ちょっと待って。待ちなさい。もう無理よ。絶対無理!」
「そこをなんとか。もうちょっとだから」
「何度目の"もうちょっと"よ?! 夜が明けちゃうわよ!」
精一杯強気に言うと、彪はいつものように、困ったように笑って一言。
「……ごめんね?」
「ごめんねじゃない! 可愛く言えば許されると思ってるでしょあんた!?
 って、ちょ…ま、まって、本当にまって! 無理だってば! もうむ、んっ、あっ…ば、ばかぁぁあああっ!」

結局、夜が更け、私が気をやってしまうまで、彪は解放してくれなかった。
0559銭湯に行った夫婦2014/07/21(月) 00:00:17.60ID:tqXncdh9
「だるい」
「…はい…」
「腰も痛い」
「……はい……」
「……動けないんだけど」
「誠に申し訳ございませんでしたっ……!」
翌日、朝…というよりはもう昼に近い時間なのに、私は布団に寝転んで彪に文句を言っていた。
昨夜の閨事のせいで、見事なまでに腰砕けになり、起き上がることすらできないのだ。
犯人である彪といえば、布団の脇で正座をして、ひたすらぺこぺこと頭を下げている。これが、昨晩私のことを無茶苦茶にした奴と同一人物だなんて。
「動けないから、ご飯、作れないんだけど」
「不肖ながらわたくしめが作らせていただきます…!」
「掃除や洗濯も、できないんだけど」
「誠心誠意真心込めて、務めさせていただきます…!」
「……せっかくいい天気なのに、出かけることもできないんだけど」
「たまにはお家でのんびりするのもアリではないかと…!」
思いつくままに文句を言うと、土下座をしたまま返事をされる。

「……なんで、あんなことしたの」
「ぅ……や、やっぱり嫌だった?」
「そんなことは一言も言ってないでしょ」
疲れたけど嬉しかったし、と付け加えると、彪はガバッと顔を上げた。その表情は嬉しそうに輝いている。尻尾が付いていたら物凄い勢いで振ってそうだ。
「本当に!?」
「嘘言ってどうするのよ。で、なんであんなことしたの」
「うん! あのね、たまには偲乃に休んでほし……違う嘘なんでもない! あの、俺の理性が持たなかったんです!!」
「……休んでほしい?」
ああああ、と項垂れる彪を撫でながら、考えを巡らせる。
休んでほしい、と言われても、私はいつもきちんと休ませてもらっている。
彪が家事全般を受け持ってくれているから、仕事に専念できるし、休み時間だって取れるのだ。
むしろ、普段彪に任せっきりな分、日曜くらいは家事を変わろうと…とそこまで考えて、ふと、一つの仮定を思いついた。
「……ねえ、彪」
「は、はい」
「もしかして、営業日はずっと働いているから、たまの休日くらい仕事も家事もしないで、ただゴロゴロと休んでほしいと思ったの?」
「――っ!? ちっ、ち、違うよ! 違います! そんなことはない!!」
「で、普通にお願いしても聞くわけないから、あんなに激しくして私を動けなくしたの?」
「ちっ、ちがいます! 単純に俺の理性が」
「ついでに、いつも我慢してる分を発散しちゃおうかなー、とか思ったの?」
「マサカソンナ!」
つまり、そういうことだったのか。
挙動不審極まりない彪を見つめ、口からは自然と溜め息がこぼれた。
彪は、どうにかして誤魔化そうと、ああでもないこうでもないと首をひねっているが、その態度こそが何よりの証拠だとは気付いていないらしい。

自然と緩んだ表情はそのままに、彪の手に私の手を重ねる。
「ねえ、彪」
「な、なんでございましょうかっ!」
「おなか、すいちゃった。ご飯ある?」
「! あるよ! あります! フレンチトースト作った!」
「そう、おいしそうね。じゃあ、食べさせてくれる?」
「うん! ちょっと待ってて!」

ぃやっほう! と駆けていく彪を見送って、私はもう一度溜め息をついた。
「まったくもう…仕方のない旦那さまね」
その声が、心底幸せそうに蕩けていたのは、言うまでもないことだろう。
05604342014/07/21(月) 00:05:32.76ID:tqXncdh9
ここまで!
題名ミスしてすみません!日にちまたいじゃってID変わってすみません!

