ツクシ「さあ、今日も虫ポケモンを探そう」
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ツクシはウバメの森に来ていた。鬱蒼として高い木々に囲まれたこの森は昼でもなお暗い。
初めてここに来たものであったならその気味の悪さに怖気づくかもしれない。
しかし、ジムも近いこともありツクシは何度もここに訪れていた。 そのうえ彼は女の子のような容姿をしているが、ヒワダジムを任されているジムリーダーである。多少強いポケモンが出てこようと撃退できる実力は持っていた。
ツクシ「あれ、なんか今日は虫ポケモンがでないなあ。日が悪いのかな?」
ウバメの森は深く、広い。それもあってこの森には多くの虫ポケモンが生息していた。だがツクシが言ったように、今日は何故か一匹のポケモンにも出会わない。
ツクシはモンスターボールのセットされた虫網を手持無沙汰に振り回した、いつもならイトマルやクヌギダマなどにあってもおかしくはないが、どんなに歩き回っても一向に何も見つからなかった。
ツクシ「そうだ、もうちょっと奥に行ってみよう」
ウバメの森は深く、広い。それもあってこの森には多くの虫ポケモンが生息していた。だがツクシが言ったように、今日は何故か一匹のポケモンにも出会わない。
ウバメの森にはコガネシティに向かうための道があり、通常そこを通り抜ける。ツクシが今歩いている道もその道からそう離れてはいない。ツクシは短パンの中に入れた「キズぐすり」といくつかの「きのみ」。そして腰につった持ちポケモンの入ったボールを確認した。
森の奥にはツクシも行ったことがなかった。何度も森に来ているジムリーダーとはいえ、世間では彼はまだ子供でしかない、
大人たちに止められていたのだ。
ツクシはそんな大人たちに反発するような性格ではなかったが、この場合彼の好奇心が勝ったのだろう。
ツクシは持っている装備を確認した、仮にリングマが出てきたとしても倒すことも可能だろう。
ツクシ「よし、行こう」
ツクシはちょっとした冒険に高鳴る胸を抑え、草をかきわけながら進んだ。
ツクシ「むふふ」
ツクシは上機嫌である。森の奥は虫ポケモンの宝庫と言っていい。
ビードルにキャタピーを初めとしてその進化形であるスピアーや
バタフリーなど通常の道では見ることすらできないポケモンたちが数多く生息していた。
ツクシはこれらの虫ポケモンを個体の中で見栄えが良かったり、すばやかったりとしたポケモンを観察して選び捕獲した。
その中には虫ポケモンではないがナゾノクサなども交じってはいたがツクシはあとで逃がすつもりだった。
彼はポケモンの生態系を壊すことに注意を払い乱獲はしない。
とはいっても大量の「収穫」とたまたま見つけた「穴場」は無意識のうちに彼の頬を緩ませるには十分すぎた。
むしろいままでこの探検をしなかったことがツクシの胸に小さく後悔すら芽生えさせた。
ツクシ「イトマルだ!」
彼の目の前をすばやくイトマルが通り過ぎた。今日はまだイトマルを捕まえてはいない。
すでに日は中天を過ぎているのが木々の間から差し込む日差しで分かった。ツクシはイトマルを最後の獲物とおもい慎重に追った。
ツクシ「洞窟?」
イトマルを追ったツクシはイトマルがそんなに大きくはない洞窟に入っていくのを見つけた。
追いつめたといっていい。
中をそっと覗きこんだツクシは意外なものを見た。入り口付近は暗いが洞窟の中ごろは森よりも明るい。
これならフラッシュなしでも入れそうだった。ツクシはそのまま洞窟の中に入った。警戒はしている。
ツクシ「うわあ、なるほどだから明るいのか」
洞窟の明るさの秘密は天井にあった。穴が開いているのだ。その穴はツクシの頭よりも一回り
大きく長く続き天から光を持ってきている。
おそらくポケモンが開けた穴だろう。ツクシはめずらしいものをみて感嘆の気持ちがわいたが。
ふと気になった。イトマルならこの穴から出られるかもしれない。事実周りにイトマルの姿はない
ツクシ「しまった、まさかここから逃げたのか」
そうツクシが肩を落とし、近くにあった石に腰かけた。
ぐにゅり
やわらかいなにかがツクシの背中にあたった。あわてて振り向こうとしたがなぜか体が動かない。
ともかく確認しようと右腕を後ろに回したのがいけなかった、右腕にもぐにゅりとした感覚があたり、
動かなくなった。
ツクシ「く、くものいとか。イトマルは逃げていたんじゃないのか」
誘い込まれたのだ。普段ならきづくかもしれないが穴からの光が反射した糸はまったくと言っていいほどに見えなかった。
