一時間近く泣き続けた真九郎は、泣き疲れてそのまま紫の胸に
抱きつきながら眠りに落ちてしまった。
「うんしょ、うんしょ。ううむ重いな、真九郎の体は」
布団を敷き、その上に真九郎の体を引きずりながら乗せ、学生服を
剥ぎとりパジャマに着替えさせる。
(しかし、どうして真九郎はあんなに泣いていたというのだ?)
九鳳院紫にとって紅真九郎は相思相愛の相手といえる。
紫には真九郎が必要で、真九郎には紫が必要である。
紫が困っているときに真九郎は手を差し伸べてくれたし、また真九郎が
困っているときには紫が手を差し伸べて今まで上手くやってきた。
どんな窮地に陥っても決して諦めずに、弱さを見せることなく悪漢や
変えられない宿命と戦ってきたあの真九郎が感情を露わにして、TVに
出てくる女のように泣きわめいたことに紫は内心驚いていた。
(そう言えば環が言っていたな。真九郎は女に弱い男だと)
(そして、真九郎より強い女は...うう、一杯いるではないか...)
小さな頭をひねりながら、紫は真九郎が泣きわめいていた理由を
探っていた。
もし、環の発言が正しいとすれば紫には真九郎を泣かせた相手の見当が
いくつもつく。