「嘘なんかじゃない。
何時だって君の顔を見れば”好きだ”と心の中で唱えていたよ。
でも、僕には口にする資格が無かった。」
「鬼太郎…」
「あの日僕が君にした事は決して許される事じゃない。
なのに君は優しくて―――。」
いっそ泣き喚いて己の非を罵ってくれた方が楽だった。
その方が情けなく許しも乞えただろう。
けれど、鬼太郎を責める事も無く、
ねこ娘は常に傍で支えて居てくれて、いつも明るい笑顔を絶やさなかった。
その笑顔に幾度と無く救われたことだろう。
その優しさにどれだけ甘えていたのか
「ずっと、ずっと許して欲しかった。
僕の全てを投げ出して償えるものならば償いたかった。」
「もういいよ、いいのよ…鬼太郎。」
普段は落ち着いて物静かな鬼太郎が取り乱した姿を見て
ねこ娘は思わず抱きしめた。
鬼太郎がずっとあの日の事を背負っていたなんて、
それも自分よりずっと深い傷を心に負って
「もう自分を責めるのはやめて?
あれは、あたしたちお互いが素直になれなかったのが悪いんだもん。
鬼太郎だけの罪じゃ…ないよ…。」
「ねこ娘…」
「でも、鬼太郎…すごく怖かったんだよ?」
「―――ごめん…でも、苦しかったんだ。
君が他の誰かのものになったと思って…気が違いそうだったよ?」
あの時、素直に話せなかった事が、伝えられずに居た想いがこうして言い合える。
本当に、何故あの時それが出来なかったのだろう。
「あたしも…だよ?だから―――他の女の人に触れちゃ…いや」
「誓って触れてないよ、誰にも。
確かに誤解されるような行動だったし、証明できるものは…何もないけど。
彼女たちを慰めるために、幻術をかけていただけなんだ。」
鬼太郎はホトホト困り果てた様子でねこ娘に訴えた。
この最悪の誤解だけは何としてでも今!解決したかった。
「ほんとうに?」
瞬きをしたら滴が溢れそうなほど潤んだ瞳で、ねこ娘は鬼太郎を見つめた。
ねこ娘だって本当は鬼太郎は潔癖だと信じていたかったのだ。
でも、ほかの女性と一緒に居たという事実がねこ娘を不安にさせていた。