あの、あれです、彪偲乃夫婦って、偲乃の心情が分かりづらい分色々唐突かと思って
彼女の心情を書きたかったんですが…どうしてこうなるのか…

あとそのですね、そろそろ自給自足には限界が…と言ってもいいだろうか…
とにかく、少しでも楽しんでいただければ何よりです!
お目汚し致しました!
05624342014/10/07(火) 23:22:20.17ID:i+CAH6gZ
保守代わりに小ネタ
前後の流れ不明且つ短い且つエロくないくせに中途半端にそういう描写あるので(15禁くらい?)
必要に応じて「ある日のお誘い」をNGでお願いします
0563ある日のお誘い2014/10/07(火) 23:23:51.99ID:i+CAH6gZ
――いったい、なにがどうしてこうなったんだっけ?

心の中で悲鳴を上げた彪は、自分の上にまたがる偲乃を見上げた。

今まで、ぬるいお風呂にのんびり浸かるというリラックスタイムを過ごしていたはずなのに、
偲乃の声が聞こえたと思ったらすっぽんぽんの彼女が入って来て、こちらが呆然としている間に馬乗りである。

……どうしてこうなった!?

「……あの……偲乃、さん?」
「なに?」
おそるおそる尋ねてみると、偲乃は、怖いくらいにこやかに頬を緩ませる。
何故だろう、大切なお嫁さんの素敵な笑顔を見ているはずなのに、妙に嫌な予感がする。
「その……あの、どうして、何故、お風呂に? もう入ったよね?」
確認のため、どうにか笑顔を作って尋ねると、偲乃は笑顔を深めた。
「折角だから、背中を流そうかと思って」
「いや、それは、嬉しいのですが」
絶対それだけじゃ終わらないよね? の言葉は口に出せなかった。嬉しそうに微笑んだ偲乃が唇を寄せてきたからだ。
「ちょ、しの、」
「ん…」
優しくついばむような口付けが落とされる。
口だけでなく顔中に唇を落とされ、ついでとばかりに耳を加えられ、彪は悲鳴を呑み込んだ。
耳全体を甘がみされたと思ったら、今度は内側を舌先で愛撫される。
彼女の手は、どこか甘えるように彪の肌を撫でていた。くすぐったいような、じれったいような刺激がたまらない。
お風呂の熱とは別の理由で頭に血が上る。お湯に浸かってから時間はそこまで経っていないのに、のぼせそうだ。

とはいえ、彪の中に、偲乃を拒否するという選択肢は基本存在しない。
戸惑いを感じつつ半ば条件反射で彼女を抱きしめ、こちらからも求めると、偲乃は嬉しそうに目元を緩めた。
唇が触れ合うだけのものから、徐々に、互いの唇を食み、舌を絡めあう深い口付けに変わっていく。
段々とお湯が冷めていくのに比例するように、二人の体温は上がっていった。
堪えきれず、反応してしまった一物が、物欲しげに偲乃の秘所に触れる。彼女の瞳が熱を帯びた。
「…ね、彪。して?」
控え目ながらもストレートな物言いに頭がくらくらした。
「……のぼせそう」
「あら。じゃあ、上がってからにする?」
「そうしてもらえると、ありがたいかな」
言って、偲乃を抱きあげた。楽しそうな悲鳴が耳に心地よい。
湯冷めしないようにタオルごと偲乃を抱きしめると、なんとも無邪気な笑顔が返される。
色々とたまらなくなって腕に力を込めた。
「……偲乃って、初心なのか、大胆なのか、分かんないよ」
「お互いさまよ。あなただって、初心なのか、大胆なのか、分からないもの」
「じゃあ…似たもの夫婦、なのかな」
「一緒に暮らすうちに、似てきたのかもしれないけれど」
どちらにしても嬉しいわね、と抱きついてくる偲乃をしっかり抱きしめる。
そうだね、と返した彪の声も、心底幸せそうに蕩けていた。
05644342014/10/07(火) 23:26:55.89ID:i+CAH6gZ
しまった1レスで終わってしまった。ここまでです。
これならわざわざ宣言しないほうがよかったですね。無駄なレス消費すみません。
本当は葵茜夫婦の方も書ければよかったのですが、まだレベルが足りませんでした
お目汚し失礼しました
0570誠一×紗奈2015/07/29(水) 02:11:24.64ID:SnMXQbuh
洗濯もする、掃除もする、家計の管理もちゃんとする。
だけど、料理には期待をしないでほしいの。
住むことになってからこんなことを言うなんて、ごめんなさい。

