「んっ…は…っ…」
女は男の吐息ごと絡め、夢中で男の唇を貪った。

血の匂いに、反応する己の身体。
血の味に、昂ぶる己の熱源。

――まるで、獣の交わりのようだ――

男は、女に唇を弄ばれながら、そう自嘲気味に思った。
ふいに、女の掌が男の身体の一部に触れ、女は唇を離す。
「もう、大きくなってるじゃないか……」
くすくすと可笑しそうに笑いながら、男の着流しを肌蹴させていく。
男の、細身ながらも締まった身体が露わなる。
強すぎる酒を以ってしても、男の身体の自由を奪っても尚、男から放たれる強い妖気は霞む事はない。
それは、女自身が男に日々強いている修行の賜物とも言えるもの。
故に。
「…こうでもしないと……今のアンタには勝てないからね…」
女はふ、と――どこか寂しげな笑みを漏らしながら、男の胸板につ…と掌を這わす。
「昨日はアンタに散々いい様にされたからね……今度は、あたしの番だろう?」
「――っ、幻、海…っ…!」
全く力を欠いた男の、露わになった胸元に顔を当てる。
鎖骨から、男の左の乳首を子猫のように舌を突き出して、ぬる、と舐め上げる。
ざらついた舌の感覚が、男にぞくぞくとした、こそばゆい快感を与える。
堪らず男の口から喘ぎが零れた。
「…っ、く…ぅ…」
「くす……いい声で啼くじゃないか……アンタの声…好きだよ…」
声が好きだ、と言われ、男は思わず苦笑う。