やがて近づく地獄旅の終わり
人間の少女を餌に鬼太郎ファミリー諸共地獄へ導き、
亡き者にしようとしていた地獄旅の黒幕、ぬらりひょんの野望を打ち砕き、
地獄に秩序を取り戻した鬼太郎たち一行と共にネコ娘は現世に戻ることとなった。
閻魔大王の計らいで、命を与えられた鬼太郎の母と共に。
地獄童子を迎えに来ていた幽子との最後の別れを無言で交わし、現世へと戻る為に胎内道へ向う。
そこでの悲劇はネコ娘にある決意をさせる切欠となった。

ぬらりひょんの最後の悪足掻きにより、人間の少女の命が失われた。
地獄へ連れ去られた彼女を助ける為の地獄旅は後少しで終わるはずだった―――なのに。
助けるべき命を救えずに失い、一同が悲しみにくれる中ただ一人
鬼太郎の母だけは落ち着いた様子で、息子の傍へと歩み寄り金色に輝くものを手渡した。

それは、閻魔大王より授かりし母の命。

「これを使って生き返らせてあげなさい。
 鬼太郎、母は…お前の顔を見ることができただけでも十分です。」

手渡された命は、人の少女の為に使われ
限りなく現世への入り口へと近づいていた母は、
現世へ戻る手立てを失い地獄へと戻っていった。

見ることも腕に抱く事も適わぬ思っていたわが子にこうして出会えてとても幸福だったと
例えこの身は地獄の地にあろうとも、見守っていると言い残して―――
このとき母から放たれた言霊は後に鬼太郎の危機を救うことになるが、それはずっと後の事。

そうして、一度は絶命した少女は、”鬼太郎の母より渡されたの命”により、
再び現世へと蘇えった。

鬼太郎が大切にしていた少女は、
母の命を宿し今まで以上に特別な存在へと変ったであろうことをネコ娘は予感した。
それは他の皆にも同じはず。

かなうわけなんか無い、初めから敵うわけ無かったんだ。

―――ごめんなさい幽子さん
ごめんね、もう一人のあたし。
やっぱ、幸せになんか―――なれなかったよ。

鬼太郎への想いでネコ娘となった彼女が、彼への執着を断ち切る事等できる筈も無かった。
しかしどんなに想っても決して報われる事の無い己の恋に、ネコ娘は深く絶望した。









                               糸売く