いつも明るくて快活な紗奈さんが悲しそうに俯いて、長い髪がその表情を隠したところを、
僕はこの日、初めて見た。



会ったその日に意気投合。
次の週からお付き合い。
三か月後にはプロポーズ。
その一か月後にはめでたく入籍。
一緒に暮らし始めたのはプロポーズから半年後。

そんなんでいいのか? って言う友人もいた。
だけど、悪い流れじゃないと思う。
紗奈さんも言っていたけれど、付き合おうって決めた時には、もうこの人は結婚相手だな、
という、根拠のない確信が自分の中にはあったから。
もちろん、家族のこととか、住む場所とか、二人の仕事のこととか、将来のこととか、
考えるべきことは沢山あった。
本当はもうしばらく付き合ってみて、浮かれた時期を過ぎても、一緒にいたいと思ってから、
結婚するべきだったのかもしれない。
食事の相性、家具の趣味、金銭感覚、好みのプレイ。
そういうことも、当然考えたりはした。
けれど、お互いにそう言うところをうまく妥協して、長い年月付き合ったって、別れるときは別れるし、
どんなに好きでも、結婚相手じゃないな、と思うことがある。
それもお互い、経験的に知っていた。
だから、相手を確かめるために時間を費やすのは無駄だろう、
合わないところはこれから合わせていけばいい。
それが僕らの考えだった。
0571誠一×紗奈2015/07/29(水) 02:12:09.61ID:SnMXQbuh
僕は僕でこれまで、コンビニ、外食、カップ麺あたりで済ませていて、料理はろくに作れない。
苦手だって言うなら無理に頑張らなくていい。
休みの日に二人で、練習してもいいんじゃないかな。
紗奈さんにはそう伝えた。
紗奈さんは、ありがとう、と笑ってくれた。