ツクシはなんとか脱出しようともがいたが全くはずれる気配はない。それどころか動くほどにだんだん糸が絡まり拘束力が強くなっていく。
ツクシ「そうだ、ストライクなら……ひゃ⁉」
腰のボールを取ろうとした左手に糸が飛んできた。左手も糸の勢いに押されて後ろの糸にくっついてしまった。
両手とも拘束されボールに触ることすらできない。
イトマルがそこにいるのは分かっていた。だがツクシはわざと光の差し込む上を向いて顔を下げない。歯がかちかちと音を鳴らした。彼は虫ポケモンに詳しい、
なぜイトマルが罠を張るのかも理解できた。捕食するためだ。
ジャリとイトマルが近付く音がした。
ツクシ「う、うわあああああああああ。くるなああくるなあああああ」
半狂乱になってツクシは両足をばたばたと動かしたが、無駄な足掻きだった。
イトマルは軽々とツクシのでたらめな蹴りをかわし。右足、左足と丁寧に糸で梱包してしまった。
ツクシ「…お、おかあさんたしゅ、たしゅけて」
両手両足を縛られ、万策尽きたツクシは目から大粒の涙をこぼし、ここにはいない母に助けをもとめた。ツクシは急にふわりと体が浮くのを感じた。
ツクシ「ひっ」
足にまかれた糸のせいで感覚が伝わらなかったがいつのまにかイトマルが足に乗っている。イトマルは天井に糸を吐いてツクシの足の糸と繋げていた。
ツクシは両足が天井から伸びた糸で釣り上げられ、まるで開脚しているような姿勢で拘束されてしまった。
完全にツクシの自由を奪ったイトマルはツクシのおなかに乗ってじっとツクシの顔を見てきた。かわいらしい目である。
しかし、被捕食者であるには悪魔の顔にしか見えなかった。ツクシは恐怖と涙でぐしゃぐしゃになった顔でイトマルをみた。
口からは何故か謝罪の言葉がこぼれている。
ツクシ「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。もうポケモンなんて取りません、ごめんなさい、ごめんなさい」
ポケモン相手に無意味な謝罪をする彼にはもうジムリーダーという威厳も意識もなくなっていた。おそらく彼のポケモンならばイトマル程度たやすく倒せるだろう、
事実彼はなんども倒してきた。しかし、頼みの綱のポケモンたちは彼の腰のボールに入っている。
急にイトマルが下に降りた。しかし、ツクシの恐怖は去らない。危機自体が去ったわけではなかった。ただ、下におりただけである。
ぐいとお尻が引っ張られる感覚がした。ツクシは悲鳴をあげる。見えないがイトマルがズボンにかみついたらしい。イトマルはびりびりと強じんな顎でツクシのはいた厚手の短パンを切り裂いた。ツクシは気が気ではない、ズボンの後は自分だろう。
お尻にひんやりとした空気が当たった。どうやらパンツごとズボンが破られて丸出しになっているらしい。
ツクシは羞恥よりも恐怖を感じた。
ツクシ「く、くう。いやだ、いやだああ」
次はイトマルが自分にかみついてそのまま噛み殺されるに違いない。
ツクシはそう思うと渾身の力を込めて暴れたがイトマルの糸は少しも緩まない。
ただお尻が丸出しの男の子が躍るへんなダンスができただけである。
かり…かり
尚も暴れるツクシの耳に奇妙な音が聞こえてきた。何かを砕くような、それでいて聞き覚えのある音である。
ツクシはクビだけ動かしてあたりを見回した。ツクシのみえる範囲にイトマルいた、そして「きのみ」を食べていた。
ツクシ「あれは、僕の……」
森の奥に入る前に「きのみ」をもっていることを確認して短パンに入れておいたはずだった。
短パンが食い破られたときに奪われたのだろう。イトマルはあるだけの「きのみ」を平らげるとツクシに目を向けた。
ツクシと目が合う。 ツクシは思わず目をそらしてしまった。一度そらせばもう一度見ることに勇気が必要だった。視線を戻せそうになかった。
ツクシ「⁇え」
ガクンと体が下がった。と同時にお尻に冷たい感触を感じた。さっき腰かけた石にあたっているらしい。
ツクシの体はさらに下がってお尻が地面までついた、さらさらとした冷たい砂が当たっている。
ツクシ (もしかして、にがしてくれるのか)
さっきの「きのみ」でイトマルはおなかいっぱいになったのかもしれない。
急にツクシのなかに「助かるかもしれない」という希望が出てきた。
おろされた時に緩んだのだろう手足がわずかに動いた。
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