「紫ちゃんはもうウワキ相手だね」
「散鶴ッ!」
妹を押しのけ、電話の受話器を取る。
「紫ちゃん?!紫ちゃん!!」
今一番知られたくない相手に、よりにもよって真九郎とのことを
バラしたのが自分の妹だなんて、正直な話、信じたくなかった。
受話器の向こうから聞こえて来たのは、無機質な雑音だけ。
おそらく紫は今頃ショックを受けているはずだ。
昔の真九郎ならいざ知らず、銀子を捨てて精神的に不安定になっている
今の真九郎であれば、紫を説得できない可能性も在る。
「くっ!」
時計を見ると、時間は七時過ぎ。
今から駅まで行けば30分程度で五月雨荘に着けるはずだ。
(行かなきゃ!真九郎さんと紫ちゃんのところに...)
そう思った私は、急いで玄関の方へと向かおうとした。
でも...