「世界で一番おねーちゃんがダイスキですって!」
「う、嘘だ!真九郎がそんなこと夕乃に言うはずがない!」
「嘘じゃないもん!」
「嘘だ!」
「嘘じゃないもん!」
「嘘だ!」
「嘘じゃないもん!」
受話器越しに怒鳴り合う小学生と幼稚園児。
傍から見ればほほえましいことこの上ないが、彼女達はまがりなりにも
九鳳院と崩月の直系の娘達である。
たとえそれがまだ善悪や対人関係の複雑さに責任を持てない歳であっても
そのやりとりが周囲にばらまく影響は計り知れない。
あまりにも見苦しい紫の反発に、ついに頭の中にあるリミッターが
吹き飛んだ散鶴は、姉とよく似た黒い微笑みを浮かべながら電話の向こうの
紫に怒濤の口撃を仕掛けていった。