「でも、さ...」
「サラリーマンとか畑を耕す自分を俺は想像できないんだよ」
「まぁ、例外としてラーメン屋は選択肢にはいってたけどね」
「じゃあ、いまからでも...」
「それは無理だ」
自分を覗き込む真九郎の瞳には、今までの真九郎を構成していた
要素以外の...昔からの真九郎を知っている銀子が忌避してやまない
決定的なものが映っていた。
そう、暴力への渇望と上に昇り詰めてやるという飽くなきまでの野心だ。
「銀子」
「自分の器なんて、後から大きくするもんだろ?」
「あ、あああ...」
「それに、夕乃さんのことを悪く言うのはやめろ」
「正直に言うと、銀子のそういうところは好きじゃなかった」
「そ、そんな...」
メラメラと燃える真九郎の野心の熱気に当てられた銀子は力なく
ぺたん、と床にへたりこんでしまった。
いつの間にか夕日は沈み、月と星が顔を覗かせる。