「どうかしたか、香苗さん」
「…なんでもない…。多分、頑張れば梅原君も行けるよ、そこ」

下を向いて、必死に堪える。泣くな泣くな泣くな。変な奴だと思われる。

「まぁ相当頑張れば、だけどな。…俺さ、もしその大学行けたら、やりたいことがあるんだ」
「へぇ…」

聞きたくないから、その話。

「ある人にさ、伝えたいんだよ」
「うん…」

うん、じゃないって。やめてってば。梅原君の馬鹿。私の、馬鹿。

「俺、好きな人ができましたって」
「…………え?」

今、何て?
聞き間違いかと思ってゆっくり顔を上げると、梅原君とばっちり目が合った。

「わわ! ちょ…何見て…え? あの…え?」
「俺、約束してたんだよ。いつか俺に好きな人ができたら、報告するって」
「な、何でそんな約束…?」
「その…コクってフラれた時に、色々ありまして…」
「えぇ! 告白してたの!?」

衝撃の事実。てか色々って何。

「いや、俺だって告白ぐらいするだろ」
「知らないからそんなの! しかもそんな報告わざわざ大学行かなくってもできるでしょ!」
「それがその人、大学行ってから一人暮らし始めて、連絡先がわからんのだ」
「知るかーっ!!」

叫んだ。周りの人達がこっちを一斉に振り向くのも気にせず叫んだ。

「返せ! 私のお寿司返せ! このワサビ!!」
「は? な、何? お腹空いてんの?」
「ちっがうわ〜っ!!」

バンバンとテーブルを叩いて猛抗議をする。乙女心を弄びやがってばっきゃろー。
結局、梅原君が私を取り押さえるまで私は散々に暴れた。

「か、香苗さん…落ち着いたか?」
「うん…ごめん。取り乱して…」
「いや、いいよ。えーと、何の話してたっけ?」
「…梅原君の好きな人が誰かって話」
「……してないよな?」
「どうせするつもりだったから、いいでしょ」