僕は無理に頑張らなくてもいいって伝えたつもりだったけれど、
紗奈さんはかなりの努力家らしいことが、この二週間でよく分かった。
それはそれで、いい発見だと思う。
そう思いはするのだけれど……。
帰るたびに部屋にほのかに異臭が残っているのはどうしたらいいんだろう。
先週は焦げた臭いがした。
一昨日はくさやの臭いがした。
そして、今日は硫黄の臭いがする。
何故……。
紗奈さんは失敗した料理を僕が帰る前に処分しているらしく、新聞紙でくるまれた何かが
コンビニ袋二枚で厳重に覆われ、口のところはガムテープで留められて、
市指定のゴミ袋の奥深くに追いやられている。
それを開封するようなことはもちろんしないけれど、どうやったらこんな臭いが部屋に満ちてしまうのかは
とても気になる。
うっすらと異臭が漂う部屋の中、おそらくコンビニかスーパーで購入してきたであろう食糧たちが、
非常に綺麗に盛り付けられて、テーブルに並んでいる。
これだけ綺麗に盛り付けをできる人が、どうして食材で科学の実験ができるのだろう?
聞いてみたいけれど、それは紗奈さんを傷つけてしまうだろう。
美味しくはあるけれど、どこか味気ないこの味はうちから徒歩五分のところにある
緑の看板のあのコンビニか……。
なんて考えてから、ふと思った。
コンビニ弁当の味なんて気にしたことがなかった。
いや、どれも美味しいとか、腹にたまるとか思って食べていた筈ではあるけれど、
味気ないという感想を持ったことがなかったんだ。
そういう風に思うのは、自分たちで作った料理を紗奈さんと一緒に食べたいと思っているからだ。
0572誠一×紗奈2015/07/29(水) 02:12:45.89ID:SnMXQbuh
「紗奈さん、今度の日曜日暇?」
「暇だよ?」
「じゃあ、一緒に料理の練習、しない?」
紗奈さんの顔が一瞬にして凍り付いた。
これもまた初めてみる表情だけれど、少し、怖い。
そして、拙いことを言った、と即座に理解できた。
「あ、でも」
紗奈さんはゆっくりと箸を皿の前に置くと、手を膝の上に下ろし、下を向いてしまった。
「やっぱり、コンビニのご飯じゃ、嫌だよね?」
「いや、そういう訳じゃないよ」
「無理しなくていいよ」
押し殺したような声でそう始めると、紗奈さんはそこから、静かではあるけれど、
一気に自分の言い分を羅列した。
「やっぱり、ちゃんと料理教室とかに通ってから一緒に暮らすべきだったよね。
 でも、私、せっかく入籍したのに、いつまでも違うところで暮らしてるのが嫌だったから、
 暮らし始めた時のことあまり考えないで、ここに住もうって、誠一君と住もうって決めちゃったの。
 誠一君が『次は住むところを決めようね』って言ってくれた時、すごく嬉しくて、
 たぶん、舞い上がってたんだと思う。
 私、ちょっと自分が冷静な女だって勘違いしてるところあるから、舞い上がってるのに
 気が付かなくて、だから自分が料理が下手なんて、十分知ってた筈なのに忘れてた。
 この何年か練習すらしないから、下手かどうかっていうそんな大事なことも忘れてた。
 しばらくは私もまだ仕事を続けるつもりだから、コンビニのご飯でも家計が切迫するようなことは
 ないと思うから、もうしばらくはこのままだけど、目を瞑ってほしいんだ。
 もう、料理教室は目星がついてるから、明日、申し込みの電話をするね」
「…………」
こんな風にしゃべる紗奈さんを始めてみた僕は、かなりびっくりして、あっけに取られていた。
そして、何故かちょっとドキドキしてきていた。
紗奈さんは、返事をしない僕を待つことなく、また箸を持った。
けれど、僕が箸を持った手をテーブルに置いたまま、放心しているのに気付くと、
悲しそうな眼をこちらに向けてきた。
0573誠一×紗奈2015/07/29(水) 02:13:22.60ID:SnMXQbuh
「ごめんね……。
 呆れたよね」
無言のまま首を横に振ると、紗奈さんは悲しそうな顔のまま笑った。
「誠一君は優しいね。
 私が男の人だったら、こんな女、ドン引きしちゃう」
「紗奈、さん」
とりあえず、僕は口を開いた。
「……僕も料理はできない」
「男の人はやらなくていいんだよ、そんなこと」
「それは女尊男卑だと、僕は思う」
「誠一君、変なことを言うんだね」
「『男は料理なんて作れないんだろう?
  料理は女性がやってやるから男は食ってりゃいいんだよ』という発想が根底にあるから」
「そうなんだ……」
「あくまで僕の意見だけれど」
紗奈さんは困った顔をしている。
「僕は紗奈さんとは出来るだけ対等でいたいし、本当にできないことであれば補ってほしいし、
 補いたいと思っている」
「うん……」
「紗奈さんも、そう言っていたでしょう?
 それに、君が料理は苦手だということを僕に教えてくれた時に、僕は一緒に練習しようと言いました」
なんだか、だんだん腹が立ってきた。
「は、はい……」
「それなのに、一緒に練習しようと言ったら、自分の不備が悪いようなことを言い出し、
 挙句、男は料理をやらなくていいとか、それはあまりにも勝手なんじゃないですか?」
「…………」
今度は紗奈さんがあっけに取られたみたいな顔をした。
0574誠一×紗奈2015/07/29(水) 02:13:53.61ID:SnMXQbuh
「これからも一緒に暮らしていくつもりなら、一方的にものを言わず、僕の意見も尊重したうえで
 議論を戦わせてもらいたい」
僕がそこまで言い切ってから、一呼吸おいて、紗奈さんが笑い出した。
「やだ、誠一君、おかしい」
「おかしいとはどういうことですか」
「だって、敬語になってる」
かあっと顔が熱くなった。
僕のポリシーの一つに、人を怒る時は理論立てて怒るべきであり、その際は年下に対しても敬語を使うべきである、
というのがある。
それが紗奈さんに対して出た。
つまり、僕は紗奈さんに対して怒ってしまったということだ。
「ご、ごめん。
 だけど」
「誠一君て、怒ると敬語になるんだね」
僕は怒ったのに、紗奈さんは何故だか嬉しそうだ。
「ごめんね。
 誠一君の言う通りだね。
 私、自分が想像していた以上に料理ができなくて、混乱してたんだと思う。
 それに、また女尊男卑って言われちゃうかもしれないけど、私も一応女の子だから、
 好きな人には、自分が作った美味しい料理を食べてほしいな、って思っちゃったんだよね。
 それなのに、予想以上に酷いから、ドツボにはまってたんだと思う」
紗奈さんは右手で何かをつまんで、それがどこかに落ちていくような仕草をして見せた。
なんだろう、紗奈さんと結婚しようと決めて、紗奈さんがオーケーをくれた時も嬉しかったけど、
その時の嬉しさとは違う嬉しさがある。
「いや、僕も紗奈さんが料理の練習を始めた時に、すぐに一緒に練習しようと言えばよかったんだよ。
 ごめん」
小さく首を横に振った紗奈さんの頬は、気のせいかピンク色に染まっている気がする。
「ありがとう。
 私、すごく素敵な旦那様、手に入れちゃったね」
本当に嬉しそうにそんなことを言ってくれるから、恥ずかしくなってしまう。
恥ずかしいのに、嬉しくて、胸の奥がくすぐったい。
0575誠一×紗奈2015/07/29(水) 02:14:26.90ID:SnMXQbuh
こんな気持ちは久しぶりだ。
いつ以来だろう、なんて考えて、中学生の時のことを思い出した。
初めて告白した女の子に、私も好きでした、って言ってもらった時の感じだ。
「僕は……、今更紗奈さんに……恋したみたいだ」
「え?」
「あ、いや、ちゃんと元々好きだったよ?
 ちゃんと、好きだという気持ちが根底にあったから、結婚しようと思ったんだし!」
慌てて自分の言葉をフォローしてから、人として好きだったけど、恋人という目では
見ていなかったのかもしれない、なんてことに気がついた。
もっとも、そういう感情はなくていい、ってどこかで思っていた気もするけれど。
そう思っていると、紗奈さんが目を細めた。
「ふふっ。
 誠一君に恋してもらえるなんて、すごく嬉しい」
うわ、この顔は可愛い。
紗奈さんはこんな風に笑ったりもするんだ。
今日は紗奈さんの初めてみる表情ばかり見ている気がする。
「誠一君は、そういうの、要らないって思ってるのかな、って思ってたから」
「確かに、ちょっとそう思っていたかもしれない……。
 だけど、紗奈さんが可愛いから……」
まっすぐ見ていられなくなって、思わず少し視線を外すと、紗奈さんは
僕をまた紗奈さんに落とすようなことを落とすようなことを言った。
「それは、私が誠一君に恋をしている気持ちが出てるんだと思うな」

