夜の住宅街。巨大な墓標のようにそびえ立つ、コンクリート作りの集合住宅の群れ。
一軒のマンションの、とある一室。
もうすぐ日付の変わる時間帯にあって、そこはまだ明かりが灯っていた。
「違うって那緒、これこれ、この二番目のヤツ」
「分かったよ…ってか、那緒って呼ぶな」
まだ明るい部屋の中では、二人の少年がパソコンの前に座って、マウスを操作していた。
那緒と呼ばれた少年は、毎度お馴染みの我らがオナ射君。
そして少年を那緒と呼んだのは、彼の幼馴染で同級生の星太(せいた)だ。
相方の少年よりも少しだけ背の高い、ほんのり日焼けした肌の持ち主で、大きく意志の強そうな目としっかりした顎、そしてあちこちに飛び跳ねている短髪は、スポーツ少年のような精悍な印象を見る者に与えた。
仲の良い星太の家に遊びに来て、時間も遅いからとそのまま泊まることになった少年。
今はパソコンを使い、二人して夜のオカズを教え合ったり、探したりしているところだ。
「そうそうこれこれ、さすがオナニーエリート仕事はえーっ」
「だからぁっ」
少年が嫌う『那緒』と言う呼び方。
実は小学生の頃、性関連に精通している少年に対して、星太が付けたあだ名だった。
オナニーから文字を抜き取って順番を変え、当て字まで考えた呼び名が、那緒。
どうやら少年は、小学生の頃から相当なやり手だったようだ。