0592名無しさん@ピンキー
2015/05/10(日) 01:25:33.06ID:XOCQ2ktg未来の夢。
五月雨荘五号室、真九郎に寄り添うように座っている紫。
今より幼さの抜けた美しい女の顔。
だが、まっすぐな瞳は今と変わらない。
長い黒髪はそのまま、
しかし姿は幼い少女のそれではなく、手足の伸びきった若い娘。
少しふくらんだ胸と、しなやかな身体を白いワンピースに包んでいる。
紫は真九郎に微笑みかけ、その白い手を真九郎の顔へと伸ばす。
真九郎の好きな紫の甘い匂いが艶やかに立ち上った。
目を覚ました真九郎は夢の意味を考える間もなく、
枕元に夢の中で嗅いだのと同じ匂いと、よく知った気配を感じた。
いや、気が付いたから目を覚ましたのか。
「紫?」
気配は答えない。
「どうしたんだこんな時間に」
まだ夜中近いはずだ。
「なあ」
真九郎が布団から起き上がろうとすると、
突然跳びついてきた紫に押し倒された。
「…プレゼントはしかと受け取ったぞ」
真九郎の首っ玉にかじりついた紫は囁いた。
その日は紫の誕生日であった。
紫は真九郎と過ごすつもりであったが、
九鳳院の屋敷で盛大なパーティーが開かれ、
主賓である紫は抜け出すことができなかったのだ。
真九郎も九鳳院と確執がないわけではなく、出席するわけにはいかなかった。
誕生日プレゼントに露店で見つけた小さな指輪を用意していたのだが、
結局真九郎は騎馬に紫へのプレゼントを預けるだけで退散してきたのだった。