この年になって、誰かにそんな気持ちを寄せたり、寄せられたりするなんて思っていなかった。
穏やかに過ぎていくだろうって思っていた新婚生活は、思っていたよりずっと浮かれたものになりそうな予感がした。

(了)
0576名無しさん@ピンキー2015/07/30(木) 22:22:11.52ID:TnktPjiw
超GJ!
結婚してから気付く新しい発見って凄く良いと思います
0577名無しさん@ピンキー2016/10/05(水) 16:39:04.72ID:pAswR41C
0578名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 22:46:16.47ID:BXJ0bgy/
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        |イイ::´ヽ三斗七二` j斗孑七::::::::」:::ィ|:::!::::i::::::i
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          |i::::::ト.ム 、 、、 、、      、、 、、 、/::/::::::/_/⌒ヽ だれか居ません?
          |l::::::|:::从      `      厶イ:/´/   \
          |i::::厶イ:|ゝ    r  ‐ァ    .イ |`ー-、 /´  ヽ
            f'|/`<⌒ヽ> .      . イ / .ト、  ヽ /   )
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         〉/´ヽ     \ \     ∧⌒ト、」/∧   ',  /{
         《7//r'      ヽ  ヽ  /  V_{  \/∧  V /
         V//{        ',  ト、// ∧ ヽ   〉/∧   }ノ∧
          V/∧ _  ´ ̄ ̄ヽ.  V_/_/ l!o V_/\/∧  V/∧
          }//∧ソヽ     V V//|! |!》  |_/'//〉  }///〉
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0579名無しさん@ピンキー2016/12/20(火) 13:59:51.05ID:jdH20utQ
いるよ

かつて、―――は言った。
「どんな馬鹿でも、アラを探したり、難癖をつけたり、苦情を言ったりできる。 そして大抵の馬鹿がそれをやる」

そして若いひ弱な作家は、某所から姿を消したのだ
0580名無しさん@ピンキー2017/02/07(火) 19:00:23.35ID:Y0XqxQ81
ふと思い出してスレを6年ぶりにスレ開いたら鉄猫完結してたんだな
作者様ありがとうございます
こんなに号泣したの久しぶりです

