何故こんな事になったのだろう。

小閻魔様がシャワーを浴びている音が聞こえる。
備え付けのバスローブに身を包み、洗面所で髪を乾かしながら、私は目まぐるしく駆け抜けた今夜の出来事を思い返した。

霊界での仕事を終えて、小閻魔様と一緒に人間界へ降り立った。
幽助が螢子ちゃんと夜の海を見に行くと云うので、誘われるがままについてきた。
四人で浜辺を一頻り散策して、終電で帰ろうと駅へ向かう途中、土砂降りの雨に見舞われた。
ずぶ濡れになった躯は完全に冷え切って、あまりの寒さに堪えきれず、目の前に現れたラブホテルへ四人で飛び込んだ。

場所が場所だけに、私は小閻魔様と同室で。
小閻魔様がバスルームを先に譲ってくれたので、私は熱いシャワーを浴びた。
出てきた私と入れ替わりに小閻魔様がシャワーを浴び、私は洗面所で髪を乾かしている。

がちゃりとバスルームの扉が開き、バスローブ姿の小閻魔様がタオルで髪を拭いながら出て来た。
「ぼたん、寒くないか。
バスタブに湯を貯めるから、後で改めて入るといい」
「有難うございます。
あ、ドライヤー、どうぞ‥」
私は彼にドライヤーを渡すと、洗面所を出てベッドへと腰掛けた。
ドライヤーの音が室内に響く中、私の鼓動も大きな音を立てていた。

こんな嵐の夜に甦るのは、あの忌まわしい記憶。
冥界の王により審判の門が濁流に飲み込まれ、みるみる内に霊界が水没した。
まだ私の頭に鮮明に残る、恐ろしい出来事。
心臓はどくんどくんと其の存在を主張し、息苦しささえ憶える。
震える手を握りしめて、私は大きく息を吐いた。