真九郎が日の当たる世界を拒んだことに他ならないからだ。
人の命が蝋燭の灯火のように軽く吹き消され、血と怨嗟と暴力の
屍山血河の世界こそが自分の身の置き場。
「分かった...崩月先輩に誑かされたんでしょ、ねぇ!」
「ならお気の毒様ね、アンタじゃ無理よ。器じゃないわ」
銀子はそれでも、それはもう見ている方が目を覆いたくなるような
醜態を曝しながら、真九郎にすがりつくことをやめなかった。
なんとかして好きな男の目を幼馴染として覚まさせてやりたい。
いや、違う。
今の銀子を突き動かしているのは、真九郎への恋心ただ一つ。
だって、自分はまだなにも真九郎に想いを伝えていない。
これからゆっくり真九郎と仲を深めて...それなのに...。
銀子の慟哭を受け止めながら、真九郎は断固たる決意を以て
自分がどこへ向かうのかを彼女に伝える。