もう短編は望めない…よな…
0583名無しさん@ピンキー2020/10/14(水) 01:20:34.87ID:opAGpxr6
鉄猫の新作読みたいよー!!
0585名無しさん@ピンキー2021/04/03(土) 20:16:47.32ID:dLIrOSLG
古い時代のシルクロード文明のような地域であれば男の子は
精通すれば即嫁取りというのも珍しくはありませんでした

男の子は早くて12歳、遅くとも13歳〜15歳くらいには精通して
今まで感じたことのない下腹部のムズムズに悶々としながら
無意識にマスターベーションをしたりあるいは夢精による止めどない射精によって
自身の身体の変化を自覚します

この現代で言うところの二次性徴を迎えると彼らの両親は息子に同民族、あるいは
よその部族から若い娘を是非とも我が息子の嫁にと迎い入れようとします

こういう時代ですと女性も早々に結婚するのが当たり前でしたので、男の子同様
女の子も早いと13歳遅くとも18歳くらいには嫁入りを迎えていたはずです


ですから現代の中学生とか高校生くらいの年齢で昔はもう結婚していたわけです

とはいえ当時の結婚は今とは違い恋愛結婚ではなかったはずですので年端も行かない
若い男の子と女の子が見ず知らずのままいきなり結婚させられたりしていたのでしょう

現代の私達の価値観では到底受け入れられないあり方ですが生まれる時代や地域が違えば
常識も変化するということです

そして結婚するということは当然そういう若い少年少女たちが夫婦として性行為もする
ということです

現代においても未成年者の性行為や避妊が社会問題となって10代の女の子の望まぬ妊娠
などが取り沙汰されているわけですがこういう時代ですとむしろ大人の思惑によって
思春期の若い男女は有無を言わさずに性行為をさせられていたことでしょう

しかも彼らは今のアベックと違って正当な夫婦なわけですから避妊などの
心配をすることもなく堂々と親公認の中で中出しセックスをしていたのです

この文章を読んでいる男性方あるいは現役の男子中高生の皆さんもクラスの憧れの女子
に恋心をいだいたりあるいは好きなアイドルに劣情を抱いたことがあるでしょう

ですが昔であれば憧れにとどまることなく魅力的な同年代の女子に思いっきり中出し
することも夢ではなかったのです

男子であればこれがどれほどの夢心地かは容易に想像できるでしょう

逆に女性の方であればいきなり素知らぬ男の子に身体を弄られた挙げ句
生々しいカウパー液の滲んだペニスを差し込まれ中出しまでされてしまうというのには
強い抵抗感や嫌悪を感じられる方もいるでしょうね

特に思春期で心身が未発達な多感な時期の女の子であれば尚更そうでしょう

一部の強姦や暴行に走る不良少年を除けば概ね二次性徴期の男子は善良で初心な
心の持ち主ですからせっかく嫁いできてくれた花嫁を乱暴することなんてないでしょうし
むしろ奥手になってなかなか手を出す事ができないなんてことも考えられますが

一方でこの時期の男子は個人差あれど四六時中下半身がムズムズしていて
隙あらば勃起してしまう体質の中で日々強烈な射精欲に苛まれているわけですから
目の前に美しい花嫁がいて寝所をともにすることともなれば頭の中はもう
その娘に中出しすることでいっぱいのはずです

ましてシルクロードといえば古来より東西交易の要として様々な人種が入り混じってきた土地です
こうした地域には昔から盛んな混血による美しい女性が多くいました
0586名無しさん@ピンキー2021/04/03(土) 20:17:34.51ID:dLIrOSLG
コーカソイド系の珠のような肌とエメラルドの瞳を持つ女性はどこか憂いに満ちた
神秘的な美貌と色気で多くの若い青少年たちの胸をドギマギさせてきたことでしょうし
当然そんな美しい女性と床に入れば男の子はガチガチにペニスを固くして性行為の前から
寝間着の衣の中をネバネバとしたカウパー液でベタベタにしていたでしょう

中には本番前の前戯の段階で興奮しすぎて射精してしまう男の子もいたかもしれません(笑

ですが二次性徴期の男子のペニスは本当に敏感ですので女性側が軽い愛撫のつもりで
握っただけでも男の子は激しく感じてしまい射精してしまうのです

いやそれどころか寝所の中で抱擁を交わし女性の体温を感じただけでも射精してしまう
かもしれません

これを読んでいるのが女性であればさすがに大げさなとお思いかも知れませんが
世の男性諸君であればむしろこの文章に共感し自分がこういう時代に生まれて憧れの
クラスのマドンナや好きなアイドルと結婚し寝所を共にすればと想像すれば抱き合っただけで
射精してしまうという感覚には大いに頷けるのではないでしょうか?

思春期当事者ならばなおのこと
この文字を読んでいるだけで勃起してギンギンになっているはずです(笑

まあ舞台がシルクロードなわけですからアイドルや同級生をイメージするよりいっそ
日本人にとって最も馴染み深い砂漠のマドンナである風の谷のナウシカあたりで
想像したほうがいいかも知れませんが中学生くらいの男の子であれば
ナウシカのような美少女とは抱き合っただけでうっとりとしてしまい
あまつさえ絶頂を迎えてしまうのも当然のこと、まして性行為ともなれば
ナウシカのような女性と直接肌を触れ合わせその温もりに包まれながら
思春期のペニスを粘膜に擦りつけるわけですからすぐにでも射精してしまうでしょう

現代の男の子たちであればクラスの女子、あるいは好きなアイドルやナウシカのような
アニメヒロインに胸をときめかせたところでせいぜいその娘を思いながらマスターベーションする
くらいしか許されないわけですがこのように少年少女で結婚することができる世界であれば
実際にその憧れの女の子たちの膣内にペニスを入れてドクドクと精液を注ぎ込むことも
できるのです

好きな娘を思いながら軽く手淫しただけでまたたく間に精液を撒き散らしてしまう敏感な
思春期のペニスで実際にその娘を感じ取るわけですからそのときに男子が感じる刺激は
相当なものでしょう

射精するときには普段のオナニーの何倍もおちんちんはヒクヒクと脈を打ち
カウパーもダラダラと垂れ流しながらドクドクと水っぽい半透明の
精液を撒き散らし、女子の体内に注ぎ込んでいくのです


逆に多感な思春期の女の子にとってはこういう男子の生物学的反応は怖くさえ感じる
かもしれません

女性がセックスで気持ちよくなるには男性よりも繊細な気配りとパートナーとの
連携が求められますから

ですがそれを未熟な青少年たちに求めるのは酷というもの

大抵の男子はナウシカのような美少女と抱き合ってしまうとたとえそれが初対面の
娘であっても容易に理性を失い最後には平気で膣内射精までしてしまうのです

そんなのは一部の悪い男だけとお思いの方もいらっしゃるでしょうが
アスベルのような心優しき青少年であっても一緒です

どんな男の子であれ女性の柔らかい身体に抱かれながらペニスを膣内に挿入すれば
あとはもう中出しすることしか考えられません
0587名無しさん@ピンキー2021/04/03(土) 20:18:04.52ID:dLIrOSLG
もちろん純情な男子であれば心のなかで罪悪感を感じたり女性を思いやりたいと
いうような感情も持つでしょうがそんな素朴な心理も実際に性行為を
始めてしまうと動物的な雄の本能によって妨害されてしまうのです

そしてうら若き乙女たちの身体もその繊細な気持ちとは無関係にそうした男の子たち
を優しく包み込み射精へと誘うようにできています

たとえ女性自身の気持ちがいまいちであってもしなやかな女体それ自体は
優しく少年たちを抱擁しペニスを受け入れてしまうわけですね

そんなふうに女体に優しく包み込まれたらどんなに優しい男の子でも
快楽に抗えず身も心もとろけるような気持ちになってしまい最後には
恍惚の表情を浮かべながらうっとりと射精してしまいます

ビュッビュッと脈を打ちながら残酷なくらい大量の精液を吐き出すことでしょう


そういう意味では思春期の男子は結婚前の段階で女性を知り年上の女性に手ほどきされながら
性経験を積んでから結婚したほうがよいかもしれませんね

実際本邦では夜這いという形でかつてそういう文化がありましたが、精通間もない男の子にとって
いきなり年の近い女の子と結婚し夫婦として夜の営みに励むというのはさすがに刺激的すぎたことでしょう

ですが実際そんな刺激的すぎる性行為を経験してしまった男子もいるわけでして
そういう男の子たちは若い新妻の前で恥ずかしさに赤面しながら大人への階段を登っていったのです
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